こんにちは、ウチダです。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
さて、数学B「数列」の内容が含まれているため、数ⅠAのセンター試験には出てこない「確率漸化式」。
しかし、東大などの難関大では、文系理系問わずふつうに出題されます。
[ふきだし set=”悩む男性”]確率漸化式の基本的な解き方を、わかりやすく解説してほしいな。[/ふきだし]
[ふきだし set=”悩む女性”]東大など、難関大の入試問題にも対応できる力を身に付けたいな。[/ふきだし]
こういった悩みを抱えている方は多いでしょう。
よって本記事では、確率漸化式の解き方の基本から、東大の入試問題を含む確率漸化式の問題 $3$ 選まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 教員採用試験に1発合格 → 高校教諭経験アリ
- (専門は確率論でした。)
の僕がわかりやすく解説します。
確率漸化式の解き方とは?【「状態遷移図」を書いて立式しよう】
確率漸化式の問題における解き方の基本。それは…
これに尽きます。
[ふきだし set=”ウチダ”]状態推移図とか、確率推移図とか、いろんな呼び名があります。例題を通してわかりやすく解説していくので、安心して続きをどうぞ![/ふきだし]
例題「箱から玉を取り出す確率漸化式」
たとえばこういう問題。
$\displaystyle p_1=\frac{2}{5}$ ぐらいであればすぐにわかりますが、$p_2$ 以降が難しいですね。
[ふきだし set=”考える男性”]パッと見だけど、$n$ 個目までの和が偶数か奇数かによって、$n+1$ のときの確率 $p_{n+1}$ は変わってくるよね。[/ふきだし]
この発想ができたあなたは、非常に鋭い!
ようは、$p_n$ と $p_{n+1}$ の関係を明らかにすればよくて、そのために「状態遷移図」を上手く使う必要がある、ということです。
よって状態遷移図より、
というふうに、$p_{n+1}$ と $p_{n}$ の関係から漸化式を作ることができました。
あとは漸化式の解き方に従って、
- 特性方程式を解くと $\displaystyle α=\frac{1}{2}$
- 数列 $\displaystyle \{p_n-\frac{1}{2}\}$ は初項 $\displaystyle -\frac{1}{10}$,公比 $\displaystyle -\frac{1}{5}$ の等比数列となる
以上より、$$p_n=\frac{1}{2}\{1+(-\frac{1}{5})^n\}$$
と求めることができます。
[ふきだし set=”ウチダ”]確率漸化式ならではのポイントは「状態遷移図を上手く使って立式する」ところにあります。漸化式の解き方そのものについては「漸化式~(後日書きます)」の記事をご参照ください。[/ふきだし]
確率漸化式の応用問題2選
確率漸化式の解き方のポイントは掴めましたか?
先ほどの問題は、確率漸化式の中では最も基本的だと言ってよいでしょう。
よってここからは、立式の難易度をレベルアップさせた応用問題 $2$ つについて考えていきます。
具体的には
- 数直線上を移動する確率漸化式
- 東大入試問題(2012年)
の $2$ 問を解説していきますよ!
数直線上を移動する確率漸化式
さっきの問題と何が違うのか、よ~く考えてみて下さい^^
↓↓↓
【解答】
$n-2$,$n-1$,$n$ の関係を、状態遷移図を使って明らかにしていく。
よって状態遷移図より、$n≧3$ のときの確率漸化式は
となる。
あとは漸化式の解き方に従って、
- 特性方程式 $\displaystyle α^2=\frac{2}{3}α+\frac{1}{3}$ を解くと $\displaystyle α=-\frac{1}{3} \ , \ 1$
- 数列 $\{p_{n+1}-p_n\}$ と数列 $\displaystyle \{p_{n+1}+\frac{1}{3}p_n\}$ の一般項をそれぞれ求めてあげる
以上より、$$p_n=\frac{3}{4}\{1-(-\frac{1}{3})^{n+1}\} \ (n≧3)$$
と求めることができる。
※$n=1$,$n=2$ を代入しても $\displaystyle p_1=\frac{2}{3} \ , \ p_2=\frac{7}{9}$ と正しい答えが求まります。
(解答終了)
この問題のポイントは、「点 $n-2$ から点 $n-1$ を経由せず直接点 $n$ に到達する場合がある」ところですね。
それさえ気づいてしまえば、あとは隣接三項間の漸化式を解いて終わりです。
東大入試問題【超良問】
※東京大学2012年理系第2問・文系第3問より出典
さ~て、ラストはお待ちかね。東京大学の超難問入試問題です!
図形の確率漸化式ということもあって、今までとはちょっと違った発想も必要になります。
いきなり解答だと長くなってしまうため、まずは $2$ つヒントを出したいと思いますので、ぜひヒントをもとに解いてみてください♪
↓↓↓
ヒント1「図形の対称性」
以下の図のように、部屋に名前を付けてみます。
ここで、「図形の対称性」を意識して名前を付けることがポイントです!
「 $〇$ と $〇’$ 」に行く確率は同じであることが予想できますよね?
よって、$$Qに行く確率 = Q’に行く確率$$の式が成り立ち、置く文字を節約することができます。
ヒント2「奇数と偶数に着目」
それでは、ちょっと具体的に実験してみましょうか。
まず初めに部屋 $P$ にいることから、$1$ 秒後,$2$ 秒後,…に存在する部屋は次のようになります。
こうして見ると、
この重要な事実に気づくことができましたね!
よって、球が $n$ 秒後に部屋 $Q$ にある確率を $q_n$ とした場合、
- $n$ が奇数 → $q_n=0$
- $n$ が偶数 → $q_n$ はまだわからない。
ここまで整理できます。
[ふきだし set=”ウチダ”]これにてヒントは終わりです。「図形の対称性」と「奇数偶数」に着目し、ここまで整理できました。あとは”状態遷移図”を上手く使えば、解けるはずです![/ふきだし]
解答
【解答】
球が $n$ 秒後に $P$ にある確率を $p_n$,$Q$ または $Q’$ にある確率を $q_n$ とする。
このとき、$2k$ 秒後から $2k+2$ 秒後までの状態遷移図を考えよう( $k$ は $0$ 以上の整数)。
以上より、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
と式が立てられた。
ここで、$p_{2k}=a_{k} \ , \ q_{2k}=b_{k}$ とおくと、偶数秒後では部屋 $P$,$Q$,$Q’$ いずれかに必ず存在するため、$a_k+b_k=1$ が常に成り立つ。
よってこれらを①の式に代入すると、
あとは漸化式の解き方に従って、
- 特性方程式を解くと $\displaystyle α=\frac{2}{3}$
- 数列 $\displaystyle \{b_k-\frac{2}{3}\}$ は初項 $\displaystyle b_1-\frac{2}{3}=\frac{2}{3}×\frac{1}{2}-\frac{2}{3}=-\frac{1}{3}$,公比 $\displaystyle \frac{1}{2}$ の等比数列となる
以上より、$$b_k=\frac{2}{3}\{1-(\frac{1}{2})^k\}$$
したがって、図形の対称性より、$2k$ 秒後に球が $Q$ にある確率 $Q_{2k}$ は
$$Q_{2k}=\frac{1}{2}q_{2k}=\frac{1}{2}b_k=\frac{1}{3}\{1-(\frac{1}{2})^k\}$$
まとめると、$$Q_n=\left\{\begin{array}{ll}0 \ &( n が奇数のとき)\\\frac{1}{3}\{1-(\frac{1}{2})^{\frac{n}{2}}\} \ &( n が偶数のとき)\end{array}\right.$$
(解答終了)
ここまでお疲れさまでした~。
確率漸化式に関するまとめ
本記事のポイントを改めてまとめます。
- 確率漸化式は「状態遷移図」を上手く使って立式しよう!
- 隣接二項間や隣接三項間の漸化式の解き方はマスターしておくべし。
- 東大の問題は難しいけど、「図形の対称性」「奇数と偶数」に着目することで、基本パターンに持ち込めます。
確率漸化式は面白い問題が多いので、ぜひ問題集をやりこんでほしいと思います!
「確率」全 12 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
以上で終わりです。
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