こんにちは、ウチダショウマです。
今日は数学Ⅲで初めて登場する「自然対数の底 $e$ 」をもっと深く掘り下げて、
「超越数」
とはいったい何か、また $e$ や円周率 $π$ が超越数である証明を、なるべくかみ砕いて解説していきます!
(ですので、証明は厳密にではなく概要を説明いたします。あらかじめご了承ください。)
ネイピア数(自然対数の底)について知りたい!!という方は以下の記事を参考にしてください。↓↓↓
関連記事
ネイピア数eとは?なぜ定義があの形?自然対数の微分公式や極限を取る意味についてわかりやすく解説!
また、この記事では、「円積問題」という古代ギリシャの時代から存在する面白い問題や、超越数一覧も簡単ですが載せてあります!
ぜひ楽しんでいってくださいませ!♪
超越数って?
まず初めに、「代数的数」と「超越数」の定義をする必要があります。
代数的数…整数係数の方程式の解となり得る数
超越数…整数係数の方程式の解となり得ない数
…これだけではピンと来ませんね…
式で書くとややこしくなってしまうので、簡単に具体例を通しながら見ていきましょう。
例1.$2x-3=0$を解け。
ものすごく簡単ですが、一応解いてみると、
となり、解は「$\frac{3}{2}$」となりましたね。
よって、$\frac{3}{2}$という数は代数方程式の解になったので、代数的数です!
こんな感じで、有理数$\frac{q}{p}(p,qは互いに素な整数)$というのは、
$$px-q=0$$
の解になるので、有理数はすべて代数的数です。
では有理数しか代数的数がないのかというと、そんなことはありません。
次の例に移りましょう。
例2.$x^2+3x+1=0$を解け。
この2次方程式は因数分解できないので、解の公式を使って解くと、
$$x^2+3x+1=0⇔x=\frac{-3±\sqrt{5}}{2}$$
となるので、この代数方程式を解くことで得られた$\frac{-3±\sqrt{5}}{2}$は代数的数です。
「√(ルート)」にも「2乗根」だったり「3乗根」だったりいろいろありますが、そういう単純なものすべてが代数的数です。
では、今は実数の範囲で考えていましたが、これを複素数に拡張してみたらどうなるか見ていきましょう。
例3.$x^2+1=0$を解け。
この方程式は、実数の範囲では解けませんよね。
ですが、こういう方程式もどうせなら解きたいですよね。
そこで、「$i^2=-1$なる虚数単位$i$」というものを、数学Ⅱで定義しましたね。
つまり、この方程式を解くと、
と、虚数単位$i$を用いて解を表すことができました。
よって、この虚数単位$i$も代数的数です。
こうしてみていくと、こんな予想が生まれると思います。
でも実は、この予想は正しいように見えて…
ことがすでに分かっているんですね!
ま、ここら辺の話は、「有理数と無理数どっちが多いの?→無理数の方が圧倒的に多い!」といった、有理数と無理数の濃度っていうがっつり大学数学を含んでくるので、「へーそうなんだ~」ぐらいの気持ちで聞いていただければと思います。
(この事実も一部分にすぎません。本当はもっともっと複雑です。)
それでは、次の章から、具体的に超越数だとわかっているものを見ていきましょう。
超越数の一覧
代表例をバーッと挙げてみましょう。
- 自然対数の底$e$(通称ネイピア数)
- 円周率π
- $2^\sqrt{2}$(無理数乗という数も定義されています。こいつのおかげで超越数が多いのでは…?)
- $e^π$
こんなものでしょうか。
まず、一つ目の「ネイピア数$e$」ですが、これが超越数であることを証明するのが、一番最初の肝です!
ただ、この証明がいろんな研究者によって簡略化されてきたとはいえ、それでもなお複雑な計算を要します。
なので、ここではどんなふうに考えるのか、その超大まかな概略だけ解説して、他の超越数も見ていきたいと思います。
※証明の参考文献はこちら
$e$が超越数である証明手順1【積分の定義】
まず初めに、こんな積分を定義します。
$$I(t)=\int_{0}^{1}te^{t-tx}f(tx)dx$$
…はい、もうこれだけで(僕を含め)多くの人の眉にしわが寄ったかと思います。
ですので、本当に概略だけ!
この定義した積分ですが、部分積分を行うことでまあまあ簡単な式になります。
その簡単な式を用いて、次のステップに移りましょう。
$e$が超越数である証明手順2【矛盾を導く】
さて、証明方法の華、「背理法」君の登場です。
⇒参考.「背理法とは?ルート2が無理数である証明問題などの具体例をわかりやすく解説!【排中律】」
代数的数の証明は、満たすものが一つでもあればいいので具体的に考えれば簡単ですが、
超越数の場合は、満たすものが全くないことを示さなければならないので、感覚的にも大変そうですよね。
こういうときの鉄則は、やはり「代数的数であると仮定し、矛盾するから超越数である」という流れでしょう。
ですので、まずネイピア数$e$が代数的数であると仮定します。
すると、$$a_0+a_1e+a_2e^2+…+a_ne^n=0$$
といった代数方程式が一つ作れるはずです。
ここで、$$f(x)=x^{p-1}(x-1)^p(x-2)^p…(x-n)^p$$
$$J=a_0I(0)+a_1I(1)+…+a_nI(n)$$
と定義します。
あとは、ある性質を用いて矛盾を示す。
という流れになるので、最後のステップに移りましょう。
$e$が超越数である証明手順3【階乗>指数関数】
十分大きな自然数$n$に対して、
$$\lim_{n\to\infty}\frac{m^n}{n!}=0$$
が成り立つ。
ここがポイントです!
これはぜひ高校生のうちに理解しておきたいですね!
つまり、この命題が言わんとしているのは、
「nが十分大きくなっちゃったら、指数関数より階乗の方が強いよ」
ということです。
ここは高校数学の範囲なので、軽く証明したいと思います。
【証明】
$m=3$として話を進めよう。
十分大きな$n$に対して、
ここで、$$\lim_{n\to\infty}(\frac{3}{4})^{n-3}=0$$
したがって、はさみうちの原理より、命題は証明された。
(証明終了)
$n$が十分大きければ、$m$を超える数になるときが必ずやってきて、
それまでの掛け算…ある定数
それ以降の掛け算…めっちゃ多い項数の掛け算
だが、公比が1より小さいものの掛け算は0に収束するから、結果0に収束する
この命題を用いることで、証明の手順2で$f(x)$を定義しましたが、その際に出てきた$p$を十分に大きくとってあげることで、うまく矛盾が導ける!
そういった流れになっております。
(ここでは、これで証明ができたとします。超越数は本当に奥深くて、「超越数論」なる分野まで存在するぐらいなので、興味を持った方はそちらの道に進むのもありかもしれませんね。)
円周率$π$や$e^π$が超越数である証明
さて、ネイピア数$e$以外にも、円周率$π$や$e^π$が超越数であることがわかってきます。
その際必要になってくる定理があるので、2つご紹介します。
定理1(リンデマンの定理)
0でない代数的数$α$に対して、$e^α$は超越数である。
※Wikipediaより引用
定理2(ゲルフォント=シュナイダーの定理)
$α$を0,1以外の代数的数、$β$を有理数ではない代数的数としたとき、
$α^β$は超越数である。
※Wikipediaより引用
この2つの定理を用いることで証明ができるので、やってみます。
【円周率$π$が超越数である証明】
円周率$π$が代数的数であると仮定する。
すると、$iπ$も代数的数であるから、定理1より$e^{iπ}$は超越数である。
しかし、オイラーの公式より、$$e^{iπ}=-1$$
であるから、これは$-1$が代数的数であることに矛盾。
したがって、円周率$π$は超越数である。
(証明終了)
【$e^π$が超越数である証明】
オイラーの公式を用いると、次のように変形できる。
$$e^π=(e^{iπ})^{-i}=(cosπ+isinπ)^{-i}=(-1)^{-i}$$
定理2より、$(-1)^{-i}$は超越数である。
したがって、$e^π$は超越数である。
(証明終了)
ここで頻繁に登場してきた「オイラーの公式」ですが、数学Ⅲの「複素数平面」という分野で出てくる非常に重要な公式ですので、必ず押さえておきましょう。
$$e^{iθ}=cosθ+isinθ$$
ちなみに、$e^π$のことを「ゲルフォントの定数」と呼ぶこともあります。
ここまでくると完全に雑学ですね。
超越数の研究でわかったこと【円積問題】
超越数の研究で分かったことの代表例として必ず挙がってくるのが、この
「円積問題」
ではないでしょうか。
図を用いて説明します。↓↓↓
ようするに、
という、古代ギリシャから考えられてきた問題です。
この問題は長らく人々を悩ませてきたのですが、19世紀末ごろに「$π$が超越数である」ことが示されたことにより、この問題に結論が出ました。
【解答】
正方形の一辺の長さを$x$とすると、面積が$π$と等しくなることから、
$$x^2=π$$
よって、
$$x=\sqrt{π}$$
であることがわかる。
ここで、$π$が超越数であることから、$\sqrt{π}$も超越数である。
よって、解が$\sqrt{π}$となるような代数方程式は作れないため、
この作図は不可能である。
(終了)
作図というのは定規とコンパスのみを用いて行います。
これは代数的には「2次の代数方程式を解く」ことに対応しているので、
作図できないということになります。
ようするに
この作図は不可能である!
という結論が導けたわけです。
(「$\sqrt{π}$の値が求められない」という意味ではないので注意!)
超越数に関するまとめ
いかがだったでしょうか。
不思議な数「超越数」について、知見は広がったでしょうか。
実は、「$π^e$や$e+π$が超越数であるかどうか」はまだわかっていません!
紹介した例と似たような数なのに、こっちは証明が難しいんですね…
そのほかにも、まだまだ未解決なものがたくさんあります!
ですので、ぜひ興味を持った方はチャレンジしてみるのもいいかと思います。
(ただし、チャレンジした結果証明ができなくても、当サイトは一切の責任を負いませんので、ご了承ください。)
以上、ウチダショウマでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
コメント
コメント一覧 (5件)
4冊の絵本から自然数の創生過程を発掘調査する。
「こんとん」夢枕獏文 松本大洋絵
「みどりのトカゲとあかいながしかく」スティーブ・アントニー作・絵 吉上恭太訳 「ゆうかんな3びきとこわいこわいかいぶつ」スティーブ・アントニー作・絵 野口絵美訳
[もろはのつるぎ](有田川町ウエブライブラリー)
「四則演算」をふくめ、『HHNI眺望』で観る自然数は、自然数のシェーマ(符号)として『自然比矩形』の[刀形]のヒゲ付きで表記したい。
「論理哲学論考」ウィトゲンシュタイン著の
≪ 四・〇四一一 数学的多様性 ≫を[内在]するモノとして導入できないだろうか・・・
これは、離散と連続の双対性の
『離散的有理数の組み合わせによる多変数創発関数 命題Ⅱ』の帰結による、次元間の位相(アスペクト)をも包括した[眺望]となっているようだ・・・
『HHNI眺望』で観る自然数の絵本
有田川町電子書籍 「もろはのつるぎ」
御講評をお願い致します。
時間軸の数直線は、『幻のマスキングテープ』に生る。
「かおすのくにのかたなかーど」から
令和2年5月23日~6月7日 の間だけ
射水市大島絵本館で
≪…[カオス表示]の[因数積]を[内在](帯同)させる⦅自然数⦆を[群]…≫は、『創発釣り鐘体』・『尖塔コニーデ体』で[自然数のエンテレケイア]と。
数直線のイメージは、『自然比矩形』の模様の組み合わせパターンの繰り返しのようだ。
この幻のマスキングテープが手に入らないかなぁ~
『創発釣り鐘体』・『尖塔コニーデ体』((eー2)π 2.25・・・ ) を
『自然数の日』にしよう・・・
≪…『自然比矩形』…≫は、[絵本]「もろはのつるぎ」で・・・
≪…超越数…整数係数の方程式の解となり得ない数…≫を、
[認知科学]的に『身体がする数学』として,[図形]と[十進法の基での桁表示]について観て観る。
『自然比矩形』と[円]と≪…数字…≫との繋がりを[数学思考]すると、静的には[点・線・面]が[渾然一体]な[入れ子構造]になり、動的には[点・線・面]が[渾然一体]な[入れ子構造]と看做すことが出来よう。
これは、ライプニッツの理性に基づく自然と恩寵の原理の⦅モナド⦆に[同定]できよう[モノ]と観る。
なぜなら、[点・線・面]で獲得する[数学概念]は、[如何なる大きさの思考平面]においても[普遍]であるからだ。
[点・線・面]で獲得する[数学概念]は、西洋数学の成果の6つのシェーマ(符号)において『自然比矩形』では[1 0 e i ∞]を生み、[円]では[1 0 π i ∞] を生み出していると観る。
≪…超越数…≫(e π)は、十進法の基での桁表示で発見(発明)し・された言葉(数)で⦅位相化⦆(アスペクト)された[モノ]と観え、[コスモス表示]の⦅自然数⦆を授け[カオス表示]の[因数積]を[内在](帯同)させる⦅自然数⦆を[群]へと導いていると観る。