こんにちは、ウチダです。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
さて、皆さんは三角形を作るときに、
「あれ…長さが足りねえ…」
そうなった経験はありませんか?ありますよねぇ?
今回は、三角形の成立条件を理解するためのたった1つのポイントを解説したのち、余弦定理を用いる応用問題の解き方、さらには三角形の辺と角の大小関係についても詳しく説明していきます。
三角形の成立条件のポイント【それは「円」です】
円安とか円高とか、いきなりお金の話を切り出したわけではございません。
丸い方の円です。平面図形の円です。
でも、三角形と円ってふつうは別々に学習しますよね。
ただ、三角形の成立条件を理解するためには、「 $2$ つの円の位置関係」と結び付けるのが最適です。
少し大きいですが図をご覧ください。
$a>b+c$、$a=b+c$ のときは三角形が作れず、$a<b+c$ のときは三角形が作れましたね。
本記事では、このロジックを大切に話を進めますよ。
今、$a$ を最大の辺としましたが、$b$ が最大、$c$ が最大の場合も考慮すると、必要十分条件は以下の通りになります。
$a$、$b$、$c$ を $3$ 辺の長さとする三角形が存在するための条件は、「 $a<b+c$ かつ $b<c+a$ かつ $c<a+b$ 」が成り立つこと。
最大の辺が $a$ であれば、必要十分条件は $a<b+c$ のみ。
最大辺がわかっていれば、条件は $1$ つのみになり、非常にスッキリします。
また、一般の必要十分条件「 $a<b+c$ かつ $b<c+a$ かつ $c<a+b$ 」を $a$ について解いてあげると、$$b<c+a ⇔ a>b-c$$
$$c<a+b ⇔ a>c-b$$
となるので、まとめて$$|b-c|<a<b+c$$と書くこともあります。
書いといてなんですが、この条件を用いることはめったにないため、忘れてしまっても構いません
三角形の成立条件と余弦定理【問題】
さて、三角形の成立条件は理解できましたね。
それでは、代表的な応用問題を $1$ 問だけ解いてみましょう。
(1) $x$ のとり得る範囲を求めよ。
(2) この三角形が鈍角三角形となるような $x$ を求めよ。
$1$ 辺の長さだけ文字で表されていて、その大きさの範囲を求めるような問題が出やすいです。
また(2)では「鈍角三角形」というワードが出てきています。
「鈍角三角形であるための必要十分条件は何か」考えながら解答をご覧ください。
【解答】
(1) 最大辺となる可能性がある辺の長さは、$5$ もしくは $x$ である。
よって、\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 5<4+x ……① \\ x<5+4 ……② \end{array} \right. \end{eqnarray}
この連立方程式を解いていこう。
①より $x>1$ で、②より $x<9$ であるから、共通範囲を求めて、$$1<x<9$$
(2) $x$ の値によって最大辺が決まるので、場合分けをする必要がある。
ⅰ) $1<x<5$ のとき、最大辺の長さは $5$ である。
また、鈍角三角形である必要十分条件は以下の通り。
よって、余弦定理より、
であり、分母 $8x>0$ より、分子 $x^2-9<0$ を解けばOK。
これを解くと、$-3<x<3$ より、$1<x<5$ との共通範囲を求めて、$$1<x<3$$
ⅱ) $5≦x<9$ のとき、最大辺の長さは $x$ である。
同様に、余弦定理を用いれば、
より、$41-x^2<0$ を解けばOK。
これを解くと、$x<-\sqrt{41} , \sqrt{41}<x$ より、$5≦x<9$ との共通範囲を求めて、$$\sqrt{41}<x<9$$
したがってⅰ)ⅱ)より、まとめると$$1<x<3 , \sqrt{41}<x<9$$
(解答終了)
最大辺となり得る可能性のある辺を考えて、三角形の成立条件を適用すればいいんですね。
ちなみに、(2)で用いた余弦定理については「余弦定理の証明とは?角度・面積を求める計算問題や公式の覚え方をわかりやすく解説!」の記事で詳しく解説しております。
三角形の辺と角の大小関係とは?
三角形の成立条件を学んだら、ぜひ「三角形の辺と角の大小関係」についても押さえていただきたいです。
$△ABC$ において$$b>c ⇔ ∠B>∠C$$
これだけ見てもピンときづらいので、以下の図をご覧ください。
絵にしてみると明らかですね。
さて、この証明なんですが…実は結構めんどくさい。
なぜなら、大学数学でよくお目にする「転換法(てんかんほう)」という証明方法を使う必要があり、集合論に対する深い知識が必要だからです。
転換法を用いて証明
命題 $A⇒P$、$B⇒Q$、$C⇒R$ が成り立ち、以下の $2$ つの条件を満たしているとき、それぞれの命題の逆が自動的に成り立つ。
・仮定 $A$、$B$、$C$ ですべての場合をおおいつくしている。
・結論 $P$、$Q$、$R$ のどの $2$ つの共通部分も空集合である。
ふ~む、、難しい。。
それでも解説しますと、仮定 $A$、$B$、$C$ がすべての場合をつくしていることから、「 $P⇒A$ または $P⇒B$ または $P⇒C$ 」が成り立ちます。
ここで、結論 $P$、$Q$、$R$ のどの $2$ つの共通部分も空集合であるため、$P⇒B$ または $P⇒C$ となることはありません。
したがって、$P⇒A$ が自然と導かれました。他も同様です。
[ふきだし set=”ウチダ”]仮に $P⇒B$ が成り立つと仮定します。すると、集合的に $P\subset B$ が成り立ちます。今回 $B⇒Q$ でしたので、$B\subset Q$ と組み合わせると、$P\subset Q$ が成り立ちます。ここで、$P\cap Q=P$ となり、$P\cap Q=φ$ に矛盾しますね。[/ふきだし]
さて、この転換法を用いれば、$$b>c ⇒ ∠B>∠C ……①$$
$$b=c ⇒ ∠B=∠C ……②$$
$$b<c ⇒ ∠B<∠C ……③$$
以上の①~③をすべて示すことができれば、逆が自動的に証明されます。
では、ここからは①~③をがんばって示すことにしましょう。
証明のポイント:二等辺三角形を作ろう
②の $b=c ⇒ ∠B=∠C$ については中学2年生で学習済みです。
そう、これは二等辺三角形の性質ですね。
≫参考記事:二等辺三角形の定義・角度の性質を使った証明問題などを解説!
つまり、②を軸として①、③をどうにかこうにか示せないか…と考えるのです。
さあ、考えてみて下さい。どうやって二等辺三角形の性質を活かすか…。
答えは、「実際に作ってみる。」もちろんこれしかありません。
図をご覧いただきましょう。
$b>c$ であれば、辺 $AC$ 上に必ず $AB=AD$ が成り立つような点 $D$ が存在します。
よって、$△ABD$ は二等辺三角形になるので、$∠ABD=∠ADB$ ですね。
ここで、それぞれの角度について、大小関係を考えてみると…
$$∠B>∠ABD , ∠ADB>∠C$$となっていることが図を見ればわかります。
よって、$$∠B>∠ABD=∠ADB>∠C$$と、数珠つなぎのようにして完成です。
[ふきだし set=”ウチダ”]$∠B>∠ABD$ はわかりやすいけど、$∠ADB>∠C$ が少しわかりづらいですね。こういうときは、$△ABC$ と $△ABD$ の内角の和が $180°$ であることを使ってみましょう。今、「$∠A$ は共通」「 $∠ABC>∠ABD$ 」ということは、「 $∠ACB<∠ADB$ 」にならないとつじつまが合いませんね。[/ふきだし]
ここまでの話を理解できれば、$b<c$ も同様に示せることがわかると思います。
これで①~③までを示すことができ、またそれぞれの仮定「 $b>c$ 」、「 $b=c$ 」、「 $b<c$ 」ですべての場合をつくしているので、転換法により証明完了です。
三角形の成立条件に関するまとめ
一見当たり前ですが、いざ証明となると中々難しかったですよね。
今日のポイントをまとめます。
- 三角形の成立条件は「 $2$ つの円の位置関係」と結び付ける!
- 余弦定理を用いる応用問題が出やすい。
- 三角形の辺と角の証明は難しい。。
直感的だけでなく論理的に理解できると、数学がもっともっと面白くなると思います。
三角形の性質で一番難しい分野はここだと思います。
次は円の性質について学びましょう!
以上で終わりです。
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