こんにちは、ウチダです。
皆さんは、「ゲーム理論」という学問を知っていますか?
というのも、
[ふきだし set=”悩む男性”]ゲーム理論って言葉だけ聞くけど、何のことかよく分かっていない。とりあえずさわりだけでも知りたい![/ふきだし]
[ふきだし set=”悩む女性”]「囚人のジレンマ」や「ミニマックス戦略」は聞いたことがあるわ!あと、ゲーム理論は恋愛に使えるっていうけど、それって本当なの…?[/ふきだし]
こういう疑問を持つ方は意外にも多いと思います。
よって本記事では、ゲーム理論の最も有名な代表例「囚人のジレンマ」を使って、ミニマックス戦略やナッシュ均衡など、いくつかの例や問題を通して
- 東北大学理学部数学科卒業
- 教員採用試験1発合格 → 高校教諭経験アリ
の僕がわかりやすく解説します。
※目次2-2と目次2-3は、割と数学的要素が強めです。ストーリーや面白い事例だけ知りたいという方は飛ばしてもらっても構いません。
ゲーム理論とは
まず「ゲーム理論とは何か」についてざっくり説明しますと、「日常に潜んだゲーム(対戦)に勝つための体系化された理論」です。
一口にゲームと言いましても、いろんな種類があります。
たとえば「投資」や「戦争」や「選挙」のように、一方が勝てばもう一方が負けるゲームのことを“ゼロサムゲーム”と言います。
それぞれの利益を足すと $0$ になる、という意味合いですね。
それに対し、「外交関係」や「恋愛」のように、お互いがWin-Winの関係を築こうとするゲームも存在します。
実はゲームというのは、「ルールが必ずしも決まっていない」ことが多くあり、そのルールの穴をつくことで自分の立場を有利にしたり、またルールを無理やり変えることで置かれている不利な状況を打開したり…というようなことがよくあります。
ですので、この記事ではゲーム的に考えるための第一歩として
- ミニマックス戦略とは
- 囚人のジレンマとは
- 恋愛が上手くいくためには
この $3$ つに絞って解説していきたいと思います。
[ふきだし set=”ウチダ”]ちょっと長いですけど、順を追って解説したほうがわかりやすいかと思い、このような文章構成にしました。読んでてツラい箇所は読み飛ばしていただいて結構ですので、ぜひ最後までご覧いただきたく思います。[/ふきだし]
ゲーム理論の基本【ミニマックス戦略とは】
まずゲーム理論の基本と言ってもいい「ミニマックス戦略」について見ていきましょう。
“ミニマックス”という言葉からも分かるように、「マックス(最大)をミニ(最小)にする」といいう意味です。
では何の最大を最小化するのか。
そう、「損失」です。
つまり、「負けを小さくし、トータルで勝ちを目指す戦法」と言えるでしょう。
でも、これだけ聞くと、なんかすっごい消極的な戦略だな~と感じませんか?
そうなんです。ミニマックス戦略をただただ使えばいいというわけでもないんですね。
それを具体的な例を通して見ていきましょう。
ミニマックス戦略の例:キックボクシング
ここではキックボクシングを例に考えます。
図をご覧ください。

$+$ とか $-$ とかは、$A$ さんから見た損得なので、$B$ さんから見た表は符号が逆になります。
さて、この表を見て、$A$ さんはパンチ、キック果たしてどちらを選択するべきでしょうか。
よくお考え下さい。
↓↓↓
【解説】
$A$ さんは、「常にパンチを選択し続けるべき」です。
なぜなら、ミニマックス戦略で考えれば、パンチを選択した場合の損失はないが、キックを選択した場合の最大の損失は $-50$ だからです。
(解説終了)
この問題は正答率が高いかと思います。
だって、$A$ さんはパンチさえ繰り出していれば必ず利益があるのですから。
こういう、どう転んでも $A$ さんが優位である状況のことを「絶対優位」といい、ゲーム的には $A$ さんは必勝するので、面白みはないです。
現実的でもないですしね。
では、こんな状況はいかがでしょう。

…面白くなってまいりました!!
この場合だと、さっきより $A$ さんはパンチを選択しづらくなってますね。
なぜなら、もし自分がパンチを選択し続けた場合、$B$ さんがキックを選択し続けると、損失 $-1$ をずっと被り続けることになるからです。
しかし、この状況においても、キックを選択するリスクを考えればパンチを選択したほうが賢い判断だと言えます。
なぜならこの場合においても、ミニマックス戦略で考えれば、パンチを選択した場合の最大の損失は $-1$ ですが、キックを選択した場合の最大の損失は $-50$ だからです。
ここで、こんな疑問が浮かぶはずです。
だってそうですよね。
$A$ さんがミニマックス戦略に基づいて考えた場合、最適な攻撃手段は「パンチ」になりますから、もし相手( $B$ さん)が「キック」をずーっと使ってきた場合、負けてしまいます。
ですがよ~く考えてください。
$B$ さんも同じことを考えているとは思いませんか?
ここまで $A$ さん視点でずっと考えてきましたが、$B$ さんも人間なので、同じく勝つためにはどうしたらよいか考えるはずです。
すると、仮に $B$ さんもミニマックス戦略で考えた場合、$A$ さん視点の表において $+$ の部分が $B$ さんの損失になるわけなので、キックは選択しづらくなります。
[ふきだし set=”ウチダ”]なぜなら、$B$ さんがパンチを選択した場合の最大の損失は $-5$ で、キックを選択した場合の最大の損失は $-10$ だからですね。[/ふきだし]
さて、話がややこしくなってまいりました。
このように、単純なミニマックス戦略だと、何が正しい選択なのか分からなくなってきます。
そして、終いには「勝負は時の運だ」と天命に任せてしまうのです。
いや、ちょっと待ってください!!
天命に任せるにはまだ早すぎます!!
というのも、今までの議論には大切なことが抜けています。
それは「人間はパンチやキックの配分をコントロールできる」ということです。
つまり、「 $100 (%)$ パンチ」or「 $100 (%)$ キック」ではなく、例えば$$パンチ:キック=3:1$$のように、「ある割合に基づいて二つを混ぜた戦略を取れば、より高度な戦いができるのではないか?」ということです。
ではこの場合、どのような配分でパンチとキックを混ぜていくのが良いのでしょうか。
キックボクシングの混合戦略
先ほど例を挙げましたが、$$パンチ:キック=3:1$$のように、複数の行動を確率的に混ぜた戦略のことを「混合戦略」または「確率戦略」と言います。
ここで、もう一つ重要な概念である「最適確率」についてまとめます。
最適確率というのは、一般に「相手がどのような戦略をとっても一定の値をとる」確率のことを指します。また、そのような確率を取る戦略のことを「最適戦略」と呼ぶことにします。
ではここで、もし仮に $A$ さんが$$パンチ:キック=3:1$$の戦略を取ったとき、それが最適戦略であるかについて考えてみましょう。
最適戦略であるか判断するには、極端な場合を考えると分かりやすいです。
ⅰ) $B$ さんがずっとパンチし続けてきた場合
これは、$\frac{3}{4}$ の確率で「パンチーパンチ」、$\frac{1}{4}$ の確率で「キックーパンチ」となるので、$$\frac{3}{4}×(+5)+\frac{1}{4}×(-50)=-\frac{35}{4}$$となり、$A$ さんが不利ですね。
ⅱ) $B$ さんがずっとキックし続けてきた場合
これは、$\frac{3}{4}$ の確率で「パンチーキック」、$\frac{1}{4}$ の確率で「キックーキック」となるので、$$\frac{3}{4}×(-1)+\frac{1}{4}×(+10)=\frac{7}{4}$$となり、$A$ さんが有利ですね。
…よって、$3:1$ の割合で混合戦略をとると、相手の作戦によって有利不利がついてしまうため、どうやら最適戦略ではないようです。
では、この最適戦略はどのようにして求めたらいいのでしょうか。
答えは以下の図にあります。

この図においても極端な例を考え、グラフを書いています。
例えば下側の線分のグラフの両端を見てみると、$(0,-50),(100,5)$ ですが、これは「 $B$ さんがパンチを選択した場合の点数表」とリンクしてますね!
点数表では $2$ つのグラフにおける両端の座標、つまり $4$ つの点の座標しか表せていません。
しかし、このように点と点を結んだグラフを書くことで、確率的に議論することが出来ます!
※このようなゼロサムゲームにおける確率の期待値は直線的に考えることが出来ますが、詳しくは後述の補足にて。
そして、この $2$ つの線分の交点こそ、今回求めたい最適確率になります。
一応解答を載せておきます。
【 $A$ さんの解答】
$2$ つの直線の方程式を求めると、$$y=\frac{55}{100}x-50 ……①$$$$y=-\frac{11}{100}x+10 ……②$$である。
①、②の連立方程式を解くと、$$x=\frac{10}{11}×100,y=0$$
よって、$A$ さんの取るべき最適戦略は$$パンチ:キック=10:1$$であり、その時の点数の期待値は $0$ 、つまり互角である。
(解答終了)
また、もちろん同じようにして $B$ さんの取るべき最適戦略を求めることもできます。
【 $B$ さんの解答】

$B$ さんの視点でグラフを書くと上のようになる。
$2$ つの直線の方程式を求めると、$$y=\frac{60}{100}x-10 ……①$$$$y=-\frac{6}{100}x+1 ……②$$である。
①、②の連立方程式を解くと、$$x=\frac{1}{6}×100,y=0$$
よって、$A$ さんの取るべき最適戦略は$$パンチ:キック=1:5$$であり、その時の点数の期待値は $0$ 、つまり互角である。
(解答終了)
以上の話をまとめると、$A$ さんはパンチとキックを $10:1$ の割合で出し、$B$ さんはパンチとキックを $1:5$ の割合で出せば、お互いの期待値は $0$ なので、いつも手に汗握る展開が期待できる、ということですね!
※最適戦略は「相手の作戦によらず一定の値をとる」ため、$A$ さん $B$ さんどちらか一方しか最適戦略を取らなくても成り立ちます。
最適戦略はホントに面白くて、このキックボクシングの例のように「 $A$、$B$ のそれぞれのパンチとキックの割合は必ずしも一致しない」こともあります。
このように、直感的に理解しづらい分野においても、数学は僕らを助けてくれるので、数学っていいな~と僕は感じますね♪
補足:なぜ2つの線分の交点が最適戦略になるのか
今、最適戦略において $A$ さんがパンチを出す確率を $p$ (%) とおくと、キックを出す確率は $100-p$ (%) ですね。
このとき、仮に $B$ さんが $100$ (%)パンチを選択した場合、$A$ さんの点数の期待値は$$5p+(-50)(100-p)=55p-5000$$になります。
また、仮に $B$ さんが $100$ (%)キックを選択した場合、$A$ さんの点数の期待値は$$-p+10(100-p)=-11p+1000$$になります。
ここで、それぞれの点数の期待値を $100$ で割ると、$\frac{55}{100}p-50$ と $-\frac{11}{100}p+10$ になり、最適確率の定義を思い出すと、常に点数の期待値は一定でなければならないため、$$\frac{55}{100}p-50=\frac{11}{100}p+10$$
が成り立ちます。
よって、連立方程式$$\left\{\begin{array}{ll}y=\frac{55}{100}x-50\\y=-\frac{11}{100}x+10\end{array}\right.$$を解くことと同値であることが分かりました。
こうしてみると、別に両端の点でなくても、ある $2$ つの点の座標が分かれば直線は $1$ つに決まるので同様に求められることがわかりますね。
他の例「じゃんけんグリコゲーム」
さて、ここまで見てきたキックボクシングの例ですが、いかがだったでしょうか。
最適戦略を取ったときの期待値が $0$ になったため、常に手に汗握る展開のゲームができました。
※期待値が $0$ にならない場合はいくらでもあります。
この章では、もっと身近な例である「じゃんけんグリコゲーム」について考察していきましょう。
問題. A,B の二人がじゃんけんをして,グーで勝てば $3$ 歩,チョキで勝てば $6$ 歩,パーで勝てば $6$ 歩進む遊びをしている.$1$ 回のじゃんけんで A の進む歩数から B の進む歩数を引いた値の期待値を $E$ とする.
(1) B がグー,チョキ,パーを出す確率がすべて等しいとする.A がどのような確率で,グー,チョキ,パーを出すとき,$E$ の値は最大となるか.
(2) B がグー,チョキ,パーを出す確率の比が $a : b : c$ であるとする.A がどのような確率でグー,チョキ,パーを出すならば,任意の $a,b,c$ に対し,$E = 0$ となるか.
※1992年 東京大学前期入試問題 第6問 改題
なんとビックリ、あの東京大学の入試問題として出題されたこともあります。
この問題の (2) が最適確率を求める問題になっていますね。
先のキックボクシングの例とほぼ同じであるため解答は省略しますが、ようは$$グー:チョキ:パー=p:q:1-(p+q)$$みたいなふうに置いて、あとは$$(a,b,c)=(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)$$のように、$3$ パターンの期待値を考え、それらがすべて等しいという方程式を作れば解けます。
「パンチとキック」という選択肢が「グーとチョキとパー」の $3$ つに変わっただけですからね。
ちなみに答えだけ載せておきますと、(1)は「チョキ $100 (%)$ が最強」となり、(2)は$$グー:チョキ:パー=2:2:1$$となります。
ですので、もしあなたが小さい子供とじゃんけんグリコゲームをする際には、子供がどんな戦略をとっても接戦の勝負を繰り広げるために、ぜひ「 $2:2:1$ 」の割合で手を出してみて下さい^^
[ふきだし set=”ウチダ”]間違っても「チョキ $100 (%)$ 」はダメですよ!子供が対抗策を知らなければ泣いてしまいます(´;ω;`)[/ふきだし]
ゲーム理論の代表例【囚人のジレンマとは】
では次の話題「囚人のジレンマ」に移りましょうか。
今まで見てきた通り、ゲーム理論の基本は「ミニマックス戦略」です。
また、その発展形として「混合戦略」というものがありましたね。
ではここで、ミニマックス戦略が上手く働かない、ちょっと変わった面白い例について、一緒に考察していきましょう。
ナッシュ均衡とパレート最適

さて、あなたならこの問題、どう考えますか?
少しじっくり考えてみて下さい。
↓↓↓
【一応の解答】
まず、二人にとっての最適解は「黙秘ー黙秘」ですね。
しかし、そこで $A$、$B$ どちらかが裏切り「自白」を選ぶと、裏切った方は得をし、裏切られた方は大損です。
ですので、それだけは何としても避けたいはずです。
そこで、今まで考えてきた「ミニマックス戦略」を使ってみます。
すると、黙秘した場合最大で $9$ 年の懲役ですが、自白した場合最大で $5$ 年の懲役です。
なので、ミニマックス戦略に基づいて考えると、「自白」が最も合理的な選択となります。
また、相棒も同じ考え方をしているはずだと仮定します。
すると、相棒もやっぱり「自白」を選択するでしょう。
…あら不思議。
「自白ー自白」となり、結果二人は「黙秘ー黙秘」より $3$ 年も多く懲役罰を受けることとなってしまいましたとさ。。
(解答終了)
ということで、二人が最も合理的な選択をすると、二人にとって望ましくない結果になってしまうので、ジレンマと呼ばれます。
さて、一度「自白ー自白」の考えが固まってしまうと、そこから抜け出すのは困難です。
なぜなら、もしそこで自分だけが「黙秘」に選択を変えた場合、「黙秘ー自白」となり、相棒にとっては最高ですが自分にとっては最悪の結果となってしまうからです。
このように、自分が選択を変えても自分の得にならないような均衡状態のことを「ナッシュ均衡」と言います。
また、「黙秘ー黙秘」のように、相手を犠牲にする選択以外でこれ以上望ましい解がないような状態のことを「パレート最適」と言います。
今まで相棒としてやってきたのです。
どうせなら二人には「黙秘ー黙秘」の選択を取っていただきたい…
ということで、次の章から囚人のジレンマに対する具体的な解決策を考察していきます。
同時ゲームを交互ゲーム化する
今二人の囚人 $A$、$B$ にとって不利なのが「相手の選択が分からない」という状況です。
これだから二人は疑心暗鬼に陥るのですよね。
じゃあ、その「選択が分からない」という状況を取っ払っちまえばいい。
こういう発想で出てくるのが「同時ゲームの交互ゲーム化」です!
同時ゲームと交互ゲームの違いは「意思決定を同時に行うか交互に行うか」だけです。
例を挙げると、
- 同時ゲーム…じゃんけんなど
- 交互ゲーム…将棋など
こんな感じです。
ではここでいう「交互ゲーム化」というのは、もちろん自白するかどうかの意思決定のタイミングをずらすことを示しますが、果たしてそんなことは可能なのでしょうか。
…可能です。
相棒に一言、あらかじめこう言っておけばいいのです。
「お前がもし自白をしたら、俺も自白するからな」と。
そう言われた相棒としては、裏切るメリットを感じづらくなります。
「裏切ったら裏切り返される」と恐怖を感じるからです。
このように「一言脅しておく」というのは、聞こえは悪いですが、実は二人の幸せのためには一番良い行動だということもあるのですね。
さて、この「脅し戦法」。
実はもっともっと使い道がある、素晴らしい戦法なんです!
ちょっと見てみましょうか。
最強戦術「しっぺ返し」
問. 囚人のジレンマを $1$ 対 $1$ のゲームとして、$1$ セット $10$ ラウンドで複数回行うことになりました。
このとき、あなたならどういう戦略を取りますか?
中々意識はしづらいですが、実生活においても囚人のジレンマのようなゲームは起こっています。
たとえば「値下げ競争」や「営業」など、ビジネスの世界では顕著だと言えるでしょう。
裏切った方が得をするケースです。「戦争」などもそうではないでしょうか。
よって、「囚人のジレンマ競技会」を開催し、リーグ戦方式で総合点を競ってみることにしました。
これは実際に起こった出来事で、アメリカの政治家アクセルロッドによる呼びかけでこのような競技会が開催されたことがあります。
そして、その競技会では様々な戦略をとるプログラムが参加したのですが、2度も同じ戦略を取るプログラムが優勝したのです!!
さあ、いったいどんなプログラムだと思いますか?
答えを発表しましょう。
↓↓↓
【解答】
答えは「しっぺ返し戦略」である。
ここで言うしっぺ返し戦略とは、
- 最初に「協調」の手を出す。
- 相手が「協調」してきた場合、次の手も「協調」の手を選ぶが、相手が「裏切り」をしてきた場合は、次の手で直ちに「裏切り」の手を選ぶ。
つまり、「基本は協調の姿勢を取るが、相手が裏切ってきたら裏切り返す」という戦略である。
日本では別名”応報戦略”とも呼ばれる。
(解答終了)
いかがでしょう。
すごいシンプルですよね。
このしっぺ返し戦略のスゴイところはそのシンプルさだけでなく、なんとほとんどのプログラムに負けてしまったにも関わらず総合点ではトップを取ったことでしょう。
ここら辺が、結局ミニマックス戦略と通じているのかな、と僕は感じます。
損失を抑え、全体の利益を上げているという印象ですね。
ただこのしっぺ返しって、実生活にも結構当てはまることがありませんか?
人間社会には協力の原理が必要不可欠でしょう。
しかし、時に人は人を裏切りますよね。
その場合、裏切った側には何かしらの罰が必要なのです。
そのために法や警察などは必要ですが、「自分の身は自分で守る」つまり「自衛の手段」を持っておくことも大切だと思います。
その自衛の手段こそ、「即座にやり返す」という行為なのではないでしょうか。
ですから、よくいじめ問題などに対して、「やり返したらやった側と同じだ」とかいう意見が飛び交うこともありますが、それは違うんじゃないかと僕は思うんですよね。
やっぱりいじめた側にはいじめられた側の痛みを教えてあげる必要があると思うんですよ。
そうすることで、「いじめはよくない」とお互い感じることが出来たら、もっと世界は平和になるのになあ…なんて考えたりしますね。
…話を戻すと、とにかくしっぺ返し戦略は「勝てはしないけど負けが小さい」という意味で最強の戦略の一つですし、人間社会においても応用範囲が広い戦略であると言えるでしょう。
[ふきだし set=”ウチダ”]しかし、2004年に開催された大会では「主人と奴隷戦略」が優勝しています。また、このしっぺ返し戦略は囚人のジレンマにおいて強かっただけで、どんなゲームにおいても有効だとは言えません。ゲーム理論の専門家の中では批判も多いため、安易に乱用することはオススメしません。[/ふきだし]
ゲーム理論で見る恋愛とは
さて、それでは最後に「恋愛」について、ゲーム理論的に考えてみるとどうなるのか、少し見ていきましょうか^^
ただ、今から書くことはあくまで僕個人の見解によるところが大きいため、もし実際に応用する場合はよく考えてから使ってください。
応用した結果何か不都合が起きたとしても、僕はそれに対して責任を負うことはできませんので、そこだけはあらかじめご了承ください。
ではまいります。
幸せな結婚
皆さんは結婚についてどのような考えをお持ちでしょうか。
「まだ考えていない」や「別に結婚しなくてもいい」と言う方も多くいらっしゃるかとは思いますが、もし結婚しなければならないとしたら、一番好きな人と結婚したいですよね。
実は、数学的には「何番目の人と結婚するのが確率的に最も良いか」が証明されています。
この問題は結構有名で、「秘書問題」「お見合い問題」「結婚問題」「最良選択問題」などいろんな呼び名があります。
[ふきだし set=”ウチダ”]ここで解説すると長くなってしまいますので、参考文献を載せておきます。興味のある方は「秘書問題とその解法」をご覧ください。[/ふきだし]
もう一つ、結婚について見落としがちな罠が存在します。
それは、「相手も自分と同じぐらい好きでいるかどうか」です。
二人とも相手のことを $120$ %好きであれば全く問題はないんですけど、そう上手くいかないのが人生ですよね。
では、ここでもゲーム理論を用いてみましょう。
囚人のジレンマで見たように、「同時ゲームを交互ゲーム化」するのです。
たとえば、プロポーズをする際に「すぐに返事がほしい」と相手に決断を迫るやり方があります。
これはなぜ有効かというと、相手にミニマックス戦略のような思考が働くからです。
つまり相手に
[ふきだし set=”悩む女性”]もっといい人がいるかもしれないけど、ここで断ったらこの人を失ってしまう…それは私にとって損が大きい![/ふきだし]
と自覚させる戦略なんですね。
これは恋愛よりもビジネスシーンにおいてよく目にします。
テレビショッピングで「残り〇〇名」って出ますけど、正しくアレのことです。
このように、同時ゲームを交互ゲーム化することによって、自分にとっては最良の結果であり、相手にとっても良い結果をもたらすことがあるのです。
まあ、個人的にはこういう戦略は取りたくないな~とは感じます。
しかし、こういう心理が働くというのは現実であり、知っておくことに損はないと思います。
大事なのは“使い方”です。
この心理をうまく使えばお互いWin-Winになりますし、逆にこういう心理を利用して相手から金を巻き上げようとする連中もいるでしょう。例えばオレオレ詐欺とかですね。
ではなぜこのような搾取が起きてしまうのか。
それは我々が無知だからです。知識があれば未然に防げるものはたくさんあるのです。
ですから、「なんか物を買ってしまう…」とか「騙されやすい…」とかそういう悩みを抱えている方こそ勉強して、ぜひ正しいかつ面白い知識を身に付けてみて下さい。
きっと世界の見え方が変わると思いますよ♪
浮気させないために
ではもう一つ。「浮気」について考えてみましょう。
皆さん、浮気についてどういうイメージをお持ちでしょうか。
おそらく、いいイメージをお持ちの方はほとんどいないかと思います。
しかし、世の中では浮気が原因で離婚してしまう夫婦が大勢存在します。
いったい何故なのでしょうか。
理由は簡単で「浮気はバレなければやってる方は楽しいから」だと僕は考えます。
みんな頭ではわかっているはずなのに、心の奥から込み上げてくる欲望には勝てないのです。
しかし、浮気はバレてしまったらアウトなので、やっぱりオススメしません。
では、夫婦間で浮気を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
答えは囚人のジレンマにあると僕は考えます。
下の表をご覧ください。

一概には言えませんが、一般的に考えられる幸福度表を作ってみました。
※もちろん、男女逆の場合もあるかとは思いますが、生物的に見るとこれで適切だと思うので、今回はこの表を採用させていただきます。
こうしてみると分かりますが、恋愛は男が有利なんです!!
でもやっぱり、「浮気しないー旦那を信じる」ここに落ち着きたいですよね。
そのためにはどうするか…しっぺ返し戦略を思い出してください。
「もしアンタが浮気なんかしようものなら、わたしも外で色んな男と遊ぶからね^^」
こう先に釘を刺しておけばいいのです。お~こえぇ。
別に文言はこれでなくてもいいですし、実際言う必要があるかどうかはわかりませんが、ようは「浮気は絶対に許さない」というスタンスを保ちつつ「あなたのことは信じる」と基本的には協力の姿勢を示せばいいと思います。
他の例を見てみましょう。
「機会は泥棒を作る」ということわざがあります。
これは、「人はチャンスがあったら泥棒にもなり得るから気をつけよ」という意味を持つ自戒の言葉ですね。
ご存じかもしれませんが、空き巣が入る家の多くはカーテンがない家です。
これはなぜかというと、「カーテンがない」ということはつまり「防犯意識の低さを物語っている」からです。
ですから、「防犯意識がある!」と泥棒に示すことさえできれば、盗みを働くことへのリスクを感じさせることが出来るので、結果防犯につながるのです。
※日中に濃い色のカーテンを閉め切ることは逆に泥棒の犯行を隠す障害になってしまいます。ご注意を!!
まあ、このサイトは防犯情報サイトではないので、詳しくは自分で調べることをオススメします。
まあつまりですよ。
誰でも盗みを働く可能性だって、浮気をする可能性だってあるわけですよ。
だから、何の根拠もなしに相手のことを信じるというのは、一種おごりのようなものであると私は感じるのです。
だってそれは…「自分(相手)だけは完ぺきな人間だ」と豪語しているようなものですから。
話をまとめます。
浮気も一種の泥棒だと考えれば、ただ信じていればいいというわけでもないと思います。
しかし、疑ってばかりですとお互い疲れますし、何せ幸せではありません。
ですので、やはり基本は信じるという姿勢を取り、でも「浮気は絶対にダメだ」というスタンスだけは曲げないことを僕はオススメします。
ここまでの話は今の僕の考え方なので、別に参考にしなくても全然OKです!(笑)
ただ、「面白いな~」と少しでも感じていただけたのであれば、僕は嬉しいです。
ゲーム理論に関するまとめ
かなりボリューミーな内容でしたが、これでもまだまだ足りないぐらいゲーム理論の奥は深いです。
僕自身ゲーム理論を専門的に勉強したことはほぼ皆無なので、これからもっと吸収していこうとは思いますが、とりあえず核となるであろう基本事項については解説できたつもりです。
特に、第 $2$ 章で扱った「最適確率の導出」は「ゲーム理論の基本定理」とも呼ばれていて、ゲーム理論の根幹をなす部分ですので、ぜひ勉強してみることをオススメします♪
マンガで学べるものもありますので、ぜひ調べてみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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コメント一覧 (6件)
高1 女子 です!
囚人のジレンマという言葉が分からず、語彙調べをしていたときこのサイトを見つけました!
1番分かりやすい説明でしたし、他にもいろいろなゲームの望み方があるのだなと思いました。
長くて読む前は力みましたが、あっという間にこのコメントの空欄にたどり着きました。
ノートに必要なことを書き留めました!
久しぶりワクワクするサイトに出会った気がします。ありがとうございました。
主さんの優しい考え方も好きです笑
菜々子さん
嬉しいコメントありがとうございます!
高1で囚人のジレンマを調べているとは…勉強熱心ですね!
ぜひこのサイトを活用していただいて、ご自身の学習に役立てていただければ幸いです。
引き続き『遊ぶ数学』をよろしくお願いします!
浮気の表の、
(男:浮気しない)、(女:浮気を見抜く)
の項目が矛盾している。
「浮気を見抜く」ではなく「浮気を疑う」にすべきだったのでは?
しかし、それでもこの表では「恋愛は男有利」は示せないと思う。
何故なら浮気してバレたら損得値が浮気しなかった時よりも低くなり、「片方の選択を取った方が絶対に得する」といった囚人のジレンマの様にはいかないのだから。
たしかに、一方が「信じる」だったらもう一方は「疑う」でしたね。
「浮気してバレたら損得値が浮気しなかった時よりも低くなる」というのも面白い意見だと思います。
恋愛系の話は薄っぺらすぎてなんの参考にもならねぇ
なさん、コメントありがとうございます。
確かによくよく見返してみると、自分でも薄いと感じます。(笑)
今は新記事とリライトを並行して行っておりまして、この記事もリライト対象ではあります。
かなり先の話になってしまうかもしれませんが、リライトする際に参考にさせていただきたいと思います。
貴重なご意見、ありがとうございました!