こんにちは、ウチダです。
さて、皆さんは三角比の相互関係の公式、全部覚えていますか??
【三角比の相互関係】
①$\displaystyle \tan θ=\frac{\sin θ}{\cos θ}$
②$\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$
③$\displaystyle 1+\tan^2 θ=\frac{1}{\cos^2 θ}$
④$\displaystyle 1+\frac{1}{\tan^2 θ}=\frac{1}{\sin^2 θ}$
…え!学校では①~③までしか教わってないよ…。にしてもこの公式、覚えづらいなぁ。。
三角比の相互関係の式を使う応用問題が解けるようになりたいです。
ということで本記事では、三角比の相互関係の公式 $4$ つを覚えるコツとそれらを使った応用問題の解き方について、
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
目次
三角比の相互関係の公式4つとは?【「三平方の定理」がポイントです】
こういう方にありがちなのが、これらの公式を $4$ つバラバラにすべて覚えようとしていることです。
そうではなくて、ポイントとなる一つの式を確実に押さえましょう!
では、ポイントとなる式は何かというと…ズバリ、
$\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$
です!
POINT:斜辺が1の直角三角形を考えよう
上記の図のように、斜辺が $1$ で底角がθの直角三角形を考えると、
- 高さ … $\sin θ$
- 底辺 … $\cos θ$
となります。
これは…「たかサイン・よコサイン」ってやつですね!
はい笑。なぜそうなるかについては、以下の記事で解説してますので、よろしければあわせてご覧ください^^
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さて、これがわかれば、あとは上記の直角三角形に対し「三平方の定理(ピタゴラスの定理)」を使えば、
$\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$
が示せるのです!
三平方の定理は、中学3年生で習う超超重要定理です!三平方の定理に関する記事は全部で $3$ つありますので、こちらもよかったらご参考下さい!
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他の相互関係の式3つの証明
さて、先程の直角三角形を使うと、実は相互関係式① $\displaystyle \tan θ=\frac{\sin θ}{\cos θ}$ もすぐに示せます!
さて、他 $2$ つの式の証明は、問題にしてみましょう!
問題.③$\displaystyle 1+\tan^2 θ=\frac{1}{\cos^2 θ}$、④$\displaystyle 1+\frac{1}{\tan^2 θ}=\frac{1}{\sin^2 θ}$ をそれぞれ示しなさい。
$\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$ の式を上手く利用すれば、あっという間に証明できますよ!では解答に移りますm(_ _)m
問題の解答例
【③の証明】
$\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$ の式の両辺を $\cos^2 θ$ で割る。
$\displaystyle \frac{\sin^2 θ}{\cos^2 θ}+1=\frac{1}{\cos^2 θ}$
ここで、$\displaystyle \tan θ=\frac{\sin θ}{\cos θ}$ より、
\begin{align}\frac{\sin^2 θ}{\cos^2 θ}&=(\frac{\sinθ}{\cos θ})^2\\&=\tan^2 θ\end{align}
よって、$\displaystyle 1+\tan^2 θ=\frac{1}{\cos^2 θ}$ が示せた。
【④の証明】
$\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$ の式の両辺を $\sin^2 θ$ で割る。
$\displaystyle 1+\frac{\cos^2 θ}{\sin^2 θ}=\frac{1}{\sin^2 θ}$
ここで、$\displaystyle \tan θ=\frac{\sin θ}{\cos θ}$ より、
\begin{align}\frac{\cos^2 θ}{\sin^2 θ}&=\frac{1}{\frac{\sin^2 θ}{\cos^2 θ}}\\&=\frac{1}{\tan^2 θ}\end{align}
よって、$\displaystyle 1+\frac{1}{\tan^2 θ}=\frac{1}{\sin^2 θ}$ が示せた。
(証明終了)
なんだ!両辺を $\cos^2 θ$、$\sin^2 θ$ で割ればすぐに導き出せるんだ!
その通りです!あとは、斜辺が $1$ の直角三角形を $\displaystyle \frac{1}{\cos θ}$、$\displaystyle \frac{1}{\sin θ}$ 倍にして、三平方の定理を使っても示すことができますね!
三角比の相互関係式4つはこれでバッチリですね!
それでは、ここからは実際に問題を解くのに、この公式たちを使っていきましょう。
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三角比の相互関係を使う応用問題6選を解説
それでは、難易度順に問題を計 $6$ 問解いて、三角比の相互関係をしっかりとマスターしていきましょう!!
問1.他の三角比の値を求める問題
問題1.次の値をそれぞれ求めなさい。
(1) $0°≦α≦90°$ で $\displaystyle \cos α=\frac{3}{5}$ のとき、$\sin α$ と $\tan α$ の値
(2) $90°<β<180°$ で $\displaystyle \sin β=\frac{2}{7}$ のとき、$\cos β$ と $\tan β$ の値
(3) $0°≦γ≦180°$ で $\tan γ=-3$ のとき、$\sin γ$ と $\cos γ$ の値
まずは、相互関係の基本からです!
- sin、cos、tan のうちどれか一つの値
- 鋭角か鈍角か((3)のみそれも求める)
これらの条件が与えられた時、他の三角比を求められるようになりましょう!
問題1の解答例
番号・出てくる三角比 | 相互関係の式 |
---|
①sin、cos、tanすべて | $\displaystyle \tan θ=\frac{\sin θ}{\cos θ}$ |
②sin、cosの2つ | $\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$ |
③cos、tanの2つ | $\displaystyle 1+\tan^2 θ=\frac{1}{\cos^2 θ}$ |
④sin、tanの2つ | $\displaystyle 1+\frac{1}{\tan^2 θ}=\frac{1}{\sin^2 θ}$ |
問題に応じて、適した相互関係の式を使おう!
(1) 相互関係式②に $\displaystyle \cos α=\frac{3}{5}$ を代入して、
\begin{align}\sin^2 α+(\frac{3}{5})^2=1\end{align}
\begin{align}\sin^2 α&=1-\frac{9}{25}\\&=\frac{25-9}{25}\\&=\frac{16}{25}\end{align}
$\sin α≧0$ より、$\displaystyle \sin α=\frac{4}{5}$
また、相互関係式①に代入し、
\begin{align}\tan α&=\frac{\sin α}{\cos α}\\&=\frac{\frac{4}{5}}{\frac{3}{5}}\\&=\frac{\frac{4}{5}×5}{\frac{3}{5}×5}\\&=\frac{4}{3}\end{align}
(2) 相互関係式②に $\displaystyle \sin β=\frac{2}{7}$ を代入して、
\begin{align}(\frac{2}{7})^2+\cos β=1\end{align}
\begin{align}\cos β&=1-\frac{4}{49}\\&=\frac{45}{49}\end{align}
ここで、$90°<β<180°$ より $\cos β<0$ なので、$\displaystyle \cos β=-\frac{3\sqrt{5}}{7}$
また、相互関係式①に代入し、
\begin{align}\tan β&=\sin β÷\cos β\\&=\frac{2}{7}÷(-\frac{3\sqrt{5}}{7})\\&=\frac{2}{7}×-\frac{7}{3\sqrt{5}}\\&=-\frac{2}{3\sqrt{5}}\\&=-\frac{2\sqrt{5}}{15}\end{align}
(補足)
このように、分数の中に分数が入るのが嫌な人は、分数を割り算で置き換え逆数の掛け算を考えることでもできます!
最後に分母の有理化をするのを忘れずに!(ただし問題集によっては有理化していない状態でも◎になっているものもあります)
(3) 相互関係式③に $\tan γ=-3$ を代入して、
\begin{align}1+(-3)^2=\frac{1}{\cos^2 γ}\end{align}
両辺に $\cos^2 γ$ をかけて、
\begin{align}10\cos^2 γ=1\end{align}
よって、$\displaystyle \cos^2 γ=\frac{1}{10}=\frac{10}{100}$
POINT!!
ここで、$\tan γ<0$ より、$90°<γ<180°$ であることがわかるから、$\cos γ<0$ が言える!!
したがって、$\displaystyle \cos γ=-\frac{\sqrt{10}}{10}$
また、相互関係式① $\displaystyle \tan γ=\frac{\sin γ}{\cos γ}$ の両辺に $\cos γ$ をかけると、
\begin{align}\sin γ=\cos γ・\tan γ\end{align}
したがって、
\begin{align}\sin γ&=-\frac{\sqrt{10}}{10}×(-3)\\&=\frac{3\sqrt{10}}{10}\end{align}
(解答終了)
全問正解できましたか??
$\cos θ$ と $\tan θ$ の符号に注意ですね!
コラム:なんで学校では相互関係式④は習わないの?
さて、問題2を解いてみてお気づきの方は居るかと思いますが…相互関係式というのは、
三角比のどれか $1$ つがわかれば、他の $2$ つも求めることができちゃう!!というところに価値があります。
さて、この観点で考えてみると、
- $\sin θ$ または $\cos θ$ が与えられた場合 … 相互関係式②を使ってから①を使えばOK
- $\tan θ$ が与えられた場合 … 相互関係式③を使ってから①を使えばOK
というふうに、相互関係式④の出番がないのです…!
もちろん $\tan θ$ が与えられたときに、相互関係式④を使って $\sin θ$ を先に求めてもOKです。でも別にその意味もあんまりないですよね。もし、$\tan θ$ が与えられてて、「 $\sin θ$ のみ求めよ(求めたい)」みたいな問題が出たときは、ぜひ④の式も使ってみて下さい^^
問2.〇〇との複合問題など【ちょい応用】
問題2.次の式の値を求めなさい。
(1) $\cos^2 25°+\cos^2 115°$
(2) $\displaystyle (1-\sin 20°)(1+\sin 20°)-\frac{1}{1+\tan^2 160°}$
さあ、お次の問題は”式の値を求める”問題です!
一見すると相互関係の式が関係ないようにも見えますが…これは立派な相互関係の応用問題です。
「相互関係の式を使う」というのはかなりのヒントです。何との複合問題なのかまで言ってしまうと親切すぎると思ったので、そこは隠しました。ぜひ一度チャレンジしてみて下さい!^^
問題2の解答例
【余角( $90°-θ$ )・捕角( $180°-θ$ )の公式】
①$\sin (90°-θ)=\cos θ$、$\cos (90°-θ)=\sin θ$、$\displaystyle \tan (90°-θ)=\frac{1}{\tan θ}$
②$\sin (180°-θ)=\sin θ$、$\cos (180°-θ)=-\cos θ$、$\tan (180°-θ)=-\tan θ$
ここでは、上記の公式を認めて、問題を解いてみよう。
(1) まず捕角の公式を用いることで、$\cos 115°=\cos (180°-65°)=-\cos 65°$
次に余角の公式を用いることで、$-\cos 65°=-\cos (90°-25°)=-\sin 25°$
よって、
\begin{align}\cos^2 25°+\cos^2 115°&=\cos^2 25°+(-\sin 25°)^2\\&=\cos^2 25°+\sin^2 25°\\&=1\end{align}
※ $θ=25°$ として、相互関係式②を使った!
(2) 余角の公式より、$\tan 160°=\tan (180°-20°)=-\tan 20°$
また、相互関係式③ $\displaystyle 1+\tan^2 20°=\frac{1}{\cos^2 20°}$ より、$\displaystyle \frac{1}{1+\tan^2 20°}=\cos^2 20°$
よって、
\begin{align}(1-\sin 20°)(1+\sin 20°)-\frac{1}{1+\tan^2 160°}&=(1-\sin 20°)(1+\sin 20°)-\frac{1}{1+(-\tan 20°)^2}\\&=(1-\sin 20°)(1+\sin 20°)-\frac{1}{1+\tan^2 20°}\\&=1-\sin^2 20°-\cos^2 20°\\&=1-(\sin^2 20°+\cos^2 20°)\\&=1-1\\&=0\end{align}
※ $θ=20°$ として、相互関係式②を使った!
(解答終了)
ここでネタバラシ!
実はこの問題は、余角・捕角の公式との複合問題でした!
相互関係を習う前後で学ぶ公式ですね!こちらについては別記事にまとめますので、よければそちらもご参考下さい!
余角・捕角の公式とは~(準備中)
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問3.式の値を求める問題【応用】
問題3.$0°≦θ≦180°$ で、$\sin θ+\cos θ=-\frac{1}{2}$ のとき、$\sin^3 θ+\cos^3 θ$ を求めなさい。
さて、ラストは本当に相互関係式が関係なさそうな問題です!
が、これもバリバリ相互関係の応用問題です。
この問題を解き終わる頃には、「相互関係の式で一番使用頻度が高いのはコレだな」というところまでわかります。さて、そういったことも予想しながら、この問題にチャレンジしていきましょう!
問題3の解答例
とりあえず条件式を $2$ 乗してみると、$\displaystyle \sin^2 θ+2\sin θ\cos θ+\cos^2 θ=\frac{1}{4}$
ここで、$\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$ より、$\displaystyle 1+2\sin θ\cos θ=\frac{1}{4}$
これを計算すると、$\displaystyle \sin θ\cos θ=-\frac{3}{8}$
ここで、$3$ 乗の展開公式を応用すると、
\begin{align}\sin^3 θ+\cos^3 θ&=(\sin θ+\cos θ)^3-3\sin θ\cos θ(\sin θ+\cos θ)\\&=(-\frac{1}{2})^3-3・(-\frac{3}{8})・(-\frac{1}{2})\\&=-\frac{1}{8}-\frac{9}{16}\\&=-\frac{11}{16}\end{align}
【別解】
$3$ 乗の因数分解公式を使っても解くことができる!
\begin{align}\sin^3 θ+\cos^3 θ&=(\sin θ+\cos θ)(\sin^2 θ-\sin θ・\cos θ+\cos^2 θ)\\&=(\sin θ+\cos θ)(1-\sin θ・\cos θ)\\&=-\frac{1}{2}\{1-(-\frac{3}{8})\}\\&=-\frac{1}{2}・\frac{11}{8}\\&=-\frac{11}{16}\end{align}
(解答終了)
この問題が解けるようになれば、相互関係の応用力はあるといってよいでしょう!
さて、結論、「 $\sin^2 θ+\cos^2 θ=1$ の式がめちゃめちゃ重要」だということになります。
この式はいついかなる時も使えるように、頭に思い浮かべておくよ!
そうですね笑。ただ一番の原点は「斜辺が $1$ の直角三角形」でした。これさえ忘れなければ相互関係の式は全部いつでもどこでも作れるので、安心してくださいね!
まとめ:相互関係は他の三角比の値がすべてわかるすごい式!証明できるようにしておこう。
最後に本記事のポイントをまとめます。
- 三角比の相互関係の式は、「斜辺が1の直角三角形」を考えて、それに「三平方の定理(ピタゴラスの定理)」を用いることですべて作り出すことができる!
- 斜辺が1の直角三角形の高さと底辺がそれぞれ sin、cos になることは、「三角比の定義・意味」である。
- 「余角・捕角の公式」を用いる応用問題や、$3$ 乗の展開公式(または因数分解公式)を用いて解く応用問題は、ぜひとも解けるようにしておこう。
相互関係は、これから当たり前のように登場してきます!
この機会に、三角比 sin、cos、tan の関係性をマスターしておきましょう!!
おわりです。
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