こんにちは、ウチダです。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
$2^n-1$、つまり $2$ のべき乗から $1$ を引いた数のことを”メルセンヌ数”と言い、その中でも特に素数であるものを「メルセンヌ素数」と呼びます。
そして、このメルセンヌ素数には、とっっっっても美しい性質があるのです!
[ふきだし set=”悩む男性”]へ~!メルセンヌ素数がなんで美しいと言われるのか、早く知りたいな![/ふきだし]
[ふきだし set=”悩む女性”]メルセンヌ素数に関する入試問題が出たって話を聞きました。その証明やメルセンヌ素数の一覧などについても詳しく知りたいわ。[/ふきだし]
よって本記事では、メルセンヌ素数の美しい性質から、メルセンヌ素数に関する入試問題まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 教員採用試験に1発合格 → 高校教諭経験アリ
の僕がわかりやすく解説します。
メルセンヌ素数の美しい性質とは【「完全数」を作ることができます】
メルセンヌ素数 $2^n-1$ の美しい性質とは
- 二進数表示すると $1$ だけで表すことができて、とてもきれい。
- 完全数を作り出すことができる!
以上 $2$ つです。
順に解説していきます。
メルセンヌ数の二進数表示
これはメルセンヌ素数に限った話ではなく、メルセンヌ数 $2^n-1$ でも成り立ちます。
二進数とは、$0$ と $1$ のみで表記した数のことで、十進数と違い「 $2$ のべき乗が何個含まれているか」に着目します。
十進数表示 | 二進数表示 |
---|---|
$15$ | $1111$ |
$16$ | $10000$ |
$31$ | $11111$ |
$32$ | $100000$ |
$16=2^4$ や $32=2^5$ のように、$2$ のべき乗は「最高位のみ $1$ で他は $0$ 」と二進数表示できますね。
よってその数に $-1$ したものがメルセンヌ数なので、$1$ つ位が下がり、すべて $1$ になることがわかりました。
この原理を十進数で説明すると、$10^3-1=999$ とか $10^5-1=99999$ とかと同じです。
[ふきだし set=”ウチダ”]n進法に関する詳しい解説は「n進法の変換方法とは?【n進法の四則計算・小数もわかりやすく解説します】」の記事をご覧ください。[/ふきだし]
メルセンヌ素数と完全数の関係とは
まずは完全数の定義を押さえておきましょう。
- 完全数…自分自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数のこと。
さて、美しい性質とは何か。
それは、メルセンヌ素数と(偶数の)完全数は $1$ 対 $1$ に対応している、という性質です。

たとえば $7=2^3-1$ には、$2^{3-1}=4$ をかけることで $28$ という完全数が作れて、$31=2^5-1$ には、$2^{5-1}=16$ をかけることで $496$ という完全数が作れます。
以上をまとめます。
メルセンヌ素数 $2^n-1$ に対して $2^{n-1}$ をかけた数、つまり$$2^{n-1}(2^n-1)$$は偶数の完全数になる。
[ふきだし set=”ウチダ”]非常に神々しい性質ですね。この証明については「完全数(496や8128)とは?一覧とその求め方【公式の証明もわかりやすく解説】」の記事で詳しく解説しておりますので、そちらをご参照ください。[/ふきだし]
メルセンヌ素数についての入試問題の解説
次に、メルセンヌ素数に関する入試問題について、見ていきましょうか。
(1) 「 $2^n-1$ が素数ならば、$n$ は素数である」を示せ。
(2) (1)の命題の逆が成り立たないような自然数 $n$ のうち、最小のものを求めよ。
※2007年の千葉大後期入試・2017年の佐賀大後期入試より改題
主に後期入試で扱われるぐらいマニアックな問題ですが、入試問題としてメルセンヌ素数が出てくるのは面白いですね。
さっそく解説していきます。
【解答】
(1) 対偶「 $n$ が合成数ならば、$2^n-1$ は合成数である」を示す。
≫参考記事:対偶証明法~(準備中)
$n$ が合成数より、$1$ ではない自然数 $a$,$b$ を用いて
$$n=ab$$
と表すことができる。
よって、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
ここで $a>1$ より、$$2^a-1>1$$
$$\{(2^a)^{b-1}+(2^a)^{b-2}+…+(2^a)^1+1\}>1$$
なので、$1$ 以上の自然数 $2$ つの積となる。
したがって、$2^n-1$ は合成数となるので、対偶証明法より命題が示された。
(2) これは実際に実験していくと、$n=11$ のとき
$$2^{11}-1=2047=23×89$$
となり、初めて合成数となる。
よって答えは $n=11$
(解答終了)
この問題から、
- メルセンヌ素数 $2^n-1$ を見つけるには、$n$ に素数を入れて計算する必要がある。
- $n$ が素数であっても、必ずしも $2^n-1$ がメルセンヌ素数であるとは限らない。
の $2$ つが言えますね。
<補足>(※)について
$2^{ab}-1$ が $(2^a-1)\{(2^a)^{b-1}+(2^a)^{b-2}+…+(2^a)^1+1\}$ に因数分解されている式変形ですが、これは$$f(x)=x^p-1$$で考えるといいでしょう。
$x=1$ を代入したとき $f(x)=0$ となることから、因数定理より
と因数分解できます。
あとは、この $x$ に $2^a$ を代入し、$p=b$ とすればOKです。
[ふきだし set=”ウチダ”]因数定理は数学Ⅱで習います。このように整数問題は、数学Aより後に習う単元の知識を使う問題が多いです。因数定理については「因数定理~(準備中)」の記事をご覧ください。[/ふきだし]
メルセンヌ素数に関するまとめ
本記事の要点を $2$ つまとめます。
- メルセンヌ数は $1$ のみで二進数表示することができる。
- メルセンヌ素数の発見 $=$ 完全数の発見
- $n$ が素数であっても、$2^n-1$ も素数になるとは限らない。だからなかなか見つからない。
2019年11月14日現在で見つかっているメルセンヌ素数の中で、最も大きい数は
$$\displaystyle 2^{82589933}-1$$
であり、桁数はなんと約 $2480$ 万にも及びます…!
[ふきだし set=”ウチダ”]$1$ 文字書くのに $1 \ (cm)$ 幅が必要だとすると、大体 $250 \ (km)$ の長さの紙が必要になります。この距離は、東京ー新潟間を直線で結んだ距離に相当します。[/ふきだし]
さらなるメルセンヌ素数の発見を期待しておきましょう。
「整数の性質」全 25 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!

終わりです。
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