こんにちは、ウチダです。
早速ですが、皆さんに問題です。
問題.$\tan 1°$ は有理数か?
…めちゃくちゃ簡潔すぎて逆にビビりますよねw
こちらは、2006年に京都大学が後期入試問題として出題した、大学入試史上最も問題文が短い数学の問題として有名です。笑
しかし、この問題には数学力を上げるための様々なエッセンスが詰め込まれているため、ぜひ一度皆さんにも解いてもらいたいのです。
よっしゃ!京都大学の入試問題が解けるようになれば行ける大学の選択肢も増える!頑張るぞ!!
ということで本記事では、問「tan1°は有理数か」についての解説から、「このような問題を初見で解くためにはどうすればいいか」というコツ(考え方) $3$ 選について、
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
tan1°は有理数?それとも無理数?【具体例で考えよ】
まず、図形的に考えてみると、上の図のようなことになります。
※本来 $1°$ はもっと鋭角です!あくまでイメージと捉えて下さいm(_ _)m
ちょっと図形的に解くのは難しそうなので、次は”有理数””無理数”のどちらかを予想してみることにします。
予想に使うのは、もちろんこの $3$ つの代表的な値!
- $\displaystyle \tan 30°=\frac{1}{\sqrt{3}}=\frac{\sqrt{3}}{3}$ より無理数。
- $\tan 45°=1$ より有理数。
- $\tan 60°=\sqrt{3}$ より無理数。
代表的な値 $3$ つのうち、$1$ つが有理数で $2$ つが無理数ってことは、イメージとしては無理数が多そうよね。
ということで、とりあえず「 $\tan 1°$ は無理数なんじゃないか???」という方針で、証明を開始させてみたいと思います!
もうここで、証明終了まで行ってしまいます!なので、自分で考えて解きたいという方は、ここでストップして解いてみて下さいね^^
いかがでしたか?
解答を見てみると、「こんなに簡単にできるのかー」と度肝を抜かれますよね。笑
さて!
解答は理解できた!けど、こういう問題を初見で解くためには一体どうしたらいいいの?
ここからは、「実際の入試本番で点数を取るためには」という観点から、コツを $3$ つほど解説していきたいと思います!
tan 1°が無理数であることを示すためのコツ3選とは?
この問題を解く上でのコツは
- 無理数ときたら背理法、という選択肢を持っておく。
- 無理数と有理数に対する理解を深めておく。
- 加法定理は最強である、という認識を持つ。
以上 $3$ つです。順に解説していきます。
コツ①:無理数ときたら背理法、という選択肢を持つ
無理数の定義は「分母・分子が整数の分数で表すことができない数」ですよね。
このように、”~できない数”というのは、数式上扱いづらいです。
ただ有理数であればどうでしょうか?
仮に $\sqrt{2}$ を有理数であると仮定すれば、分母・分子ともに整数の分数で表すことができるため、
$\displaystyle \sqrt{2}=\frac{q}{p}$ ( $p$、$q$ は整数、$p≠0$ )
というふうに数式にすることができます。
$\tan 1°$ が無理数の証明では、以上の定義式は使いませんでしたが、有理数と仮定した場合、大体の場合は↑の数式を使います。なので、これは必ず覚えておきましょう!
$\sqrt{2}$ が無理数であることの証明はこちらから
コツ②:無理数と有理数に対する理解を深めておく
さて、理解と言っても色んな性質がありますが、今回使ったものはこちらです。
なんでそう言い切れるんですか~?
有理数 $\displaystyle \frac{q}{p}$、$\displaystyle \frac{s}{r}$ の $2$ つがあったとして、
$\displaystyle \frac{q}{p}×\frac{s}{r}=\frac{qs}{pr}$ となりますよね。
このとき、$p$、$q$、$r$、$s$ がすべて整数であれば、$pr$ も $qs$ も整数になるので、積も必ず有理数になります!
今回はこの性質が、最終的に矛盾を示す決定打となりました。
有理数・無理数と言われたらこの性質がパッと出てくるようにしておきましょう。
コツ③:加法定理は最強である、という認識を持つ
「三角関数で最も重要な定理はなんですか?」
そう聞かれたら、迷わず加法定理と答えるようにして下さい。
なぜなら、三角関数のあらゆる公式、
- 倍角の公式
- 半角の公式
- 3倍角の公式
- 三角関数の合成
- 和積の公式
これらすべてが、加法定理によって成り立つものだからです。
さて、今回は $\tan 30°$ が無理数であることを使いましたが、別に $\tan 60°$ が無理数であることをつかって、
の式から矛盾を導いても構いません。
また、$\tan 1°$ が有理数となれば、$\tan 2°$ が有理数になることはもちろん、
より $\tan 3°$ も有理数、$\tan 4°$ も有理数、…
つまるところ、$\tan n°$( $n$ は自然数)がすべて有理数になることが言えます!!
このように考えてみると、$\tan 1°$ が無理数であることは当然のように思えますし、$\cos 1°$ や $\sin 1°$ もきっと無理数なんだろうな~って予想が立ちますよね^^
まあ、実際の解答に残すときは、この方法だとめんどくさいので、$2°$、$4°$、$8°$、$16°$、$32°$、$64°$ と倍々していくのが一番いいでしょう。
補足:これができれば tan 10° が無理数も示せますね。
たとえばですが、この問題が理解できれば $\tan 10°$ が無理数であることも、
より示すことができるはずです!!
また、逆に $\tan 45°$ が有理数であることも、矛盾を示す方法がないことから納得できますね。
以上のように、入試問題から学ぶことは多いです。特に良問であれば尚更です。$1$ 問 $1$ 問にしっかりと向き合っていきましょう!!
まとめ:超短文の入試問題でも読み取れることは多いです!打倒京大!!
いかがでしたか?
最後に本記事のポイントをまとめます。
- $\tan 1°$ は有理数ではなく無理数である。
- この問題を解く上でのコツは、「無理数ときたら背理法」「有理数×有理数は必ず有理数」「加法定理は最強」の $3 $つ。
- 京都大学の入試問題は面白い!!
良問を解く・考えることで、あなたの数学力は間違いなく伸びます!
京大入試問題に興味を持った方は、ぜひ以下の記事の問題も解いてみてはいかがでしょうか!?
おわりです。
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