こんにちは、ウチダです。
今日は、中学2年生で習う
「直角三角形の合同条件」
について、まず「そもそもなぜ成り立つのか」を考察し、次に直角三角形の合同条件を使った証明問題を解説していきます。
直角三角形の合同条件2つ
まず、一般的な三角形における合同条件3つについて、理解を深めておく必要があります。
だって、直角三角形は、特殊な場合ですからね。
「三角形の合同条件」に関する記事をまだ読まれていない方は、こちらからご覧いただきたく思います。
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関連記事
三角形の合同条件はなぜ3つ?証明問題をわかりやすく解説!【相似条件との違い】
さて、三角形の合同条件は
- 三辺相等(3組の辺がそれぞれ等しい)
- 二辺夾角相等(2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい)
※夾角は「きょうかく」と読み、「挟まれた角」という意味の言葉です。 - 一辺両端角相等(1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい)
この $3$ つでした。
そこに「直角三角形である」という条件が増えるだけで…
- 斜辺と一つの鋭角がそれぞれ等しい
- 斜辺と他の一辺がそれぞれ等しい
この $2$ つが新たに合同条件として加わります。
ようは、直角三角形であれば、$$3+2=5(通り)$$もの合同条件が存在するのです。
では、今新たに加えた二つの条件が「なぜ合同条件になるのか」一緒に紐解いていきましょう。
斜辺と一つの鋭角
さて、これが合同条件になる証明は実に簡単です。
早速見ていきましょう。
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【証明】
三角形の内角の和は $180°$ であるので、$2$ つの角が求まれば、$3$ つ目の角も自動的に決まる。
つまり、
したがって、1組の辺とその両端の角が等しいので、$$△ABC ≡ △DEF$$
(証明終了)
三角形では、$2$ つの角が決まれば $3$ つ目の角も自動的に決まります。
よって、この合同条件は何も直角三角形に限った話ではありません。
しかし、もう一つの合同条件は、直角三角形ならではのものになります。
詳しく見ていきましょう。
斜辺と他の一辺【なぜ】
この合同条件は、言うなれば「2組の辺とその間以外の角がそれぞれ等しい」ですね。
一般的な三角形では、「2組の辺とその間の角」でなければ成立しませんでした。
一体、直角三角形に何が起きているのでしょうか。
$3$ つの見方で考えていきます。
反例を考える
三角形の合同条件の記事では、「2組の辺とその間以外の角がそれぞれ等しい」ではダメな理由として、反例を考えました。
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反例が作れる場合は、垂線 BH を引けるときのみです。
このとき、△ABC と △ABD が反例になります。
つまり、「2組の辺とその間以外の角がそれぞれ等しいが、合同にはなっていない」ということです。
また、△ABC は鋭角三角形であるのに対し、△ABD は鈍角三角形です。
以上を踏まえると…
- 直角三角形は、垂線 BH=BC であるため、新たに垂線が引けない。
- 一つの角度が直角、つまり $90°$ であれば、鈍角の角度は作れない。
この $2$ つの理由から、直角三角形においては反例が作れなさそうですよね!
ただ、「そもそもこれ以外に反例が存在しないこと」を示すのは困難です。
よって、理解の一環として押さえていただければ、と思います。
二等辺三角形を作る
△ABC と △DEF を、以下の図のようにくっつけてみます。
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※ $BC=EF$ としてましたが、図の都合上 $AC=DF$ としました。ご了承ください。
すると、$AC=DF$ かつ $∠ACB=∠DFE=90°$ より、きれいにピッタリくっつきますね!
また、$AB=AF$ であるため、△ABF は二等辺三角形になります。
ここで、二等辺三角形の性質より、$$∠ABF=∠AFB$$が言えます。
よって、斜辺と一つの鋭角が等しくなったため、$$△ABC ≡ △DEF$$が示せました。
視覚的にもわかりやすくて、非常に良い考え方ですね。
「二等辺三角形」に関する詳しい解説はこちらから!!
⇒⇒⇒二等辺三角形の定義・角度の性質を使った証明問題などを解説!
三平方の定理を使う
直角三角形において、以下の定理が成り立ちます。
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この定理は「三平方の定理(またはピタゴラスの定理)」と呼ばれ、中学3年生に習うものです。
おそらく、数学から大分離れた社会人の方でも、この定理は覚えている。
そのぐらい有名かつ重要な定理です。
さて、この定理の証明方法は複数ありますが、認めて話を進めます。
今、斜辺と他の一辺の長さがわかっています。
つまり、この図で言う $c$ と $a$ が与えられています。
このとき、三平方の定理より、$$b^2=c^2-a^2$$なので、$b^2$ は一つに定まります。
また、$b>0$ であるので、$b$ の値も一つに定まります。
したがって、直角三角形では $2$ 辺の長さが与えられれば、もう一辺も自動的に求まることが証明できました。
「三平方の定理」に関する詳しい解説はこちらをどうぞ
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直角三角形の合同条件を使った証明問題3選
それでは最後に、直角三角形の合同条件を使った証明問題の中でも、代表的なものを解いていきましょう。
具体的には
- 角の二等分線
- 直線と垂線
- 折り返し図形
以上 $3$ つを、上から順に考察していきます。
角の二等分線【中1作図】
中学1年生で「角の二等分線の作図」を習います。
その際、「角の二等分線上の点ならば、$2$ 直線との距離が等しい。」という性質を学びます。
この問題はその逆の証明。
つまり、「 $2$ 直線との距離が等しい点であれば、角の二等分線上の点である。」を示せという問題です。
ここで直角三角形の合同条件が大いに活躍します。
【証明】
△OAP と △OBP について、
$$OP は共通 ……①$$
$$∠OAP=∠OBP=90° ……②$$
仮定より、$$AP=BP ……③$$
①~③より、直角三角形で斜辺と他の一辺がそれぞれ等しいから、$$△OAP≡△OBP$$
したがって、合同な図形の対応する角は等しいから、$$∠AOP=∠BOP$$
(証明終了)
今まで学んできた知識の欠陥部分を埋める作業は極めて重要です。
角の二等分線に対する知識を深めていきましょう♪
「角の二等分線」に関する詳しい解説はこちらからどうぞ
⇒⇒⇒「角の二等分線と比の定理とは?作図方法(書き方)や性質の証明を解説!【外角の問題アリ】」
【重要】直線と垂線【応用】
次は、非常に出題されやすい応用問題です。
(1) $△ABD≡△CAE$ を示せ。
(2) $BD+CE=DE$ を示せ。
面白い図形配置ですよね!
いきなり(2)だと難しいので、このように誘導付きの場合が多いです。
(1)を利用して、(2)を導いていきましょう。
【証明】
(1) △ABD と △CAE において、
仮定より、$$AB=CA ……①$$
$$∠ADB=∠CEA=90° ……②$$
ここで、三角形の内角の和は $180°$ なので、
また、直線の角度も $180°$ なので、
③、④より、$$∠ABD=∠CAE ……⑤$$
よって、①、②、⑤より、直角三角形で斜辺と一つの鋭角がそれぞれ等しいから、$$△ABD≡△CAE$$
(2) 合同な図形の対応する辺は等しいから、(1)より、
$$BD=AE , CE=AD$$
したがって、
(証明終了)
「一つの鋭角が等しいこと」を導くのが少し大変でしたね。
三角形の内角の和と直線の角度が $180°$ であることは本当によ~く使いますので、ぜひとも押さえていただきたく思います♪
「三角形の内角の和」に関する詳しい解説はこちらからどうぞ
⇒⇒⇒「三角形の内角の和は180度って証明できるの?【三角形の外角の定理(公式)や問題アリ】」
折り返し図形
最後は、長方形を折り返してできる図形の問題です。
点 $D$ の移動先を $E$、辺 $BC$ との交点を $F$ としたとき、$$∠BAF=∠ECF$$を示せ。
いろいろな解き方がありますが、どの解き方においても「折り返し図形の特徴」を用います。
それがいったい何なのか、ぜひ考えながらご覧ください。
【証明】
折り返しただけでは、図形の形は変わらない。
つまり、$$△ACD≡△ACE ……(※)$$が成り立つ。
ここで、△ABF と △CEF において、
(※)より、$∠AEC=∠ADC=90°$ であるから、$$∠ABF=∠CEF=90° ……①$$
(※)より、$CE=CD$ であり、長方形の対辺は等しいから、$$∠AB=CE ……②$$
対頂角は等しいから、$$∠AFB=∠CFE ……③$$
①~③より、直角三角形で斜辺と一つの鋭角が等しいので、$$△ABF≡△CEF$$
したがって、合同な図形の対応する角は等しいので、$$∠BAF=∠ECF$$
(証明終了)
折り返し図形の最大のポイントは、「折り返しただけでは図形の形は変わらないから、合同な図形が必ずできる」ところにあります。
今回の場合、$△ACD≡△ACE$ でしたね。
折り返し図形の問題パターンは、「どこを基準として折り返すか」によって多岐にわたります。
ただ、このポイントだけはすべての問題に共通しています。
その都度、「どれとどれが合同な図形か」考えて解くようにしましょう♪
直角三角形の合同条件に関するまとめ
三角形の合同条件は $3$ つでしたが、”直角三角形”という条件が加わることによって $2$ つ増えました。
これら $5$ つを暗記するだけでは、勉強として不十分です。
「なぜ直角三角形であれば条件が増えるのか」いろいろな視点で考えることで、数学力が徐々に高まります。
ぜひ「急がば回れ」の精神で、勉強を楽しんでいただきたく思います。
以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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