こんにちは、ウチダです。
今日は、中学2年生で習う関門
「三角形の合同条件」
について、まずは図形の合同を確認し、次に合同条件を用いる証明問題を解き、またコラム的な内容も考察していきます。
三角形の合同って?
合同な図形とは、その名の通り全く同じ図形同士のことを指します。
つまり、二つの図形を重ね合わせたとき、ピッタリ一致すれば合同であり、少しでもズレがあれば合同じゃない、ということになります。
小学5年生で、「合同な図形の対応する辺と角が等しい」ことを利用する問題を解きましたね。
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※「≡」で”二つの図形が合同である”ことを表します。「=(イコール)」ではないので注意。
さて、この問題であれば、図形の合同を用いて、
(1) $FG=AB=7 (cm)$
(2) $∠C=∠H=80°$
というふうに求めることができます。
中学2年生では、「どんな条件が成り立つとき、図形は合同になるの…?」という視点で、図形の合同を考えていきます。
また、すべての多角形は複数の三角形によって形成されているので、三角形のみ考察すれば十分です。
相似条件との違い
もう一つ、合同条件と似たような言葉で「相似条件(そうじじょうけん)」なるものを中学3年生で習います。
合同条件と相似条件がごっちゃになってしまう方が多いので、簡単に違いを解説します。
合同な図形とは、先ほどもお話した通り「ぴったり重なる図形」のことです。
それに対し、相似な図形とは、「拡大・縮小すればぴったり重なる図形」のことです。
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つまり、合同な図形を「各辺をそれぞれ $1$ 倍したもの同士」と考えると、相似な図形の一種であると言えます。
相似条件についての詳しい解説は他の記事にて行いますが、「合同は相似の一種」であることを押さえておくかおかないかで、後々の理解に響いてきます。
関連づけて理解するクセを付けていきましょうね^^
「三角形の相似条件」に関する詳しい解説はこちらから!!
⇒⇒⇒「相似条件とは?三角形の相似条件はなぜ3つなの?【証明問題アリ】」
三角形の合同条件3つ【超重要】
それではいよいよ、「三角形の合同条件」について具体的に考えていきます。
といっても、$3$ つしかないため、覚えるのは比較的楽だとは思います。
- 3組の辺がそれぞれ等しい。
- 2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい。
- 1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい。
最後の文言は共通して「それぞれ等しい」です。
では、これらを一つ一つ順に詳しく考察していきましょう。
3組の辺がそれぞれ等しい
まず、三角形は $3$ つの辺と $3$ つの角という、計 $6$ つの情報から成り立っています。
そのうち、$3$ 辺が等しければ、残りの $3$ つの情報(つまり $3$ つの角)も等しいことを見ていきましょう。
↓↓↓

ここからしばらく続きますが、「なぜ合同条件が成り立つのか」これを論じるには、高校1年生の知識が必要になってきます。
具体的には、正弦定理・余弦定理という二つの重要な公式です。
簡単に説明します。
$3$ 辺が与えられた場合、余弦定理$$\cos A=\frac{b^2+c^2-a^2}{2×b×c}$$を用いることで残りの角度を求めることができます。
ここで、$\cos A$ という謎の数値と $∠A$ は $1:1$ に対応しているので、$\cos A$ が一つに決まれば $∠A$ も一つに決まります。
あとは、$∠B$、$∠C$ に対しても同じことを行えば、すべての角度を求めることができます。
中学2年生時点で仕組みを理解することは困難ですので、とりあえず簡単に解説しました。
高校1年生になって正弦定理・余弦定理が出てきたときに、「なるほど…そういうことか!」と感動していただきたく思います。
「正弦定理と余弦定理の使い分け」に関する詳しい解説はこちらから!!
⇒⇒⇒正弦定理の公式の覚え方とは?問題の解き方や余弦定理との使い分けもわかりやすく解説!
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい

次は…「 $2$ 組の辺とその間の角」という情報です。
ここでポイントとなってくるのが、“その間の角”ですね。
「なぜその間の角でなければいけないか」ちゃんと説明できる方はほとんどいないのではないでしょうか。
これについても、正弦定理・余弦定理で簡単に説明しておきますと、余弦定理は、値に対し角度が一つに定まりましたが、正弦定理$$\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}$$は値 $\sin A$ に対し $∠A$ は二つ出てしまうからです。
これだけだと説明として不親切ですので、以下の図をご覧ください。
↓↓↓

図のように点 D を取ると、△BCD は二等辺三角形になるので、$$BC=BD$$
が言えます。
⇒参考.「二等辺三角形の定義・角度の性質を使った証明問題などを解説!」
ここで、△ABC と △ABD を見てみると
$$AB は共通 ……①$$
$$BC=BD ……②$$
$$∠BAD も共通 ……③$$
以上のように、$3$ つの情報が一致してますが、図より明らかに合同ではないですよね(^_^;)
「この反例が存在するから“その間の角”でなければいけない」
このように理解しておきましょう。
<補足>
もっと面白い話をします。
今、垂線 BH を当たり前のように引きました。
ただ、この垂線はどんな場合でも引けるのでしょうか…?
↓↓↓

そうです。直角三角形の時は引けないですよね!!
よって、直角三角形では反例が作れないため、これも合同条件として加えることができるのです。
もう一つ付け加えておくと…
先ほど正弦定理の説明で、「値 $\sin A$ に対し $∠A$ は二つ出てしまう」とお話しました。
しかし、これがある特定の場合のみそうではなく、それが$$\sin 90°=1$$つまり、直角の場合なんです!
$\sin A$ が $1$ になるのは $∠A=90°$ のときのみなんです。
ここまで理解できると、「数学って面白い…!」と感じられるかと思います♪
※「直角三角形の合同条件」に関する記事は、この記事の最後にて紹介してあります。
1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい
それでは最後の合同条件です。
↓↓↓

三角形の $3$ つの角度のうち、$2$ つがわかるというのは、何を意味するでしょうか。
それは…「すべての角度が実はわかっている」です。
こちらの記事でも解説した通り、「三角形の内角の和は180度」ですよね。
⇒⇒⇒三角形の内角の和は180度って証明できるの?【三角形の外角の定理(公式)や問題アリ】
つまり、$2$ つの角度が一致していれば、$3$ つ目の角度も自動的に一致します。
そして、角度がすべて等しければ、図形は相似になります。
拡大・縮小の関係になるわけですね~。
そこで、$1$ 辺の長さを固定してしまえば、図形は一つに定まるしかないですよね。
これが、この合同条件の仕組みです。
一つ、よくある間違いをご紹介しておきます。
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これも図より明らかですが、合同ではありませんね。
それもそのはずで、$∠ACB$ は △ABC の左から数えたとき$$1→3→2$$となっていますが、$∠EDF$ は △DEF の左から数えたとき$$2→1→3$$となっています。
よって、この $2$ つは対応する角ではありません。
図形の合同を示すときは、使っている条件が対応する辺及び角であるか、しっかりと確認しましょう。
三角形の合同条件を用いた証明問題3選
では、実際に三角形の合同条件を用いる問題を $3$ つ解いてみましょう。
三角形の合同の証明でよく使われる予備知識として
- 平行線と角の性質
- 二等辺三角形の性質
- 円周角の定理【中3】
以上 $3$ つはぜひ押さえておきたいところです。
平行線と角の性質を用いる証明

どことどこの三角形が合同になるか、図を見ながら考えてみて下さい^^
【証明】
△AOB と △DOC において、
仮定より、$$AB=DC ……①$$
$AB // CD$ より、平行線における錯角は等しいから、$$∠OAB=∠ODC ……②$$
$$∠OBA=∠OCD ……③$$
①~③より、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいから、$$△AOB ≡ △DOC$$
合同な三角形の対応する辺は等しいから、$$AO=DO$$
(証明終了)
細かいところですが、$AB=CD$ の仮定は $AB=DC$ と変えた方が無難です。
なぜなら、合同の証明をする際一番気を付けなければならないのが、「対応する辺及び角であるかどうか」だからです。
「平行線と角の性質」に関する詳しい解説はこちらから!!
⇒⇒⇒錯角・同位角・対頂角の意味とは?平行線と角の性質をわかりやすく証明!【応用問題アリ】【中2数学】
二等辺三角形の性質を用いる証明

色々やり方はありますが、一番手っ取り早いのは$$△ABE ≡ △ACD$$を示すことでしょう。
【証明】
△ABE と △ACD において、
$∠ABC=∠ACB$ より、△ABC は二等辺三角形であるから、$$AB=AC ……①$$
仮定より、$$AE=AD ……②$$
また、$∠A$ は共通している。つまり、$$∠BAE=∠CAD ……③$$
①~③より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいから、$$△ABE ≡ △ACD$$
したがって、合同な三角形の対応する角は等しいから、$$∠ABE=∠ACD$$
つまり、$$∠DBE=∠ECD$$
(証明終了)
この問題は「 $∠ABE=∠ACD$ を示せ。」ではなく「 $∠DBE=∠ECD$ を示せ。」とすることで、あえてわかりづらくしています。
三角形の合同を考えるときは、一番簡単に証明できそうな図形同士を見つけましょう。
「二等辺三角形」に関する詳しい解説はこちらから!!
⇒⇒⇒二等辺三角形の定義・角度の性質を使った証明問題などを解説!
円周角の定理を用いる証明【中3】

点が同じ円周上に位置するときは、「円周角の定理(えんしゅうかくのていり)」をフルに使いましょう。
「どことどこの合同を示せばよいか」にも注意してくださいね^^
【証明】
△ACB と △BDA において、
仮定より、$AD=BC$ であるから、$$CB=DA ……①$$
辺 AB は共通なので、$$AB=BA ……②$$
あとは「 $∠ABC=∠BAD$ 」を示せばよい。
ここで、弧 DC の円周角は等しいので、$$∠DBC=∠DAC ……③$$
また、$AD=BC$ より、弧 AD と弧 BC の円周角も等しくなるので、$$∠DBA=∠CAB ……④$$
③④より、
①、②、⑤より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので、$$△ACB ≡ △BDA$$
したがって、合同な三角形の対応する辺は等しいので、$$AC=BD$$
(証明終了)
「 $∠ABC=∠BAD$ 」を示すのに一苦労かかりますね。
ただ、ゴールが明確に見えていれば、あとは知識を用いて導くだけです。
「円周角の定理」に関する詳しい解説はこちらから!!
⇒⇒⇒(後日書きます。)
なぜ作図を先に習うの?<コラム>
それでは最後に、コラム的な内容の話をして終わりにします。
この三角形の合同条件をしっかりと学習することで、中学1年生で習う「作図」がなぜ正しいのかがスッキリします。
「作図」に関する記事は以下のリンクからご覧ください。
⇒⇒⇒垂直二等分線の作図方法(書き方)と「なぜ正しいのか」証明をわかりやすく解説!【垂線】
⇒⇒⇒角の二等分線と比の定理とは?作図方法(書き方)や性質の証明を解説!【外角の問題アリ】
垂直二等分線と垂線の作図では、ひし形の性質を用いますが、ひし形の性質の証明で三角形の合同を用います。
また、角の二等分線の作図では、「3組の辺がそれぞれ等しい」の条件を使って、三角形の合同を示すことで得られます。
ここで、皆さんはこう疑問に思いませんか。
なぜ三角形の合同条件を先に学ばないのか…?
と。
私も疑問には思いましたが、子どもの発達段階を考えると、至極全うであると言えます。
というのも、子供は合理的に考えることが苦手です。
証明というのは、数学の中でも合理性がずば抜けて高い内容なので、「視覚的に楽しい作図を先に勉強し、あとで答え合わせ」という流れは良いものなのでしょう。
ただ、その“答え合わせ”をいつまでもしないままだと…おわかりですね?
私が中学数学のカテゴリを「中1中2中3」ではなく「図形・数と式・関数」と分野別で分類している理由がこれです。
つまり、このサイトに辿り着いてくださった方には学年横断的な学習をしていただきたいのです。
もちろん、学習指導要領ではカバーしきれない部分は多くあります。
それらは本来、学校の先生がカバーするべきなのでしょうが、果たしてそれだけの余裕が彼らにあるでしょうか。
「授業・授業準備・保護者対応・部活動・ホームルーム・書類づくり・学校行事・研修などなど…」
私も1年間ではありますが高校で数学の先生をしていたため、彼らがいかに忙しく大変であるかを知っています。
だから塾講師が必要なのです。だから予備校講師が必要なのです。
そういった、学校の先生を助ける職業の一環として、この「遊ぶ数学」というサイトを始めました。
僕なりのアプローチで、皆さんの数学力を飛躍的に高めていきたいと本気で思っています。
だからですね…
どうか、学校の先生を責めないであげてください。
「そうは言っても…うちの学校の先生の授業、わかりづらいんだよなあ…」
そう感じられる方にとっても、「このサイトで勉強すればいいんだ!」と思えるようなサイト作りに尽力してまいります。
これからも「遊ぶ数学」及び「ウチダ」をどうぞよろしくお願いします!
三角形の合同条件に関するまとめ
三角形の合同条件を真に理解するためには、高校1年生で習う「三角比(サインコサインタンジェント)」の知識が必要です。
一見すると、順番がおかしいように思えます。
しかし、この“あとで答え合わせ”というスタイルの勉強法は悪いことではなく、むしろ良いことです。
学習する順番は
「作図(中1)→合同条件(中2)→三角比(高1)」
ですが、論理の流れは逆になるので、疑問を解決していく気持ちで勉強に臨みましょう♪
また、途中で少し触れましたが、直角三角形ならではの合同条件も $2$ つ存在します。
こちらも重要な内容ですので、ぜひ学んでいただきたく思います。
次に読んでほしい「直角三角形の合同条件」の記事はこちら!!
↓↓↓
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以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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