こんにちは、ウチダです。
今日は、数学Ⅱで習う
「剰余の定理と因数定理」
について、まずは剰余の定理をわかりやすく証明し、実際にどう用いて問題を解いていけばよいかを考察し、最終的には二乗で割った余りを求める応用問題なども解説していきます♪
剰余の定理とは
まず、「割り算」というものから考えていきましょう。
すごい初歩的ですが、次の式をご覧ください。
$$7=2×3+1$$
この式の割られる数は $7$、割る数は $2$ ですね!
また、商は $3$ で余りは $1$ です。
このように、$$割られる数=割る数×商+余り$$の構図が常に存在しているのです!
では、ここに注目して、文字 $x$ を含んだ整式についても同じことをしていきたいと思います。
例. $x^3-x^2+x-1$ を $x-2$ で割り算せよ。
これを普通の割り算と同じように考えると、以下のようになります!
↓↓↓
また、この計算は組立除法と呼ばれる方法を用いて、以下のようにも計算できます。
↓↓↓
「組立除法がよくわからない」という方は、以下の記事をご覧ください!
以上の計算結果から、$$x^3-x^2+x-1=(x-2)(x^2+x+3)+5$$であることが分かりました。
ここで、”剰余”という言葉の意味について、ちょっと考えてみましょう。
剰余演算(modulo)…ある数値を別の数値(法と呼ばれることもある)で除算し、余りを取得する演算。
※Wikipediaより引用
つまり一言で言ってしまえば、「剰余=余り」です。
さて、先程の例で見てみると、商が $x^2+x+3$ で、余りが $5$ となっていますね!
この余りを求める操作をもっと簡単にできないか…と考えて生み出されたものが剰余の定理なのです!
整式 $P(x)$ を $1$次式 $x-k$ で割った余りは、$P(k)$ に等しい。
またまたさっきの例題に、今突如として出てきた剰余の定理を用いてみましょう。
今回、$x-2$ で割っているので、$$P(x)=x^3-x^2+x-1$$に $x=2$ を代入してみましょう。
すると、
なんでこんなことができるのか…実は仕組みはとても単純です。
さっき、割り算したときに、$$x^3-x^2+x-1=(x-2)(x^2+x+3)+5$$となりましたね。
ここで、両辺に $x=2$ を代入してみましょう。
すると、右辺の$$(x-2)(x^2+x+3)$$に注目すると、$$(2-2)(2^2+2+3)=0×9=0$$となります。
…ここで感じてください。
もし仮に商が他の値でも、常に $0$ になりそうじゃないですか…?
そうなんです!
当たり前ですが、$x-2$ に $x=2$ を代入すると $0$ になるので、たとえ商がどんな値をとってもここの部分は常に0になるのです!!
ここのカラクリに気づいてしまえば、もうお分かりかと思います。
ここからは一般的に剰余の定理を証明していきます。
【証明】
整式 $P(x)$ を $x-k$ で割ったときの商を $Q(x)$、余りを $R$ とすると、$$P(x)=(x-k)Q(x)+R$$と表すことができる。
ここで、両辺に $x=k$ を代入すると、$$P(k)=R$$
よって、余り $R$ は $P(k)$ に等しい。
(証明終了)
いかがでしょうか。
すごいあっさり証明出来てしまいましたね♪
剰余の定理のいいところは「商を無視できる」ところです。
ここら辺が合同式と似ていますね!
⇒参考.「合同式(mod)の基本的な性質を証明!不定方程式などの練習問題を5パターン解いてみよう」
それではここからは、
- 剰余の定理の使い方
- 因数定理って何?
この2つに絞って詳しく見ていきましょう♪
剰余の定理の問題4選
剰余の定理を使った応用問題を4つ厳選してみました。
少しずつ難しくなっていくので、「今の自分はどこまで解けるか」ぜひヒントを見ながらでもいいのでチャレンジしてみて下さい♪
剰余の定理の問1
さて、さっそく困りました!
剰余の定理は $x-k$ で割っていたはずです…
今回割る数は $2x+3$ …。
しかし、「剰余の定理をどうやって導出したか」振り返ればきっと糸口が見つかるはずです!
では解答に移ります。
↓↓↓
【解答】
$P(x)=x^3+2x^2-4x+3$とおく。
ここで、整式 $P(x)$ を $2x+3$ で割ったときの商を $Q(x)$、余りを $R$ とすると、$$P(x)=(2x+3)Q(x)+R$$と表すことができる。
この式に、$x=-\frac{3}{2}$を代入すると、
$$P(-\frac{3}{2})=R$$となる。(ここがポイント!)
したがって、余りは
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(終了)
いかがでしょうか。
一貫して根底にあるの「商を無視したい」という発想なので、今回の場合$$x=-\frac{3}{2}$$を代入することで、$(2x+3)Q(x)=0$ となります。
この話を一般化すると…
「$P(x)$ を $ax+b$ で割ったときの余りは、$P(-\frac{b}{a})$ に等しい。」
となります。
この問題はぜひとも剰余の定理の一環として押さえておきたいところですね♪
剰余の定理の問2
さあ、この最重要応用問題!!
この問題の考え方が問3、問4にもつながってきますし、この問2のような問題はよく出題されるかと思います。
解法を知っている方も、ぜひ今一度どういう論理で進めればよいか考えてみて下さい♪
ヒントは「余りをどう置くか」ですね!
では解答に移ります。
↓↓↓
【解答】
$P(x)$ を $2$次式 $(x-1)(x+3)$ で割ったときの余りは $1次式$ か定数であるから、$$R=ax+b$$とおくことができる。(ここが最重要ポイント!!)
よって、商を $Q(x)$ とすると、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
と表すことができる。
①の式に $x=1$、$x=-3$ をそれぞれ代入すると、$$P(1)=a+b$$$$P(-3)=-3a+b$$ここで、$x-1$ で割った余りが $-6$ であるから、剰余の定理より、$P(1)=-6$
同様に、$x+3$ で割った余りが $2$ であるから、剰余の定理より、$P(-3)=2$
したがって、$$\left\{\begin{array}{ll}a+b=-6 \\-3a+b=2\end{array}\right.$$
この連立方程式を解いて、$$a=-2,b=-4$$よって余りは、$-2x-4$ である。
(終了)
いかがでしょうか。
「余りを $ax+b$ というふうに置ける」のが”あまり”にも重要なのでまとめます(笑)。
ですから、$2$次式で割り算すれば余りは $1$次以下の式ですし、$3$次式で割り算すれば余りは $2$次以下の式です。
一般的に言えば、「$n$次式で割り算したときの余りは $n-1$次以下の式」ということですね!
※ここでは「定数は0次式」として扱ってます。
この問題を軽々クリアできると、次の問3問4もかなり手をつけやすくなります♪
剰余の定理の問3
さて、いよいよ複雑になってまいりました。
しかし、基本は問2。
ヒントとしては、まずは余りを置いて、「その余りについてどういう条件がつけられるか」ですかね。
それでは解答に移ります。
↓↓↓
【解答】
$P(x)$ を $x^3-1=(x-1)(x^2+x+1)$ で割った商を $Q(x)$、余りを $R(x)$ とおくと、$R(x)$ は $2$次以下の式であり、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
と表すことができる。
ここで、$R(x)$ を $x^2+x+1$ で割った商を定数 $a$ と置くことができ、また余りは $2x-1$ なので、$$R(x)=a(x^2+x+1)+2x-1 ……②$$とできる。(ここがポイント!)
よって、②を①に代入すると、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
また、$P(x)$ を $x-1$ で割ると余りは $7$ なので、剰余の定理より、$P(1)=7$
したがって、③より、$$P(1)=a(1^2+1+1)+2×1-1=7$$これを解いて$$a=2$$よって、求める余りは、
(終了)
いかがでしょうか。
少し難解なので解説します。
まず出だしは問2と同じで、割る数割られる数の関係式を作ります。
ここで、余りは $2$次式以下であることがわかりますが、次に行う操作の都合上$$ax^2+bx+c$$とは置かないでください!
あと、ここまで来られた方なら$$x^3-1=(x-1)(x^2+x+1)$$の因数分解は大丈夫だと思いスルーしました(笑)。
さあ、まだ何も与えられた条件を用いていないので、ここで一個目を使いましょう。
今回、$x^2+x+1$ で割ると余りが $2x-1$ でした。
これはつまり…「余りの式を $x^2+x+1$ で割ったときの余りが $2x-1$ 」というふうに考えることができますね?
何故かというと、①の式の$$(x-1)(x^2+x+1)Q(x)$$の部分は $x^2+x+1$ で割り切れるので当然余りは $0$ だからですね!
ここに気づくと、最初の式①に代入することで、あとは二個目の条件を使えばきれいに求まるかと思います♪
さあ最後の問題です。
張り切ってまいりましょう~!
剰余の定理の問4
先に言っておきますが公立大学の入試問題レベルぐらいはあります。
ヒントをいくつか挙げます。
まず、「次数が最小」と今までにない出題のされ方をしていますが、これは答えを一つに絞るための条件ですので、そんなに気にしなくて良いです。
この問題のすべては「出だし」にかかってます。
さて、問2や問3で使った知識と、出だしの発想力を組み合わせれば…何か糸口が見つかるはず!!
では解答に移ります。
↓↓↓
【解答】
$P(x)$ を $4$次式 $(x^2+2x+3)(x^2+3)$ で割ったときの商を $Q(x)$、余りを $R(x)$ とする。(ここが最重要ポイント!!)
すると、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
と表すことができて、また $R(x)$ は $3$次以下の式である。
また、①において、$P(x)$ を $x^2+2x+3$ で割った余りは $8x+8$ なので、問3と同じ原理で
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
とおける。
同様に、$$R(x)=(x^2+3)(cx+d)+2 ……③$$とおける。
②③より、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
左辺と右辺を $x$ の降べきの順に整理すると、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
これは $x$ についての恒等式になっているから、係数比較をすると、$$\left\{\begin{array}{ll}a=c\\2a+b=d\\3a+2b+8=3c\\3b+8=3d+2\end{array}\right.$$
連立4元1次方程式なので、これは解くことができて、$$a=1,b=-4,c=1,d=-2$$これらをだ②(もしくは③)に代入すれば、$$R(x)=x^3-2x^2+3x-4$$
よって①より、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
最後に、$P(x)$ の次数が最小になるのは $Q(x)=0$ のときであるら、求める整式は、$$P(x)=R(x)=x^3-2x^2+3x-4$$
(終了)
いかがでしょうか。
さすがに一筋縄ではいきませんが、出だしさえうまくいけばあとは計算力で何とかなるかと思います♪
この問題のつまづきやすいポイントは
- 出だしの $P(x)$ の置き方
- 余り $R(x)$ の2通りの置き方
- 連立4元1次方程式の解き方
この3つだと思いますので、順番に解説していきます。
1⃣. $P(x)$ をなぜそう置かなければならないの?
これは、「使う文字を極力減らす」という発想から生まれます。
たとえばですが、条件文を2つそのまま用いると、$$P(x)=(x^2+2x+3)Q(x)+2x-1$$$$P(x)=(x^2+3)Q'(x)+2$$と置くことだってできるはずです。
でもこれだと、$Q(x)$ と $Q'(x)$ が様々な式になる可能性があるうえ、肝心の余りの式 $R(x)$ が出てきません。
したがって、2つの割る数の積で割り算したほうが、式がスッキリするし、何より剰余の定理が使えるのでその先上手くいく、という見通しが立ちます。
2⃣. 余り $R(x)$ はなぜそう置けるの?
これは問3でやりましたね。
問3との違いを挙げると以下の図のようになります。
↓↓↓
問3問4どちらの問題も、割る数は $2$次式の場合を考えています。
ここで、問3の場合、余りも2次以下の式であることが分かっているので、$$a×(x^2+x+1)+~$$と、一つの文字 $a$ を用いて余りを表すことができます。
しかし、問4の場合、余りは3次以下の式なので、3次式となる可能性を考えなければなりません。
よって、$$(x^2+2x+3)(ax+b)+~$$というふうに、二つの文字 $a,b$ を用いて表す必要があるわけですね。
3⃣. 連立4元1次方程式はどうやって解けばいいの?
まず、連立方程式を作ることができた際は、その連立方程式を解くことができるか否か、簡単にでいいので判断するクセをつけましょう。
どういうことかというと、「解を一つに定めるにはどのぐらい条件が必要か」理解しておこうということです。
たとえば、未知数が $a,b$ のように $2$つの場合は、方程式が $2$つ必要でしたよね!
一般に、未知数の個数が $n$個(連立 $n$ 次1元方程式)の時、方程式も $n$個必要です。(解がない場合を除きます。)
今回は、$4$つの文字に対して $4$つ方程式が作れているので、求めることができそうですね!
連立方程式を解く上での基本中の基本は、「文字を1つずつ減らす」ことです。
たとえば、
$$\left\{\begin{array}{ll}a=c\\2a+b=d\\3a+2b+8=3c\\3b+8=3d+2\end{array}\right.$$
この式で「まず $a$ を消そう」と決めたとします。
そしたら、$a=c$ の式を他の3つに代入してあげれば消えますよね!
そうしてできた連立3元1次方程式に対しても、「次は $b$ を消そう」などと決めて、代入法か加減法で消していけば必ず解くことができます!
ぜひ、チャレンジしてみて下さい♪
因数定理との違い
最後によく混同しがちな「剰余の定理と因数定理との違い」について簡単にお話します。
剰余の定理は、余りを簡単に求めるための定理でした。
それに対して、因数定理は、「(高次方程式を解く上で)因数分解を簡単にする」ための定理です。
また、因数定理は剰余の定理における$$余り=0$$となる場合を考えたものですので、剰余の定理から簡単に導くことができます。
つまり、「因数定理は剰余の定理の一種である」となりますね。
因数定理の詳しい解説はこちらの記事で公開中ですので、ぜひご覧ください。
剰余の定理に関するまとめ
いかがだったでしょうか。
今日は剰余の定理の応用問題4問を解いてみました。
皆さん、解けるようになりましたかね♪
割り算の基本は「割る数割られる数の関係式」$$割られる数=割る数×商+余り$$になります。
この式をいじくっていくことで問題が解けることが多いため、その発想をぜひ身に付けてほしいと思います。
以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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