こんにちは、ウチダです。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
さて、確率論で最も有名と言っても過言ではない問題。
それが「モンティ・ホール問題」です。
$3$ つのドアがあり、$1$ つは当たり、$2$ つはハズレである。
ⅰ) プレーヤーは $1$ つドアを選ぶ。
ⅱ) 司会者(モンティさん)は答えを知っていて、残り $2$ つのドアのうちハズレのドアを開ける。
ここで、プレーヤーは最初に選んだドアから残っているまだ開けられていないドアに変えることができる。プレーヤーがドアを変えたとき、それが当たりである確率を求めなさい。
※ヤギがハズレです。当たりは「スポーツカー」となってます。
少々ややこしい設定ですね。
皆さんはこの問題の答え、いくつだと思いますか?
↓↓↓(正解発表)
正解は $\displaystyle \frac{1}{2}$、…ではなく $\displaystyle \frac{2}{3}$ になります!
[ふきだし set=”悩む男性”]え!だって $2$ 個のドアのうち $1$ 個が当たりなんだから、正解は $\displaystyle \frac{1}{2}$ でしょ?なんでー???[/ふきだし]
そう疑問に思った方はメチャクチャ多いと思います。
よって本記事では、当時の数学者たちをも黙らせた、モンティ・ホール問題の正しくわかりやすい解説 $3$ 選を
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
モンティ・ホール問題のわかりやすい解説3選とは
モンティ・ホール問題を理解するためには、
- もしもドアが $10$ 個だったら…【 $≒$ 極端な例】
- 最初に選んだドアに注目!
- 条件付き確率で表を埋めよう。
以上 $3$ つの考え方を学ぶのが良いでしょう。
[ふきだし set=”ウチダ”]直感的にわかりやすいものから、数学的に厳密なものまで押さえておくことは、理解の促進にとても役に立ちますよ♪[/ふきだし]
ではさっそく、上から順に参りましょう!
もしもドアが10個だったら…【極端な例】
$10$ 個のドアがあり、$1$ つは当たり、残り $9$ 個はハズレである。
ⅰ) プレーヤーは $1$ つドアを選ぶ。
ⅱ) 司会者(モンティさん)は答えを知っていて、残り $9$ つのドアのうちハズレのドア $8$ つを開ける。
ここで、プレーヤーは最初に選んだドアから残っているまだ開けられていないドアに変えることができる。プレーヤーはドアを変えるべきか?変えないべきか?
…これであればどうですか?
最初の選択によほど自信がある場合以外、変えた方が良いですよね???
このとき、ドア $C$ に変更して当たる確率は $\displaystyle \frac{9}{10}$ です。
なぜなら、ドア $A$ のまま変更しないで当たる確率は $\displaystyle \frac{1}{10}$ のまま変化しないからです。
[ふきだし set=”ウチダ”]ドアの数を増やしてみると、直感的にわかりやすくなりましたね。本当のモンティ・ホール問題の確率が $\displaystyle \frac{2}{3}$ となることも、なんとなく納得できたのではないでしょうか^^[/ふきだし]
最初に選んだドアに注目
実は最初に選んだドアに注目すると、とってもわかりやすいです。
こう図を見てみると…
- 最初に当たりを選ぶと → 必ず外れる。
- 最初にハズレを選ぶと → 必ず当たる。
となっていることがおわかりでしょうか!
[ふきだし set=”ウチダ”]よって、最初にハズレを選ぶ確率を求めればいいので、$\displaystyle \frac{2}{3}$ となります。この解説はわかりやすくかつ数学的なので、個人的には一番オススメですね。[/ふきだし]
条件付き確率を利用
条件付き確率を利用するには、事象を定義する必要があります。
ここで、モンティ・ホール問題の場合は、
- ドアAが当たるという事象を $A$ (大文字)
事象 $B$,$C$ も同様に定義する。 - ドアAを開けるという事象を $a$ (小文字)
事象 $b$,$c$ も同様に定義する。
「当たる」と「開ける」というふうに、計 $6$ つの事象に分けて定義します。
ここで、まずは“確率の分布表”を作ります。
事象 $a$ | 事象 $b$ | 事象 $c$ | 合計の確率 | |
---|---|---|---|---|
事象 $A$ | $0$ | $\displaystyle \frac{1}{6}$ | $\displaystyle \frac{1}{6}$ | $\displaystyle \frac{1}{3}$ |
事象 $B$ | $0$ | $0$ | $\displaystyle \frac{1}{3}$ | $\displaystyle \frac{1}{3}$ |
事象 $C$ | $0$ | $\displaystyle \frac{1}{3}$ | $0$ | $\displaystyle \frac{1}{3}$ |
合計の確率 | $0$ | $\displaystyle \frac{1}{2}$ | $\displaystyle \frac{1}{2}$ | $1$ |
※たとえば、事象 $A$ と事象 $b$ が交わる部分は、事象 $A\cap b$ の確率を表している。
[ふきだし set=”ウチダ”]この表は具体的に状況をイメージしていけば作れます。注意したいのは、司会者(モンティさん)が開けられるドアが $2$ つある場合、それらを開ける確率は同様に確からしいものとするところですかね。[/ふきだし]
つまり、$\displaystyle P(A\cap b)=P(A\cap c)=\frac{1}{6}$ は、同様に確からしいという仮定のもとに成り立ちます。
さて、ここでは仮にドアAを選んで、ドアBが開けられた場合、ドアCに変更して当たる確率を考えてみましょう。
この確率は、条件付き確率 $P_b(C)$ となりますね。
したがって、条件付き確率の公式より、$\displaystyle P_b(C)=P(b\cap C)÷P(b)=\frac{1}{3}÷\frac{1}{2}=\frac{2}{3}$ と、正しい答えを導くことができました。
≫参考記事:条件付き確率の公式とは?【不良品の問題など4選もわかりやすく解説します】
補足:ベイズの定理を用いて導いてみよう
同じように、「ドアAを選んで、ドアBが開けられた場合、ドアCに変更して当たる確率」を考えてみます。
ここで、ベイズの定理より、$$P_b(C)=\frac{P_C(b)}{P(b)}P(C) …①$$
として求めることも可能です。
また、$P_C(b)$ の意味を考えると、「ドアCが当たりであるとき、ドアBが開けられた確率」となり、この確率は $P_C(b)=1$ となります。
[ふきだし set=”考える女性”]そっか!ドアCが当たりであれば、確実にドアBが開けられるから、確率は $1$ になるのね。[/ふきだし]
よって①の式に値を代入すると、$\displaystyle P_b(C)=\frac{1}{\frac{1}{2}}×\frac{1}{3}=\frac{2}{3}$ と求めることができます。
[ふきだし set=”ウチダ”]ベイズの定理とは、条件付き確率の公式からすぐに導ける式のことです。注意しておきたいのは、ベイズの定理を使う意味は「確率の更新」による部分がほとんどです。モンティ・ホール問題では、事前確率と事後確率は変化していないため、ベイズの定理を使う意味は限りなく薄いです。[/ふきだし]
※この内容は、コメントにて「ベイズ」さんに教えていただきました。ベイズさん、ありがとうございました!!
これだけだと「…何を言ってるの?」ってなっちゃいますよね。(笑)
ここでは解説しませんが、ベイズの定理も中々面白い話ですので、興味のある方はぜひ「ベイズの定理とは?【例題2選を使ってわかりやすく解説します】」の記事もあわせてご覧ください♪
モンティ・ホール問題を一瞬で解いたマリリンとは何者?
それでは最後に、モンティ・ホール問題の歴史的な背景について、少し見てみましょう。
正解は『ドアを変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には景品を当てる確率が2倍になるからだ
※Wikipediaより引用
これは、世界一IQが高いとされている「マリリン・ボス・サバント」という女性の言葉です。
まず、そもそもモンティ・ホール問題とは、モンティ・ホールさんが司会を務めるアメリカのゲームショー番組「Let’s make a deal」の中で紹介されたゲームの $1$ つに過ぎません。
モンティ・ホール問題が有名になったのは、当時マリリンが連載していたコラム「マリリンにおまかせ」にて、読者投稿による質問に、上記の言葉で回答したことがきっかけなんですね。
[ふきだし set=”考える男性”]マリリンさんって頭がいいんですね~。ふつうなら $\displaystyle \frac{1}{2}$ って引っかかっちゃいますよ![/ふきだし]
[ふきだし set=”考える女性”]…でもなんで、マリリンは正しいことしか言ってないのに、モンティ・ホール問題はここまで有名になったの?[/ふきだし]
そうなんです。マリリンは正しいことしか言ってないんです。
正しいことしか言ってなかったからこそ、批判が殺到したのです。
なぜなら…
- 彼女は哲学者(つまり数学者ではなかった)であり、
- しかも彼女は女性であるから
これってひどい話だとは思いませんか?
しかも $1990$ 年のことですよ?そんなに遠い昔の話じゃないです。
[ふきだし set=”ウチダ”]地動説とかもそうですが、正しいことって最初はメチャクチャ批判されるんですよね…。ただ「女性だったから」というのは本当に許せません。今の時代を生きる我々は、この歴史の過ちから学んでいかなくてはいけませんね。[/ふきだし]
モンティ・ホール問題に関するまとめ
本記事のまとめをします。
- モンティ・ホール問題において、「極端な例を考える」「最初に選んだドアに注目」「条件付き確率」この $3$ つの考え方が、理解を助けてくれる。
- 「ベイズの定理」でも解くことができるが、本来の使い方とはちょっと違うので注意。
- マリリンは、数学者じゃないかつ女性であるという理由だけで、メチャクチャ叩かれた。
最後は歴史的なお話もできて良かったです^^
[ふきだし set=”ウチダ”]たまには、数学から歴史を学ぶのも面白いでしょう?[/ふきだし]
そして皆さん。
一緒に、偏見のない平和な世界を作っていきましょうよ!!
「確率」全 12 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
熱くなったところで終わりです。
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コメント一覧 (7件)
モンティホール問題は、条件付き確率の問題ではありません❗️解説が不適切です。
もし、そうなら、答えは、変えても変えなくても同じです。ドアAが当たりの時、BかCが
開けらる確率が1/2だからといって、ドアBが開けられたとき、ドアAが当たりの確率が、1/6になるとは限りません。
モンティホール問題は、ベイズの定理による主観確率を求めるのではなく、客観確率を求める問題です。例えると「トランプ問題」で最初にダイヤを選ぶ確率(1/4)を求めるもので、後で3枚のダイヤが出たときに限定して条件付き確率(10/49)を求めるものではありません。「トランプ問題」をモンティホール問題に置き換えると、後で、必ずダイヤを3枚選ぶ(モンティはダイヤのカードを知っている)なら、事後確率は変化しないため、ベイズの定理を用いることは誤解を招くと考えています。
わかりやすい解説ありがとうございます!
それを踏まえた注釈をつけることで誤解を招かぬよう対応させていただきたく思います。
モンティホール問題は3囚人問題とは異なり、司会者が開けるドアや最初に選択されるドアは特定(条件付け)されていません。
したがって、ベイズの定理を用いることは不適当で、誤解を招くと考えています。
なるほど。数学的にはその2つの問題は同じ構造をしていると思っていましたが、そのような違いがあったのですね。
しかし、だからといってベイズの定理を用いることが不適当になる意味がちょっとよくわかりません。
よろしければどこが不適当であるのか、教えていただいてもよろしいですか?
モンティホール問題では、事後確率は事前確率と同じで変化しないので、ベイズの定理を用いた解説は必要ないと思います。
たしかに、ベイズの定理を用いる意味は薄いですね。
しかし、「司会者がそれぞれのドアを開ける確率が挑戦者の最初の選択によって変わる」ところがより強調できるのではないかと考え、解説した次第です。
ご指摘ありがとうございました!!