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背理法とは?ルート2が無理数である証明問題などの具体例をわかりやすく解説!【排中律】

ではここからは、いよいよ大学数学の内容に足を踏み入れていきます。

まずはいろいろな定義が必要になってきますが、どれも欠かせない定義です。

「なぜ必要か」考えながら読み進めていただければと思います。

背理法と対偶法が本質的に同じなワケ【大学数学】

背理法と対偶法の背景には、「命題は真であるか偽であるかの $2$ 択しかない」という定義があります。

数学で扱っていく以上、これだけで十分では?と思いがちです。

しかし、より高度な議論、たとえば

  • 未来に対する予想(明日の天気は晴れである。)
  • 未だ判明していない事実に関する命題( $100$ 番目のメルセンヌ素数は~桁以下である。)

など、「真 or 偽では表現できないもの」も数多く存在します。

「メルセンヌ素数について詳しく知りたい」方はこちらから!!

⇒⇒⇒完全数とは?簡単な求め方をわかりやすく証明!28や496や8128以外についても一覧にまとめてみた

こういう命題に関しては、上の例であれば“不定”、下の例であれば“未定義(計算中)”という新たな値を定義する必要があります。

したがって、背理法や対偶法を一言でまとめるとすれば、「こういう面倒くさいケースをすべて除外した枠組みでの証明方法」ということになります。

二値論理と排中律

さて、以上の話を数学で扱っていくには、やはり定義が必要です。

今回扱っていく枠組みでは、真(True)と偽(False)しかありませんので、それぞれ$$真(True)…T$$$$偽(False)…F$$と頭文字を用いて定義しましょう。

この定義のもとに成り立つ論理学のことを“二値論理学(古典論理学)”と呼び、二値論理学において成り立つ法則の一つに「排中律」と呼ばれるものがあります。

排中律…任意の命題 $P$ に対し $P∨¬P$( $P$ であるか、または $P$ でない)が成り立つことを主張する法則
※Wikipediaより引用

否定の記号は「ー(バー)」ではなく「¬」を用います。

なぜかはよくわかりません。(笑)

きっと集合論と区別するためだと思います。

「かつ」と「または」も、微妙に形が変わっていますね。

これも集合論との区別を意味しているものだと考えられます。

排中律を用いる面白い問題

少し脱線しますが、「排中律はスゴイやつなんだ!」と感じる良い問題を解いてみましょう。

問題. $a^b$ が有理数となるような、二つの無理数の組 $(a,b)$ が存在することを示せ。

【証明】

$\sqrt{2}$ は無理数であることを利用する。

ここで、$\sqrt{2}^{\sqrt{2}}$ は、有理数か無理数かのどちらかである。

ⅰ) $\sqrt{2}^{\sqrt{2}}$ が有理数である場合

$a=b=\sqrt{2}$ とすれば、そのまま題意を満たすので証明完了。

ⅱ) $\sqrt{2}^{\sqrt{2}}$ が無理数である場合

$a=\sqrt{2}^{\sqrt{2}} , b=\sqrt{2}$ とすると、$$a^b=(\sqrt{2}^{\sqrt{2}})^{\sqrt{2}}=\sqrt{2}^{(\sqrt{2}×\sqrt{2})}=\sqrt{2}^2=2$$

よって、題意を満たす。

ⅰ)、ⅱ)より、命題は証明された。

(証明終了)

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この証明の面白いところは、「$\sqrt{2}^{\sqrt{2}}$ が実際有理数か無理数かはどっちでもいい」ところですね!

この排中律は、たとえば真・偽・不定の $3$ つ、もしくはそれ以上の値からなる“多値論理学(非古典論理学)”では成り立ちません。

真理値表(論理演算)での「ならば」の定義

「かつ」「または」「否定」の定義は先ほど行いました。

ここでは「ならば」をより厳密に定義するために、“真理値表”を用います。

↓↓↓

真理値表というのは、図のように真か偽の値によって論理演算(ここでは”ならば”)の真偽を定めた表のことです。
※真理値を二値論理学では”真偽値”とも言いますが、多値論理学だとそれが通用しないため、以降真理値で統一します。

$A$ が真のときの”ならば”の真理値は自明ですよね。

しかし、困るのが $A$ が偽のときの”ならば”の真理値です。

ここをしっかりと、論理がおかしくならないように定義したいです。

さて、いきなりですが”ならば”の定義は以下のように定めます。

↓↓↓

こういうふうに定義すると色々とつじつまが合う、ということなのですが…

これ、中々納得できませんよね。

というのも、この定義について調べたところ、いろんなサイトでそれぞれ違った解釈をしていました。

数学に精通している人でも、この定義には苦しめられているようです。

そこで、僕がオススメする $2$ つの解釈とその他面白い解釈を、簡単ではありますがご紹介したいと思います。

「ならば」の解釈1【嘘かどうか】

まず一つ目は、日常会話での「ならば」についての解釈です。

↓↓↓

「一年以内にチャンネル登録者が $100$ 万人に届かなかったら、オレは〇〇をやめる!!」

誰とは言いませんが、この宣言はYou〇ubeで聞いたことがあるのではないでしょうか。

さて、この言葉が嘘になるとき、それはどういう状況でしょう。

それは…「一年以内にチャンネル登録者が $100$ 万人に届かなかったのに、〇〇をやめなかったとき」ですよね。

もし、一年以内にチャンネル登録者が $100$ 万人に達したのであれば、〇〇をやめようがやめなかろうが、嘘をついたことにはなりません。

このように、そもそも前提が満たされないとき、嘘をつくことはできないわけです。

これを真理値に置き換えて定義したものが”真理値表”である、と捉えることで、少しは納得できるのではないでしょうか^^

参考文献1.Wikipedia「論理包含」

「ならば」の解釈2【ド・モルガンの法則】

そもそも、「ならば」の定義を以下のように考えます。

\begin{align}「A ならば B」 ⇔ 「A であるのに B でないということはない」\end{align}

※この論理式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

これは、先ほどのYou〇uberの例にも当てはまりますね。

さて、この同値関係を論理演算で表し、ド・モルガンの法則を使って式変形すると、以下のようになります。

\begin{align}(A ⇒ B) &⇔ (¬(A ∧ ¬B))\\&⇔ ¬A ∨ ¬¬B\\&⇔ ¬A ∨ B\end{align}

よって「A ならば B」は「A でないか、または B である」と同値であることがわかりました。

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ここで、¬A ∨ B の真理値表を見てみましょう。

∨や∧の真理値表は納得いただけるかと思います。

したがって、この真理値表と一致することを利用すれば、「ならば」の真理値が定まるわけですね。

参考文献2.基本的な論理演算

その他の面白い解釈のご紹介

僕が調べて「これは面白いな~」と感じた解釈を $2$ つご紹介したいと思います。

まず一つ目は、

  • 逆は必ずしも真ならず
  • 推移律

以上 $2$ つの論理規則を用いた解釈です。

推移律の話は難しいですが、「逆は必ずしも真ならず」の話は、たしかに~と納得できるかと思います。

詳しい話は、リンクから飛べます。

⇒参照.「含意の真理表はどうして決まるのか」

次に二つ目は、

  • トートロジー
  • モーダスポネンス(分離規則)

以上 $2$ つの知識を用いた鮮やかな解釈です。

$$((P ⇒ Q) ∧ P) ⇒ Q$$がモーダスポネンスよりトートロジーになることを利用する発想が面白いです。

ただし、一つ懸念点を挙げるとすれば、$X=(A ⇒ B) ∧ A$ とおくことで真理値表を下の図のように導いているのですが…

↓↓↓

「この真理値表の下の $2$ 行を当てはめる」という解釈なのですが、この話がそっくりそのまま $A$、$B$ に対しても成り立つとは限りません。

ただ、発想が柔軟で面白いことは確かです。僕はこのサイトを見て、感動しました。

詳しい話は、リンクから飛べます。

⇒参照.「仮定が偽なら結論は何でもあり」

<補足>

トートロジー(恒真式)…そこに含まれる命題変数の真理値、あるいは解釈に関わらず常に真となる論理式。
※Wikipediaより引用

モーダスポネンス(分離規則)…論理学における妥当で単純な論証。
例.「お腹がすいたらご飯を食べる。私はお腹がすいている。従って、私はご飯を食べる。」
この論述は、別にお腹がすいていない時でも正しい。
⇒参考.Wikipedia「モーダスポネンス」

背理法と対偶法の原理

ここまでくれば、いよいよ対偶法と背理法の原理に迫ることができます。

まずは簡単な対偶法から見ていきましょう。

「ならばの解釈2」で見たように、$$(A ⇒ B) ⇔ ¬A ∨ B$$が成り立ちます。

この事実や、他の同値変形(たとえばド・モルガンの法則など)を利用すると、

\begin{align}(¬B ⇒ ¬A) &⇔ ¬¬B ∨ ¬A \\&⇔ B ∨ ¬A \\&⇔ ¬A ∨ B \\&⇔ (A ⇒ B)\end{align}

となり、命題と対偶の真偽が一致することが示せました。

これで証明終了です!簡単ですね^^

背理法はちょっとだけ難しいです。

というのも、今度は恒真式(トートロジー)の反対の概念である矛盾式を利用しなくてはなりません。
※矛盾式…そこに含まれる命題変数の真理値、あるいは解釈に関わらず常に偽となる論理式。

トートロジーの論理演算は、頭文字を取って $T$ で表します。

それに対し、矛盾式の論理演算は、$T$ を逆にした形 $⊥$ で表します。

「垂直」と同じ記号ですが、ここではトートロジーの裏だと押さえた方が良いでしょう。

さて、矛盾式 $⊥$ を用いて背理法を表すと、$$(A ∧ ¬B) ⇒ ⊥$$

これが背理法で考える論理式ですよね。
<解説>日本語で表すと「$A$ かつ $B$ でないとするならば、矛盾が起きる(常に偽である)」となります。

さて、この論理式を、同値な式変形を用いて $A ⇒ B$ に導くことができればOKです。

↓↓↓

\begin{align}((A ∧ ¬B) ⇒ ⊥) &⇔ ¬(A ∧ ¬B) ∨ ⊥ \\&⇔ ¬(A ∧ ¬B) \\&⇔ ¬A ∨ ¬¬B \\&⇔ ¬A ∨ B \\&⇔ (A ⇒ B)\end{align}

<解説> $P  ∨ ⊥$ の意味は「 $P$ か $⊥$ のどちらか一方が真であるとき真」ですが、$⊥$ は常に偽であるため、$P  ∨ ⊥ ⇔ P$ となります。

したがって、背理法の正当性が証明されました!

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長い道のりでしたが、”ならば”の論理演算について深く考えることで、対偶法も背理法も正当な証明方法であることが示せましたね。

今示した方法は、論理式の同値変形によるものでしたが、もちろん真理値表を使っても構いません。

$4$ 通りの場合しかありませんので、総当たりで調べて、すべての場合で真偽が一致すればOKです。

↓↓↓

二値論理学と多値論理学のまとめ【無限】

背理法と対偶法の理解は深まったでしょうか。

難しい内容であることは間違いないので、ぜひゆっくり読み進めて、理解できないところがあればコメントなど残していただければと思います^^

二値論理学は別名「古典論理学」、多値論理学は別名「非古典論理学」と呼ばれます。

このことから、二値論理学は古いから疎かにしてよい、という思い込みだけは無くしていただきたく思います。

これは物理学、特に力学と似ています。

力学にも「古典力学」と呼ばれる分野が存在します。

他の有名な分野は「熱力学」「量子力学」などですね。

これは何も「古典力学が劣っている」というわけではありません。

むしろ、「古典力学が基本となって力学を形成している」と捉えてよいでしょう。

つまり、数学も同じで、まずは考えやすい二値論理学(古典論理学)から入り、基本を押さえたうえで、二値論理学では表現できない多値論理学(非古典論理学)に挑戦すべきです。

僕が高校生のとき「背理法は必ずしも成り立たない」と耳にしたことがあり、またそのイメージからか「背理法は嫌い」と表現している知人も何人かいました。

僕は、「背理法を嫌う理由としてそれは適切ではない」と感じるんですよね。

だって、シンプルに

二値論理学では背理法を使ってOK。多値論理学では背理法は使っちゃダメ。

これだけのことじゃないですか。

話が右往左往していて申し訳ないのですが、「じゃあ背理法を使っちゃいけないものって何だろう…」と考えたとき、以下のようなものが挙げられるかと思います。

  • 素数で一番多いのは、一の位が $3$ である数。
  • 幽霊がいるかいないか
  • ビックバンは本当に起きたのか
  • 神様は存在するのか
  • 死後の世界はどうなっているのか

すなわち、「人知を超えた概念や存在」に対して背理法は使っちゃいけない、ということだと私は思います。

これを無視して、何でもかんでも背理法で結論付けようとすると、「背理法を深く理解していない人」に見られると思いますので、注意しましょう。

また、白と黒だけでなく「グレー」が存在するような、曖昧なものにも背理法や対偶法は使えないですね。

背理法に関するまとめ

$1$ ページ目では、背理法を使った証明問題の代表例

  • $\sqrt{2}$ が無理数であること
  • 素数が無限個存在すること

主にこの $2$ つについて考えてきました。

その上で、このページの内容も理解できると、一気に数学の世界がクリアなものに見えてくるかと思います。

「考える枠組み」みたいなものが自然と見えてくるからですね。

高校数学における証明方法として、「対偶証明法」「背理法」のほかに「数学的帰納法」と呼ばれるものがあります。

数学的帰納法については、成り立たせている理論が他の $2$ つとは大きく異なります。

簡単に話すと、「自然数の公理(ペアノの公理)」から自明に成り立つものが数学的帰納法です。

数学的帰納法に関する記事はこちらから!!

↓↓↓

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(後日書きます。)

以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!

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