こんにちは、ウチダです。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
さて、確率の分野って専門用語が多いですよね~。
「同様に確からしい」「根元事象」「全事象」「空事象」などなど、たくさんあります。
その中でもよく出てくる「同様に確からしい」の定義がこれ!
ある試行において、どの根元事象が起こることも同程度に期待できるとき、これらの根元事象は「同様に確からしい」という。
[ふきだし set=”悩む男性”]意味不明な言葉が $2$ つもある…。[/ふきだし]
これだけ見ると確かに難しそうに感じてしまいますが、実はメチャクチャ簡単なこと言ってます。
また、
[ふきだし set=”悩む女性”]同様に確からしいってよく出てくるけど、何がそんなに重要なの?[/ふきだし]
こういう意見を持っている方も多いでしょう。
よって本記事では、同様に確からしいの意味や、「なぜ同様に確からしいが重要か」を、具体的な問題を通して
- 東北大学理学部数学科卒
- 教員採用試験に1発合格 → 高校教諭経験アリ
- (専門は確率論でした。)
の僕がわかりやすく解説します。
同様に確からしいの定義とは【つまり「歪んでないサイコロ」ってこと。】
「同様に確からしい」っていうから難しそうに聞こえるのであって、
- 歪んでない(ゆがんでない)サイコロ
って言われたらどうですか?
歪んでないサイコロって、全部の目が同じくらい出るようになってます。
面はすべてで $6$ つなので、$1$ つ $1$ つの目の出る確率は $\displaystyle \frac{1}{6}$ になりますよね。
[ふきだし set=”悩む男性”]…え?たったそれだけ??[/ふきだし]
[ふきだし set=”ウチダ”]はい。本当にこれだけです。[/ふきだし]
ようは、数学的に言葉で定義しないといけないので、その都合上難しく聞こえるだけであって、言ってることはごくごく当たり前のことなんですね。
同様に確からしくないと何がヤバいのか
以上の話を踏まえ、「同様に確からしくないと何がヤバいのか」について、サイコロを例に考えてみましょう。
…ゆ、ゆ、歪んでいる!?
ということは、$\displaystyle \frac{1}{6}$ とは言い切れないですよね。
つまり、「同様に確からしくないと、そもそも確率が定義できない。」という結論になります。
だって、事象 $A$ の確率 $P(A)$ というのは、
$$P(A)=\frac{事象 A の場合の数}{全事象の場合の数}$$
で定義しましたもんね。
補足
サイコロの例の場合、全事象は $\{1,2,3,4,5,6\}$ で、根元事象というのは $\{1\}$ や $\{2\}$ など、それぞれを指します。
[ふきだし set=”ウチダ”]ここら辺の用語が、確率離れを生み出す原因ですので、あまり深く考えなくてOK!とりあえず問題をガンガン解きましょう♪[/ふきだし]
また、サイコロの $1$ の目と $6$ の目では、掘る面の面積がそれぞれ異なるため、歪んでないサイコロを作るのは意外に難しいです。
あ、これは完全に余談です。
同様に確からしいが大切だとよくわかる問題3選
それでは、ここから実際に問題を解いていくことで、「なぜ同様に確からしいが重要か」を紐解いていきましょう。
具体的には
以上 $3$ 問を扱っていきます。
徐々にレベルアップしていきますよ!
※ $〇$ 問目の部分がリンクになっており、クリックすると問題へジャンプします。
玉を取り出す問題
まず、「同様に確からしい」を気にしないでみると、以下の図のように考えることもできます。
でもやっぱり、$\displaystyle \frac{1}{3}$ ではなさそうですよね。
ここで、確率の鉄則中の鉄則なんですが…
つまり、赤玉 $6$ 個をそれぞれ $赤A$ ~ $赤F$、白玉 $3$ 個をそれぞれ $白G$ ~ $白I$ みたいに、名前を付けてあげるのです。
すると、どの玉を取り出すのも同程度期待できるため、同様に確からしくなります。
では解答です。
【解答】
玉をすべて区別して考える。
全事象の場合の数、つまり $9$ 個の玉から $2$ 個を取り出す場合の数は、$\displaystyle {}_9{C}_{2}=\frac{9・8}{2・1}=36$ 通り。
問われている事象の場合の数、つまり白玉 $3$ 個から $2$ 個を取り出す場合の数は、$\displaystyle {}_3{C}_{2}={}_3{C}_{1}=3$ 通り。
したがって、求める確率は $\displaystyle \frac{3}{36}=\frac{1}{12}$ である。
(解答終了)
[ふきだし set=”ウチダ”]「区別されてなくても区別して考える。」これが確率の基本であり、場合の数との最大の相違点です。ぜひ慣れていってください。[/ふきだし]
サイコロ2つの問題
この問題も、さっきと同じようにサイコロを区別して考えないと、同様に確からしさが保証されません。
よって、区別がつかないサイコロであるにもかかわらず、たとえば $A$,$B$ など区別をつけて考える必要があります。
【解答】
全事象の場合の数、つまりサイコロ $A$,$B$ の出目の組合せの総数は $6×6=36$ 通り。
問われている場合の数、つまり目の和が $6$ になる組合せは
$$(1,5),(2,4),(3,3),(4,2),(5,1)$$
の $5$ 通り。
したがって、求める確率は $\displaystyle \frac{5}{36}$ である。
(解答終了)
[ふきだし set=”ウチダ”]もちろん「出た目の和が $6$ である場合の数を求めなさい」であれば、答えは $(1,5),(2,4),(3,3)$ の $3$ 通りになります。場合の数と確率の違いが徐々にわかってきたのではないでしょうか^^[/ふきだし]
2人の子ども問題【確率のパラドックス】
さて、最後の問題は、有名なパラドックス「 $2$ 人の子ども問題」です。
皆さんはこの答え、直感でいくつだと思いますか?
↓↓↓
おそらく、大勢の方が $\displaystyle \frac{1}{2}$ と答えたのではないでしょうか?
しかし、この問題の真の答えは $\displaystyle \frac{1}{3}$ になります!
【解答】
$2$ 人の子どもを $A$,$B$ として、表を書くとわかりやすい。
つまり、全事象が $(女,男),(男,女),(女,女)$ の $3$ 通りになり、問われている事象が $(女,女)$ の $1$ 通りになる、ということである。
したがって、求める確率は $\displaystyle \frac{1}{3}$ となる。
(解答終了)
この問題においても、$(女,男)$ となる場合が $(女,女)$ となる場合より $2$ 倍起きやすいことに注意して、同様に確からしくしてから考える必要がある、というわけですね。
[ふきだし set=”ウチダ”]ちなみにですが、直感と反した答えになる問題のことを「パラドックス」と呼びます。理論的に正しく導くことが大切ですね。[/ふきだし]
同様に確からしいに関するまとめ
本記事のポイントを改めてまとめます。
- 同様に確からしい $=$ サイコロが歪んでいないこと!
- 区別がないものでも区別をつけて考えよう。
「同様に確からしい」は確率の定義に関わるものであり、一番の基礎と言えます。
しっかりマスターしておきましょう!
「確率」全 12 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
以上です~。
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コメント一覧 (4件)
コメントにご返信頂いていたのに申し訳ありません。
仰るとおり「白玉99個と赤玉1個が入っている袋から赤玉を引く確率」などの例でほとんどの生徒さんは納得してくれると思います。問題は物理学者・数学者の方々です。
ウチダ先生は確率がご専門と言うことですから小針あきひろ先生の「確率・統計入門」(岩波書店)やWILLIAM FELLER先生の「An Introduction to Probability Theory and Its Applications」をお読みになったことがおありではないでしょうか。それらの本にボース・アインシュタイン統計の説明が記載されています。
実験結果から次のことが判っています。
「量子状態Aと量子状態B間を移動している2個のボース粒子がある。
粒子数の配置を(量子状態A内の粒子の数, 量子状態B内の粒子の数)とする。
すると配置(2,0), (1,1), (0,2)である確率の比は1:2:1ではなく、1:1:1である。」
これをボース先生は粒子を区別できないためだと説明し、小針先生もFELLER先生も本の中でそのことを強調なさっています。実験結果は疑うべくもありませんが、説明方法は間違っています。
物理の世界も数学の世界も権威を守るために、それを隠そうとしています。
サイコロの話さえも公表されることを恐れています。そんなドラマのようなことが本当に起こっているんです。
ですから、先生のように、理解を助ける技術に優れ発信力のある方に、サイコロについて、
「区別しないで考えた事象が同様に確からしい」と考えることは数学的に間違っていることを多くの人に知らしめて頂きたいのです。
数学が真理よりも権威を重んじるのであれば最早、地球上に科学は存在しません。
よろしくお願いいたします。
岡安様
コメントありがとうございます。かなり難しい問題ですね…
私は数学者ではないので、数学者や物理学者の仰ることを否定するだけの力はありません。
なので、生徒に伝わるわかりやすい説明をすることが限界でございます。
期待に添えず申し訳ございませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
ちょっと、生徒さん向けではないかもしれませんが、
独立事象の確率計算に「区別できない」という考えを
使うと論理的な矛盾を生じさせてしまうこと*
を教える立場の人のために解説して頂けないでしょうか。
*例えば、2個のサイコロを投げて
①両方とも偶数になる
②片方が偶数で片方が奇数になる
③両方とも奇数になる
という確率計算で明らかです。
【区別できる】
偶奇だけ見た場合の数①1通り②2通り③1通り
そこで確率は①1/4②1/2③1/4
目まで見た場合の数①9通り②18通り③9通り
確率は同じく①1/4②1/2③1/4となり合理性あり。
【区別できない】
偶奇だけ見た場合の数①1通り②1通り③1通り
そこで確率は①1/3②1/3③1/3
目まで見た場合の数①6通り②9通り③6通り
確率は①2/7②3/7③2/7と矛盾した結果になって
しまいます。
よろしくお願いいたします!
岡安一壽様
コメントありがとうございます!
そもそも確率を定義する際、根元事象がすべて同様に確からしくなければいけません。
よって、区別できないサイコロの場合、その①~③の定義だと確率を定義してはいけない、ということになります。
もっと踏み込んだ話をすれば、以下の3つの公理を満たしていればそれは「確率」として扱えます。
1.0≦P(A)≦1
2.P(S)=1
3.A,Bが排反⇒P(A∪B)=P(A)+P(B)
ただ、この3つの公理の前提として、均一な量として定義された空間が必要条件なのです。
そして、その「均一な量」というのが、確率論で言うところの「同様に確からしさ」なのです。
同様に確からしい空間で定義をしないと矛盾が生じることは、もっと極端な例で解説されるとよりわかりやすいかと思います。
(例.白玉99個と赤玉1個が入っている袋から赤玉を引く確率)
…これで解答になってますでしょうか?