こんにちは、ウチダです。
$2^5$ や $3^4$ など、数の右上に小さく付いている数字のことを「指数(しすう)」と言い、その指数に成り立つルールのことを「指数法則(しすうほうそく)」と言います。
この指数法則を正しく理解していないと、指数同士の計算など様々な場面でミスが起こりやすくなります。
たしかにルールは大切だなぁ…。ところで指数法則ってどういうものなの?
たとえば $2^0$ や $2^{\frac{1}{3}}$ のように、少し複雑な指数についても詳しく知りたいわ。
よって本記事では、「指数法則とは何か」基本的なルールから、指数法則の拡張(応用)、指数関数・対数関数(発展)まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
指数法則とは?【まずはこの3つを押さえよう】
まずは以下の $3$ つの指数法則を押さえましょう!
① $a^m×a^n=a^{m+n}$
② $(a^m)^n=a^{m×n}$
③ $(ab)^n=a^n×b^n$
これで基本なの!?覚えること多くて大変そう…
一見大変そうに感じますが、具体的に考えればすぐにわかります!ということで、証明も具体化して解説していきますね。
ではまず、①~③が成り立つことの証明(というより解説)です。
一般的な証明、つまり黄色の背景色で示した部分も、これと似たように行なうことができます。
この指数法則のように、抽象化されていてわかりづらいものは具体化して考えることで一気にわかりやすくなります。
※ちなみに、もっと正確な証明は大学で数学を専攻すれば、1年次で学びます。数学的帰納法を使って証明するので、「ペアノの公理」について学ぶ必要がありますね。本記事ではもちろん割愛しますが、気になる方は「」の記事をぜひご覧ください。(準備中)
指数法則を練習してみよう
では以上 $3$ つのルールを使って、指数の計算を工夫してやってみましょう!
問題1.次の式を指数法則①~③を使って計算しなさい。
(1) $2^3×2^7$
(2) $(2^2)^5$
(3) $6^3$
もしかしたら指数法則を使わない方が計算が速いかもしれませんが(笑)、練習がてら使って計算してみましょう!
(1)(2)については、$2^{10}=1024$ を覚えている人であれば、指数法則を使った方が速いですね。
(3)は指数法則を使わない方が速いと思いますが、「こういう計算もできる」ということは押さえておきましょう。
指数法則①~③のちょっとした応用・注意点
問題2.次の式を、指数法則が使えるものに関しては指数法則を使って計算しなさい。
(1) $4^{10}÷4^8$
(2) $\displaystyle (\frac{3}{2})^3$
(3) $2^2×3^3$
さて、指数法則①~③を踏まえ、少し応用問題を解いてみましょう。
基本がしっかり身に付いているか、ここで確認です。
(1)や(2)は、それぞれ指数法則①,③の派生形となります。
(1)で得られた指数法則①の派生形は結構重要なので、ここで一度まとめておきます。
【指数法則①の割り算バージョン】
①‘ $a^m÷a^n=a^{m-n}$
例.たとえば $m=5$,$n=3$ とすると、
$\displaystyle a^5÷a^3=\frac{a×a×a×a×a}{a×a×a}$
$ \quad \quad \quad =a^2$
$ \quad \quad \quad =a^{5-3}$
(解説終了)
この①‘はあとで大活躍するので、ぜひ押さえておきましょう!
また(3)についてですが、指数の底が $2$,$3$ で一致していないため、指数法則は使えません。
まちがって $2^2×3^3=2^5$ などの計算を行わないように注意しましょう。
「指数の底」って何ですか?
指数が右上の小さな数字であるのに対し、大きな数字の方を「底(てい)」と呼びます。この言葉は、数学Ⅱ「指数関数・対数関数」の分野でよ~く登場しますので、この機会に覚えておきましょう。
指数法則の拡張とは?
さて、先の章で指数法則①,③を少し応用しましたね。
ここからは、もっとちゃんとした応用である「拡張(かくちょう)」という概念に触れていきましょう。
【指数法則の拡張その1】
④ $a^0=1$( $0$ 乗は必ず $1$ になる)
⑤ $\displaystyle a^{-n}=\frac{1}{a^n}$(マイナス乗は逆数)
⑥ $\displaystyle a^{\frac{q}{p}}=\sqrt[p]{a^q}$(分数乗はルートを使う)
指数法則で理解が難しい部分が、この「指数法則の拡張」という考え方になってきます。
この④~⑥をいかに①~③と結び付けて理解できるかがポイントです!
指数法則④・⑤について【なぜ0乗は必ず1なの?】
先に証明を載せておきます。
数学ができる人になる上で、”証明”というのはたしかにウエイトが大きいです。
ただ、こういう根幹の理論に限っては、証明より”イメージ”の方が大切だ、と私は思います。
ということで、以下の画像をご覧ください。
指数法則④⑤をそれぞれ証明するより、この図のように一発で理解してしまった方が、はるかに勉強効率が良い感じがしませんか?
もちろん、数学を専攻するものとして証明の重要さも伝えていきます。一番ベストなのは「証明とイメージを両方押さえておく」ことですね。
証明だけだと、意外と法則自体を忘れてしまうこともあるため、やはりイメージも必須級に重要です。
より詳しい話は、以下の2記事にまとめてありますので、興味のある方はぜひあわせてご覧くださいませ。
0乗とは~(準備中)
0の0乗とは~(準備中)
指数法則⑥「分数乗」のコツとは?【これもつじつま合わせで解決!】
さて、先の章では指数法則を「自然数→整数(自然数に $0$ と負の数を加えた数の集まり)」に広げてきましたね。
次は「整数→分数(つまり有理数)」という風に広げていきます。
解説の最初の行でも記した通り
これが自然な拡張における基本的な考え方です。
”自然な”と言うぐらいですから、整数の範囲で成り立つことが分数でも成り立つと言えないか、まず考えます。それで無理がある場合、分数用に変えて定義しなくてはいけない、ということですね。
指数法則の場合、分数(有理数)までは自然な拡張ができますが、無理数になると一風変わった定義が必要になってきます。
数学Ⅰの範囲を大きく逸脱いたしますので、詳しくは別の記事にて解説します。
興味のある方は、ぜひこちらの記事もあわせてご覧ください。
べき乗とは~(準備中)
また、今行ったように自然な拡張という概念は数学において非常に重要です。
同じ数学Ⅰの範囲で「三角比」なる分野がございますが、そちらでも拡張をしていくため、この機会にあわせてコツを理解しておきましょう。
数Ⅱで詳しく学習する「指数の拡張」に関する記事はこちらから
【数II】指数関数・対数関数をマスターしよう
なぜここまで詳細に指数法則を考えなくてはならないか。
それは数学Ⅱで「指数関数・対数関数」と呼ばれる関数について深く学ぶからです。
指数関数・対数関数って何ですか?
がっつり数学Ⅱの内容なので、ここでは触りだけ解説します。ですが、
この関数を学んでいくと、先ほど行った指数法則の拡張の重要性が理解できてきますよ!
例題1.指数関数 $y=2^x$ のグラフを、複数の座標から予測して書きなさい。
試しにこんな問題を解いてみましょう!
グラフは滑らかに続いていくはずなので、以上のような形になるはずであり、またグラフからも分数乗の拡張が正しい(自然なもの)、ということがわかりますね。
指数関数・対数関数のさらなる詳しい解説は以下の記事をご覧ください。
指数法則に関するまとめ
それでは最後に、本記事のポイントをまとめます。
- 基本的な指数法則3つをまずは押さえ、そこから整数・有理数(・無理数)と拡張していくことが重要。
- $a^m×a^n=a^{m+n}$
- $(a^m)^n=a^{m×n}$
- $(ab)^n=a^n×b^n$
- 「べき乗」の記事や「0の0乗」の記事でより詳しく扱います。
- 数学Ⅱで学ぶ「指数関数」「対数関数」で基礎となるので、この機会にしっかりマスターしよう!
指数法則から拡張の概念を正しくつかみ取り、数学ができる人になっていきましょう!
おわりです。
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コメント一覧 (2件)
指数法則⑥の解説下から7行目が誤記入してます。
adさん、コメントありがとうございます!
すいません、探してみたのですが誤りが見当たりません汗
もしよければ詳しく教えていただいてもよろしいですか?