こんにちは、ウチダショウマです。
今日は、数学Ⅲで唐突に登場してくる
「ネイピア数(自然対数の底) e 」
の定義で極限が出てくる意味や、自然対数の微分公式について詳しく解説します!
ネイピア数eとは?
まずは、定義をおさらいしておきます。
…これが唐突に出てくるのですから、びっくりしますよね!
ちなみに、この2式が言っていることが同じであることは理解していただけるでしょうか?
文字を使わずに表すとすれば…$$(1+〇)^□$$の形になっていて、この式の「〇」の部分を0に限りなく近づけ、「□」の部分を∞に発散させていますね!(ここさえ理解できればまずは大丈夫です^^)
ただし!一つだけ気をつけていただきたいのが、
〇と□は逆数の関係にある!!
これには注意しておきましょう。
(つまり、$〇×□=1$になっているということです。)
さて、定義が抑えられたら、
まずはこのネイピア数eが大体どのぐらいの値を取るのか、
調べてみることにしましょう。
ネイピア数eの概算値を求める手順1【二項定理】
先ほどの定義の式を、「二項定理」を用いて展開していきます。
※この数式は横にスクロールできます。
このときポイントとなるのは、「極限(lim)は途中まではいじらない!」ということですね
「二項定理について詳しく知りたい!」という方は、以下の記事をご参考ください。↓↓↓
関連記事
二項定理の公式を超わかりやすく証明!係数を求める問題に挑戦だ!【応用問題も解説】
さて、ここまで展開出来たら、極限を考えていきます。
極限の基本で、$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0$$というものがありました。
実はこの式にも、たくさんそれが潜んでいます。
例えば、第三項目について見てみると…
このように、極限を取ると式を簡単な形にすることができて…$$e=1+1+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+…$$という式になります。
さて、二項展開は終了しました。
次はある数列の性質を使います。
ネイピア数eの概算値を求める手順2【無限等比級数】
最後に出てきた式を用いて説明します。
$$e=1+1+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+…$$
今、先頭の「1+1」の部分は無視して、$$\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+…$$について考えていきます。
まず、こんな式が成り立ちます。
$$\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+…<\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+…$$
成り立つ理由は、右辺の方が左辺より、各項の分母が小さいからです。
分母が小さいということは、値は大きくなるので、右辺の方が大きくなります。
(このように、不等式を立てることを「評価する」と言います。今回の場合上限を決めているので、「上からおさえる」という言い方も、大学の講義などではよく耳にしますね。)
では評価した式$$\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+…$$について見ていきましょう。
ここで勘の鋭い方は気づくでしょうか…。
そう!この式、実は…$$初項\frac{1}{2}、公比\frac{1}{2}の無限等比級数$$になっています!(無限等比数列の和のことを「無限等比級数」と言います。)
ですから、無限等比級数の和の公式を用いると、
よって、最初の式に戻ると…
となり、$$2<e<3$$であることがわかりました!
(無限等比級数が0より大きいことは明らかなので、eが2より大きいこともしたがいます。)
これだけでも、ある程度の正体がつかめたのですから、すごい進展です。
(ちなみに、ネイピア数eの定義に$n$を徐々に大きくして当てはめていくと…$$e=2.718…$$みたいな数になるので、きちんと2から3の間におさまってますね。)
では、最大の謎。
これについて、次の章から詳しく見ていきましょう。
ネイピア数eの定義の意味【指数関数の接線の傾き】
ネイピア数を語るうえで必ずついて回ってくるのが、「指数関数」と「対数関数」です。
まずは図をご覧ください。
手書きで失礼します(笑)。
この図にも書いてあるのですが、
こういう発想が出てきます。(ここが数学のミソ!)
まあ、(0,1)という座標はどんな指数関数でも通る点ですし、そこでの接線の傾きが「1」となるものは何かの基準になりそうですよね。
(ちなみに、この考え方でも、$2<e<3$は計算によって出すことができます。
$2<e$については、もし$y=2^x$ならば、(1,2)という点を通るので、そこから直感的に接線の傾きが1より小さくなることは理解できます。)
ということで、これを知るために、
今度は「逆関数」なるものを考えてみましょう!
指数関数の逆関数を考える
さて、指数関数の逆関数、皆さんお分かりですか?
実は、これが先ほど少し例に挙げた
「対数関数」
と呼ばれるものなんですね。
その前に、まずは逆関数の定義から入っていきましょう。
逆関数…$y=f(x)$に対して、$x=f(y)$と定めたもの。
つまり、「$x$と$y$を入れ替えたもの」と考えることができます。
よって、$y=a^x$の逆関数は、$$x=a^y$$となります。
この形だと扱いづらいので、$y=…$の形に直していきましょう。
ここで、底が$a$の対数を取ります。
すると両辺は、
よって、$$y=\log_a x$$これが、底が$a$の指数関数の逆関数です。
ちゃんと、指数関数の逆関数は対数関数になりました。
さて、この逆関数、いい性質があります。
図をご覧ください。
逆関数の定義の仕方を考えれば明らかですが、
$y$と$x$を入れ替えてできる関数なので、
$y=x$で折り返すと重なります。(ここがポイント!)
($y=x$に関しての対称移動ですね。)
よって、対数関数$$y=\log_a x$$について、点(1,0)における接線の傾きが1となる$a$を調べることと同値になります。
(点(0,1)も、$y=x$に関して対称移動させました。)
では次の章から、「接線の傾きってどうやって求めるんだっけ…」ここを意識しながら、ガリガリと計算していきましょう。
対数関数を微分する
数学Ⅱで習った通り、微分をすることで接線の傾きが求まります。
ですので、微分の定義通り行っていきましょう。
$y=\log_a x$について、
(1行目から2行目の変形は、「対数の引き算の公式」を用いました。ここは要復習です!)
ここで、もともとの指数関数の$x=0$における接線の傾きが1であったことを思い出すと、逆関数の$x=1$における接線の傾きが1になるはずなので、$$\lim_{h\to 0}\frac{1}{h}log_a (1+h)=1$$が成り立つはずです。
よって、この式の左辺を変形すると、$$\lim_{h\to 0}log_a (1+h)^{\frac{1}{h}}=1$$
となるので、$$\lim_{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}=a$$
となります。
さあ、いよいよゴールです!
最後に出てきた式の左辺部分、これって…
eの定義そのもの
ですよね!!
ですから、$$e=a$$の式が成り立ち、これでネイピア数eの定義の意味が分かりました。
ネイピア数eのもう一つの定義とは
今、冒頭のように、
とネイピア数を定義してあげれば、指数関数$$y=e^x$$の$x=0$における接線の傾きが1になることがわかりました。
ここで、こんな疑問が生まれてきます。
つまり、ネイピア数eの定義を、指数関数$$y=a^x$$の$x=0$における接線の傾きが1になるような$a$とします。
これは、また微分をすることで考えることができるので、
微分した式に$x=0$を代入したものが接線の傾きになるので、$$\lim_{h\to 0}\frac{(e^h-1)}{h}=1$$
これも実は、ネイピア数eの定義ということになります!
(実は先ほどまでの手順は、このネイピア数eのもう一つの定義を導き出すための作業だったのです。)
なので、この式$$\lim_{h\to 0}\frac{(e^h-1)}{h}=1$$をネイピア数eの定義とすれば、逆関数である対数関数を考えることによって、今度は冒頭の定義が導ける!
そういう仕組みになってます。
余談ですが、中学生で習う「平行四辺形であるための5つの条件」と少し似てますね。
⇒参考.「平行四辺形の定義から性質と条件をわかりやすく証明!特に対角線の性質を抑えよう」
ネイピア数eの定義から副次的に得られた性質2つ
さて、最後に定義から必然的に得られる二つの性質をまとめます。
- $y=e^x$の微分は、$y’=e^x$
- $y=log_e x$の微分は、$y’=\frac{1}{x}$
ではなぜこの性質が成り立つか、見ていきましょう。
【一つ目】
こちらはほぼほぼ証明済みです。
先ほど、ネイピア数eは$$\lim_{h\to 0}\frac{(e^h-1)}{h}=1$$も定義として考えられることを説明しました。
ここで、$y=e^x$の微分した式$$y’=\lim_{h\to 0}\frac{e^x(e^h-1)}{h}$$の式に代入すると、$$y’=e^x$$となります。
これで証明終了です。
【二つ目】
こちらも、微分の定義に沿ってやっていきましょう。
対数関数$y=log_e x$を微分した式は、
ここまではOKでしょうか。さっき行った式変形と似てますね。
しかし、ここで困ったことが一つあります。
それは、「logの中に$x$が入ってしまっている」ことです。
こういうときの常とう手段がありまして、それが
「置換」
するという技術です。
数学ではよくある話ですが、こういう定義に当てはまらない場合、
無理やりにでも定義に当てはめていきましょう(笑)。
ここでは、$$\frac{h}{x}=t$$と新たに$t$という変数を定義します。
すると、$h→0$のとき、$t→0$に近づくので、$$(与式)=\lim_{t\to 0}log_e (1+t)^\frac{1}{xt}$$となります。
あとは、logの性質とネイピア数eの定義を用いれば、
よって、証明終了です。
ちなみに、こちらの確率の記事にて少し触れたのですが、ネイピア数 $e$ の定義から$$\frac{1}{e}=\lim_{h\to 0}(1-h)^{\frac{1}{h}}$$がわかります。結構簡単に証明できますので、興味がある方はぜひ考えてみて下さい♪
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関連記事
確率の基本とは?ガチャやギャンブルでの勘違いをなくそう!【苦手な人必見!】
ネイピア数eの定義に関するまとめ
いかがだったでしょうか。
今日の話を簡単にまとめると、こうなります。
- ネイピア数eの定義は、\begin{align}e&=\lim_{n\to\infty}(1+\frac{1}{n})^n\\&=\lim_{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}\end{align}でも、$$\lim_{h\to 0}\frac{(e^h-1)}{h}=1$$でもよい。
(結局は同じことを意味している。) - ネイピア数eを底とした指数関数の$x=0$での接線の傾きが1になる。
- $y=e^x$の微分は、$$y’=e^x$$であり、$y=log_e x$の微分は、$$y’=\frac{1}{x}$$
特に三番目の微分の結果は非常に重要で、底がeの対数のことを「自然対数」と呼ぶのも、この微分の簡単さからきています。
「底がeの指数関数の微分は元の関数と全く変わらない」というのも、よくよく考えてみればすごいですよね!
そう、実は数学が発展するときの特徴が二つありまして、
- 自然界の法則を見出せたとき
- 基準となるものを見出せたとき
なんですね。
一番目の特徴は、「自然対数」に当てはまっていて、二番目の特徴は「$(e^x)’=e^x$」に当てはまっています。
例えば、円周率πも「直径が1に対する円周の長さ」のことで、これって誰かが決めたものではなく、自然とそうなっていたんですよね。
また、足し算で言えば「0」、掛け算で言えば「1」といったように、演算をしても変わらないものの発見というのは、数学の基準を作り出すので、発展につながります。微分という一種の「演算」をしても変わらないというのは、すごい性質ですよね。
ぜひ、ネイピア数eの美しさを感じていただければと思います^^。
また、ネイピア数eについての雑学を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
↓↓↓
「超越数とは何か?自然対数の底eや円周率πが超越数である証明を解説!【超越数一覧もあり】」

以上、ウチダショウマでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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