こんにちは、ウチダです。
さて、突然ですが「一次不定方程式」の解き方はマスターできましたか?
ちなみに不定方程式とは、$ax+by=c$( $a$,$b$,$c$ は自然数)のように、解が有限個に定まらない方程式のことを指します。
[ふきだし set=”悩む男性”]一次不定方程式の解き方がわからないです…。[/ふきだし]
こういった悩みを抱えている方は多いでしょう。
よって本記事では、一次不定方程式の解き方のポイントから、一次不定方程式の応用問題 $3$ 選まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 教員採用試験に1発合格 → 高校教諭経験アリ
の僕がわかりやすく解説します。
一次不定方程式の解き方とは【特殊解を見つければ勝ちです。】
一次不定方程式 $ax+by=c$ の最大のポイント。
それは…
これに尽きます。
[ふきだし set=”悩む女性”]特殊解(とくしゅかい)って何ですか?[/ふきだし]
[ふきだし set=”ウチダ”]特殊解とは、方程式を満たす解の $1$ つのことです。今回の場合だと、$ax_1+by_1=c$ となる整数の組 $( \ x_1 \ , \ y_1 \ )$ のことですね。[/ふきだし]
具体的に問題を解いた方がわかりやすいかと思うので、さっそく一次不定方程式を解く練習をしていきましょう。
一次不定方程式を解く練習をしよう
(1) $2x+3y=1$
(2) $1073x+527y=1$
(2)の数字がやけに大きくて怖いですが、とりあえず(1)の解はすぐに見つかりますね?
たとえば $x=2$,$y=-1$ などが特殊解です。
一次不定方程式では、特殊解が見つかったらそれをそのまま代入した式
$$2・2+3・(-1)=1$$
を利用して、一般解(つまりすべての整数解)を求めていきます。
【解答】
(1) $2x+3y=1$ から $2・2+3・(-1)=1$ を引くと、
$$2(x-2)+3(y+1)=0$$
となり、移項して整理すると、$$3(y+1)=2(2-x) …①$$
ここで、$2$ と $3$ は互いに素であるため、$y+1$ が $2$ の倍数となる必要がある。
≫参考記事:互いに素な自然数とは?【応用例7選もわかりやすく解説します】
よってある整数 $k$ を用いて、$y+1=2k$ と表すことができる。
これを①に代入すると、$3×2k=2(2-x)$ となり、$x$ について解くと、$x=-3k+2$ となる。
したがって、求める整数解は$$x=-3k+2 \ , \ y=2k-1 \ ( \ k \ は整数)$$
(2) 同様に特殊解を見つければいいのだが…
という計算(※1)より、$x=111$,$y=-226$ が特殊解となるので、
$$\left\{\begin{array}{ll}1073x&+527y&=1 …②\\1073・111&+527・(-226)&=1 …③\end{array}\right.$$
よって、$②-③$ をして整理すると、$$527(y+226)=1073(111-x) …④$$
ここで、$1073$ と $527$ は互いに素(※2)であるため、$y+226=1073k$ と表せる。
したがって、求める一般解は$$x=-527k+111,y=1073k-226(kは整数)$$
(解答終了)
「特殊解を見つける → 一般解が求まる」という流れはバッチリですね!
ここで生まれた新たな疑問点は、
- ※1 … どんな計算をすれば $x=111$,$y=-226$ なんて見つかるの?
- ※2 … 本当に $1073$ と $527$ は互いに素なの?
ですが、これらはどちらとも「ユークリッドの互除法」を理解することで解決します。
[ふきだし set=”ウチダ”]ユークリッドの互除法に関する詳しい解説は「ユークリッドの互除法の原理をわかりやすく解説!【互除法の活用2選アリ】」の記事をご覧ください。一次不定方程式をマスターしたいのであれば、ここは避けては通れない分野です![/ふきだし]
この一次不定方程式、解ける?解けない?
(1) $3x+5y=1$
(2) $27x-54y=32$
(3) $28x+21y=7$
(4) $-7x+13y=1000$
一次不定方程式は、いつも整数解を持つわけではありません。
ここで重要な定理を紹介します。
$a$ と $b$ の最大公約数を $GCD( \ a \ , \ b \ )$ と表す。
このとき、$ax+by=GCD( \ a \ , \ b \ )$ を満たす整数 $x$,$y$ が必ず存在する。
つまり、$a$ と $b$ の最大公約数がカギとなるのです!
今回は「ベズーの補題(ほだい)」を認めて問題を解いていきます。
【解答】
(1) $GCD( \ 3 \ , \ 5 \ )=1$ より、$3x+5y=1$ は整数解を持つ。
(2) $GCD( \ 27 \ , \ 54 \ )=27$ より、$27x-54y=32$ は整数解を持たない。
(3) $GCD( \ 28 \ , \ 21 \ )=7$ より、$28x+21y=7$ は整数解を持つ。
(4) $GCD( \ 7 \ , \ 13 \ )=1$ より、$-7x+13y=1$ は整数解を持つ。
よって、両辺を $1000$ 倍した方程式 $-7・1000x+13・1000y=1000$ も整数解を持つ。
(解答終了)
(2)は、最大公約数が $27$ であり、それに対し右辺の値が $32$、つまり $27$ の倍数ではありませんね。
よって整数解を持ちません。
(4)は、最大公約数が $1$ である、つまり互いに素であるので、どんな整数 $c$ であっても
$$-7x+13y=c$$
は整数解を持ちます。
ここからわかることは、$a$ と $b$ が互いに素であれば、どんな不定方程式 $ax+by=c$ であっても整数解を必ず持つ、ということです。
[ふきだし set=”ウチダ”]ここまでしっかり理解すると、一次不定方程式を解くこと自体が楽しくなってくるのではないでしょうか^^[/ふきだし]
一次不定方程式の応用問題3選
さて、一次不定方程式の基本はマスターできましたね。
ここからは、一次不定方程式の応用問題 $3$ 選
- 「~=1」の特殊解を求める(基本の延長)
- 整数解ではなく自然数解
- 一次不定方程式の文章題( $3$ 変数)
を解いていきましょう。
「~=1」の特殊解を求める(基本の延長)
今までの話が理解できているかの確認問題です。
$1073x+527y=1$ の特殊解が $x=111$,$y=-226$ であることを利用して解いてください。
【解答】
$1073・111+527・(-226)=1$ より、両辺を $3$ 倍すると、$1073・333+527・(-678)=3$ となる。
よって、$$\left\{\begin{array}{ll}1073x&+527y&=3 …①\\1073・333&+527・(-678)&=3 …②\end{array}\right.$$
$①-②$ をして整理すると、$$527(y+678)=1073(333-x)$$
あとは同様に解くことができるので省略。
したがって、求める一般解は
$$x=-527k+333,y=1073k-678(kは整数)$$
(解答終了)
整数解ではなく自然数解
さて、$x$,$y$ がともに自然数でなければいけないので、解はかなり絞られそうですね。
どうやって解くか、ぜひ考えてから解答をご覧ください。
【解答】
$2x+3y=1$ の特殊解が $x=2$,$y=-1$ であったことから、$2x+3y=20$ の特殊解は $x=40$,$y=-20$ とすぐに求まる。
よって、今まで通りに解くと、
$$x=-3k+40 \ , \ y=2k-20 \ ( \ k \ は整数)$$
となるが、$x≧1$,$y≧1$ を満たす $k$ でなければならない。
つまり、$$\left\{\begin{array}{ll}-3k+40&≧1 …①\\2k-20&≧1 …②\end{array}\right.$$
この連立不等式を解けばOK。
①と②の共通範囲を求めて、$\displaystyle \frac{21}{2}≦k≦\frac{41}{3}$
これを満たす $k$ は、$k=11 \ , \ 12 \ , \ 13$ の $3$ つ。
したがって、求める自然数解は
$$( \ x \ , \ y \ )=( \ 7 \ , \ 2 \ ) \ , \ ( \ 4 \ , \ 4 \ ) \ , \ ( \ 1 \ , \ 6\ )$$
(解答終了)
自然数でなくても、何らかの条件が付いた場合は
- まず、ふつうに整数解を求める。
- 最後に、条件を満たす $k$ を調べる。
この手順で解けばOKです。
一次不定方程式の文章題(3変数)
ラストは、文章題から一次不定方程式を作って、それを解く問題です。
$3$ つの変数が必要になりますが、解き方は今までの応用で何とかなります。
【解答】
求める自然数を $N$ とすると、ある整数 $x$,$y$,$z$ を用いて、
$$N=11x+2=3y+1=5z+3$$
つまり、$$\left\{\begin{array}{ll}11x+2=3y+1 …①\\11x+2=5z+3 …②\end{array}\right.$$
となり、$2$ 変数の一次不定方程式が $2$ つできる。
①…$11x-3y=-1$ の特殊解は、$x=1$,$y=4$ であるから、$11(x-1)=3(y-4)$ となる。
よって、ある整数 $k$ を用いて、$x=3k+1$ と求まる。
これを②に代入すると、
②’…$33k-5z=1$ の特殊解が、$k=2$,$z=13$ より、$33k-5z=-10$ の特殊解は $k=-20$,$z=-130$ であるから、$33(k+20)=5(z+130)$ となる。
よって、ある整数 $l$ を用いて、$k=5l-20$ と表せる。
以上を代入すると、
今回、$3$ 桁の $N$ の中で最大のものを求めるので、$$165l-647<1000$$
これを解くと、$\displaystyle l<\frac{1647}{165}≒9.98…$ なので、$l=9$ のとき $1000$ を超えない最大の数となる。
したがって、求める自然数 $N$ は、$N=165×9-647=838$
(解答終了)
この問題のポイントは
- $x$ と $y$ の不定方程式から $x=3k+1$ と表す。
- $x$ に代入し、$z$ と $k$ の不定方程式を解く。
という解答の流れですね。
[ふきだし set=”ウチダ”]$x=3k+1$ と表せたのは、$x$ と $y$ の不定方程式によるもので、$z$ は関係していませんでした。よって、$z$ との関係を明らかにし、$k$ に条件を付けなければいけません。[/ふきだし]
不定方程式に関する記事はこちらから
本記事の要点をまとめましょう。
- 一次不定方程式は、特殊解を見つければ勝ち。
- 特殊解を見つけるのが難しいときは「ユークリッドの互除法」を活用して見つけよう。
- ちなみに、$a$ と $b$ が「互いに素」であれば、不定方程式 $ax+by=c$ は必ず整数解を持ちます。
“一次”不定方程式と言うぐらいですから、もちろん”二次”不定方程式や”分数”不定方程式など、いろんな不定方程式があります。
「不定方程式」と友達になりたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
「整数の性質」全 25 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
以上で終わりです。
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