「ドイツに移住してみたい」
「ITエンジニアがドイツに行くのはありなのか判断したい」
以上のようなお悩みをお持ちではありませんか?
ドイツはカナダやオーストラリアのように、18歳以上31歳未満であれば申請できるワーキングホリデービザ(以下、ワーホリビザ)があり、ヨーロッパの中では平均年収も比較的高くビザも取得しやすいため、人気の移住先です。
ただし、移住してから「こんなはずではなかった…」と後悔しないためにも、しっかりと事前に情報を仕入れておくことは重要です。
本記事では、自身も海外でITエンジニアとして働くことに憧れがある筆者が、体験談や公式情報を踏まえて
- ドイツに移住するための事前知識や方法
- ITエンジニアがドイツに移住するのはありかなしか
をご紹介します。
※なるべくわかりやすくかつ正確な情報を届けるよう努力しますが、ビザを定める「移民法」は想像以上に複雑なので、個別のケースに関する相談はドイツのビザ専門の弁護士に相談するようにしてください。
ドイツに移住するために知っておきたい事前情報
まず、
- ドイツ移住にかかる費用
- 永住権申請の条件
- ドイツおよびヨーロッパの特徴
- ドイツ語や英語の求められるレベル
について、基本的な情報を押さえておきましょう。
ドイツ移住にかかる費用
具体的な金額が公式に発表されているわけではありませんが、多くの体験談を見るに生活費諸々込みで200万円用意しておけば安心でしょう。
後述しますが、ドイツでは公立大学の学費がほぼ無料です。
ただし家賃の高いベルリンやミュンヘンに住む場合は、もう少しゆとりを持つことをおすすめします。
ドイツの永住権の申請条件
ドイツの永住権の申請条件は、「ドイツ国内で保険に加入し、5年以上年金を支払い続ける」です。
手続き等の時間を諸々考慮すると、大体6~7年程度ドイツで暮らす必要があります。
ただし特例措置がいくつか設けられています。
- EUブルーカード(高資格外国人労働者向けのビザ)を保持している場合…33ヵ月の滞在と年金の支払いでOK。また、ドイツ語レベルB1に習熟している者は、さらに1年短縮され21ヶ月でOK。
- ドイツの大学を卒業している場合…卒業後24ヵ月の就労・納税でOK。
ドイツおよびヨーロッパの特徴
ヨーロッパ最大の特徴として、税金が高い代わりに社会保障等が充実している、という点が挙げられます。
引用:『日本の税金と外国の税金』
引用:『税金が高いドイツで豊かに暮らせる理由』
そのため、ドイツだけでなくヨーロッパの国の多くは、公立大学の学費が無料です。
ノルウェー、ドイツ、アイスランド、オーストリア、フィンランドなどは、学費が無料または安価ということで有名です。
またヨーロッパの中でも、比較的物価が安く平均給料が高いのがドイツです。
2020年の調査結果によると、日本人の平均年収が約436万円であるのに対し、ドイツの平均年収は約5万6985ユーロでした。
ざっくり1ユーロ=130円換算すると、平均年収は約741万円です。
これは世界的に見ても高い方で、ドイツは11位、日本は24位という結果です。
参考:『日本との差は歴然、ドイツIT業界の平均年収、高給のIT職種は?:第22回』
ドイツの治安は?
治安については、日本は第6位、ドイツは第16位と、日本に比べて悪いと言えますが世界的に見ればいいほうでしょう。
参考:『安全?危険?海外旅行に世界治安ランキング』
以下に2019(令和元)年の犯罪数を掲載します。
ドイツの人口は約8,300万人なので、人口10万人あたりの犯罪発生件数に直すと、日本の約10倍の数です。
フランクフルトやハンブルクは治安が悪いと言われているので注意しましょう。観光先として人気のミュンヘンはドイツの中で最も安全です。
ドイツの気候は?
夏は涼しく湿度も低く、日没が夜9~10時と遅いため過ごしやすいですが、冬は氷点下まで冷え込み、日没が夕方4時前後と早いためしっかりとした防寒対策が必要です。
引用:『基本情報 | ドイツ観光ガイド | 阪急交通社』
ドイツ語や英語の求められるレベル
まず英語について。2019年のEF英語能力指数によると、ドイツ人は100か国中10番目に英語能力が高い国とされています。
そのため、求められる英語レベルは比較的高いのが特徴です。
C1(TOEIC945点~)レベルあれば問題ありません。B2(TOEIC785~944点)レベルは最低でもほしいところです。
参考:『ドイツでは英語で生活できるのか?ドイツ人が世界10位の英語力を持つ理由を紹介』
参考:『ドイツ就職で求められる語学力(ドイツ語・英語)について』
次にドイツ語について。移民やIT系スタートアップ企業が多いベルリンを除けば、社内公用語の多くはドイツ語なので、ベルリン以外に就職する方はドイツ語もC1orB2レベルまで上げておくと良いでしょう。
ドイツ語や英語の力を伸ばすためにおすすめのサービスは、以下の3つです。
ドイツに移住する現実的な方法4選
ドイツに関する基本的な情報を押さえた上で、次は「移住を実現させる現実的な方法」を厳選して4つご紹介します。
ドイツの大学を卒業する
ドイツでは国公立校の場合、小学校から大学院まで、国籍に関わらず原則としてすべて学費が無料となっています。
学費が無料でありながら日本の大学と同様に、専門的な内容を学べるため「お金があまりないけど留学したい」という方にとっては最適です。
ただし多くの大学の入学条件に「ドイツ語C1レベル以上」があるため、
- ドイツの語学学校で勉強する
- 駅前留学のNOVA
などを利用しながら独学で頑張る
などの準備が必須です。
晴れて大学に入学し無事卒業することができたら、ワーホリビザや就労ビザを使い、24ヶ月の就労及び納税の条件をクリアして永住権の申請につなげましょう。
ワーホリビザからアウスビルディングを利用する
Ausbildung(アウスビルドゥング)とはドイツ独特の制度で、日本語に直すと「職業教育」がそれに当たります。
アウスビルドゥングは職人を大切にするドイツならではの制度で、技術職に就く人は日本人を含め、自分で研修先を見つければ誰でも受ける事ができます。
学費は無料で、かつ生活を営む必要最低限のお金はもらえるため、ワーホリビザからアウスビルディングを活用し、永住権につなげた実例もあります。
参考:『ワーホリから現地就職へ!「アウスビルドゥング」を利用する高田マナさんの例』
ドイツ語と英語を学び、現地就職する
ドイツには、およそ1,800社もの日本企業が拠点を置いているため、他の国と比べて現地就職しやすいと言えるでしょう。
日系企業であればドイツ語や英語が入社条件でないところも多いため、そういったところを狙うのもありです。
引用:『【徹底解説】ドイツの日系企業に日本人が現地採用されるための条件とメリットは?』
※ドイツ日系企業に内定した日本人の語学力
ただしドイツ語や英語ができた方がいいのは確実なので、先述したスクール等を上手く活用し、語学力を高めておくことをおすすめします。
5年以上働きドイツ語のB1を取得できれば、永住権獲得にもつながりますので、ぜひ語学の勉強を頑張ってください。
EUブルーカードを利用する
EUブルーカードとは、EUの高資格外国人労働者新指令に従い、EU加盟国から発給される滞在許可証です。
「高度な資格を有する労働者」というのは、つまるところ専門職に従事している人間を指し、ITエンジニアなどがこれに該当します。
資格や職歴等が充実していれば申請できる可能性もありますが、より可能性を高めるためには、職業(職名)と大学および大学院の専門分野が一致している必要があります。
なのでもし文系大学卒でITエンジニアとしての職歴がある方がEUブルーカードを申請したい場合、一番確度が高いのはドイツの大学・大学院を卒業することですね。
EUブルーカードの申請条件
- ドイツの高等教育課程修了(大学/大学院)もしくはそれと同等の外国の高等教育課程を修了している
- 雇用契約書がある
- 年収条件をクリアしている(指定専門分野:年収 41,808 € (約543万円)以上。その他の分野:年収 53,600 € (約696万円)以上。)
※指定専門分野とは数学・自然科学・IT・工学などを指し、科学者、エンジニア、デザイナー、建築家、医師(歯科医を除く)などが該当する。
参考:『Blaue Karte EU』
EUブルーカードを申請するには、それ相応の人材であることを証明しなくてはならないため、割と厳しいです。
ただ、世界的に人材が不足しているITエンジニアやデザイナーなどは、ここでもしっかりと優遇されていますね。
勘違いしてはいけないのが、「ドイツの大学を卒業=EUブルーカードの申請条件を1つクリアする」というわけではありません。
EUブルーカードは、IT分野など、ドイツで不足しているエキスパートをインドなどのIT先進国から招くために設置されたのが始まりです。
EUブルーカードのメリット
EUブルーカードの有効期限は4年と長く、また勤務先の制限がないため、ドイツだけでなくEU圏に幅を広げて就職(転職)活動をすることができます。
EUブルーカードのEU全体での発行の割合としてドイツが4割以上を占めていることからも、ドイツでEUブルーカードを取得する選択は賢いと言えます。
引用:『Mapping Migration Challenges in the EU Transit and Destination Countries』
※Source: Eurostat (January 2015- May 2016)
また先述の通り、永住権の申請は「33ヵ月の滞在と年金の支払い」に条件緩和されます。
ドイツ語レベルB1に習熟している者は、さらに1年緩和され21ヶ月の滞在と年金の支払いでOKなので、永住権の獲得がしやすいです。
その他のあまりおすすめできない方法
ドイツに移住する方法は他にもあります。ここではよく紹介されるものの中で、個人的にあまりおすすめできないなと感じたものを、2つご紹介します。
フリーランスビザを利用する
一般的に、フリーランスで日本から仕事を受注する場合には、就労ビザは必要なく、観光ビザでも可能と考えられます。
参考:『海外旅行先に観光ビザで入国後、日本から仕事を受注して収入を得た場合って違法? | プロフェッショナルに聞いてみよう』
ただし、渡航先の企業からお金を頂いてフリーランス活動をする場合、就労ビザがないと違法就労となってしまいます。
そこで、通称『アーティストビザ』と呼ばれるフリーランスビザを取得することで、ドイツの企業に対しフリーランス活動を1~3年間行うことができます。
「ドイツで一躍有名なバンドになりたい」など、その土地ならではのことを行う場合はおすすめしますが、「ドイツでノマド生活がしたい」という場合、観光ビザで入国し日本から仕事を受注すればOKです。
そのため、取得難易度の高いフリーランスビザをわざわざ活用しなければならない人は、ごく少数に限られます。
※個別のケースに関しては、必ず移民専門の弁護士に相談してください。
ドイツに住みたいからドイツ人と結婚する
ドイツ人と国際結婚をすれば結婚ビザ(配偶者ビザ)が取得できます。
しかし、ドイツの離婚率は2011年で49.66%と実に高い数値を記録しており、この数値は日本よりも高いです。
参考:『ドイツでの国際結婚』
結婚ビザから永住権に切り替えるための一つの条件として、「ドイツ人と結婚し3年以上ドイツに住んでいる」があります。
参考:『ドイツで結婚3年。遂に無期限定住許可(Niederlassungserlaubnis)をゲットしたので、申請の流れや注意点をまとめました』
もちろんお互いが愛しあってドイツに移住することは何ら問題はありませんが、「ドイツに住みたいからドイツ人と結婚する」というのは、正直手段と目的が入れ替わっていると思うので、やめておいたほうが無難でしょう。
ITエンジニアにとってドイツのキャリアはおすすめなのか
まずドイツのITレベルは世界18位なので、日本の28位に比べると上回っていると言えるでしょう。
2021 | Country | 2020 | Ranking Change | |
1 | USA | 1 | – | – |
2 | Hong Kong SAR | 5 | +3 | ↑ |
3 | Sweden | 4 | +1 | ↑ |
4 | Denmark | 3 | -1 | ↓ |
5 | Singapore | 2 | -3 | ↓ |
6 | Switzerland | 6 | – | – |
7 | Netherlands | 7 | – | – |
8 | Taiwan, China | 11 | +3 | ↑ |
9 | Norway | 9 | – | – |
10 | UAE | 14 | +4 | ↑ |
11 | Finland | 10 | -1 | ↓ |
12 | Korea Rep. | 8 | -4 | ↓ |
13 | Canada | 12 | -1 | ↓ |
14 | United Kingdom | 13 | -1 | ↓ |
15 | China | 16 | +1 | ↑ |
16 | Austria | 17 | +1 | ↑ |
17 | Israel | 19 | +2 | ↑ |
18 | Germany | 18 | – | – |
19 | Ireland | 20 | +1 | ↑ |
20 | Australia | 15 | -5 | ↓ |
21 | Iceland | 23 | +2 | ↑ |
22 | Luxembourg | 28 | +6 | ↑ |
23 | New Zealand | 22 | -1 | ↓ |
24 | France | 24 | – | – |
25 | Estonia | 21 | -4 | ↓ |
26 | Belgium | 25 | -1 | ↓ |
27 | Malaysia | 26 | -1 | ↓ |
28 | Japan | 27 | -1 | ↓ |
29 | Qatar | 30 | +1 | ↑ |
30 | Lithuania | 29 | -1 | ↓ |
日本は2021年時点で26カ国とワーキングホリデー協定を結んでいるため、その26カ国に入っているドイツは移住しやすい国と言えます。
ワーホリ協定国 | 年間発給数 |
---|---|
オーストラリア | 制限なし |
ニュージーランド | 制限なし |
カナダ | 6,500人 |
イギリス | 1,500人※2021年の場合 |
アイルランド | 800人 |
フランス | 1,500人 |
スペイン | 500人 |
ドイツ | 制限なし |
オーストリア | 200人 |
スロバキア | 400人 |
デンマーク | 制限なし |
ノルウェー | 制限なし |
ハンガリー | 200人 |
ポーランド | 500人 |
ポルトガル | 制限なし |
チェコ | 400人 |
アイスランド | 30人 |
リトアニア | 100人 |
韓国 | 10,000人 |
台湾 | 5,000人 |
香港 | 1,500人 |
アルゼンチン | 200人 |
チリ | 200人 |
スウェーデン | 制限なし |
エストニア | 制限なし |
オランダ | 200人 |
あとは、「日本より平均年収は約150万円ほど高いけど税金も高い」という事実をどう取るか、だと思います。
またIT系スタートアップ企業はベルリンにほぼ一極集中しているため、ITエンジニアとして生きるのであればドイツというよりベルリン事情に詳しくなっておきましょう。
ベルリンのIT企業であれば、社内公用語が英語であるところも多いため、プログラミングスキル+英語力で渡り歩いていけます。
一方で、「使っている技術がレガシー&意外とドイツ語が必要だったから行くのをやめた」という体験談もあるにはあります。参考:『ドイツでソフトウェアエンジニアとして採用されたお話』
以上をまとめると、
- ベルリンが好きならあり
- EUブルーカードが取得できて、ロンドンなどを含むヨーロッパで働きたいならあり
というのが結論になるかと思います。
まとめ:ドイツに移住するには意外とドイツ語が必要!
ドイツ人は「ドイツ語が話せる外国人が来るとめっちゃテンション上がる」という話をよく耳にしていましたが、こうやって色々調べてみると、どうやら本当っぽいなと感じました。
B1レベル以上のドイツ語力があると永住権も取りやすくなりますし、英語だけでなく意外とドイツ語も重要ですね。
ドイツ語を学ぶには、「ドイツ語に特化したスクール」を活用するのが最も効率的です。
ドイツ移住に興味がある方は、ぜひ以下の3つからどれか1つを使い、ドイツ移住を成功させてみてはいかがでしょうか。
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