こんにちは、ウチダです。
「ガウス記号」(床関数とも言います)とは、その数を超えない最大の整数を表す記号のこと、いわば”整数値を取る関数”です。
例. $[1.5]=1$,$[2]=2$,$[9.9]=9$
[ふきだし set=”悩む男性”]なるほど、これが定義だね。でも、そもそもガウス記号って何のためにあるの?[/ふきだし]
[ふきだし set=”悩む女性”]ガウス記号に関する問題って、例えばどんなものがあるのかしら?[/ふきだし]
よって本記事では、ガウス記号に成り立つ性質から、ガウス記号に関する問題 $5$ 選、さらに「ガウス記号は何のために存在するのか」まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 教員採用試験に1発合格 → 高校教諭経験アリ
の僕がわかりやすく解説します。
ガウス記号の定義や性質とは?【必ず整数の値を取ります】
冒頭でもお伝えした通り、ガウス記号の定義とは…
つまり、「必ず整数の値を取る関数」とみなすことができます。
また、この定義から $[x]$ について以下の性質が成り立ちます。
ガウス記号 $[ \ \ ]$ に成り立つ性質
- $[x]=m$ ならば $m≦x<m+1$ が成り立つ(逆も真)。
- 自然数 $n$ に対して、$[x+n]=[x]+n$
- $[x+y]≧[x]+[y]$
- $\displaystyle [2x]=[x]+[x+\frac{1}{2}]$
他にも、性質を作ろうと思えば作れますが、大体この辺りを押さえておけば問題ないでしょう。
性質 $4$ は、
ⅰ) $\displaystyle 0≦x<\frac{1}{2}$
ⅱ) $\displaystyle \frac{1}{2}≦x<1$
に場合分けして成り立つことを確認し、その後性質 $2$ を用いて一般的に示すことができます。
ガウス記号を含むグラフ
では次に、ガウス記号を含むグラフがどのような形で書けるか見てみます。
もっと複雑な関数のグラフは、あとで応用問題として解きますが、すべてはこの関数
$$y=[x]$$
が基本となります。
とりあえず、「ガウス記号 $[x]$ の中身が整数となる $x$ でのみ連続ではない関数」になることを押さえておけばOKです。
ガウス記号の応用問題5選
さて、以上を踏まえ、もう少し難しい応用問題にチャレンジしてみましょう。
具体的には
の $5$ つを順に解説していきます。
[ふきだし set=”ウチダ”]それぞれリンクになってますので、お好きなところから読み進めてもOKです。[/ふきだし]
グラフを書く問題
さて、まずは少し複雑に見えるグラフを書いてみましょう。
ポイントは、「ガウス記号 $[ \ \ ]$ の中身が整数のところで連続じゃない」です。
【解答】
$x$ が整数のときのみ $x=[x]$ となるから、$y=0$ となる。
これに注意してグラフを書くと、以下のようになる。
(解答終了)
「 $x$ が整数じゃないときは $y=x$ の形になる」というところが、この関数の面白い部分だと思います。
方程式を解く問題(2018年岐阜聖徳学園入試問題)
※2018年岐阜聖徳学園入試問題
実は大学の入試問題として出題されることもあります。
さて、$x^2+2x+1=0$ であれば $x=-1$ のみですが、$2x$ → $2[x]$ になったことでどういう変化があるでしょうか。
少し考えてみてください。
【解答】
$-3≦x<0$ を満たす $x$ は
- 整数部分 → $n=-3 \ , \ -2 \ , \ -1$ のいずれか
- 小数部分 → $0≦α<1$ を満たす実数 $α$
を用いて $x=n+α$ と表すことができる。
これを①の $[x]$ に代入すると、$x^2+2[n+α]+1=0$ であり、$[n+α]=n$ を用いて$$x^2=-2n-1 …②$$
と表せる。
また、$n=-3 \ , \ -2 \ , \ -1$ のどれかなので、②に代入すると
$$x^2=5 \ , 3 \ , 1$$
のいずれかとなる。
したがって、$-3≦x<0$ より$$x=-\sqrt{5} \ , \ -\sqrt{3} \ , \ -1$$
(解答終了)
$x^2+2x+1=0$ が $x^2+2[x]+1=0$ に変わっただけで、解が $2$ つ増えました!
なかなか面白い問題でしたね^^
不等式を解く問題
ガウス記号が含まれていると、一見して「あ~複雑。」と感じやすいですが、実際はそうでもありません。
落ち着いて因数分解することで解いていきましょう。
【解答】
左辺を因数分解すると、$(2[x]+1)([x]-2)<0$ なので、
$$-\frac{1}{2}<[x]<2 …①$$
①を満たす実数 $x$ の範囲を、$y=[x]$ のグラフと照らし合わせて考えると…
したがって、関数 $y=[x]$ が青色の部分にすっぽり入っている部分の $x$ が答えなので、
$$0≦x<2$$
(解答終了)
ここからわかることは、「二次不等式はグラフを使って解くべき」だということです。
[ふきだし set=”ウチダ”]二次不等式については「二次不等式の解き方をマスターしよう!【問題11選でわかりやすく解説します】」の記事で詳しく解説しております。[/ふきだし]
階乗の素因数の個数を求める問題(ガウス記号って何のためにあるの?)
もちろん、ガウス記号を使わずとも階乗の素因数分解はできます。
ただし、ガウス記号を用いることで、一般的に解くことが可能になります。
【解答】
$12$ までの素数は $2$,$3$,$5$,$7$,$11$ の $5$ つ。
ⅰ) 素因数 $2$ の個数は、$\displaystyle [\frac{12}{2}]+[\frac{12}{2^2}]+[\frac{12}{2^3}]=6+3+1=10$ 個。
ⅱ) 素因数 $3$ の個数は、$\displaystyle [\frac{12}{3}]+[\frac{12}{3^2}]=4+1=5$ 個。
ⅲ) 素因数 $5$ の個数は、$\displaystyle [\frac{12}{5}]=2$ 個。
ⅳ) 素因数 $7$ の個数は、$\displaystyle [\frac{12}{7}]=1$ 個。
ⅴ) 素因数 $11$ の個数は、$\displaystyle [\frac{12}{11}]=1$ 個。
したがって、$12!$ の素因数分解は
$$12!=2^{10}・3^{5}・5^{2}・7・11$$
(解答終了)
一般的に、ガウス記号を用いて次のように表すことができます。
$n$ までの素数を $p_1 \ , \ p_2 \ , \ … \ , \ p_n$ とする。
このとき、
とガウス記号を用いて表すことができる。
※この公式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
つまり、ガウス記号を使うことで余りを無視することができるので、数式として書くには便利だということです。
[ふきだし set=”ウチダ”]「素因数分解のやり方のコツとは?【応用問題3選も簡単に解けます】」の記事でもこの問題は扱ってます。こちらの記事では数式として表現できませんでしたが、ガウス記号を用いることで簡潔に表すことができるんですね。[/ふきだし]
また、ガウス記号の存在意義って、ここら辺の話ではないでしょうか。
ある関数を定義することで、何かを数式として表すことができるのであれば、それは有用だと言えますよね。
ガウス記号を用いることで、実数の整数部分(つまり小数点以下の切り捨て)を表すことができます。
なのでこれからは、余りを無視したいときなどに積極的に活用していきましょう。
ガウス記号の極限に関する問題【数Ⅲ】
(1) $$\lim_{n \to \infty} \frac{[\frac{n}{2}]}{n}$$
(2) $$\lim_{n \to \infty} (\sqrt{n^2-[\frac{n}{2}]}-n)$$
さて、最後は数Ⅲ範囲の問題です。
冒頭に紹介した「ガウス記号に成り立つ性質」の $1$ つである
$$[x]≦x<[x+1]$$
を使う時が来ました。
【解答】
(1) $[x]≦x<[x+1]$ より $x-1<[x]≦x$ が成り立つ。
よって、$\displaystyle \frac{n}{2}-1<[\frac{n}{2}]≦\frac{n}{2}$ が言える。
すべての辺を $n$ で割ると、$\displaystyle \frac{1}{2}-\frac{1}{n}<\frac{[\frac{n}{2}]}{n}≦\frac{1}{2} …①$
①の左辺の極限値を取ると、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{2}-\frac{1}{n}=\frac{1}{2}$ である。
したがって、はさみうちの原理(※1)より $$\lim_{n \to \infty} \frac{[\frac{n}{2}]}{n}=\frac{1}{2}$$
(2)
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(1)より、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{[\frac{n}{2}]}{n}=\frac{1}{2}$ なので、
(解答終了)
※1.はさみうちの原理ってなに?
これが数学Ⅲ「数列の極限」で習う代表的なテクニックなんですね。
$a_n≦x_n≦b_n$ のとき、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n=α$ かつ $\displaystyle \lim_{n \to \infty} b_n=α$ が成り立てば、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} x_n=α$ が成り立つ。
[ふきだし set=”ウチダ”]ようは、「右辺と左辺の収束先が同じであれば、真ん中もそこに収束する」という原理です。詳しくは「はさみうちの原理とは~(準備中)」の記事をご覧ください。[/ふきだし]
ガウス記号に関するまとめ
本記事の要点を改めてまとめます。
- 定義より、必ず整数の値を取ります。
- ガウス記号の問題は、グラフ,方程式や不等式,「素因数分解」への応用,「はさみうちの原理」を利用する極限、ここら辺を押さえておけばとりあえずOK。
- 応用できるってことは存在意義があるっていうことです。
ガウス記号はそんなに難しいことを言っているわけではありません。
使いこなせるように、ポイントだけでも押さえておきましょう♪
「整数の性質」全 25 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
終わりです。
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