こんにちは、ウチダです。
数学Ⅰで習う「二次関数」と、中学2年生で習う「二次方程式」には、深いかかわりがあります。
これら2つを結び付けているのが「判別式D(はんべつしき)」です。
そうそう、二次関数を勉強してたら急に二次方程式が出てきてびっくりしたんだよな~。
[/ふきだし]判別式Dの意味がよくわからないわ…
[/ふきだし]よって本記事では、判別式Dの意味(公式・使うとき・4分のD)から判別式による最大最小の問題まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
判別式Dとは一体何か【解の公式の√部分です】
判別式とは、「二次方程式の解の公式で登場する√(ルート)の中身部分」を表します。
なので、正確には「二次方程式の判別式D」という言い方をします。
※三次方程式や四次方程式の判別式もありますが、この記事では扱いません。
また、判別式は英語で「discriminant」と言うので、頭文字を取ってDで表します。
なるほど!解の公式さえ覚えておけば、判別式も自然と覚えられるね!
[/ふきだし]その通りですね!解の公式は中3で学びますが、非常~~~に重要な公式なので、忘れることがないようにしたいですね。
[/ふきだし]解の公式に関する詳しい解説は、こちらの記事をご参考ください。
解の公式とは~(準備中)
判別式dの符号で実数解の個数がわかる理由
さて、”判別式”というぐらいですから、きっと「何かを判別する式」なのだろう、と思いますよね?
結論から言うと、判別式は「二次方程式の実数解の個数を判別する式」になります。
一体どういうことなのかを理解していくために、まずはこちらの問題をご覧ください。
問題1.次の方程式の解を計算しなさい。
(1) $x=1±\sqrt{9}$
(2) $x=2±\sqrt{0}$
(3) $x=3±\sqrt{-1}$
サクッと解答していきます。
(1) $\sqrt{9}=3$ なので、$1±\sqrt{9}=1±3$
よって、$x=4 \ , \ -2$
(2) $\sqrt{0}=0$ なので、$2±\sqrt{0}=2±0=2$
よって、$x=2$
(3) $\sqrt{-1}$ という数は存在しない(※1)。
よって、実数解はない。
この問題を、二次方程式の解の公式に照らし合わせてほしいんです。
つまり、
- √の中身がプラス( $D>0$ ) …実数解は $2$ つ。
- √の中身が $0$( $D=0$ ) …実数解は $1$ つ。(※2)
- √の中身がマイナス( $D<0$ )…実数解はない( $0$ 個)。
となるため、「判別式Dの符号によって実数解の個数がわかる」と言えます。
なるほど!だから判別式Dの値はさほど重要ではないんですね!
[/ふきだし]実数解の個数を判別するだけなら、判別式Dの符号さえわかればOKなのでそうなりますね。ちなみに、この考え方から $\displaystyle \frac{D}{4}$ 公式が作られています。(詳しくは後述)
[/ふきだし]※1と※2の補足
※1で $\sqrt{-1}$ という数が出てきますが、実は数学Ⅱで
という、新たな数 $i$ が登場します。
この数は、実数に対して”虚ろ(うつろ)な数”とも言えるので、「虚数(きょすう)」と呼ばれています。
また、※2で「実数解は $1$ つ」となっていますが、厳密には
とも言えます。
このように、実数解が複数個重なっているように見えることから、$D=0$ のときの実数解は「重解(じゅうかい)」と呼ばれています。
それぞれについては以下の参考記事で詳しく解説してますので、もし興味があればあわせてご覧ください。
- 虚数とは~(準備中)
- 重解の求め方とは?【二次方程式が重解をもつ条件を解説します】
二次関数のグラフと判別式の関係は?
さて、ここまでで「二次方程式と判別式のかかわり」は理解できましたね。
では、本題である「二次関数と判別式のかかわり」とは何かについて、解説していきます。
二次関数 $y=ax^2+bx+c$ に対して、$ax^2+bx+c=0$ を解くと図の点の座標がわかります。
つまり、ここからマジカルバナナみたいに連想ゲームをしていくと、
- 判別式Dの符号で、二次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の実数解の個数がわかるんだったな…
- 二次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の実数解は、上のグラフの赤の点だったな…
よって、「判別式Dの符号で、二次関数 $y=ax^2+bx+c$ が $y=0$( $x$ 軸)といくつの点で交わるかがわかる」ということになります。
さあ、ここまでの内容を一回表にまとめておきましょう。
そっか!上に凸( $a<0$ )の場合も、「 $x$ 軸と何点で交わるのか」を考えればいいのか!
[/ふきだし]その通りです^^「 $a<0$ の場合における判別式の扱い方がわからない…」という人がまあ多いですが、この本質さえ押さえておけば安心ですね。
[/ふきだし]この「二次関数のグラフと $x$ 軸の位置関係」は、すぐ後で学ぶ「二次不等式(にじふとうしき)」の解き方を理解する上で非常に重要な知識ですので、ぜひこの機会に本質を押さえておきましょう。
二次不等式の問題11選
ポイント「因数分解→解の公式→判別式D」
これらについて、わかりやすく丁寧に解説します。
「パターンがありすぎて、二次不等式が解けない…」と感じている方は必見です。
判別式のちょっと応用問題2選
基本的な内容は説明できましたので、ここからは応用問題にチャレンジしていきましょう。
というのも、判別式に限った話ではないですが、判別式は特に「上手に使う」ことが求められます。
いったいどういうことなのかは、問題を解きながら確認していきましょう。
「4分のD公式」を使おう
問題2.次の二次関数のグラフと $x$ 軸との共有点の個数を調べなさい。
(1) $y=x^2-5x+3$
(2) $y=3x^2+2x+1$
さて、まず一問目は先ほどの復習もかねて、「二次関数のグラフと $x$ 軸の位置関係」に関する問題です。
見出しの「”4分のD公式”って何だろう…」と考えながら、以下の解答をご覧ください。
もちろん(2)も、今まで通り $D=b^2-4ac$ を使って計算しても解くことができます。
ただ、再三お伝えしている通り、あくまで重要なのは「判別式Dの符号」です。
つまり極端な話を言うと、「 $D=1$ だろうが $D=2$ だろうが、$D$ の値はほとんど関係ない」ということです。
この考え方から、「4分のD公式」を導いていきます。
【4分のD公式とは?】
二次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の判別式は $D=b^2-4ac$ で表せた。
ここで、$b$ が偶数の場合に着目する。
すると、$b=2n$ のように表せるので、これを判別式 $D$ の式に代入する。
$D=b^2-4ac$
$ \quad =(2n)^2-4ac$
$ \quad =4n^2-4ac$
$ \quad =4(n^2-ac)$
$4$ でくくり出すことができたので、両辺を $4$ で割ると、
$\displaystyle \frac{D}{4}=n^2-ac$
となる。
(導出終了)
$b$ が偶数のときは、少し計算がラクになるということですか?
[/ふきだし]そういうことになりますね!覚え方は「 $b$ の半分の $2$ 乗 $-$ $ac$ 」です。$4$ がないので、慣れてくるとむしろこっちの方が覚えやすいと思いますよ。
[/ふきだし]実際、$D=b^2-4ac$ の $4$ をかけ忘れてしまう方は多いと思います。
$b$ が偶数のときは、ぜひ「4分のD公式」を積極的に使っていきましょうね!
【補足】判別式は●次方程式に対して定義されるもの
問題2の解答中で「二次方程式 $~=0$ の判別式を $D$ とする」という文言があります。
少し注意していただきたいのが、判別式はあくまで「(右辺が $0$ の)方程式に対して定義されるもの」であり、関数に対して定義されるものではありません。
あ!これやっちゃってたかも…
[/ふきだし]細かいミスなんですけどね。ただ「二次関数 $y=x^2-5x+3$ の判別式を $D$ とする」みたいに書く人は多いので、心当たりのある方は注意してみてください。
[/ふきだし]判別式は、方程式の実数解の個数を判別するための式でした。
細かいところですけど、減点される可能性もあるため、「何に対して定義されるのか」その論理を追うことができるとVERY GOODです!
放物線と直線の共有点の個数を求めよう
問題3.放物線 $y=x^2-x$ と直線 $y=x-k$ の共有点の個数を調べなさい。
次は、$x$ 軸との共有点ではなく、直線(一次関数)との共有点を調べる問題です。
$k$ の値によって直線の方程式が変わるから、場合分けで解答する必要がありそうね。
[/ふきだし]それでは参りましょう。
$x$ 軸との共有点を求める場合、$x$ 軸は $y=0$ とも表せるのでそれを利用し、連立方程式を作りましたね。
今回の問題も、発想は一緒です。
連立方程式に関する詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。
連立方程式とは~(準備中)
判別式による最大最小の問題を解こう【発展】
さあ、ラストの問題はかなり発展的な内容です。
面白い問題ですので、ぜひチャレンジしてみてください。
発展問題1.$\displaystyle \frac{2x-1}{x^2+2}$ の最大値および最小値と、そのときの $x$ の値を求めなさい。
この問題にまさか判別式を用いるなんて本当か…?
こう思う方は多いと思います。
正直かなり難しい問題ですが、論理をきちんと追えば解答が出来上がってきます。「 $x$ が実数であること」にも注目しましょう。
[/ふきだし]それでは解答をご覧ください。
参考記事が3つもありましたね…長い解答でした。
[/ふきだし]そうですね~。使っている知識自体はそこまで難しくはないので、詳しくは参考記事をご覧ください。
[/ふきだし]解答中でも示したように、
- 「 $x$ が実数」だから…
- 「二次方程式は必ず実数解を持つ」と言える!
- ということは…「判別式 $D≧0$ を解けばOK」
この発想が、発展問題1を解く上での最大のポイントです。
自分で思いつくのは中々厳しいので、ぜひ一度は挑戦しておきましょう^^
判別式に関するまとめ
それでは最後に、本記事のポイントをまとめます。
- 判別式Dとは、「二次方程式の解の公式」の√部分のことであり、実数解の個数を判別するための式!
- 判別式Dを使えば、二次関数のグラフと $x$ 軸の位置関係がわかり、「二次不等式」を解くカギとなる。
- より詳しい使い方は「重解(じゅうかい)」の記事でまとめています。
「実数解を持つ $⇔$ $D≧0$ 」はぜひ理解しておきたいので、こちらの記事もあわせてご覧ください。
重解の求め方(判別式を使わない・三次方程式)
実数解を持つ条件?完全平方式?
これらについて、わかりやすく丁寧に解説します。
「重解に関する問題はややこしくて難しいな…」と感じている方は必見です。
数学Ⅰ「二次関数」の全 $12$ 記事をまとめた記事を作りました。よろしければこちらからどうぞ。
おわりです。
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