こんにちは、ウチダです。
突然ですが、皆さんは
- ユークリッドの互除法のやり方がわからない…。
- なぜユークリッドの互除法が成り立つのか、その原理がわからない…。
こういった悩みを抱えてはいませんか?
整数の性質における最大の鬼門。
それが「ユークリッドの互除法」だと思います。
よって本記事では、「なぜユークリッドの互除法が成り立つのか」その原理から、ユークリッドの互除法の活用方法 $2$ 選、さらに裏ワザや図形的解釈まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 教員採用試験に1発合格 → 高校教諭経験アリ
の僕がわかりやすく解説します。
ユークリッドの互除法の原理をわかりやすく解説します【最大公約数に注目!】
ユークリッドの互除法の原理を一言でまとめるならば…
これに尽きます。
※ $GCD( \ a \ , \ b \ )$ で「 $a$ と $b$ の最大公約数」を表します。
ただ、これだけだとわかりづらいと思うので、図解して説明します。
割り算の等式 $a=bq+r$ を繰り返して考えていくことによって、値はどんどん小さくなっていきます。
よって、最初はわかりづらかった $GCD( \ a \ , \ b \ )$ であっても、
と繰り返していけば、必ずいつかは簡単に求めることができる、という原理なわけです。
[ふきだし set=”悩む男性”]割り算を繰り返すことで最大公約数が求まることはわかったよ!ただ、なんで $GCD( \ a \ , \ b \ )=GCD( \ b \ , \ r \ )$ が成り立つのかがわからないなあ…。[/ふきだし]
[ふきだし set=”ウチダ”]では次に、$GCD( \ a \ , \ b \ )=GCD( \ b \ , \ r \ )$ がどうして成り立つのか、考えていきましょうか。[/ふきだし]
互除法の原理の証明
等式 $GCD( \ a \ , \ b \ )=GCD( \ b \ , \ r \ )$ を示すコツとして、
- $GCD( \ a \ , \ b \ )≧GCD( \ b \ , \ r \ )$
- $GCD( \ a \ , \ b \ )≦GCD( \ b \ , \ r \ )$
の $2$ つに分ける、という発想があります。
[ふきだし set=”ウチダ”]最大公”約数”、つまり”約数”なわけですから、大小関係がつきやすいんですよ。また、「~以上であり、かつ~以下」が言えれば、値は等しくなるしかありませんね。等式の証明でよく使うテクニックです。[/ふきだし]
この発想は、知らないと中々出てこないと思います。
ということで、証明ついでに押さえておきましょう。
【証明】
一々書くのが面倒なので、$GCD( \ a \ , \ b \ )=G$,$GCD( \ b \ , \ r \ )=G’$ と定義し直す。
① $G≦G’$ を示す。
$a$ と $b$ の最大公約数が $G$ であるから、ある互いに素な自然数 $k$,$l$ を用いて
$$a=Gk \ , \ b=Gl$$
と表すことができる。
≫参考記事:最大公約数と最小公倍数の求め方とは?【ヒント:素因数分解】
これを等式「 $a=bq+r$ 」に代入すると、$Gk=Glq+r$ となり、$r$ についてまとめると
$$r=G(k-lq)$$
ここで、$k-lq$ は整数なので $G$ は $r$ の約数となり、$G$ は $b$ の約数でもあるので、$b$ と $r$ の公約数になる。
よって、$b$ と $r$ の”最大“公約数が $G’$ であることから、$G≦G’$ が成り立つ。
② $G’≦G$ を示す。
ほとんど同じ方針で示すことができるので省略します。
式だけ書くと、ある互いに素な自然数 $m$,$n$ を用いて
$$a=G'(mq+n)$$
を導くことができればOKです。
したがって①,②より、$G≦G’$ かつ $G≧G’$ なので、$G=G’$ が成り立つ。
(証明終了)
これで、「なぜ最大公約数がずっと変化しないか」についても理解できたので、安心してユークリッドの互除法を使うことができますね!
ユークリッドの互除法の活用2選
さて、原理は理解できたので、次に考えるのは活用方法です。
ユークリッドの互除法の活用は、主に
- 最大公約数を求める問題
- 【重要】一次不定方程式の特殊解を求める問題
の $2$ つですので、順に解説していきます。
最大公約数を求める問題
(1) $6499$ と $1261$
(2) $1073$ と $527$
まあ、ユークリッドの互除法の原理の中に最大公約数が出てきたので、活用としても当然出てきますよね。
もし素因数分解ができるのであれば、最大公約数は簡単に求めることができました。
ただこの問題のように、素因数分解が難しい場合、ユークリッドの互除法を使うしかありません。
【解答】
(1) 互除法を使ってどんどん割っていくと、
$6499=1261×5+194$
$1261=194×6+97$
$194=97×2$
したがって、$GCD(6499 \ , \ 1261)=GCD( \ 194 \ , \ 97 \ )=97$ と求まる。
(2) 互除法を使ってどんどん割っていくと、
$1073=527×2+19$
$527=19×27+14$
$19=14×1+5$
$14=5×2+4$
$5=4×1+1$
したがって、$GCD( \ 1073 \ , \ 527 \ )=GCD( \ 4 \ , \ 1 \ )=1$、つまり互いに素である。
(解答終了)
(2)の場合、$GCD( \ 19 \ , \ 14 \ )=1$ の時点でわかるので、そこで止めても構いません。
ただ、余りが $1$ になるまで互除法を行ったのには深いわけがあります。
それは…次の重要な応用問題につながってくるからです!!
【重要】一次不定方程式の特殊解を求める問題
(1) $6499x+1261y=97$
(2) $1073x+527y=1$
方程式を満たす $1$ 組の簡単な解のことを「特殊解(とくしゅかい)」と呼びます。
ここでは、さっきの「最大公約数を求める問題」で行ったユークリッドの互除法を用いて、(1)(2)それぞれを満たす特殊解を求めていきましょう。
【解答】
(1) 互除法を逆の順番で書き、かつ両辺を入れ替えて、かつ移項すると、
$$97×2=194 \ ⇔ \ 97=194-97 …①$$
この $3$ つの式から、
よって、$x=7$,$y=-36$ が整数解の $1$ つ(特殊解)である。
(2) 互除法を逆の順番で書き、かつ両辺を入れ替えて、かつ移項すると、
$$5=4×1+1 \ ⇔ \ 1=5-4×1 …①$$
$$14=5×2+4 \ ⇔ \ 4=14-5×2 …②$$
$$19=14×1+5 \ ⇔ \ 5=19-14×1 …③$$
この $5$ つの式から、
よって、$x=111$,$y=-226$ が整数解の $1$ つ(特殊解)である。
(解答終了)
…やっていることは理解できましたか?
ユークリッドの互除法を使うことで
- (1) … $97$ → $194$ → $1261$ と $6499$
- (2) … $1$ → $4$ → $5$ → $14$ → $19$ → $527$ と $1073$
のように、地道な道のりですが数字を変換していくことができるのです!
[ふきだし set=”ウチダ”]実は一次不定方程式は、特殊解を求めることができれば解けたも同然なんです!だから、ユークリッドの互除法はとても重宝するんですね~。[/ふきだし]
また、ここで仮に「 $1073x+527y=2$ 」という一次不定方程式の特殊解について考えてみると、(2)より
$$1073×111-527×226=1$$
なので、両辺を $2$ 倍することで
$$1073×222-527×452=2$$
となり、$x=222$,$y=452$ と特殊解がすぐに求まります。
以上より、こんなことも判明してしまいます。
$a$,$b$,$c$ は自然数とする。
このとき、不定方程式 $ax+by=c$ は、$a$ と $b$ が互いに素であれば必ず整数解を持つ。
[ふきだし set=”考える女性”]なるほど!「 ~ $=1$ 」の特殊解さえ見つけることができれば、「 ~ $=2$ 」や「 ~ $=3$ 」は両辺を $2$ 倍,$3$ 倍することですぐに求められるのね![/ふきだし]
ここまで理解できると、いろんな知識が結びついてきて面白いのではないでしょうか^^
あとの話は「一次不定方程式の解き方とは?【応用問題3選もわかりやすく解説します】」の記事で詳しく解説しておりますので、興味のある方はぜひあわせてご覧ください。
ユークリッドの互除法の裏ワザ・図形的な解釈とは?
さて、ユークリッドの互除法についての重要な部分の解説は終わりました。
あとはコラム的なお話です。
具体的には
- 筆算で解く互除法
- 互除法と長方形
この $2$ つについて解説します。
筆算で解く互除法って?(裏ワザ)
さきほど、ユークリッドの互除法を実際にやってみて、
計算がめんどくさいな…
と多くの方が感じたと思います。
でもご安心ください。僕もそう感じていますので。(笑)
そこで、書く量をもう少し抑えるために、筆算を用いるやり方を考えてみましょう。
何にも変なことはしていません。
割り算を、筆算の形で計算しただけです。
筆算の方が
- 書く量が少なくて済む
- ノートに書いたときに見やすい
ので、慣れてきたらこの裏ワザを使ってみるのもオススメです♪
[ふきだし set=”ウチダ”]当たり前ですが、あくまで裏ワザなので成り立つ原理は同じです。原理を理解しないで使える裏ワザなど、この世に存在しません。[/ふきだし]
互除法と長方形の関係って?(図形的な解釈)
もちろん、$1$ 辺が $1 \ (cm)$ の正方形であれば、$377×319$ 個使って敷き詰めることができますが、ここで聞かれているのは「最大の正方形」です。
実はこの問題は、ユークリッドの互除法で計算することに対応しているのです!
【解答】
なるべく大きな正方形をどんどん除いていく方針で考えていこう。
すると、以下のアニメーションのようになる。
※スライドは計 $4$ 枚あります。
つまりこの操作は、
$377=319×1+58$
$319=58×5+29$
$58=29×2+0$
と、ユークリッドの互除法の作業と一致する。
よって、$377$ と $319$ の最大公約数が $29$ であることがわかったので、条件を満たす正方形で最大のものは、$1$ 辺が $29 \ (cm)$ の正方形である。
(解答終了)
代数的な計算が、図形と結びつく瞬間はたまらなく気持ちいいですね!
ユークリッドの互除法に関するまとめ
本記事の要点を改めて $3$ つまとめます。
- $GCD( \ a \ , \ b \ )=GCD( \ b \ , \ r \ )$、つまり最大公約数が動かないことこそが、互除法の原理である。
- 活用法は、素因数分解が困難な「最大公約数」と「一次不定方程式」
- 筆算や図形的解釈も押さえておくと、より理解が深まります♪
ユークリッドの互除法をしっかり理解して、整数マスターになろう!!
「整数の性質」全 25 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
終わりです。
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