こんにちは、ウチダです。
今日は、数学Bで習う
「等比数列の和」
の公式の覚え方を、問題を通してわかりやすく証明したあと、今すぐにわかる数学Ⅲの知識(極限について)をご紹介します。
等比数列の和の公式の証明
まずは公式について、今一度確認しましょう。
初項$a$、公比$r$の等比数列{$a_n$}で、初項から第$n$項までの和を$S(n)$とするとき、
$$S(n)=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$$もしくは、$$S(n)=\frac{a(r^n-1)}{r-1}$$
※公比$r≠1$のとき
皆さん、この公式は覚えましたか?
といっても、何か二つあるし、形も覚えづらいですよね。
覚えづらい公式に対応する方法は…
「自分で証明する」
私はほぼこれしかないと感じております。
(自分で証明できれば忘れても作れるという自信になりますし、その自信が記憶力を鍛えます。)
では早速証明していきましょう。
【証明】
S(n)は初項から第 $n$ 項までの和なので、
※この数式は横に少しだけスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
と表せる。
ここで、$rS(n)$ を考える。(ここがポイント!)
①より、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
と表せる。
①-②を行うと、$$S(n)-rS(n)=a-ar^n$$であるから、左辺を$S(n)$でくくりだすと、$$(1-r)S(n)=a(1-r^n)$$公比$r≠1$のとき、$1-r≠0$であるから、両辺を$1-r$で割ると、$$S(n)=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$$
また、$1-r=-(r-1)$、$1-r^n=-(r^n-1)$であるから、
(証明終了)
いかがでしょうか。
ポイントは、「公比倍したものを引くことで、2つの項のみ残りあとは消える」ところです!
証明せずに覚えようとしてしまうと、「あれ…。$r$ の $n乗$ だっけ、$n+1$ 乗だっけ…?」だったり、「分母なんだっけ…?」だったり、忘れやすくなってしまうため、一回しっかり自分の手で証明しておきましょう。
では、次の章では具体的に問題を解いていきます。
等比数列の和を求める問題4選
ここでは、実際に問題を $4$ 問解いてみましょう。
問題1.初項 $1$、公比 $2$、項数 $10$ の等比数列の和を求めよ。
【解】
$$S(n)=\frac{a(r^n-1)}{r-1}$$を用いる。(なぜこの式を用いるかは後述。)
$a=1,r=2,n=10$を代入して、
(終了)
問題2.初項 $3$、公比 $\displaystyle \frac{1}{3}$、項数 $5$ の等比数列の和を求めよ。
公比が分数であっても、公式は問題なく使えます。
【解】
$$S(n)=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$$を用いる。(なぜこの式を用いるかは後述。)
$\displaystyle a=3 \ , \ r=\frac{1}{3} \ , \ n=5$ を代入して、
分母に分数が入ってしまったときでも、分母と分子に同じ数をかけてきれいにしましょう。
(終了)
途中、分数の中に分数が入っている「繁分数(はんぶんすう)」と呼ばれる数が出てきましたが、分数のルールに従えば問題なく計算できます。
問題3.初項$2$、公比 $\displaystyle -\frac{1}{2}$、項数 $8$ の等比数列の和を求めよ。
公比がマイナスであっても、公式は問題なく使えます。
【解】
$$S(n)=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$$を用いる。(なぜこの式を用いるかは後述。)
$\displaystyle a=2,r=-\frac{1}{2},n=8$ を代入して、
(終了)
では、最後の問題。
問題4.初項 $-2$、公比 $1$、項数 $100$ の等比数列の和を求めよ。
公比が $1$ の場合は等比数列の和の公式は用いることができません。
$1-r=0$ となってしまい、$0$ で割ることはできないからです。
しかし、よくよく考えてみれば難しいことはありません。
だって…「 $-2$ が $100$ 個続く」だけですよね。
ですから、$$S(100)=-2×100=-200$$これで終わりです。
腕試しに $4$ 問やってみました。
全問正解できましたか?
ここで、解答中に出てきた疑問。
これについてですが、そもそも$$1-rとr-1$$の違いって何ですか?
そう、「符号が違う」だけですよね!
ですから、そこまで大した意味があるわけではないですが、例えば$$r>1$$のとき、$r-1$ はプラス、$1-r$ はマイナスになります。
マイナスの値は扱いづらいので、よって$r-1$の形の公式を用います。
逆に、$$r<1$$のとき、$1-r$ がプラスになるので、$1-r$ の形の公式を用います。
まとめると、
公比が1より小さいとき、$$S(n)=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$$
公比が1より大きいとき、$$S(n)=\frac{a(r^n-1)}{r-1}$$
公比が1のとき、$$S(n)=a×n$$
では最後に、数学Ⅲで習う等比数列の和に関する面白いことについて紹介して終わりにします。
等比数列の和の極限とは
数学Ⅱの「微分法」で極限(limit)なる考え方が初めて登場してきます。
極限の意味は、一言で言えば「無限」です。
我々に与えられている時間は有限ですが、規則性を見つけることで無限に対する議論ができてしまうのが、数学の最も素晴らしいところといっても過言ではありません。
その無限に関する議論において、こんな問題が出たとします。
問題.初項 $\displaystyle \frac{1}{2}$、公比 $\displaystyle \frac{1}{2}$ の等比数列を無限に足していくと、いくつの値になるか。
「無限に足していく」というのは、現実的には不可能なことです。
しかし、今までで習った「等比数列の和の公式」を用いることで、この値を考えることができます。
実際にやってみます。
【解】
まず、第 $n$ 項までの和を求めると、
ここで、「無限に足していく」ということは、「 $n$ が十分に大きくなる」ということである。
$n$ を大きくしていくと、$\displaystyle (\frac{1}{2})^n$ の値は、$$\frac{1}{2},\frac{1}{4},\frac{1}{8},\frac{1}{16},…$$と限りなく $0$ に近づく。(ここがポイント!)
したがって、無限に足していくと、和は「 $1$ 」となる。
(終了)
数学Ⅲでは極限(limit)の記号として「$\lim$」を用いて式にしますが、言ってることはこれと全く変わりません。
ようは、ほとんど $0$ になるものは無視しちゃっていいってことです。
この問題を図形的に考えるのも面白いです。
【別解】
面積が $1$ の長方形で考えれば、残りの面積の半分を永遠と足していくことになる。
その合計は面積 $1$ を絶対に超えず、限りなく $1$ に近づく。
(終了)
等比級数を無限に足していったものを「無限等比級数」と言います。
無限等比級数については、以下の記事でまとめていますので、よろしければぜひご覧下さい。↓↓↓
等比数列の和の公式に関するまとめ
いかがだったでしょうか。
今日は、数列においてきわめて重要な公式の導出から、しっかりと行いました。
また、数学Ⅲで習うことも、数学Bまで履修してきた皆さんであれば大したことないと感じられたのではないでしょうか。
どの学問においても成り立ちますが、数学は基本が命です。
基本をおろそかにして勉強することは、たとえるなら地盤がグラグラの土地に家を一生懸命建てているようなものです。
それはかえって大変ですし、できたと思っても地盤が揺らげばすぐに壊れてしまいます。
実際、土台がしっかりしていれば大体の入試問題は解けるようになります。大マジです。
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです^^。
おわりです。
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コメント一覧 (2件)
等比数列の和を求める問題4選の3問目について質問です
公比が-1/2なので、分母は[1-(-1/2)^8]…(結果数値は同じ)、分子は1-(-1/2)になり、答えが85/64になるのではないかと思ったのですが、公比がマイナスの場合、rを正にして代入する必要があるのでしょうか、、
やべ!これはミスです!r=-1/2を代入しなくてはいけません。
ご指摘いただかなかったら気づきませんでした…ありがとうございます。。
修正させていただきましたので、ご確認くださいm(_ _)m