こんにちは、ウチダです。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
さて、${}_n{C}_{r}$、つまり組合せの総数のことを、別名「二項係数(にこうけいすう)」とも呼びます。(理由は後述。)
この二項係数 ${}_n{C}_{r}$ には知っておくと便利な公式が $3$ つ存在するのですが…
二項係数の公式(組合せの性質・組合せの関係式とも言う)ってそもそも何?
二項係数の公式の応用例って、たとえば何があるんですか?
こういった疑問を持つ方は多いと思います。
よって本記事では、二項係数の公式(組合せの性質)の証明 $2$ 通りから、それらの応用例 $2$ 選まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
二項係数の公式(組合せの性質)3つとは
二項係数の公式(組合せの性質)とは、以下の $3$ つを指します。
- ${}_n{C}_{r}={}_n{C}_{n-r}$
- ${}_n{C}_{r}={}_{n-1}{C}_{r-1}+{}_{n-1}{C}_{r}$
- $r×{}_n{C}_{r}=n×{}_{n-1}{C}_{r-1}$
たとえば、$1$ 番の公式に $n=6$,$r=4$ を代入すると、
$${}_6{C}_{4}={}_6{C}_{2}$$
となります。
この関係式は、計算を楽にするためによ~く利用してきたのではないでしょうか。
これらの公式を証明していけばいいんだね!でもどうやって証明すればいいんだろう…。
大丈夫!とってもわかりやすく解説していくから、安心してください。次の章から詳しく見ていきますね。
二項係数の公式(組合せの性質)3つの証明【「組合せ論」は理解に役立ちます】
二項係数の公式(組合せの性質)の証明は意外と簡単で、
の定義式を使えばすぐに示せます。
式変形により導く証明のことを「代数的(だいすうてき)な証明」と呼ぶことがあります。ちなみに、$(※1)$ の分母と分子に $(n-r)!$ をかけることで $(※2)$ の式になります。
代数的証明のメリット・デメリットを先にまとめておくと、
- メリット … とっても厳密。
- デメリット … 意味は理解しづらい。
よって、まずは代数的な証明で成り立つことを確認したのちに、組合せの考え方を用いた「組合せ論的な証明」を解説していきます。
代数的証明
【①の証明】
【②の証明】
※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
【③の証明】
※この数式は少しだけ横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(証明終了)
いかがでしょう。
少し長くはなりましたが、$1$ つ $1$ つの式変形自体はとてもシンプルです。
階乗の扱い方が難しく感じるかもしれませんが、そこは慣れなので、頑張って慣れて!(笑)
さて、二項係数の公式が成り立つことは確認できたので、ここからは公式の意味合いについて考察していきましょう。
組合せ論的な証明
【①の解釈】
たとえば、$5$ 人から $2$ 人を選ぶ組合せの総数 ${}_5{C}_{2}$ を考える。
このとき、
- $5$ 人から $2$ 人を選ぶ
- $5$ 人から $3$ 人を選ばない(残す)
この $2$ つは同じであることに気づく。
したがって、${}_5{C}_{2}={}_5{C}_{3}$ であり、つまり ${}_n{C}_{r}={}_n{C}_{n-r}$ である。
【②の解釈】
①と同様の状況で考える。( $5$ 人の名前を $A$ ~ $E$ さんとする。)
このとき、
- ⅰ) 特定の $1$ 人( $A$ さん)を含む場合
- ⅱ) 特定の $1$ 人( $A$ さん)を含まない場合
の $2$ 通りに分けて考えてみる。
ⅰ) $A$ さんを含む場合
$A$ さん以外の $4$ 人の中から $1$ 人取る組合せなので、${}_4{C}_{1}$ 通り。
ⅱ) $A$ さんを含まない場合
$A$ さん以外の $4$ 人の中から $2$ 人取る組合せなので、${}_4{C}_{2}$ 通り。
したがって和の法則より、${}_4{C}_{1}+{}_4{C}_{2}={}_5{C}_{2}$ であり、つまり ${}_n{C}_{r}={}_{n-1}{C}_{r-1}+{}_{n-1}{C}_{r}$ である。
【③の解釈】
$10$ 人のクラスから $3$ 人学級委員を選び、その中から $1$ 人学級委員長を決める組合せの総数を、
- ⅰ)$3$ 人選んでから $1$ 人委員長を決める方法
- ⅱ)委員長を決めてから残り $2$ 人の委員を決める方法
の $2$ 通りで考える。
ⅰ)学級委員→委員長の方法
まず $10$ 人の中から $3$ 人を選ぶので、${}_{10}{C}_{3}$ 通り。
次に、その $3$ 人の中から $1$ 人を選ぶので、${}_3{C}_{1}=3$ 通り。
よって積の法則より、$3×{}_{10}{C}_{3}$ 通り。
ⅱ)委員長→学級委員の方法
まず、学級委員長を $1$ 人決めるので、${}_{10}{C}_{1}=10$ 通り。
次に、残り $9$ 人の中から $2$ 人の学級委員を決めるので、${}_9{C}_{2}$ 通り。
よって積の法則より、$10×{}_9{C}_{2}$ 通り。
したがって「ⅰ)$=$ ⅱ)」より、$3×{}_{10}{C}_{3}=10×{}_9{C}_{2}$ であり、つまり $r×{}_n{C}_{r}=n×{}_{n-1}{C}_{r-1}$ である。
(解釈終了)
$n$ やら $r$ やら、抽象的な数だとわかりづらいかなと思い、具体的な数字で考察しました。
こうして見ると、②や③の解釈が結構面白いですよね~。
数学の良いところの $1$ つとして「複数の解法の存在性」がよく挙げられますが、まさしく②や③のことではないでしょうか。そこから二項係数の公式ができてしまうのですから驚きですね!
二項係数の公式(組合せの性質)の応用例2選
冒頭に触れた通り、二項係数の公式①の応用例は以下の通りです。
(1) ${}_{10}{C}_{8}$
(2) ${}_{100}{C}_{98}$
このように $r$ が大きい二項係数の値を求める際、
- (1)…$\displaystyle {}_{10}{C}_{8}={}_{10}{C}_{2}=\frac{10・9}{2・1}=45$
- (2)…$\displaystyle {}_{100}{C}_{98}={}_{100}{C}_{2}=\frac{100・99}{2・1}=4950$
とできるため、計算が圧倒的にラクになります。
①の公式は私もよく使う!でも②,③って一体いつ使うの?
ということで、最後に二項係数の公式②,③の応用例をお話して終わりにしたいと思います。
【二項定理】パスカルの三角形(数学Ⅱ)
数学Ⅱの最初の方で「二項定理(にこうていり)」を習います。
$n$ を自然数とする。このとき、
※この数式は横にスクロールできます。
なるほど!二項定理の中に ${}_n{C}_{r}$ が出てくるから「二項係数」とも呼ばれるんだね!
冒頭で抱いた疑問が一つ解消しましたね♪
また、二項定理を勉強するときに出てくるのが「パスカルの三角形」です。
なんと、パスカルの三角形の中に出てくる関係式。
これが、二項係数の公式②
$${}_n{C}_{r}={}_{n-1}{C}_{r-1}+{}_{n-1}{C}_{r}$$
だったんですね~。
パスカルの三角形は面白い性質をたくさん含んでいます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
フェルマーの小定理(数学A)
数学A「整数の性質」のコラム的な内容として、“フェルマーの小定理”があります。
$p$ を素数とし、$a$ を $p$ の倍数ではない自然数( $a$ と $p$ は互いに素)とするとき、
$$a^{p-1}≡1 \pmod{p}$$
つまり、$a^{p-1}$ を $p$ で割った余りは $1$ である。
$p$ を素数とし、$a$ を $p$ の倍数ではない自然数( $a$ と $p$ は互いに素)とするとき、
$$a^p≡a \pmod{p}$$
つまり、$a^p$ を $p$ で割った余りは $a$ である。
このフェルマーの小定理を証明するために、二項係数の公式③
$$r×{}_n{C}_{r}=n×{}_{n-1}{C}_{r-1}$$
を利用するのです。
フェルマーの小定理は、現代のネット社会を支えていると言っても過言ではない「RSA暗号」の土台の定理で、非常に役に立っています。
続きは以下の記事をどうぞ
二項係数の公式(組合せの性質)に関するまとめ
二項係数の公式(組合せの性質)とその応用例を改めてまとめておきます。
- ${}_n{C}_{r}={}_n{C}_{n-r}$
- (応用例)日常の計算の中でメチャクチャ使うよ!
- ${}_n{C}_{r}={}_{n-1}{C}_{r-1}+{}_{n-1}{C}_{r}$
- (応用例)「パスカルの三角形」
- $r×{}_n{C}_{r}=n×{}_{n-1}{C}_{r-1}$
- (応用例)「フェルマーの小定理」
数学に関する雑学をいっぱい増やして、数学マスターになっちゃおう!
「場合の数」全 12 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!
終わりです~。
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コメント一覧 (1件)
今まで見た説明で最もわかりやすかったです。ありがとうございました♪