こんにちは、遊ぶ数学のウチダです。
対数の中でも特に、底が $10$ である対数のことを「常用対数」と呼びます。
常用対数の例:$\log_{10}{2}$ , $\log_{10}{3}$ , $\log_{10}{637364}$ など
なぜ常用対数だけ特別扱いをされているかと言うと、常用対数を使うことで桁数や最高位の数字を求めることができるからです。
ためしに $1$ 問、例題を解いてみます。
例題.$3^{24}$ は何桁の整数で、最高位の数字は何か求めよ。ただし、$\log_{10}{2}=0.3010$ , $\log_{10}{3}=0.4771$ とする。
【解答】
より、$3^{24}=10^{11.4504}=10^{0.4504}×10^{11}$
よって、$10^{11}≦3^{24}<10^{12}$ より、$3^{24}$ は $12$ 桁の数である。
また、$10^{0.3010}≦10^{0.4504}<10^{0.4771}$ より、$2≦10^{0.4504}<3$
したがって、$2×10^{11}≦3^{24}<3×10^{11}$ より、最高位の数字は $2$ である。
(解答終了)
出たこの問題。解答見ても何が何だかさっぱりなんですよね。
私も、意味がわからなかったから、解法丸暗記して乗り切ってます。笑
理解を伴わない暗記はすぐに忘れるぞ!!(笑)そしたら、常用対数について、元高校数学教師である僕がわかりやすく解説していくから、ぜひ参考にしてね。
常用対数を使って桁数が求まる理由
まず「なぜ常用対数を使うことで桁数が求まるのか」について、一言で結論を出します。
それは… $10$ が何個含まれているかがわかるから、です。
う~ん、これだけだとまだよくわからないです、、
大丈夫!ここから具体例も交えて解説していくから、安心して^^
桁数を調べる=10の個数を調べる
桁数を調べることというのは、$10$ の個数を調べることと同じです。
たとえば…
- 2000=2×10^3より、4桁の数。
- 65398=6.5398×10^4より、5桁の数。
- 3000000=3×10^6より、7桁の数。
以上のように、桁数を知りたいだけなら $10$ の何乗かさえ求めればOKですね。
ここで太郎君に質問。$2×10^{100}$ は何桁の数かわかる?
えっと…10が100個あるから、100桁?
惜しい!これよくやってしまいがちなんだけど、10が1個だったら2桁、10が2個だったら3桁だよね。だから10が100個だったら…?
そっか、1個ずれてるんだ!だから、100+1=101桁だ!
大正解~!!!
さて、今まで挙げた例であれば、常用対数を使うまでもなく桁数を求めることができました。
ではまた太郎君に質問です。$2^{100}$ という数。これに含まれている $10$ の個数は、パッと見わかりますか?
2を100回かけるんですよね?いや~、計算すらしたくないですね、、
そう。僕も計算したくないよ(笑)こういうときに、常用対数を使うんだ!
常用対数 $\log_{10}{2^{100}}$ はどういう意味でしょうか?
対数の定義を思い出すと…「 $10$ を $x$ 乗すると $2^{100}$ になる。$x$ はいくつ?」でしたね。
つまり、今知りたい $10^x$ の $x$ の部分が、常用対数を取ることでわかる、ということになるのです。
(対数の定義についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください)
それでは、$2^{100}$ の桁数を求める計算を実際にしてみます。
$10^n$ の不等式を作ればいいんですね!大体わかりました。ただひとつ「 $\log_{10}{2}=0.3010$ を使う。」を除いて。。
あ~(汗)これは常用対数表について説明する必要があるから、今は一旦後回しにさせてもらうね。最高位の数字のところで解説します。
わかりました!とりあえず桁数はOKです。
$a$ が $n$ 桁。
$10^{n-1}≦a<10^n$ $\iff$ $n-1≦\log_{10}{a}<n$
ちなみに、私達が普段考えている数が $10$ 進法だから、常用対数を取れば桁数がわかります。
これが $6$ 進数だったら底が $6$ の対数を取る必要がありますし、$12$ 進数だったら底が $12$ の対数を取る必要があります。
n進法・n進数について気になる方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
桁数を求めてみよう
問題1.$6^{50}$ の桁数を求めよ。ただし $\log_{10}{2}=0.3010$ , $\log_{10}{3}=0.4771$ とする。
それでは知識を定着させるために、練習問題を1問解いてみましょう。
この問題が解ければ、とりあえず桁数編はマスターしたと言っていいでしょう。
次の“最高位の数字編”に突入しましょう。
常用対数を使って最高位の数字が求まる理由
最高位の数字を求めるためには、実は先ほどの桁数の考え方が非常に活きてきます。
具体例を考えてみましょう。
- $30000=3×10^4$ :最高位の数字は $3$
- $6280000=6.28×10^6$ :最高位の数字は $6$
- $2^{10}=1024=1.024×10^3$ :最高位の数字は $1$
以上のように、~×$10^n$( $n$ は整数) を作り出すことで、最高位の数字を調べることができますね。
ん~、それはそうだけど、なんで $10^n$ の部分をわざわざ作り出すんですか?
たしかに上の例だとあんまり意味がないように思えるよね汗。では花子さんに質問です。$3^{200}$ の最高位の数字は何だと思う?
げ…3を200回もかけるんですか?ちょっとわからないですね…
このように、計算が限りなく不可能な場合、$3^{200}$ を~× $10^n$ の形にすれば、最高位の数字が求まりそうじゃない?
…あ、そっか!$10^n$ の部分は桁数を表す数だから、最高位の数字には一切関係しないのね。
素晴らしい理解力だね^^その通りで、桁数を表す部分とそうでない部分にわけることで、最高位の数字を調べることができるんだ。
一気に説明するとややこしくなるので分けましたが、つまり常用対数を使うと ~×$10^n$( $n$ は整数)の形を作り出すことができるので、桁数も最高位の数字も同時に調べることができる、というわけですね。
では試しに、$3^{200}$ の最高位の数字を求めてみましょう。
以上のように、桁数のときにうやむやにしていた「 $10^{0.42}$ 」の部分を、もう少し深く細かく考えることで、最高位の数字を求めることができるのです。
「最高位の数字がどうして求められるのか」そのロジックはわかったかな?ではさっきから説明を省略している「 $\log_{10}{2}=0.3010$ を使う。」などの条件について、解説していくよ。
常用対数表とは?
まずは花子さんに質問です。たとえば $\log_{3}{2}$ という数を小数で表すことはできる?
え…対数を小数で?どうやるかすらわかりません。
そう、難しいよね。じゃあ質問を変えて、$\log_{3}{2}$ の大体の値は求められるかな?
大体の値なら…たとえば $\sqrt{3}=1.7320508…$ なので、$0.5$ よりは大きいと言えます。
おーいいね!正解を言うと、$\log_{3}{2}=0.63092975357146…$ という数になるんだ。こんなの人力では不可能だよね。
$\log_{3}{2}$ は「 $3$ を何乗したら $2$ になるか」という意味だったので、花子さんのように $3$ の $0.5$ 乗、つまり $3$ の平方根が $2$ より小さいことから、$0.5$ よりは大きい数だという予想はできます。
しかしそれ以上の精密さを求めるとなると、到底人力では計算が不可能で、これは大学で習うマクローリン展開とか、そういう難解な知識+コンピュータが必要となってくるのです。
そこで登場するのが、コンピュータの計算結果を載せている「常用対数表」になります。
左の列は小数第一位まで、上の列は小数第二位の数字を表しているため、たとえば $\log_{10}{1.65}$ を知りたい場合、ここを見ればOKです。
さて太郎君。「 $\log_{10}{2}=0.3010$ を使う。」の意味はわかったかな?
…あ!左の列2.0、上の列0の交わるところに、.3010という表記があります!この値のことだったんですね。
素晴らしい!$\log_{10}{3}=0.4771$ も、左の列3.0、上の列0の交わるところにしっかりと.4771と表記があるね。
常用対数表の見方をしっかりマスターしておけば、どんな常用対数が登場してきたって、表を見ることで値を求めることができるようになります。
ただし、よく使うのはだいたい
- $\log_{10}{2}=0.3010$
- $\log_{10}{3}=0.4771$
以上の2つなので、常用対数表を与えられるのではなく問題文に上の値が表記されていることのほうが多いですが…(笑)
それでも、常用対数表の意味を知っているのと知らないのでは問題への理解度が全く違います!いつ常用対数表が出てきてもいいように、見方をしっかりと押さえておきましょうね。
最高位の数字を求めてみよう
問題2.$7^{100}$ の最高位の数字を求めよ。ただし、必要とあらば常用対数表を用いてよい。
知識を定着させるために、アウトプットしましょう。常用対数表は先ほど載せたものをお使いください。
さて、問題2も正解できましたか?
以上のように常用対数を大雑把に使えば桁数が、もう少し細かく使えば最高位の数字も求められます。しっかり復習しておきましょう!
常用対数についてのよくある質問2選
さて、以上が常用対数の使い方の解説でした。
では最後に、よくある質問2選についてお話して終わりにしたいと思います。
①小数の場合はどうしたらいいんですか?
例題.$\displaystyle (\frac{1}{2})^{80}$ は小数第何位に初めて0でない数字が現れるか、答えなさい。ただし $\log_{10}{2}=0.3010$ とする。
たとえばこの例題のように、桁数ではなく小数第何位を聞いてくる問題もあります。
ただこの場合も、基本的な考え方は一緒で、たとえば
- $0.2=2×10^{-1}$:小数第1位に初めて0でない数字が現れる
- $0.005=5×10^{-3}$:小数第3位に初めて0でない数字が現れる
- $0.0000828=8.28×10^{-5}$:小数第5位に初めて0でない数字が現れる
これらの例からもわかる通り、~×$10^{-n}$( $n$ は自然数)の形を作ることで求めることができます。
それじゃ、例題の $\displaystyle (\frac{1}{2})^{80}$ の計算をやってみよう。
よって、$\displaystyle (\frac{1}{2})^{80}=10^{-24.08}$ なので、
$\displaystyle 10^{-25}≦(\frac{1}{2})^{80}<10^{-24}$
さて、不等式が作れたね。それじゃ太郎君に質問。答えは何でしょう?
桁数のときと同じように、左側の数字に $+1$ すればいいんですよね!なので、$-25+1=-24$ だから、小数第24位ですか?
実は小数の場合は $+1$ しなくていいんだ。だから答えは小数第25位。ここ引っかかりやすいからめっちゃ注意!!
たとえば桁数の場合は、$10=10^1$ というふうに桁数と○乗の部分の数が $1$ ずれていましたが、今回は $0.1=10^{-1}$ からわかる通り、小数第何位と○乗の部分は一致しているので、+1をしてしまうと不正解になります。
これは覚えておいてもいいですが、もしわからなくなったときには簡単な例を思い浮かべて、+1するべきか否か、判断するようにしてください。
$x$ は小数第 $n$ 位に初めて $0$ でない数字が現れる $\iff$ $10^{-n}≦x<10^{-n+1}$
②一の位の数や真ん中の位の数はどうやれば求まりますか?
今回常用対数を使って、桁数と最高位の数字を求めることができました。
では一の位の数や、間に挟まれている真ん中の数は、一体どうすれば求めることができるでしょうか?
結論、一の位の数は合同式を使えば求まります。ただ真ん中の数は実際に計算してみないとわかりません。
一の位の数とは、それすなわち「 $10$ で割ったときの余り」に等しいため、mod10を考えることで求めることができます。
一方で、一の位と最高位の数字に挟まれている真ん中の数たちは、そういう特徴がないため、実際に計算してみるしかありません。
以上の話を、図にまとめましたのでご参考ください。
まとめ:常用対数の意味をよく理解し、桁数・最高位の数字を求められるようになろう
常用対数は意味さえ理解できれば、それほど難しい概念ではなかったですね。本記事の内容を復習しましょう。
常用対数の学習が終われば、とりあえず指数関数・対数関数の分野はマスターしたと言っていいでしょう!お疲れさまでした。
指数関数・対数関数のまとめ記事を作成しましたので、こちらの記事から苦手な部分の勉強にお役立てください。
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コメント一覧 (2件)
初めから始めるシリーズみたいでわかりやすかったです。
はじはじは少し意識してブログを作っていたので、そう仰っていただけるととても嬉しいです!
ありがとうございます!