こんにちは、ウチダです。
今日は数学Ⅱ「図形と方程式」で習う
「点と直線の距離の公式」
について、$3$ 通りの証明方法(ベクトルを用いる方法を含む)と $3$ 次元に拡張したバージョンを解説したのち、実際に問題を解いていきたいと思います。
阪大入試問題にも選ばれるぐらい重要な単元ですので、皆さんしっかりついてきてくださいね^^
点と直線の距離の公式
まずは公式の紹介です。
点 $(x_1,y_1)$ と直線 $ax+by+c=0$ の距離 $d$ は$$d=\frac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
と表すことができる。
特に、原点Oとの距離 $d’$ は$$d’=\frac{|c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
図で見た方がわかりやすいですね。
↓↓↓
距離というのは”最短距離”のことを指しますので、点から直線に向かって引かれた垂線の長さが、求める距離 $d$ になります。
点と直線の距離を求める機会は様々で、たとえばデータの散らばりを定量化できたり、ある地点から道路までの最短距離がわかったり、応用の幅は広いです。
また、点と直線の距離の公式は単に使いこなせればよい、というわけではないので、証明方法もしっかり押さえておく必要があります。
点と直線の距離の証明3つ
といっても、そんなに身構えず、楽しんで読み進めていきましょう!
いろんな証明方法を知ることは楽しいですし、数学的な考え方を鍛えてくれます。
ぜひ一度、すべての方法で自分の手で証明してみて下さい♪
平行移動を利用した証明【数学Ⅱ】
まず教科書に載っているオーソドックスな方法からです。
この証明のポイントは、まず原点Oと直線の距離を求め、その式を利用して一般化するところです。
【証明】
まず、原点Oと直線 $ax+by+c=0 ……①$ の距離を求める。
Oを通り、直線 $ax+by+c=0$ に垂直な直線の方程式は$$bx-ay=0 ……②$$と表される。
⇒参考.「直線の方程式(2点を通る)の公式を証明!平行や垂直な場合の傾きの求め方も解説!」
よって、①と②の交点 H を求めると、$$(-\frac{ac}{a^2+b^2},-\frac{bc}{a^2+b^2})$$となる。(連立方程式を解いた。)
したがって、距離 $d=OH$ であるから、
(証明中断)
※垂直な直線の方程式については、参考記事の目次「垂直条件の証明」をご覧ください。
ここまでで原点Oと直線 $ax+by+c=0$ の距離の公式を導きました。
図にすると以下のようになります。
↓↓↓
さて、ここから一般化していきます。
どう考えていくかというと、もちろん一般化するために、原点Oからではなく点 $(x_1,y_1)$ からの距離を考えます。
そこで、「点と直線を同じだけ平行移動しても距離は変わらない」という、至極当たり前な事実を使いましょう。
では証明の続きです。
【証明の続き】
点 P$(x_1,y_1)$ と直線ℓ: $ax+by+c=0 ……①$ の距離 $d$ を求める。
図のように、点 P$(x_1,y_1)$ が原点Oに重なるように、点 P と直線ℓ を平行移動し、移動後の直線をℓ’とする。
ここで、原点Oからの距離であれば先ほど導出した公式で求めることができるので、直線ℓ’の方程式を表していこう。
つまり、直線ℓ’上の点 $(x,y)$ について考える。
すると、平行移動していることから、図のように直線ℓ’上の点 $(x,y)$ を用いて直線ℓ上の点を表すことができる。
よって、点 $(x+x_1,y+y_1)$ は直線ℓ上の点であることから、①の式に代入することができ、$$a(x+x_1)+b(y+y_1)+c=0$$が成り立つ。
この式を整理すると、$$ax+by+(ax_1+by_1+c)=0$$となり、点 $(x,y)$ についての方程式が立てられたということは、これが直線ℓ’の方程式になる。
したがって、求める距離 $d$ は$$d=\frac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$である。
(証明終了)
平行移動後の図形の方程式を求めるのは、意外と難解です。
平行移動後の図形上の点を $(x,y)$ と置いたとき、その $(x,y)$ に成り立つ条件式ができれば、それが平行移動後の図形の方程式になります。
その基本を守れば、$2$ 次関数だろうが $3$ 次関数だろうが求めることができますので、ぜひ押さえておきましょう♪
三角形の面積を用いた証明【中学数学】
次はあっと驚く方法です!
このやり方であれば中学生でも証明が可能です。
さっそく見ていきましょう。
【証明】
点 P$(x_1,y_1)$ と直線ℓ: $ax+by+c=0 ……①$ の距離 $d$ を求める。
図のような△PABを作り、その面積が $2$ 通りで表せることを利用し、距離 $d$ を求める。
よって、まずは点 A,B の座標を求めていこう。
点 A は直線ℓ上の点で、$x$ 座標が $x_1$ より、①に $x=x_1$ を代入し、$$ax_1+by+c=0$$が成り立つ。
ここで、$b≠0$ のとき、$$y=-\frac{ax_1+c}{b}$$
したがって、点 A の座標は$$(x_1,-\frac{ax_1+c}{b})$$
同様に、点 B は直線ℓ上の点で、$y$ 座標が $y_1$ より、①に $y=y_1$ を代入し、$$ax+by_1+c=0$$が成り立つ。
ここで、$a≠0$ のとき、$$x=-\frac{by_1+c}{a}$$
したがって、点 B の座標は$$(-\frac{by_1+c}{a},y_1)$$
また、△PABの面積 $S$ は、$$\frac{1}{2}PB×PA$$とも$$\frac{1}{2}AB×d$$とも表せるので、$$PA×PB=AB×d$$が成り立つ。
よって、$$d=\frac{PA×PB}{AB}$$
となり、あとは単なる計算であるため、省略する。
(証明終了)
これ以降の計算は若干めんどくさいですが、地道に頑張ればできます!
ただ一つ、注意点があり、かならずしも点 P が点 A より $y$ 座標が大きいとは限りませんので、絶対値だけはつけなければなりません!
計算が面倒なのがネックですが、中学数学までの知識で証明できるのは、かなり感動しますね^^
ベクトルを用いた証明【数学B】
最後に、数学Bで習う「ベクトル」を用いた証明方法です。
少し発展的な内容ですが、知っておくと便利です。
【証明】
点 P$(x_1,y_1)$ と直線ℓ: $ax+by+c=0 ……①$ の距離 $d$ を求める。
直線ℓの法線ベクトルの一つとして$$\vec{n}=(a,b)$$が存在する。
また、$\vec{PH}$ は $\vec{n}$ に平行であるため、ある実数 $k$ を用いて$$\vec{PH}=k\vec{n}$$と表すことができる。
方針としては、この $k$ を求めていくことになる。
次に、$\vec{OH}=\vec{OP}+\vec{PH}$ より、
ここで、点 H は直線ℓ上の点より、①に代入すると、$$a(x_1+ka)+b(y_1+kb)+c=0$$
この式を $k$ について整理すると、$$k(a^2+b^2)+(ax_1+by_1+c)=0$$
$a=b=0$ ではないとすると、$$k=-\frac{ax_1+by_1+c}{a^2+b^2}$$
したがって、
(証明終了)
ポイントは、直線 $ax+by+c=0$ の法線ベクトルの一つとして$$\vec{n}=(a,b)$$が存在する事実を知っているか否かです。
法線ベクトルについては、こちらの記事の目次2-1後半にて解説しています。
⇒⇒⇒ベクトル方程式とは?円や存在範囲の問題の解き方などを超わかりやすく解説!
点と平面の距離の公式(3次元)
さて、これまで $2$ 次元平面での公式を考えてまいりました。
今までの論理は決して $2$ 次元でなければならないわけではなく、$n$ 次元において成り立ちます。
したがって、点と平面の距離も同じふうに求めることができます。
点 $(x_1,y_1,z_1)$ と平面 $ax+by+cz+d=0$ の距離 $D$ は$$D=\frac{|ax_1+by_1+cz_1+d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}$$
と表すことができる。
特に、原点Oとの距離 $D’$ は$$D’=\frac{|d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}$$
もちろん証明も、今回紹介した $3$ 通りの方法で行うことができますが、三角形の面積を用いる証明方法は少し変わります。
なぜなら、できる図形が平面ではなく立体になるからです。
具体的な方法は、「四面体の体積を $2$ 通りの方法で示す」となります。
もちろん、計算もその分大変になりますので、興味のある方はぜひ覚悟を持ってチャレンジしてみて下さい。
阪大入試問題にも出題!!【練習問題】
最後に、点と直線の距離の応用問題について見ていきましょう。
(1) $y=3x+5$ と $y=3x-3$ の距離 $d$ を求めよ。
(2) 点 $(2,1)$ と直線$2x+ky=0$ の距離が $\sqrt{5}$ であるとき、$k$ の値を求めよ。
(3) 直線ℓ: $x+y-3=0$ 上の点 H$(\frac{5}{2},\frac{1}{2})$ と直線ℓ上にない点 P$(3,1)$ について、直線ℓと直線 PH のなす鋭角 $θ$ を求めよ。
【解答】
(1) 点 $(0,-3)$ と直線 $3x-y+5=0$ の距離と等しいので、
(2) 点と直線の距離の公式より、$$\sqrt{5}=\frac{|2×2+k×1|}{\sqrt{2^2+k^2}}$$
計算して、$$\sqrt{5}=\frac{|4+k|}{\sqrt{4+k^2}}$$
両辺に $\sqrt{4+k^2}$ をかけて、$$\sqrt{5(4+k^2)}=|4+k|$$
両辺ともに $0$ 以上であるから、両辺を $2$ 乗して$$5(4+k^2)=k^2+8k+16$$
整理して、$$4(k-1)^2=0$$
したがって、$$k=1$$
(3) ためしに、点 P$(3,1)$ と直線ℓの距離 $d$ を公式で求めてみると、
また、
よって、$d=PH$ が成り立つので、直線ℓと直線 PH のなす角 $θ$ は$$θ=90°$$
(解答終了)
まず(1)ですが、直線 $y=3x-3$ 上の点 $(0,-3)$ を用いました。
どこの点を用いても計算はできますが、なるべく計算量を減らすため、$x$ 座標または $y$ 座標が $0$ であるような点を選びましょう。
次に(2)ですが、絶対値やルートを外すには両辺を $2$ 乗するのが最も良いです。
最後(3)ですが、いかがだったでしょうか。
$d=PH$ が成り立つということは、$PH$ は最短距離になるので、なす角は直角になります。
「点と距離の公式の逆」みたいな感じで覚えておくと、いつか使えるときが来るかもしれませんね。
※この場合直角になりましたが、直角になる保証なんてどこにもないので、直線の方向ベクトルを求め、$\vec{PH}$ を求め、その内積を計算するのが最もいい方法ではあります。
では最後。2013年度の大阪大入試問題を覗いてみましょう。
※2013年度 大阪大学前期入試 文系
…ん?
あれ?なんかおかしいですね…。。。
これって、点と直線の距離の公式の証明そのまんまではないですか!!!
はい、これは本当にノンフィクションです。
しかもこの年の阪大の入試では、「$\sin x$ の導関数が $\cos x$ であることを証明せよ」という問題も出ています。
考えてみれば至極当然のことなのですが、数学という学問に真剣に立ち向かってきた学生を大学側は取りたいのです。
ですから、問題演習のみを行って、数学の本質を見失うような勉強をしていても、いい大学には入れませんし、それは本当の意味で勉強ではありません。
僕がこの記事で何を伝えたいかというと、「証明は大事」それも「証明を自分で考えることが大事だ」ということです。
これは何の学問でも同じですが、
- 数学を楽しみながら勉強すること
- 「急がば回れ」が最強であること
もし今「何のために数学を勉強しているかわからなくてツラい…」と感じている方がいらっしゃって、この $2$ つの大切な気づきに僕の記事が役立つのなら、これ程嬉しいことはありません。
点と直線の距離に関するまとめ
今日は点と直線の距離の公式の $3$ 通りの証明方法について学び、それを $3$ 次元に拡張したのち、応用問題をいくつか解いてみました。
良い学びになりましたか?
僕が数学の記事を書く理由、それはもちろん「数学がわからなくて苦しんでいる人の助けになりたい」と思うからです。
ですが、最終的に「わからない⇒わかる」に変えるのは自分自身しかいません。
イギリスの「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」ということわざがありますが、正しくその通りだと思います。
僕は、「数学は楽しいよ!」とか「こう考えればいいんだよ!」とか、いろいろ紹介することはできても、それを自分のものにするか否かは皆さん次第なのです。
多くの人が、数学に対して前向きな気持ちを持てるよう、これからも記事制作など頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願いします!♪
以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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