こんにちは、遊ぶ数学のウチダです。
対数は大きい数を小さい数で表せるという意味で便利な数ではありますが、底がそろっていないと計算できないのはネックです。
・$\log_2{3}・\log_3{4}$
・$\log_2{3}+\log_4{6}$
ここで登場するのが、今回解説する「底の変換公式」です。
底の変換公式
$a,b,c>0$ , $a,c \neq 1$ のとき、
$\displaystyle \log_a{b}=\frac{\log_c{b}}{\log_c{a}}$ が成り立つ。
対数は底をそろえることで計算ができるので、先ほどの例で $c=2$ として底の変換公式を使うことで、
\begin{align}\log_2{3}・\log_3{4}&=\log_2{3}・\frac{\log_2{4}}{\log_2{3}}\\&=\log_2{4}=2\end{align}
\begin{align}\log_2{3}+\log_4{6}&=\log_2{3}+\frac{\log_2{6}}{\log_2{4}}\\&=\log_2{3}+\frac{1}{2}\log_2{6}\\&=\log_2{3}+\log_2{6^{\frac{1}{2}}}=\log_2{3\sqrt{6}}\end{align}
※スマホの方は横にスクロールできます。
以上のように計算することができます。
この公式、どうも覚えづらいし、証明もわかったようでわからない感じなんですよね…。
この公式はわかったんですけど、使うタイミングがよくわかりません。
そしたら本記事で、底の変換公式の証明や覚え方・使うコツについて、わかりやすく解説していくよ。ぜひ参考にしてね!
底の変換公式の証明と覚え方・メリット
底の変換公式
$a,b,c>0$ , $a,c \neq 1$ のとき、
$\displaystyle \log_a{b}=\frac{\log_c{b}}{\log_c{a}}$ が成り立つ。
まずは底の変換公式の証明や覚え方・使うメリットについて、一緒に考えていきましょう。
証明
対数の定義と性質を使うことで、すぐに証明できます。2通りの方法で解説していきます。
オーソドックスな証明
$\log_a{b}=x$ と置く。
指数と対数の関係より、$a^x=b$
この式の両辺に $c$ を底とする対数を取ると、$\log_c{a^x}=\log_c{b}$
ここで対数の性質「 $\log_a{M^r}=r\log_a{M}$(累乗はかけ算に)」を使うと、
$x\log_c{a}=\log_c{b}$
両辺を $\log_c{a}$ で割ると、$\displaystyle x=\frac{\log_c{b}}{\log_c{a}}$
$x$ をもとに戻して、$\displaystyle \log_a{b}=\frac{\log_c{b}}{\log_c{a}}$
(証明終了)
対数の性質を使ってショートカットした証明
対数の性質より、$a^{\log_a{b}}=b$
両辺 $c$ を底とする対数を取ると、$\log_c{a^{\log_a{b}}}=\log_c{b}$
↑の証明と同様に累乗がかけ算になる性質を使うと、
$\log_a{b}・\log_c{a}=\log_c{b}$
両辺を $\log_c{a}$ で割ると、$\displaystyle \log_a{b}=\frac{\log_c{b}}{\log_c{a}}$
(証明終了)
どちらとも対数の定義と性質を使うだけで、証明が完了しています。
【使った式】
・$\log_a{b}=x \iff a^x=b$
・$\log_a{M^r}=r\log_a{M}$
・$a^{\log_a{b}}=b$
これらの式の証明については、対数について詳しく解説した以下の記事をご覧ください。
覚え方3選
最もスタンダードな覚え方は、「上のものはもっと上へ。下のものはもっと下へ。」とイメージで覚えるやり方です。
次に一般的なのは、分数のイメージと結びつけることです。何となく似ている感覚を掴んでほしい。
最後に紹介するのは、公式の両辺に $\log_c{a}$ をかけた形
$\log_c{a}・\log_a{b}=\log_c{b}$
の覚え方です。
たしかにこうして見ると、そこまで覚えづらい変な公式じゃないですね。
特に分数のイメージは使えるよ^^今まで習ってきたものとリンクさせて覚えるのは最も効率がいいね。
メリット
底の変換公式を使うメリットは、なんと言っても「底を自由に変換できる」こと。
これが唯一にして最大のメリットです。
「 $c$ は何でもいい」というのが底の変換公式の面白いところですね。
またまた例題で考えてみましょう。
例題.$\log_3{5}・\log_5{7}・\log_7{9}$ を計算せよ。
底の変換公式を使って底をそろえてあげれば計算ができるようになります。
実は底は本当に何でもいいんだ。試しに色んな方法で解いてみようか。
底を3にそろえる解き方
\begin{align}\log_3{5}・\log_5{7}・\log_7{9}&=\log_3{5}・\frac{\log_3{7}}{\log_3{5}}・\frac{\log_3{9}}{\log_3{7}}\\&=\log_3{9}\\&=\log_3{3^2}=2\end{align}
底を5にそろえる解き方
\begin{align}\log_3{5}・\log_5{7}・\log_7{9}&=\frac{\log_5{5}}{\log_5{3}}・\log_5{7}・\frac{\log_5{9}}{\log_5{7}}\\&=\frac{\log_5{5}}{\log_5{3}}・\log_5{9}\\&=\frac{1}{\log_5{3}}・2\log_5{3}=2\end{align}
底を7にそろえる解き方
\begin{align}\log_3{5}・\log_5{7}・\log_7{9}&=\frac{\log_7{5}}{\log_7{3}}・\frac{\log_7{7}}{\log_7{5}}・\log_7{9}\\&=\frac{1}{\log_7{3}}・\log_7{3^2}=2\end{align}
底を12にそろえる解き方
$c$ は何でもいいので、今回は試しに $12$ に統一してみる。
\begin{align}\log_3{5}・\log_5{7}・\log_7{9}&=\frac{\log_{12}{5}}{\log_{12}{3}}・\frac{\log_{12}{7}}{\log_{12}{5}}・\frac{\log_{12}{9}}{\log_{12}{7}}\\&=\frac{1}{\log_{12}{3}}・\log_{12}{9}\\&=\frac{1}{\log_{12}{3}}・\log_{12}{3^2}\\&=\frac{1}{\log_{12}{3}}・2\log_{12}{3}=2\end{align}
ホントだ。底がそろってさえいれば、何であっても計算できるんですね!
今回の場合、一番計算が楽なのは $3$ にそろえる場合だね。次に $5$ と $7$ 。最後に $3,5,7$ 以外(今回は $12$ )かな。
今回の例題では、底が $3,5,7$ とバラバラだったわけですから、そのいずれかに統一することが一番簡単ではありますが、別にそれ以外の底にそろえたとしても計算はできるというのは覚えておくといいでしょう。
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底の変換公式の応用問題5選
では知識を定着させるために、底の変換公式を使った少し難しめの応用問題を $5$ 問解いていきましょう。
底の変換公式の応用問題5選
- 対数の計算問題2問
- a,bで表す問題
- 対数の大小を求める問題
- 対数方程式
対数の計算問題2問
問題1.次の計算をせよ。
(1) $\log_{\sqrt{5}}{25}$
(2) $(\log_8{27})(\log_9{4}+\log_3{16})$
(1)は底の変換公式を使わない方法もあります。ぜひ別解も考えてみてください。
問題1の解答例
(1) $c=5$ で底の変換公式を使うと、
\begin{align}\log_{\sqrt{5}}{25}&=\frac{\log_5{25}}{\log_5{\sqrt{5}}}\\&=\frac{\log_5{5^2}}{\log_5{5^{\frac{1}{2}}}}\\&=\frac{2}{\frac{1}{2}}\\&=2÷\frac{1}{2}=4\end{align}
(1の別解) $25=5^2=(\sqrt{5})^4$ より、
$\log_{\sqrt{5}}{25}=\log_{\sqrt{5}}{(\sqrt{5})^4}=4$
(2) $c=2$ で底の変換公式を使うと、
\begin{align}(\log_8{27})(\log_9{4}+\log_3{16})&=\frac{\log_2{27}}{\log_2{8}}(\frac{\log_2{4}}{\log_2{9}}+\frac{\log_2{16}}{\log_2{3}})\\&=\frac{\log_2{3^3}}{\log_2{2^3}}(\frac{\log_2{2^2}}{\log_2{3^2}}+\frac{\log_2{2^4}}{\log_2{3}})\\&=\frac{3\log_2{3}}{3}(\frac{2}{2\log_2{3}}+\frac{4}{\log_2{3}})\\&=\log_2{3}(\frac{1}{\log_2{3}}+\frac{4}{\log_2{3}})=5\end{align}
(解答終了)
(2)について、今回は $4$ , $8$ , $16$ というふうに「 $2$ の○乗」の数がたくさん式に含まれているため、底を $2$ で統一するのが一番ラクです。
「底を何に統一したら一番ラクか」は正直慣れです。一つ言えるとしたら、だいたい $c=2$ か $c=3$ のどちらかでうまくいくことがほとんどです。
a,bで表す問題
問題2.$\log_{10}{2}=a$ , $\log_{10}{3}=b$ とするとき、$\log_{15}{72}$ を $a$ , $b$ の式で表せ。
今回は $a$ , $b$ で表すために、底を $10$ にそろえる必要がありますね。ぜひチャレンジしてみましょう。
問題2の解答例
\begin{align}\log_{15}{72}&=\frac{\log_{10}{72}}{\log_{10}{15}}\\&=\frac{\log_{10}{(2^3×3^2)}}{\log_{10}{(3×5)}}\\&=\frac{3\log_{10}{2}+2\log_{10}{3}}{\log_{10}{3}+\log_{10}{5}}\end{align}
ここで、
\begin{align}\log_{10}{5}=\log_{10}{\frac{10}{2}}=\log_{10}{10}-\log_{10}{2}=1-a\end{align}
より、
\begin{align}&=\frac{3a+2b}{b+(1-a)}\\&=\frac{3a+2b}{1-a+b}\end{align}
(解答終了)
対数の「かけ算は足し算に、割り算は引き算に」の公式を使いました。
対数に関する詳しい解説は、すでに紹介した以下の記事でご覧になれます。
対数の大小を求める問題
問題3.次の数を、小さい方から順に並べよ。
$\log_3{2}$ , $\log_5{4}$ , $\log_4{2}$ , $0.8$
対数の大小を求める場合も、底をそろえる必要があります。
大小を比べるときは、底をそろえてからもポイントになることがあります。それに注意して問題を解いていきましょう。
問題3の解答例
すべて底を $2$ に統一する。
- $\displaystyle \log_3{2}=\frac{1}{\log_2{3}}$
- $\displaystyle \log_5{4}=\frac{2}{\log_2{5}}=\frac{1}{\frac{1}{2}\log_2{5}}=\frac{1}{\log_2{5^{\frac{1}{2}}}}$
- $\displaystyle \log_4{2}=\frac{1}{\log_2{4}}$(あえてこのままにしておく)
- $\displaystyle 0.8=\frac{4}{5}=\frac{1}{\frac{5}{4}}=\frac{1}{\log_2{2^{\frac{5}{4}}}}$
ここで真数部分 $3$ , $5^{\frac{1}{2}}$ , $4$ , $2^{\frac{5}{4}}$ を $4$ 乗すると、
$81$ , $25$ , $256$ , $32$
よって $5^{\frac{1}{2}}<2^{\frac{5}{4}}<3<4$ となり、また底 $2>1$ より
$\log_2{5^{\frac{1}{2}}}<\log_2{2^{\frac{5}{4}}}<\log_2{3}<\log_2{4}$
分母の大小と元の数の大小は逆になるから、
$\log_4{2}<\log_3{2}<0.8<\log_5{4}$
(解答終了)
指数と同様に、対数でも「底が $1$ より大きいか小さいか」で大小関係は変わってきます。
対数と真数の大小関係
底が $1$ より大きい:真数の大小関係と対数の大小関係は一致する
底が $1$ より小さい:真数の大小関係と対数の大小関係は逆になる
この原理は対数関数のグラフを学習してからの方がより理解できます。
対数関数のグラフについては、以下の記事をご参考ください。
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対数方程式
問題4.対数方程式 $\log_7{x}-\log_{\frac{1}{7}}(8-x)=1$ を解け。
最後は対数を含む方程式、いわゆる「対数方程式」についての問題です。
基本は同じで、まずは「底をそろえる」ことから始めましょう。
問題4の解答例
底を $7$ にそろえる。
$\displaystyle \log_7{x}-\frac{\log_7{(8-x)}}{\log_7{\frac{1}{7}}}=\log_7{7}$
$\displaystyle \log_7{x}-\frac{\log_7{(8-x)}}{-1}=\log_7{7}$
$ \log_7{x}+\log_7{(8-x)}=\log_7{7}$
$ \log_7{x(8-x)}=\log_7{7}$
より、底 $7$ が共通しているため、$x(8-x)=7$
これを展開し整理すると、$x^2-8x+7=0$
$(x-1)(x-7)=0$ より、$x=1$ , $7$
今回 $x>0$ かつ $8-x>0$ 、つまり $0<x<8$ が真数条件なので、これら $2$ つの解はいずれも満たす。
(解答終了)
対数方程式では
- 底をそろえて真数だけの方程式に持っていくこと
- 真数条件を満たすこと
以上 $2$ つがポイントです。
真数条件についての詳細は別記事にまとめました。ぜひ以下の記事でより応用力をつけていきましょう。
まとめ:底の変換公式をマスターし対数を自由に扱えるようになろう
以上、底の変換公式の応用問題 $5$ 選でした。改めて本記事の要点をまとめます。
底の変換公式の要点まとめ
- 底の変換公式は、分数のイメージ( $\displaystyle \frac{b}{a}=\frac{\frac{b}{c}}{\frac{a}{c}}$ )とリンクさせると覚えやすい。
- 底の変換公式の $c$ は何でもいいので、計算が楽になるように自由に設定できる(だいたい $c=2$ か $c=3$ で上手くいく)。
- 対数関数や真数条件の理解を深め、さらなる応用力をつけよう。
全問正解できたあなたは自信を持って次のステップに進みましょう。
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コメント一覧 (2件)
素晴らしかわかりやすい解説ありがとうございます。
まさこうさん、嬉しいコメントありがとうございます!!