こんにちは、遊ぶ数学のウチダです。
対数とは、 $a$ を $x$ 乗したら $b$ になるときの $x$ に当たる部分の数を指します。
たとえば $2$ を $3$ 乗したら $8$ になるので、これを対数を使って表すと以下のようになります。
対数は英語で「logarithm」なので、その頭文字3つを取って log(ログ) と表します。
う~ん、なんか指数まではついていけてたんだけど、対数の意味がよくわからないんだよなぁ…。
$2^3=8$ はわかりやすいけど、$\log_2 {8}=3$ は頭に入ってきづらいよね。
ということで本記事では、対数logの意味や必要性、公式や指数との関係性について、元高校数学教員の僕がわかりやすく解説していきます。
指数と対数の関係って?本質的に同じってどういうこと?
先程の例で見たように、「 $2$ を $3$ 乗したら $8$ になる」ということを
- $2^3=8$ と表せば指数
- $\log_2 { 8 }=3$ と表せば対数
以上を踏まえると、指数と対数は本質的には同じことを言っていることになります。
本質的に同じってどういうことですか?
「$a$ を $x$ 乗したら $b$ になる。」指数も対数もこの式から生まれた数だよね。表現の仕方が違うだけってことだよ^^
$a^x=b$ | $x=\log_a{b}$ | ||
---|---|---|---|
$a$ | 底 | 底 | 同じ |
$b$ | 真数 | 真数 | 同じ |
$x$ | 指数 | 対数 | ←ここだけ違う!! |
$a$ のことを「底」、$b$ のことを「真数」と表現するのは、指数でも対数でも変わりません。
しかし $x$ だけは
- $a^x=b$ → $x$ は指数
- $\log_a{b}=x$ → $x$ は対数
というふうに、呼び方が変わるので注意しましょう。
ここで指数のときは聞かなかった「真数」という言葉が初登場するね。対数では真数が複雑に絡んでくる問題も数多く出題されるから、まずは言葉だけでも覚えておきましょう。
$0<a<1$ , $1<a$ のとき、$b>0$ に対して $a^x=b$ を満たす $x$ はただ一つに定まる。
この $x$ を「 $a$ を底とする $b$ の対数」といい、$\log_a { b }$ と記す。
指数と対数の関係・対数の基本的な性質
$0<a<1$ , $1<a$ , $b>0$ のとき、次が成り立つ。
$a^x=b \ \iff \ \log_a{b}=x$
先ほど解説した「指数と対数の関係は本質的に同じ」を式として表すと、↑のようになります。
「何にフォーカスを当てているかの違い」とも捉えられますね。
指数は何乗かした数、つまり $b$ に。対数は何乗の部分、つまり $x$ にフォーカスを当てているということだね。
対数は指数と本質的に同じなので、指数で成り立つ性質はもちろん満たします。
まず押さえておきたいのは、次の $3$ つの性質です。
- $\log_a{a^x}=x$
- $\log_a{1}=0$
- $\log_a{a}=1$
よく考えたら当たり前のことを言ってるんだけど、説明できる?
え~と…まず①は「 $a$ を何乗したら $a^x$ になるか」を考えればいいから当然 $x$ で、②は「 $a$ を何乗したら $1$ になるか」だから…
すべての数で $0$ 乗したら $1$ になるんでしたね!③は「 $a$ を何乗したら $a$ になるか」だから、何もしなければいいので、つまり $1$ 乗ですね。
ご名答!!指数に比べてわかりづらいけど、文章にしてみると結構簡単ですね^^
まずはここまで理解が進めばOKです。
次は対数の公式を説明する前に、「そもそもなんで対数なんていう数を考えなきゃならんのか」について、深堀りをしていきます。
対数を考える必要性(メリット)3選を解説
対数を考える理由を端的に言えば、「どうしても必要な数だから」です。
ではその必要性とはなにか、わかりやすく厳選して $3$ つ解説していきます。
大きい数を小さい数で表せる
たとえばこんな問題が出題されたら、皆さんだったらどうしますか?
例題1.$2^{100}$ の桁数を求めなさい。
$10$ 乗ぐらいまでなら計算して求められますが、$100$ 乗にもなると莫大すぎてとても計算ではできません。
実際電卓で計算してみても、$30$ 乗ぐらいで表示の限界が来てしまいます。
※今のiPhoneなら e(10の何乗かを示す記号)が表示されるので、まあ桁数を求めることはできてしまいますが…それでも100回計算するのは大変ですよね。
そこで登場するのが対数、いや今回の場合は「常用対数」です!
常用対数とは、底が $10$ の対数を言います。
$2^{100}$ の常用対数を取ってみると、
$\log_{10}{2^{100}}$
となり、この意味は「 $10$ を何乗したら $2^{100}$ になるか」なので、つまり桁数がわかるということになります!
たとえば $\log_{10}{x}=2$ であれば $10^2=100$ なので $3$ 桁だし、 $\log_{10}{y}=3$ であれば $10^3=1000$ なので $4$ 桁ですよね。
また常用対数には「常用対数表」があり、これは数Ⅱの教科書の背表紙ページに必ず付いています。
それを利用すると、
$10^{30}<2^{100}<10^{31}$
とわかり、「 $2^{100}$ は $31$ 桁の数である」と簡単に求めることができます。
途中の計算で対数の公式を使ってしまいましたが、これは後述します。とにかく今は対数の有用性に焦点を当てて解説しますね。
常用対数についての詳しい解説は以下の記事にまとめていますので、気になる方はぜひご覧ください。
桁数を簡単に求めることができるのはわかりましたけど、それって結局何がいいんですか?
たとえば地震の震度や酸性アルカリ性を表すpH、騒音レベルを表すdb(デシベル)などで応用されているんだ。特にpHは常用対数を使っているんだよ^^
水素イオンのモル濃度を表す数値。$7$ が中性であり、その時の水素イオンのモル濃度は $1.00×10^{-7}$ mol/L。
その数の逆数の常用対数がpHなので、つまり pH$=\log_{10}{(1.00×10^{7})}=7$ という計算式が成り立つ。
もし対数という数がなかったら、「中性の水はpHが $7$ 」とは表現できず「中性の水は水素イオンのモル濃度が $1.00×10^{-7}$ mol/L」と毎回言わなくてはなりません。
対数は大きな数(=めんどくさい数)を小さな数(=端的に表せる数)で表現できるため、指標にとっても便利なのです。
掛け算が足し算になる
対数の世界では、累乗が掛け算に、掛け算は足し算になります。
え!?どどど、どういうことですか??
累乗の方はあとで説明するとして、まずは「掛け算が足し算になる」ことを感覚的に解説するね。
先ほどと同様に「桁数」の例題で考えていきます。
例題2.$2^{100}×3^{50}$ の桁数を求めなさい。
これを普通にやろうと思ったら大変なのでそれぞれの常用対数を「常用対数表」を用いて計算すると、
- $\log_{10}{2^{100}}=30.10$
- $\log_{10}{3^{50}}=50×\log_{10}{3}=23.855$
※$\log_{10}{3}=0.4771$ を使った。
となり、それぞれの桁数は $31$ 桁、$24$ 桁と求まります。
$31$ 桁の数と $24$ 桁の数を掛け算したら何桁になるか…。あっ!
気づいたかな?$31×24=744$ 桁にはならないよね。これが対数の世界では「掛け算が足し算になる」例の一つです。
正確には、それぞれの常用対数を足して $30.10+23.855=53.955<54$ となるので、$54$ 桁と求めることができます。
今のを一つの式にすると、以下のようになります。
$\log_{10}{ (2^{100}×3^{50})}=\log_{10}{2^{100}}+\log_{10} {3^{50}}$
掛け算よりも足し算の方が計算が簡単なので、対数を使うと便利になるケースがたくさんあるのです。
グラフで差を表しやすい
対数は大きいものの差を小さく、小さいものの差を大きく表現することができます。
これだけだと全然ピンとこないので、今回も例として「pH」を考えてみます。
胃液・酢・純水・石鹸水の水素イオン濃度の逆数およびpHを、それぞれ棒グラフで表すとこうなります。
水素イオン濃度の逆数のグラフだとごちゃごちゃしてて(というか石鹸水以外は全部 $0$ に見えて)見づらかったのが、pHにすることで差を感じやすくなりました!
でしょ^^対数関数のグラフを学習すると、この原理がより視覚的に分かるようになります。
対数関数のグラフについては、以下の記事で詳しく解説しています。
対数の公式の証明と計算例
対数の必要性についてある程度実感していただいたところで、数学チックな話に戻って「対数の公式」を解説していきます。
- $\log_a{MN}=\log_a{M}+\log_a{N}$(積の対数は対数の和)
- $\log_a{M^r}=r\log_a{M}$( $r$ 乗の対数は対数の $r$ 倍)
- $\displaystyle \log_a{\frac{M}{N}}=\log_a{M}-\log_a{N}$(商の対数は対数の差)
- $a^{\log_a{M}}=M$
- $p=q \ \iff \log_a{p}=\log_a{q}$(両辺底が同じ対数をとってもOK)
1と2が「累乗は掛け算に、掛け算は足し算に」の話ですね。
順に証明していきますので、ぜひご参考ください。
対数の定義式(=指数と対数の関係)を上手く使えば全て証明できます!
余裕のある人は、ぜひ証明にもチャレンジしておきましょうね。
対数の計算練習
知識を定着させるために、今示した公式を用いて計算練習をしてみましょう。
問題1.次の式を計算せよ。
(1) $\log_4{2}+\log_4{24}-\log_4{3}$
(2) $\displaystyle \log_3{\sqrt{2}}-\frac{1}{2}\log_3{6}$
(3) $\displaystyle (\frac{1}{\sqrt{2}})^{3\log_2{7}}$
(3)が若干曲者です。ヒントは証明のときと同様、何かを文字で置くことです。
(3)のポイントは
- 全体を $X$ と文字で置くという発想ができるか
- 式変形を対数の公式に当てはめて地道に行うことができるか
以上 $2$ つです。
はじめのうちは慣れないと思いますが、やっていくうちに慣れていきます。間違えてしまった問題は繰り返し解いて、頭に染み込ませていきましょう。
【数Ⅲ】自然対数の有用性
対数を取って何かをするとき、
- 数Ⅱで学習する常用対数(=底が $10$ の対数)
- 数Ⅲで学習する自然対数(=底が $e$ の対数)
この2つのどちらかである場合がほとんどです。
$e$ は通称「ネイピア数」とも呼ばれ、$e=2.7182818…$ と無限に続く無理数です。
なんでこんな複雑な数が、対数において大事な数になっているんですか?
実は $e$ という数は、微分積分という演算における基準の数になっているんだ。掛け算で言う $1$、足し算で言う $0$ のように。
$e^x$ を微分すると $e^x$、$\log_e{x}$ を微分すると $\displaystyle \frac{1}{x}$ というふうに、ネイピア数 $e$ は微分において非常に重要な数なのです。
微分積分を習っていない方にとっては「なんのこっちゃ」という話ではありますが、微分積分は高校数学の華であり、数Ⅱでも数Ⅲでも学習します。
もし興味のある方は、ネイピア数についての記事を読んでみてくださいね。
まとめ:対数のメリットや指数との関係性を把握し、今後の勉強に活かそう
対数についての理解は深まりましたか?以下、本記事のポイントです。
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