こんにちは、ウチダです。
さて皆さんは、素数は無限に存在すると思いますか?
では仮に、素数が無限に存在したとして、どうやって示しますか?
素数は、まあたくさんありそうだし無限に存在しそうだけど、証明となると難しいよね…
たくさん証明方法があると聞きました!わかりやすく解説してほしいです。
よって本記事では、素数が無限に存在することの $5$ 通りの美しい証明を
- 東北大学理学部数学科卒業
- 教員採用試験に1発合格 → 高校教諭経験アリ
の僕がわかりやすく解説します。
素数が無限に存在することの5通りの証明【「背理法」をよく使います】
概要だけ先にお伝えしておきます。
- ユークリッドの証明
→ 背理法を用いて矛盾を示す。 - ゴールドバッハの証明
→ フェルマー数が互いに素であることを利用。 - オイラーの証明
→ オイラー積と素因数分解の一意性より矛盾を導く。 - 円周率πが無理数であることを利用する証明
→ ゼータ関数 $ζ(s)$ がカギ。 - サイダックの証明
→ $2006$ 年に発表された、最も新しく最も簡潔な証明。
※「~の証明」の部分がリンクになっており、クリックすると証明へジャンプします。
こうして眺めてみると「矛盾」が一つのキーワードになっていそうだね!
無限より有限の方が数学的に扱いやすいため、「有限と仮定して矛盾を導く」というのが一番シンプルでわかりやすいでしょう。
背理法がよくわからない方は、先に「背理法~(準備中)」の記事から読み進めることをオススメします。
それでは、さっそく参りましょう!
ユークリッド「原論」による証明(紀元前3世紀ごろ)
【証明】
素数が有限個であると仮定する。
すると、素数全てを、$p_1$,$p_2$,…,$p_n$ と、ある自然数 $n$ を用いて表すことができる。
ここで、$$P=p_1×p_2×…×p_n+1$$という新しい数 $P$ について考える。
すると、$p_1$ ~ $p_n$ いずれの素数でも割り切れないので、$P$ も素数となる。
しかし、先ほど $p_1$,$p_2$,…,$p_n$ が素数の全てだと仮定したので、新しく素数が作れるはずはない。
よって矛盾である。
したがって背理法より、素数は無限個存在する。
(証明終了)
質問なんですけど、「素数の積 $+1$ 」という数はいつも素数になるんですか?
そうとは限りません!ここはよ~く勘違いが起きやすい箇所なので注意が必要です。
たとえば、
が有名な反例ですね。
今回はあくまで、素数を有限個とすると新たな素数 $P$ が作れてしまう、ということですので、実際のところ素数は無限個存在するということをお忘れなく。
ゴールドバッハによる証明(1730年)
【証明】
まず、フェルマー数 $F_n=2^{2^n}+1$ がそれぞれ互いに素であることを示す。
と、因数分解を $n$ 回繰り返せば、上記の式変形ができる。
また移項すると、$$2=F_n-F_0F_1…F_{n-1} …①$$
ここで、$F_n$ と $F_m$( $m<n$ )をともに割り切る素数は、①の式より $2$ を割り切る(つまり $2$ )しかない。
しかし、フェルマー数はすべて奇数より、$2$ では割り切れない。
よって、すべてのフェルマー数は互いに素である。
したがって、$F_1$ を割り切る素数を $p_1$,$F_2$ を割り切る素数を $p_2$,…と定義すると、$$p_1 \ , \ p_2 \ , \ p_3 \ , \ …$$
と素数の無限列が作り出せるため、素数は無限個存在する。
(証明終了)
少し難しい証明でしたが、
- 互いに素 → 素因数の被りがない
- フェルマー数が無限にある → 素因数も無限に作れる
というロジックで成り立っています。
互いに素に関する詳しい解説は「互いに素な自然数とは?【応用例7選もわかりやすく解説します】」の記事をご覧ください。
オイラーによる証明(18世紀)
【証明】
素数が有限個であると仮定すると、素数全てを、$p_1$,$p_2$,…,$p_n$ と、ある自然数 $n$ を用いて表すことができる。
ここで、各素数 $p_i$ に対し $\displaystyle \frac{1}{1-\frac{1}{p_i}}$ という数を考える。
これは、初項が $1$,公比が $\displaystyle \frac{1}{p_i}$ の無限等比級数ともいえるので、$$\frac{1}{1-\frac{1}{p_i}}=\sum_{k=0}^{\infty} \frac{1}{{p_i}^k}$$
≫参考記事:無限等比級数とは~(準備中)
ここで、$i=1 \ , \ 2 \ , \ … \ , \ n$ までの積を取ると、素因数分解の一意性より、
※1.詳しくは後述
こうしてできた式をよく見てみると
- 左辺 … 有限個の積(オイラー積とも言います)なので、もちろん有限値。
- 右辺 … 調和級数なので、無限に発散する。
※2.詳しくは後述
したがって背理法より、素数は無限に存在する。
(証明終了)
※1と※2について、詳しく解説します。
※1.素因数分解の一意性って何?
素因数分解の一意性より、$$\prod_{i=1}^{n} \sum_{k=0}^{\infty} \frac{1}{{p_i}^k}=\sum_{m=1}^{\infty} \frac{1}{m}$$が成り立つ。
なぜ成り立つのかについては、以下のように書き表すとわかりやすいです。
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
「すべての自然数に対して素因数分解された形は $1$ 通りしかない。」これが素因数分解の一意性であり、裏を返せば上記の式で、すべての自然数を表していることになりますね。
たとえば
- $1$,$2$ 項目 → $\displaystyle \frac{1}{2} \ , \ \frac{1}{3}$ を選ぶ
- $3$ 項目以降 → すべて $1$ を選ぶ
こうすると、$\displaystyle \frac{1}{2}×\frac{1}{3}×1×1×…=\frac{1}{6}$ を作ることができます。
そして、素因数分解の一意性より、$\displaystyle \frac{1}{6}$ を他に作り出す方法は存在しないのです。
※2.調和級数って何?
自然数の逆数の無限和$$\sum_{m=1}^{\infty} \frac{1}{m}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+…$$
のことを「調和級数(ちょうわきゅうすう)」と呼び、これは $∞$ に発散する。
この証明も複数知られており、一番有名なのが
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
と式変形することで、$\displaystyle \frac{1}{2}$ の無限和より大きいことを利用する方法です。
「~より大きい」ことを利用する証明方法を、数学用語で「下から評価」なんて呼んだりします。他の証明は「調和級数とは~(準備中)」の記事で詳しく解説してますので、よろしければご覧ください。
円周率 $π$ が無理数であることを利用する証明(1735年以降)
【証明】
素数が有限個であると仮定する。
ここで、さきほどのオイラーによる証明を応用すれば、
というふうに、$2$ 乗についても同様の式が成り立つ。
また、$$\sum_{m=1}^{\infty} \frac{1}{m^2}=\frac{π^2}{6}$$
であることが知られている。
≫参考記事:バーゼル問題とは~(準備中)
ここで、$\displaystyle (左辺)=\prod_{i=1}^{n} \frac{1}{1-\frac{1}{(p_i)^2}}$ は有理数の有限積なので有理数であるが、$\displaystyle (右辺)=\frac{π^2}{6}$ は、円周率 $π$ が無理数であるため、無理数である。
≫参考記事:円周率πについて~(準備中)
したがって、$有理数=無理数$ が成り立つため、これは矛盾である。
(証明終了)
証明の中で出てきたバーゼル問題
$$\sum_{m=1}^{\infty} \frac{1}{m^2}=\frac{π^2}{6}$$
もオイラーによって示されました。
よってこの証明も、オイラーによるものだと言って良いでしょう。
へ~。オイラーさんって、すごい人なんですね。
ガウスと並び「数学界の二大巨人」と呼ばれるぐらいですからね。オイラーさんの業績は「オイラーとは~(準備中)」の記事でわかりやすくまとめています!
補足.ゼータ関数?リーマン予想?
ゼータ関数 $ζ(s)$ とは
$$ζ(s)=\sum_{m=1}^{\infty} \frac{1}{m^s}$$
で定義された関数です。
特に、$ζ(1)$ が調和級数、 $ζ(2)$ がバーゼル問題と言われています。
こうしてみると、ゼータ関数と素数のつながりが何となく強そうに見えませんか?
実は、素数の分布を予想した「リーマン予想(現在も未解決問題)」で扱われる関数が、なんと「ゼータ関数」なのです!
色んな知識が結びついてきそうで面白いですよね^^
詳しくは
- ゼータ関数とは~(準備中)
- リーマン予想とは~(準備中)
の記事を参考にしてみてください。
サイダックによる証明(2006年)
さて、最後は $2006$ 年に発表された、メチャクチャ簡潔な証明です。
【証明】
$$a_1=2 , a_n=a_{n-1}(a_{n-1}+1)$$という数列を考える。
少しだけ具体的に考えてみると、
- $a_2=a_1(a_1+1)=2×3$
- $a_3=a_2(a_2+1)=2×3×7$
- $a_4=a_3(a_3+1)=2×3×7×43$
と続いていく。
ここで、連続する自然数は互いに素である性質を用いると、例えば $a_3+1$ は $a_3$ と互いに素であるから、$a_3$ の素因数では割り切れない数となる。
≫参考記事:互いに素な自然数とは?【応用例7選もわかりやすく解説します】
すると、$a_3+1$ は素数であるかどうかはわからないが、少なくとも $a_3$ とは異なる素因数を持つことは確かである。
よって、こうして作られた $a_4$ は、異なる素因数を $4$ つ以上持つことが判明した。
これはすべての自然数 $n$ について同様なことが言えるので、$a_n$ は異なる素因数を $n$ 個以上持つ。
したがって、$n$ を限りなく大きくとれば、素因数は無限に作ることができる。
(証明終了)
実際の証明では、途中の解説が省かれているので、$3$ 行で終わっています!
こんな簡潔な証明が最近まで未発見だったんですから、数学の世界はホント奥が深いですよね~。
素数が無限に存在することのまとめ
最後に、本記事のまとめをして終わります。
- 素数は無限個存在します。
- ただ、素数が出現する規則性(素数の分布)については未だよくわかっていません。
- →「リーマン予想」につながってきます。
- いろんな証明方法があり、特に「背理法」をよく使います。
全部を理解する必要はないです。
ぜひ、興味のある証明だけでも理解して、数学を楽しんでいきましょう♪
「整数の性質」全 25 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
終わりです。
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