こんにちは、ウチダです。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
さて突然ですが、反復試行(はんぷくしこう)の確率は以下の公式を用いて導くことができます。
$1$ 回の試行で事象 $A$ の起こる確率を $p$ とする。
このとき、独立な試行を $n$ 回行って $r$ 回 $A$ が起こる確率は
$${}_n{C}_{r}p^r(1-p)^{n-r}$$
…この公式がなぜ成り立つのか、しっかりと説明できますか?
[ふきだし set=”悩む男性”]反復試行の確率に「組合せの総数 $C$ 」が出てくる意味がわかってないんだよな~。[/ふきだし]
こういう方は多いです。
また、反復試行の確率の基本を理解できたとしても、
[ふきだし set=”悩む女性”]反復試行の確率の応用問題が本当に解けません!難しすぎないですか?[/ふきだし]
こういう方もいるでしょう。
まあ、実際難しいとは思います。(^_^;)
よって本記事では、「なぜ反復試行の確率の公式が成り立つのか」その意味から、応用問題 $4$ 問の解き方まで
- 東北大学理学部数学科卒
- 教員採用試験に1発合格 → 高校教諭経験アリ
- (専門は確率論でした。)
の僕がわかりやすく解説します。
反復試行の確率の公式【試行に対する2つの見方が重要です】
まずは具体的に、サイコロを例に考えていきましょう。
地味に「ちょうど」がキーワードだったりします。
また、サイコロ投げやコイントスのように、独立な試行を何回も繰り返した試行のことを「反復試行」と言います。
[ふきだし set=”ウチダ”]反復試行を理解するためには「独立」の知識が必須です。詳しくは「排反と独立の違いとは?【ヒント:試行と事象】」の記事をご覧ください。[/ふきだし]
さて、以上を踏まえ、先にポイント $2$ つをまとめます!
- 「 $p^r(1-p)^{n-r}$ 」の部分 → 「独立な試行を $n$ 回繰り返す」として見る。
- 「 ${}_n{C}_{r}$ 」の部分 → 「 $n$ 回繰り返すという $1$ つの試行」として見る。
この意味がわかれば、公式の成り立ちが理解できたようなものです!
【①の解説】
$1$ 回サイコロを投げるとき、$3$ の倍数の目が出る確率は $\displaystyle \frac{2}{6}=\frac{1}{3}$ である。
よって、まずは回数に着目すると
- $\displaystyle \frac{1}{3}$ が $2$ 回 → $\displaystyle (\frac{1}{3})^2$
- $\displaystyle (1-\frac{1}{3})$ が $3$ 回 → $\displaystyle (\frac{2}{3})^3$
より、確率は $\displaystyle (\frac{1}{3})^2×(\frac{2}{3})^3$ と求めることができる。
(解説中断)
さあ、①の解説が終わりました。
画像の中の男の子も言ってますが、本当にこれだけしか条件を満たしませんか?
だって、$1$ 回目と $3$ 回目に $3$ の倍数の目が出る場合だってあるし、その場合も条件を満たしてますよね?
それでは仕上げです!
【②の解説】
$\displaystyle (\frac{1}{3})^2(\frac{2}{3})^3$ を何個足せばよいのか。
これは、以下のように組合せで考える。
したがって、$\displaystyle (\frac{1}{3})^2(\frac{2}{3})^3$ の確率が ${}_5{C}_{2}$ 通りあるわけだから、積の法則より$${}_5{C}_{2}(\frac{1}{3})^2(\frac{2}{3})^3$$が導けた。
(解説終了)
いかがでしょう。
これで組合せの総数 $C$ が出てくる理由は理解できましたね!
反復試行の確率の応用問題4選
それでは次に、反復試行の確率の応用問題を $4$ つ見ていきたいと思います。
先に一つ言っておきますが…
まあ難しいですよ!
[ふきだし set=”ウチダ”]「ここまでの話がしっかり理解できていて、かつ基本問題は余裕で解ける」ぐらいでないと、この先の話はキツいです。[/ふきだし]
しかしながら、どれも重要な問題ですので、しっかり丁寧に解説していきます。
ご安心ください。
具体的には、
を上から順に解いていきます。
※「〇問目」の部分がリンクになっており、クリックすると問題へジャンプします。
[ふきだし set=”ウチダ”]すぐ下に全 $4$ 問のヒントがありますので、飛ばしたい方は上のリンクをクリック!![/ふきだし]
全4問のヒント
- 試合で優勝する確率は「最後に必ず勝つ!」がポイント。
- 点の移動の問題は「連立方程式」がポイント。
- サイコロの最大最小は「ドーナツ図」がポイント。
- 確率の最大値は「 $\displaystyle \frac{P_n}{P_{n+1}}$ 」がポイント。
試合で優勝する確率
「 $〇$ 勝先取」のやっかいなところは、$3$ 試合で終わってしまうこともあれば $5$ 試合までもつれ込むこともあるところですね。
よって、場合分けをする必要があります。
【解答】
$3$ つに場合分けして考える。
ⅰ)$3$ 連勝する場合の確率は、$\displaystyle (\frac{2}{3})^3=\frac{8}{27}$
ⅱ)$3$ 勝 $1$ 敗で優勝する場合
最後は必ず $A$ が勝つため、$2$ 勝 $1$ 敗になる確率に $\displaystyle \frac{2}{3}$ をかければOK。
よって確率は、$\displaystyle {}_3{C}_{2}(\frac{2}{3})^2(\frac{1}{3})^1×\frac{2}{3}=\frac{8}{27}$
ⅲ)$3$ 勝 $2$ 敗で優勝する場合
最後は必ず $A$ が勝つため、$2$ 勝 $2$ 敗になる確率に $\displaystyle \frac{2}{3}$ をかければOK。
よって確率は、$\displaystyle {}_4{C}_{2}(\frac{2}{3})^2(\frac{1}{3})^2×\frac{2}{3}=\frac{16}{81}$
したがってⅰ)~ⅲ)より、求める確率は、$\displaystyle \frac{8}{27}+\frac{8}{27}+\frac{16}{81}=\frac{64}{81}$ である。
(解答終了)
[ふきだし set=”ウチダ”]たとえばⅲ)のとき、単に $\displaystyle {}_5{C}_{3}(\frac{2}{3})^3(\frac{2}{3})^2$ としてしまうと、たとえば「〇〇×〇×」も含みます。この場合って、もう $4$ 試合目で決着ついてますよね。ここが注意点です。[/ふきだし]
点の移動の問題
さて、次は点 $P$ が移動する問題です。
この問題では、まず「 $+$ 方向に何回、$-$ 方向に何回進むか」を求める必要があります。
【解答】
$+$ 方向に $x$ 回、$-$ 方向に $y$ 回進むとする。
合わせて $7$ 回移動するので、$$x+y=7 ……①$$
移動後、$-2$ の位置に存在するので、$$x-2y=-2 ……②$$
①、②の連立方程式を解くと、$$x=4 , y=3$$
つまり、$\displaystyle \frac{1}{3}$ が $4$ 回、$\displaystyle \frac{2}{3}$ が $3$ 回出る反復試行の確率なので、求める確率は、$\displaystyle {}_7{C}_{4}(\frac{1}{3})^4(\frac{2}{3})^3=\frac{35×8}{3^7}=\frac{280}{2187}$ である。
(解答終了)
さらなる応用例として「座標平面上を動く」問題もありますが、落ち着いて連立方程式を解いて回数を求めてやれば、同じように解くことができます。
サイコロの最大最小
(1) 出る目の最大値が $5$ である確率
(2) 出る目の最大値が $5$ で、最小値が $2$ である確率
さあさあ、難易度がグッと一段階上がりました。
この問題含めてあと $2$ 問は、知らないと厳しいかな~という感じですが…頑張りましょう!
【解答】
最大値が $5$ なので、$1$ ~ $5$ の中から $n$ 個出る確率 $\displaystyle (\frac{5}{6})^n$ なのかな~と思いきや…
つまり、青の部分の確率 $\displaystyle (\frac{2}{3})^n$ を引かなければいけない。
よって、求める確率は、$\displaystyle (\frac{5}{6})^n-(\frac{2}{3})^n$ である。
(2) 同様に考えると、
- 事象 $A$ :$2$,$3$,$4$,$5$ から出る
- 事象 $B$ :$3$,$4$,$5$ から出る
- 事象 $C$ :$2$,$3$,$4$ から出る
としたとき、事象 $A$ の確率から事象 $B\cup C$ の確率を引けばいい。
ここで、$P(B\cup C)=P(B)+P(C)-P(B\cap C)$ なので、求める確率は、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(解答終了)
ちなみに解答中の図は、その形から「ドーナツ図」と呼ばれます。
サイコロの最大最小の話は、ドーナツ図(ベン図?)で考えるようにしましょう。
確率の最大値
さて、最後の難問。
難関大を志すのであれば、必ず押さえておきたい重要問題です!
【解答】
問題文で問われている確率を $P_n$ とおく。
ここで、一度解答の方針を予想すると…
$$P_1<P_2<…<P_N>P_{N+1}>…P_{50}$$
と、$1≦N≦50$ のある自然数 $N$ で最大値を取るはずである。
よって、$\displaystyle \frac{P_n}{P_{n+1}}$ がはじめて $1$ を超えるときを求めればOK!!
さて、方針が定まったところで、$P_n$ を求めていく。
$50$ 回投げて $6$ の目がちょうど $n$ 回出る反復試行の確率だから、
①の $n$ を $n+1$ に変えてあげれば、$$P_{n+1}=\frac{50!}{(n+1)!(49-n)!}\frac{5^{49-n}}{6^{50}} ……②$$
①、②より、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
よって、$\displaystyle \frac{5(n+1)}{50-n}>1$ の不等式を解いてあげると、$$n>\frac{45}{6}=7.5$$
ということは、$n=8$ ではじめて $\displaystyle \frac{P_n}{P_{n+1}}>1$、つまり$P_n>P_{n+1}$ となるから、
$$P_1<P_2<…<P_8>P_9>…P_{50}$$
したがって、$n=8$ のとき最大となる。
(解答終了)
以上 $4$ 問お疲れさまでした~!
反復試行の確率に関するまとめ
本記事の要点を改めてまとめます。
- 反復試行の確率の公式は、「独立な試行を $n$ 回繰り返す」「 $n$ 回繰り返すという $1$ つの試行」の $2$ つの見方で導ける。
- 難問 $4$ 選のポイントは、以下の通り。
- 試合で優勝する確率…「最後に必ず勝つ!」
- 点の移動の問題…「連立方程式」
- サイコロの最大最小…「ドーナツ図」
- 確率の最大値…「 $\displaystyle \frac{P_n}{P_{n+1}}$ 」
反復試行の確率は難しいうえに、入試でも頻出の単元です。
しっかり学習しておきましょう。
「確率」全 12 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
以上です~。
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