こんにちは、ウチダショウマです。
今日は、数学Ⅲで習う
「無限等比級数」
ですが、実はそんなに大したことはありません!!
数学Ⅱの数列の知識がしっかりと固まっていれば十分に理解できます。
今日はまず前半では公式の証明を部分和から解説していき、後半では応用問題(収束範囲を求める問題や図形への活用)を見ていきましょう!
「等比数列の和の公式がわからない…」という方は、以下の記事からご覧いただけると良いかと思います。
↓↓↓
等比数列の和の公式の覚え方とは?問題を通してわかりやすく証明!【極限についても考察】

無限等比級数とは?
まず、聞き慣れない言葉「級数」が出てきたので、調べてみましょう。
数学における級数とは、ひと口に言えば数や関数など互いに足すことのできる数学的対象の列について考えられる無限項の和のことである。
※Wikipediaより引用
…なんか難しいですね。
ようするに、「無限個足し合わせたもの」を”級数”と言うんですね!
※無限級数でも級数でも構いませんが、「無限級数の和」という言い方は間違いなので気を付けましょう。「頭痛が痛い」「新しい新居」「古い古時計」みたいな日本語になってしまいます。
ここで今回見ていきたい重要な級数が、無限”等比“級数ということで、「等比数列の項を無限個足し合わせたもの」になります。
では、次の章では無限等比級数の公式を、等比数列の和の公式から具体的に考えていきましょう。
無限等比級数の公式の証明
等比数列の和の公式は、こんな形でした。
公比$r<1$のとき、$$S(n)=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$$
公比$r>1$のとき、$$S(n)=\frac{a(r^n-1)}{r-1}$$
公比$r=1$のとき、$$S(n)=a×n$$
この和は、初項から第$n$項までの”部分的な”和なので、「部分和」と言ったりします。
今回注目したいのが、この部分和の式の$$r^n$$というところです。
皆さん、指数関数を数学Ⅱで勉強したと思いますが、指数関数の形って大きく分けて2つありましたよね。
図をご覧ください。↓↓↓
※$a>0$としています。
$y=a^x$の$a$のことを「底」と言いますが、この底が$$1より大きい or 1より小さい$$この2つの場合でグラフの形が大きく変わりましたね。
(ちなみに、$a=1$では、$y=1^x=1$となり定数関数になりますね。)
ここで、$x→∞$のときを考えると、$$a>1のとき、a^x→∞$$$$a<1のとき、a^x→0$$こういう大きな違いがありますね。
さあ、ここで等比数列の和の公式に戻ってみましょう。
すると、$r>1$のときは、$$n→∞とすると、r^n→∞$$ですね!
つまり、$$S(n)→∞$$に発散してしまいます。
($r=1$のときも、$S(n)=an→∞$に発散しますね。)
そういうふうに考えていくと…
「$n→∞$としたとき、$r^n→0$にならないと収束しない!」
この事実に気づくと思います。
($r≦-1$のときは「振動」とも呼びますが、振動も発散の一種なのでここでは省略します。ようは具体的な値がわからないってことですからね。)
つまり、たくさんかけて0に近づく数というのは、$$|r|<1$$ですから、まとめるとこうなります!(負の数については省略してきましたが、例えば$-\frac{1}{2}$をたくさんかけていくと0に近づいていきますよね。そのイメージだけで大丈夫です!)
公比$-1<r<1$のとき、$$\lim_{n\to\infty}S(n)=\frac{a}{1-r}$$
それ以外では、振動も含めて発散する。
(補足)ちなみに、初項$a=0$であるときは$0+0+0+…$という式になりますから、無限等比級数は0になります。
等比数列の和の公式よりもスッキリした形になりました!
無限等比級数の例題
ではこの章では、実際にどういう問題が解けるようになるか見ていきましょう。
細かく分ければもっとたくさんありますが、本質的には
- 収束、発散を調べ、収束するならその和を求める。
- 収束条件、発散条件を調べる。
- 循環小数を既約分数で表す。(数学Ⅰでも別の方法で習う。)
この3つしかありません。
ですので、一つ一つしっかり見ていきましょう。
(発散はあまり面白くないと思いますので、ここでは「収束」に焦点を当てた問題を解いていきます!)
問題1【収束を調べ和を求める】
※この数式は少しだけ横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
公比が何なのか少しわかりづらいですが、分母の有理化ができれば大丈夫です!
【解】
公比を$r$とすると、
$1<\sqrt{3}<2$より、$0<\sqrt{3}-1<1$であるから、この無限等比級数は収束する。
また、その和は、
(終了)
公比が0より大きく1より小さいことを示すところがポイントですね!
あとは公式に当てはめて解きましょう!
(分母の有理化は確実にできるようにしておきましょう。)
問題2【収束条件を求める】
※この数式は少しだけ横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
が収束するような実数$x$の値の範囲を求めよ。ただし、$x≠-1$とする。
つまり$x$に条件をつけてあげて収束するように持っていけばいいんですね!
ではやっていきましょう。
【解】
この級数は、初項$x$、公比$\frac{1}{1+x}$の無限等比級数である。
よって、収束する条件は、$$x=0 ……①または-1<\frac{1}{1+x}<1$$である。(ここがポイント!)
ここで、$x>-1$のとき、$1+x>0$なので、
※この数式は横に少しだけスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
$x>-1$との共通範囲を求めると、$$x>0 ……②$$
次に、$x<-1$のとき、$1+x<0$なので、
※この数式は横に少しだけスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
$x<-1$との共通範囲を求めると、$$x<-2 ……③$$
①~③より、$$x<-2,0≦x$$
(終了)
分母$1+x$を払うためにすべての辺に$1+x$をかけるのですが、$1+x$がマイナスの時は不等号の向きが変わるので注意してください!
なので、絶対値の扱いに慣れている方は、こちらの別解の方がスムーズにいくと思います。
【別解】
$$-1<\frac{1}{1+x}<1⇔\frac{1}{|1+x|}<1$$であるから、両辺に$|1+x|(>0)$をかけると、(ここがポイント!)
(他は解と同様。)
不等式を扱う際は、必ず両辺に同じ数をかけるとき、プラスかマイナスかを忘れずに注意してください。
問題3【循環小数を既約分数で表す】
まずは数学Ⅰで習う通常の方法で解いてみます。
【解】
$x=0.3333…$とおく。
ここで、$$10x-x=(3.3333…)-(0.3333…)=3$$となるので、$$9x=3$$よって、$$x=\frac{1}{3}$$
(終了)
循環する桁数が今回の場合1桁なので、$10^1=10$倍したものから元の数を引けば、小数点以下がきれいに消えるという方法です。
ではこれを、無限等比級数の考え方で解いてみましょう。
【別解】
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
より、初項0.3、公比$\frac{1}{10}$の無限等比級数である。
よって、
(終了)
この考え方、面白いですよね!!
無限等比級数の面白い使い方
それでは最後に、無限等比級数を使った面白い考え方をご紹介します!
具体的には…
- ケーキをきれいに3等分する方法
- 人間は亀に一生追いつけない!?ほんとに!?
この2つを取り上げます。
(友達に自慢できる内容ですので、ぜひ楽しんでお読みください^^)
ケーキをきれいに3等分する方法
皆さん、ホールケーキならまだしも、四角いケーキを3人で均等に分けるとき、困った経験はありませんか…?
そういうときはこう考えてみてください。↓↓↓
初項$\frac{1}{4}$、公比$\frac{1}{4}$の無限等比級数を考えると、$$\frac{\frac{1}{4}}{1-\frac{1}{4}}=\frac{1}{3}$$になりますから、これを利用すれば、4等分したうち3つを3人に分けて、余った一つをまた4等分して…と繰り返していけば、結果ケーキはきれいに3等分できるというお話です!
(現実世界にも応用できますが、あまりにも小さくなりすぎて切れなくなってしまった場合は、3人の中で一番食いしん坊な人が食べることにしましょう(笑)。)
アキレスと亀
こちらは結構有名なパラドックスとして知られています。
どんな命題か、図をご覧ください。↓↓↓
「いやいや…普通に追いつけるでしょ!!」
そう思ったそこの貴方、大正解です。
ですが、ここで古代ギリシャの哲学者「ゼノン」さんはこんなことを言いました。
…なんか、この文面を見てしまうと、「なるほど、たしかにな~。」って思っちゃいませんか?少なくとも私は最初そう思っちゃいました(笑)。
ですが、このゼノンさんという方も、こんなことを真剣に唱えていたのではなくて、
「さあ、この論理の矛盾を示してみろっ!!」
と皆に問いかけていたにすぎないのですね。
でも、この主張を論破するのって結構難しくないですか…?
そこで、無限等比級数の出番です!
【正しくないことの証明】
最初の時点での、「あなたと亀の差」は1kmです。
次に、あなたが亀がいたところに着いたとき、亀はあなたの$\frac{1}{2}$倍の速度で歩いているので、「あなたと亀の差」は$\frac{1}{2}$kmです。
次は、$\frac{1}{4}$km、その次は$\frac{1}{8}$km、…
このように無限に続いていきます。
よって、これらをすべて足すと、初項1、公比$\frac{1}{2}$の無限等比級数になっているので、$$\frac{1}{1-\frac{1}{2}}=\frac{1}{\frac{1}{2}}=2(km)$$となります。
よって、この話は、あなたが歩いた距離が2km未満における話であって、2km地点ではぴったり追いつき、その後は普通に追い抜かすということがわかります。
(証明終了)
ようはこの問題は、
2km未満のときの話を永遠と繰り返しているだけで、結局は2km地点で追いつくわけですね。
無限等比級数に関するまとめ
いかがだったでしょうか。
今日はまず、「無限等比級数の言葉の意味」から入り、「無限等比級数の例題」を3問見たあとに、「無限等比級数の考え方を用いた面白い話」を2つご紹介しました。
無限というのは実に奥深いものです。
我々が生きているこの世の中は、どんなに巨大であっても何かしら数があり量があり…ようは「有限」なわけです。
その有限な世界にいる我々が無限について語り合うって、なんかワクワクしませんか?
数学の魅力と奥深さと難しさはそこにあるといっても過言ではありません。
ぜひ、無限を楽しんじゃってください!^^
それでは、ウチダショウマでした。
皆さん、よい数学Lifeを!!
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