「いつかアメリカに行って活躍したい、とは思っているけど行動できていない…」
とお困りではありませんか?
ITエンジニアの方であれば、一度は海外で働くことに憧れを持つことでしょう。中でもITの本場であるシリコンバレーに行きたい方は多いかと思います。
アメリカで働くためにはもちろん「英語」「技術力」が必要不可欠ですが、それ以上に重要なのが「ビザ」です。
なぜならいくら英語が堪能でも、プログラミングスキルが高くても、ビザが下りなければ働くことすらできないからです。
本記事では、自身も海外でITエンジニアとして働くことに憧れがある筆者が、日本人がアメリカでビザを取る具体的かつ現実的な方法をご紹介します。
※なるべくわかりやすくかつ正確な情報を届けるよう努力しますが、ビザを定める「移民法」は想像以上に複雑なので、個別のケースに関する相談は米国のビザ専門の弁護士に相談するようにしてください。
アメリカの主要なビザの基本情報
アメリカには20種類以上のビザがあります。細かく分類すればもっとたくさんあるため、とてもすべてを理解することは不可能です。
本記事では「アメリカでビザを獲得できる再現性の高い方法」に焦点を当てるため、それに適するビザ4種類について詳細にご紹介します。
H1Bビザ(就労ビザ)
- 有効期間:3年(最長6年)
- 更新の可否:可(3年毎で1回のみ)
- 取得にかかる時間:約4~5カ月
- 費用概算(弁護士費用含む):3700~5500ドル
- 配偶者の扱い:「H-4ビザ」
- 配偶者の労働可否:不可
- 子どもの就学可否:可
H1Bビザは高度な専門知識を要する職業に就くための就労ビザであり、主に学士以上の学位保持者を対象に与えられます。
毎年4月に抽選があり、200,000人近い応募に対し65,000人が選ばれるため、確率は約33%です。
アメリカの大学院を卒業していると別枠で20,000人の抽選に参加できるため、当選する確率が若干上がります。
2020年までは完全にランダム抽選だったのが、2021年から賃金ベースでの選考になりました。参考:『米国移民局、3月からH-1B就労ビザの選考を抽選から賃金ベースに変更』
H1Bビザは、大学で学んだ知識を会社で活かすことが前提のビザなので、大学の専攻と職種が一致していなければ基本的にビザは下りません。
ただし救済措置もあり、
- 高卒の場合:実務経験12年以上
- 専攻が異なる学士保有者:実務経験6年以上
の経験があれば申請する条件はクリアできますが、あくまで条件をクリアできるだけでありこれだけでビザが下りる可能性は極めて低いため要注意です。
H1Bビザについてまとめると、以下の画像のようになります。
引用:『ソフトウェアエンジニアのUSビザ』
F1ビザ(学生ビザ)
大学院生までの学生を対象としたビザで、最大5年間、滞在期間は学業終了までの期間(最大8年)と定められています。
ビザの期限は「入国審査が通る期限」であり、滞在期間とはまた別です。参考:『 F-1ビザ (学生ビザ)』
学生ビザ(F)での就労はできませんが、学位を得られる学生に対しては卒業前後にトレーニングを前提とするプラクティカル・トレーニング、通称OPT(=Optional Practical Training)で1年間の就労が認められています。
また特定の条件を満たした場合、OPTの期間を最大24ヶ月延長できる「STEM OPT Extension」という制度があります。
- 専攻がScience、Technology、Engineering、Mathematicsであること
- 雇用主がSTEM申請可能なプログラムを利用していること
- 以前にSTEM Extensionを利用したことがないこと
L1ビザ(駐在員ビザ)
L1ビザは、アメリカに本社がある日本支社で1年間以上働いた人が以下の条件を満たした場合に申請できる企業内転勤ビザです。
- 管理職または役員である、もしくは専門知識を持つもの
- ビザを申請する直前の3年以内に最低1年以上、米国外で経営管理者・管理職または特殊技能職として勤務した社員
L-1Aビザ(経営管理者および管理職)は通算7年まで、 L-1Bビザ(特殊技能職)は通算5年まで延長可能です。参考:『企業内転勤ビザ(L)』
配偶者は自由に働くことができますが、L1ビザを取得した本人は転職ができないため、基本的には期限内にH1Bビザor永住権獲得を狙うことになります。
グリーンカード(永住権)
- 有効期間:10年(結婚の場合は最初2年の期限付き、以降10年)
- 更新の可否:可
- 取得にかかる時間:6カ月~2年
- 費用概算(弁護士費用含む):約4000ドル(結婚ベース)、11000ドル(雇用ベース)
※家族は1人2000ドル程度追加(日本での申請は1人1000ドル程度追加) - 配偶者の扱い:永住権
- 配偶者の労働可否:可
永住権のビザは5種類ありますが、多くの方はEB-2またはEB-3を目指すことになります。
- 「EB‐2」:大学院卒か、学士号と5年以上の職務経験を持つ人物。高等学位(修士、博士、等)を持つ専門家を対象としたもので、科学、芸術、事業のいずれかにおいて特殊な能力を持ち、米国移住することで米国経済、文化および米国の厚生に貢献すると認められればグリーンカードが発給される。
- 「EB‐3」:4年制大学卒か、2年以上の職務経験を持つ人物。特殊技術を持つ専門家を対象としたもので、 この「専門的職業」とは該当する専門分野において学士号を持つ人物を指す。「技術を持つ労働者」とはこの特殊職業の少なくとも2年以上の訓練あるいは経験を持つ人物を指す。
参考:『アメリカ・グリーンカード(永住権)の申請手順と最新動向』
参考:『5つのアメリカ永住権取得方法』
またほとんどすべての日本人に申請の資格がある「DV抽選永住権プログラム」というものがありますが、この当選確率は約0.5%と言われており、200人に1人しか獲得できないものなので、説明は割愛します。
参考:『【2021年】失敗しないアメリカ永住権の抽選応募方法【グリーンカード・ロト】』
アメリカでビザを取る現実的かつ具体的な方法4選
アメリカのビザの基本情報を押さえた上で、次に「日本人がアメリカでビザを取る具体的かつ現実的な方法4選」をご紹介します。
F1ビザからOPTを使い、H1Bビザを取得する
アメリカの4年制大学に通い、専門職としてOPTを使いながらH1Bビザの取得を目指すパターンです。
移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用を要求される職種です。それは例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野です。
引用:『アメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)の申請方法』
具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、教師、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職を遂行するにあたって必要とされる学歴、あるいは職歴を申請者が保持し、スポンサーとなる会社でその職種が必要とされていれば、H-1Bビザの申請条件を満たします。
OPTの1年間の間に、H1Bビザを取得できるかどうかが鍵になります。
H1Bビザが取得できれば、転職込みで最長6年間の有効期限があるため、その間にグリーンカード(永住権)の申請が通れば晴れて自由の身です。
グリーンカード取得後も「法律やコンプライアンスを守る」など、当たり前のことを当たり前に行い、失効することのないようくれぐれも注意しましょう。
日本で2年以上実務経験を積む &大学院でCSを取得する
基本的にアメリカではCS(Computer Science)の学位がないと、ITエンジニアとして就職することはできません。
よってCSの学位を持っていない方は、入学要件としてCSの学士が必須ではない大学院でCSの学位を取得しましょう。
- イギリスのヨーク大学
- CSの修士号が取れる。費用は約10,000米ドル。TOFEL87以上必要。
- アメリカのアリゾナ州立大学
- 費用は約15,000米ドル。「CSの学士号はないが十分な知識がある」という人に向けた試験の救済措置がある。
- アメリカのイリノイ大学
- University of the People
- 学費無料の米国のオンライン大学。週25~30時間で4年かかると言われている。
- 東京大学大学院や奈良先端科学技術大学院大学など
数百万円ほどの資金を用意できる&短期間でCSを取得したい方は、ヨーク大学やアリゾナ州立大学、イリノイ大学がおすすめです。国内の大学院も視野に入れておきましょう。
一方で期間はかかってもなるべくお金をかけずにオンラインでCSを取得したい方は、University of the People(通称UoPeople)がいいでしょう。
参考:『Computer Science等の学位が取れる海外オンライン大学・大学院のまとめ』
参考:『東京近郊でフルタイム勤務しつつ情報系の修士号が取れる大学院を調べてみた【2020年9月ver】』
参考:『無料のアメリカオンライン大学University of the peopleとは?【まとめ】』
「アメリカで」働くことを第一に考えた場合最もおすすめなのは、やはりアメリカの大学院でCSを取得することです。20,000人の別枠抽選があり、STEM OPT Extensionを使えばOPTが最大3年間使えます。
一つ注意点として、実務経験が何もない状態でアメリカの大学院でCSを取得しても、H1Bビザがなかなか下りないケースがあります。
ITエンジニアとしての実務経験が2年以上あると、大学院の2年とあわせて計4年の経験があるとみなされ、H1Bビザの取得がしやすくなる傾向があります。
H1Bビザが取得できないと泣く泣く帰国せざるを得なくなってしまうため、アメリカの大学院に進学する場合はある程度の実務経験を経てからにすることをおすすめします。
参考:『アメリカで働くためのビザ条件教えます!- 海外転職その2』
駐在員としてアメリカに海外出張する
3つ目の方法は、海外転勤のチャンスがある日本の大手企業に勤めて、L1ビザからの永住権獲得を狙う方法です。
L1ビザから永住権を申請するためには、以下の4条件をすべて満たす必要があります。
- 日本の会社と米国の会社が親子関係にあること
- 米国の会社で部長、あるいは重役クラスなどの管理職に就いていること
- 米国入国前の3年間で少なくとも1年以上は管理職に就いていること
- 米国での役職が短期のものではなく、永久的なものであること(相当数の売上と従業員の存在が要求される)
※L1ビザの他にE1(貿易駐在員)ビザもありますが、永住権の申請条件は非常に似通っているため、説明は割愛します。
L1ビザからグリーンカードを獲得できる人が一定数存在するのは事実ですが、「大手企業に勤めていればアメリカに転勤できる」というわけにもいかないため、狙ってできるものではありません。
現在海外転勤がある大手企業に勤めている方は、戦略の一つとして知っておくと良いでしょう。
カナダやメキシコで市民権(国籍)を獲得する
ここまでご覧になって、
「いきなりアメリカに移住するのは大変そう…。ただアメリカ移住は諦めたくない!」
そう感じた方は、カナダやメキシコで市民権(国籍)を獲得することをおすすめします。
カナダやメキシコで市民権を獲得すると、TN-NAFTA条約ビザという比較的緩い就労ビザが使用可能になるため、アメリカ移住がしやすくなります。
TN-NAFTA条約ビザで認められる専門職一覧は、以下の通りです。
Accountant, Architect, Computer Systems Analyst, Disaster Relief Insurance Claims Adjuster, Economist, Engineer, Forester, Graphic Designer, Hotel Manager, Industrial Designer, Interior Designer, Land Surveyor, Landscape Architect, Lawyer, Librarian, Management Consultant, Mathematician, Range Manager/Range Conservationalist, Research Assistant, Scientific Technician/Technologist, Social Worker, Sylviculturist, Technical Publications Writer, Urban Planner, Medical/Allied Professional, Vocational Counsellor, Scientist, Teacher
引用:『TN – NAFTA条約ビザ』
カナダやメキシコはアメリカに比べて断然ビザが取得しやすく、また市民権の申請条件も比較的緩いです。
特にカナダには、30歳以下であればほぼ誰でも申請できる「ワーキングホリデービザ」があるため、海外移住先としてかなりおすすめです。
>>>『カナダでITエンジニアが永住権を取得するための戦略3選【年収150万円アップ】』
カナダの市民権の申請条件は、「過去5年間のうち1,095日以上をカナダに滞在しているカナダ永住権保持者」です。
※ただし、カナダもメキシコも二重国籍は原則認められていないため、日本の国籍を放棄することになります。くれぐれもご注意ください。
参考:『カナダ市民権(国籍)』
参考:『在メキシコ日本国大使館』
国籍を獲得するまで至らなくても、カナダでのアメリカ企業での勤務経験等は高く評価されるため、英語圏で勤務経験を積むことはプラスになるでしょう。
日系企業の現地採用はあまりおすすめできない理由
中にはアメリカの日系企業の現地採用枠を狙う方もいらっしゃるかと思いますが、待遇面やキャリアアップの観点からあまりおすすめできません。
日本人現地採用の一般的な待遇は、以下の通りです。
職種 | 平均給与 |
---|---|
営業 | 新卒 USD 40,000~55, 000 , 経験者 USD 50,000 ~ 65,000 専門知識を要する営業 USD 60,000~ 100,000 管理職レベル USD 70,000~ 100,000+ . これに加え、会社規定のコミッション・ボーナス制度(企業による) |
一般事務 | USD 35,000~50,000+ |
経理 | USD 40,000~60,000+ |
技術者 | USD 60,000~(技術者の種類と経験による) |
管理職 | USD 60,000~ 100,000+ |
働き方が日本気質であったり、ビザが取得できる代わりに労働環境がブラックであったりする可能性が高いです。
アメリカは専門的な技術のある人間を求めているため、まずは焦らずスキルを身につけるのが懸命かと思います。
以上の話を簡単に図にまとめると、以下のようになります。
引用:『シリコンバレーで働くエンジニアに1番必要な“アレ”の話』
アメリカには他にも
- 投資家ビザ
- 起業ビザ
- 結婚ビザ
など様々なビザがありますが、多くの人にとって再現性が低いため、ここでは説明を割愛させていただきます。
まとめ:アメリカ移住は難しい!まずは日本で実務経験を積もう。
- F1ビザからOPTを使い、H1Bビザを取得する
- 日本で2年以上実務経験を積む &大学院でCSを取得する
- 駐在員としてアメリカに海外出張する
- カナダやメキシコで市民権(国籍)を獲得する
アメリカでビザを取得し永住権を獲得するのは、想像以上に大変です。
アメリカへのこだわりが少ないのであれば、比較的移住しやすいカナダやオーストラリア、ヨーロッパ圏の国も検討してみてはいかがでしょうか。
どちらにせよ、日本でITエンジニアとして実務経験を積むことは重要です。
未経験からITエンジニアを目指したい方は、ぜひUZUZ ITなどの転職サポートを活用してみてください。
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