こんにちは、ウチダです。
数学Ⅲで「ネイピア数 $e$ 」というものが定義されます。
$e=2.71828182846…$
この数は、対数関数では「自然対数の底」という別名もあるぐらい、重要な無理数です。
しかし、定義が難しいので、
$e$ の定義を教科書で読んだんだけど、正直良くわからなかったんですよね…
こういった悩みを抱えている人は非常に多いです。
ということで本記事では、ネイピア数 $e$ の定義式の証明やネイピア数 $e$ に成り立つ性質などについて
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
ネイピア数eの定義をわかりやすく解説します
$\displaystyle e=\lim_{n\to\infty}(1+\frac{1}{n})^n$
または $\displaystyle e=\lim_{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}$ でもOK!
さて、この $2$ 式の言わんとしていることは
$n=100$ → $\displaystyle (1+\frac{1}{100})^{100}$
$n=1000$ → $\displaystyle (1+\frac{1}{1000})^{1000}$
$n=1000000$ → $\displaystyle (1+\frac{1}{1000000})^{1000000}$
というふうに、$\displaystyle (1+非常に小さい数)^{非常に大きい数}$ ということになるので、意味は同じになりますね。
実際、$\displaystyle \frac{1}{n}=h$ として一式目を変形すれば、すぐに二式目が導出できます。
さて、ではこの定義式が一体どこから出てきたのか、ということを解説していきたいと思います。
ネイピア数eの定義の意味【結論:ある指数関数の底です】
画像で示したとおり、
これがネイピア数 $e$ の定義の意味、すなわち出発点です。
なんでこの数を定義しようと思ったんですか?
後ほど解説しますが、実は $y=e^x$ という関数は、何回微分しても変わらないただ唯一の存在なのです…!
足し算で言えば $0$、掛け算で言えば $1$ みたいな基準となる存在はめちゃくちゃ重要です。
よって、微分の基準となるネイピア数 $e$ も非常に重要な数、ということになります。
では話を戻して、この定義から冒頭で紹介した
という式を $2$ つのSTEPに分けて導出していきたいと思います!
STEP1:逆関数を考える
逆関数というのは、$y=x$ で折り返すとぴったり重なる関数のことです。
つまり、$x$ と $y$ を入れ替えればOKです。
逆関数とは~(準備中)
$x=y+1$ は $y=x-1$ と簡単に変形できます。
また、$x=a^y$ についても、両辺に底が $a$ の対数を取ることで
という、対数関数に生まれ変わります。
よって、
これと全く同じ意味になります。
「なぜ逆関数を考えて、対数関数にしたのか。」それは次のSTEPで判明します!
STEP2:微分して定義式を導出する
では関数 $y=\log_a x$ に対し、定義どおりに微分していきましょう。
ここで、$x=1$ における接線の傾きが $1$ のとき $a=e$ であったので、
これを後は対数関数の性質等を用いて、式変形していけばOKです!↓↓↓
(証明終了)
ホントだ!記事の冒頭で紹介した $e$ の定義式にたどり着いたね!
そう!なのでこの式を、$e$ の定義式として使ってOKだということになりますね。
【コラム】実はこれもeの定義式です
今回、指数関数の逆関数である「対数関数」に対し微分を考えることで、冒頭に紹介した定義式を導くことができました。
では逆関数を考えずに、指数関数 $y=a^x$ に微分をしたらどうなるのでしょうか…?
【指数関数を微分して $e$ の定義式を導く】
まずは同様に、$y=a^x$ を定義どおりに微分をする。
ここで、$x=0$ における接線の傾きが $1$ のとき $a=e$ であったので、
これも $e$ の定義式として扱うことができる。
(導出終了)
ここで導いた定義式は、$e=~$という形ではないので、計算においてはちょっと使いづらいです。
しかし、$\displaystyle \frac{0}{0}$ の不定形の極限であるため、これを知っていないと解けない極限の計算問題があるのも事実です。
色々なネイピア数 $e$ の定義式を学びましたね…。どれも意味は同じなので、体系的に理解し覚えていきましょう!
$e$ の意味は、「 $x=0$ の接線の傾きが $1$ となるような指数関数 $y=a^x$ の底 $a$」
この定義から導ける式は、主に以下の $3$ つであり、これらをすべて「 $e$ の定義式」とする。
①$\displaystyle e=\lim_{n\to\infty}(1+\frac{1}{n})^n$
②$\displaystyle e=\lim_{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}$
③$\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{e^h-1}{h}=1$
ネイピア数eの概算値を求める手順1【二項定理】
先ほどの定義の式を、「二項定理」を用いて展開していきます。
※この数式は横にスクロールできます。
このときポイントとなるのは、「極限(lim)は途中まではいじらない!」ということですね
「二項定理について詳しく知りたい!」という方は、以下の記事をご参考ください。↓↓↓
関連記事
二項定理の公式を超わかりやすく証明!係数を求める問題に挑戦だ!【応用問題も解説】
さて、ここまで展開出来たら、極限を考えていきます。
極限の基本で、$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0$$というものがありました。
実はこの式にも、たくさんそれが潜んでいます。
例えば、第三項目について見てみると…
このように、極限を取ると式を簡単な形にすることができて…$$e=1+1+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+…$$という式になります。
さて、二項展開は終了しました。
次はある数列の性質を使います。
ネイピア数eの概算値を求める手順2【無限等比級数】
最後に出てきた式を用いて説明します。
$$e=1+1+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+…$$
今、先頭の「1+1」の部分は無視して、$$\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+…$$について考えていきます。
まず、こんな式が成り立ちます。
$$\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+…<\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+…$$
成り立つ理由は、右辺の方が左辺より、各項の分母が小さいからです。
分母が小さいということは、値は大きくなるので、右辺の方が大きくなります。
(このように、不等式を立てることを「評価する」と言います。今回の場合上限を決めているので、「上からおさえる」という言い方も、大学の講義などではよく耳にしますね。)
では評価した式$$\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+…$$について見ていきましょう。
ここで勘の鋭い方は気づくでしょうか…。
そう!この式、実は…$$初項\frac{1}{2}、公比\frac{1}{2}の無限等比級数$$になっています!(無限等比数列の和のことを「無限等比級数」と言います。)
ですから、無限等比級数の和の公式を用いると、
よって、最初の式に戻ると…
となり、$$2<e<3$$であることがわかりました!
(無限等比級数が0より大きいことは明らかなので、eが2より大きいこともしたがいます。)
これだけでも、ある程度の正体がつかめたのですから、すごい進展です。
(ちなみに、ネイピア数eの定義に$n$を徐々に大きくして当てはめていくと…$$e=2.718…$$みたいな数になるので、きちんと2から3の間におさまってますね。)
では、最大の謎。
これについて、次の章から詳しく見ていきましょう。
ネイピア数eの定義に関するまとめ
いかがだったでしょうか。
今日の話を簡単にまとめると、こうなります。
- ネイピア数eの定義は、\begin{align}e&=\lim_{n\to\infty}(1+\frac{1}{n})^n\\&=\lim_{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}\end{align}でも、$$\lim_{h\to 0}\frac{(e^h-1)}{h}=1$$でもよい。
(結局は同じことを意味している。) - ネイピア数eを底とした指数関数の$x=0$での接線の傾きが1になる。
特に三番目の微分の結果は非常に重要で、底がeの対数のことを「自然対数」と呼ぶのも、この微分の簡単さからきています。
「底がeの指数関数の微分は元の関数と全く変わらない」というのも、よくよく考えてみればすごいですよね!
そう、実は数学が発展するときの特徴が二つありまして、
- 自然界の法則を見出せたとき
- 基準となるものを見出せたとき
なんですね。
一番目の特徴は、「自然対数」に当てはまっていて、二番目の特徴は「$(e^x)’=e^x$」に当てはまっています。
例えば、円周率πも「直径が1に対する円周の長さ」のことで、これって誰かが決めたものではなく、自然とそうなっていたんですよね。
また、足し算で言えば「0」、掛け算で言えば「1」といったように、演算をしても変わらないものの発見というのは、数学の基準を作り出すので、発展につながります。微分という一種の「演算」をしても変わらないというのは、すごい性質ですよね。
ぜひ、ネイピア数eの美しさを感じていただければと思います^^。
また、ネイピア数eについての雑学を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
↓↓↓
「超越数とは何か?自然対数の底eや円周率πが超越数である証明を解説!【超越数一覧もあり】」
以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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コメント一覧 (1件)
僕的にネイピア数が現実とリンクしやすい理由の考察ですが
物理演算の更新が無限で、変化はものすごく微小で、そしてその条件下で最古の基準の1とリンクするための数だからと思ってます。