こんにちは、ウチダです。
今日は、数学Ⅱで最も有用な定理の一つである
「二項定理」
について、公式を圧倒的にわかりやすく証明して、応用問題(特に係数を求める問題)を解説していきます!
二項定理とは?
まずは定理の紹介です。
※この数式は横にスクロールできます。
これをパッと見たとき、「長くて覚えづらい!」と感じると思います。
ですが、これを「覚える」必要は全くありません!!
どういうことなのか、成り立ちを詳しく見ていきます。
二項定理の証明
先ほどの式では、 $n$ という文字を使って一般化していました。
いきなり一般化の式を扱うとややこしいので、例題を通して見ていきましょう。
例題. $(a+b)^5$ を展開せよ。
$3$ 乗までの展開公式は皆さん覚えましたかね。
しかし、$5$ 乗となると、覚えている人は少ないんじゃないでしょうか。
この問題に、以下のように「組み合わせ」の考え方を用いてみましょう。
分配法則で掛け算をしていくとき、①~⑤の中から $a$ か $b$ かどちらか選んでかけていく、という操作を繰り返します。
なので、$$(aの指数)+(bの指数)=5$$が常に成り立っていますね。
ここで、上から順に、まず $a^5$ について見てみると、「 $b$ を一個も選んでいない」と考えられるので、「 ${}_5{C}_{0}$ 通り」となるわけです。
他の項についても同様に考えることができるので、組み合わせの総数 $C$ を用いて書き表すことができる!
このような仕組みになってます。
そして、組み合わせの総数 $C$ で二項定理が表されることから、
組み合わせの総数 $C$ …二項係数
と呼んだりすることがあるので、覚えておきましょう。
ちなみに、今「 $b$ を何個選んでいるか」に着目しましたが、「 $a$ を何個選んでいるか」でも全く同じ結果が得られます。
この証明で、
と疑問に思った方は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
以上のように、一つ一つの項ごとに対して考えていけば、二項定理が導き出せるので、わざわざすべてを覚えている必要はない、ということになりますね!
ですので、式の形を覚えようとするのではなく、「組み合わせの考え方を利用すれば展開できる」ことを押さえておいてくださいね。
係数を求める練習問題
前の章で二項定理の成り立ちと考え方について解説しました。
では本当に身についた技術になっているのか、以下の練習問題をやってみましょう!
(1) $(x+3)^4$ の $x^3$ の項の係数を求めよ。
(2) $(x-2)^6$ を展開せよ。
(3) $(x^2+x)^7$ の $x^{11}$ の係数を求めよ。
解答の前にヒントを出しますので、$5$ 分ぐらいやってみてわからないときはぜひ活用してください^^
それでは解答の方に移ります。
【解答】
(1) 4個から3個「 $x$ 」を選ぶ(つまり1個「 $3$ 」を選ぶ)組み合わせの総数に等しいので、$${}_4{C}_{3}×3={}_4{C}_{1}×3=4×3=12$$
※3をかけ忘れないように注意!
(2) 二項定理を用いて、
※この数式は横にスクロールできます。
(3) 7個から4個「 $x^2$ 」を選ぶ(つまり3個「 $x$ 」を選ぶ)組み合わせの総数に等しいので、$${}_7{C}_{4}={}_7{C}_{3}=35$$
(3の別解)
よって、7個から4個「 $x$ 」を選ぶ(つまり3個「 $1$ 」を選ぶ)組み合わせの総数に等しいので、$${}_7{C}_{4}={}_7{C}_{3}=35$$
(終了)
いかがでしょう。
全問正解できたでしょうか!
ポイントは、
- (1)…$3$をかけ忘れない!
- (2)…$(x-2)=\{x+(-2)\}$ なので、符号に注意!
- (3)…それぞれ何個かければ $11$ 乗になるか見極める!
ですかね。
(3)の補足
(3)では、 $r$ 番目の項として、
と指数法則を用いてもOKです。
ここで、$$14-r=11$$を解くことで、$$r=3$$が導けるので、答えは ${}_7{C}_{3}$ となります。
今回は取り上げませんでしたが、たとえば「 $\displaystyle (x^2+\frac{1}{x})^6$ の定数項を求めよ」など、どう選べばいいかわかりづらい問題で、この考え方は活躍します。
それでは他の応用問題を見ていきましょう。
二項定理の応用
二項定理を応用することで、さまざまな応用問題が解けるようになります。
特によく問われるのが、
- 二項係数の関係式
- 余りを求める問題
この2つなので、順に解説していきます。
二項係数の関係式
(1) $${}_n{C}_{0}+{}_n{C}_{1}+{}_n{C}_{2}+…+{}_n{C}_{n}=2^n$$
(2)
※(2)は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
こんな複雑な式でも、二項定理を用いればあっという間に証明できます。
ではやっていきましょう。
↓↓↓
【証明】
まず、二項定理より、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(1)
①の式に $x=1$ を代入すると、$$2^n={}_n{C}_{0}+{}_n{C}_{1}+{}_n{C}_{2}+…+{}_n{C}_{n}$$
(2)
①の式に $x=-1$ を代入すると、$$0={}_n{C}_{0}-{}_n{C}_{1}+{}_n{C}_{2}-…+(-1)^n{}_n{C}_{n}$$
(終了)
このように、二項定理 $(a+b)^n$ の $a$ と $b$ にいろいろな数字を代入するだけで、関係式がいくつも作れます。
また、今証明した(1)と(2)の式を用いることで、
※この2つの数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
が簡単に示せますので、やってみてください^^
$n$ の偶奇で場合分けをして、(1)-(2)と(1)+(2)をするだけです。
余りを求める問題
一見何にも関係なさそうな余りを求める問題ですが、なんと二項定理を用いることで簡単に解くことができます!
↓↓↓
【解答】
$21=20+1,400=20^2$であることを利用する。(ここがポイント!)
よって、二項定理より、
※この数式は少しだけ横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
ここで、 $20^2=400$ が含まれている項は400で割り切れるので、前半の $2$ 項のみに着目すると、
よって、余りは $21$。
(終了)
この問題は合同式で解くのが一般的なのですが、そのときに用いる公式は二項定理で証明します。
合同式に関する記事を載せておきますので、ぜひご参考ください。
多項定理
最後に、二項ではなく多項(3以上の項)になったらどうなるか、見ていきましょう。
例題. $(x+y+z)^6$ を展開したとき、 $x^2y^3z$ の項の係数を求めよ。
考え方は二項定理の時と全く同じですが、一つ増えたので計算量がちょっぴり多くなります。
↓↓↓
【解答】
ⅰ) 6個から2個「 $x$ 」を選ぶ組み合わせの総数は、 ${}_6{C}_{2}$ 通り
ⅱ) のこり4個から1個「 $z$ 」を選ぶ組み合わせの総数は、 ${}_4{C}_{1}$ 通り
積の法則より、$${}_6{C}_{2}×{}_4{C}_{1}=60$$
(終了)
数が増えても、「組み合わせの総数と等しくなる」という考え方は変わりません!
※ただし、たとえば「 $x$ 」を選んだとき、のこりの選ぶ候補の個数が「 $x$ 」分少なくなるので、そこだけ注意してください!
では、こんな練習問題を解いてみましょう。
この問題はどこがむずかしくなっているでしょうか…
少し考えてみて下さい^^
では解答に移ります。
【解答】
$p+q+r=10$である $0$ 以上の整数を用いて、$$(x^2)^p(-3x)^q×1^r$$と表したとき、 $x^5$ が現れるのは、$$\left\{\begin{array}{l}p=0,q=5,r=5\\p=1,q=3,r=6\\p=2,q=1,r=7\end{array}\right.$$である。
よって、求める $x^5$ の係数は、
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(終了)
少し難しかったですが、ポイントは、「 $x^5$ の項が現れる組み合わせが複数あるので分けて考える」というところですね!
二項定理に関するまとめ
いかがだったでしょうか。
今日の成果をおさらいします。
- 二項定理は「組合せの考え方」を用いれば簡単に示せる。だから覚える必要はない!
- 二項定理の応用例は「係数を求める」「二項係数の関係式を示す」「余りを求める(合同式)」の主に3つである。
- $3$ 以上の多項になっても、基本的な考え方は変わらない。
この記事では一切触れませんでしたが、導入として「パスカルの三角形」をよく用いると思います。
「パスカルの三角形がよくわからない!」だったり、「二項係数の公式についてもっと詳しく知りたい!!」という方は、以下の記事を参考にしてください!!
おわりです。
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