こんにちは、ウチダです。
数学Ⅰ「二次関数」の単元は、本当に覚えることが多いです。
その中でも、「平行移動(へいこういどう)・対称移動(たいしょういどう)」に関する内容は、二次関数以外の関数でも役に立つため、数学Ⅱ・数学Ⅲでも出てくる重要な知識です。
そしたら今のうちに理解しておいた方が良いよね。でも、平行移動の公式の成り立ちがよくわからないんだよなぁ。
[/ふきだし]平行移動に関する応用問題が解けるようになりたいです。
[/ふきだし]よって本記事では、グラフの平行移動の公式(なぜ $+p$ 移動するとき $x-p$ を代入するのか)から、平行移動の応用問題3選の解き方まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
二次関数のグラフの平行移動とは?【マイナスに注意!】
平行移動の公式は以下の通り。
ここでの最大のポイントは、
- $x$ 軸方向に $+p$ 平行移動 → $x$ の代わりに $x-p$ を使う。
- $y$ 軸方向に $+q$ 平行移動 → $y$ の代わりに $y-q$ を使う。
と、$+p$ なのに $x-p$ のような、符号の逆転現象が起きている、という点です。
ここがよくわからないです! $+p$ だけ動かしたいんだから、$x+p$ を入れれば良いんじゃないの?
[/ふきだし]ここで、上記のように悩んでしまって理解できない、という方が非常に多いように感じます。
なので、逆に言うとこの事実さえしっかり理解できれば、平行移動および対称移動の問題は楽勝も同然なのです。
ということで、ここからは $2$ つの考え方で、平行移動の公式を解説していきます。ぜひ、自分に合った方法で理解しましょう!
[/ふきだし]平行移動の公式の解説その1【頂点で考える】
二次関数の大きな特徴として、
- 必ず頂点が存在する。
- 頂点の座標は、平方完成をすることによって簡単に求まる。
これらがありました。
では、これらの事実を利用して、一度頂点に着目して平行移動を考えてみましょう。
例題1.二次関数 $y=x^2 …①$ のグラフを、$x$ 軸方向に $+1$,$y$ 軸方向に $+3$ だけ平行移動したグラフの方程式を求めなさい。
この問題を、頂点の移動で考えていきます。
平行移動してもグラフの形は変わらないため、グラフの形を決める係数 $a$ の値は同じです。
それを踏まえた上で”頂点の移動のみ”に着目しても、以上のように公式が導ける、というわけですね。
たしかに、こういう風に逆算して考えれば、平行移動の公式が正しい理由がわかりますね。
[/ふきだし]数学が嫌いになる原因の一つとして「証明がわからない」というのがあります。無理して証明を覚えるくらいなら、以上のように「証明ではないけれども感覚で理解しておくこと」の方が大切だと、私は思いますね。
[/ふきだし]この章で使った予備知識に関する詳しい解説は、こちらをご覧ください。
頂点の座標・軸の方程式・y軸との共有点
二次関数のグラフの応用問題2選(平行移動や対称移動・最大値最小値)
これらについて、わかりやすく丁寧に解説します。 「二次関数のグラフをなかなか上手く書けない…」と感じている方は必見です。
なぜ平方完成をする必要があるの?
平方完成と頂点の座標の関係性
これらについて、わかりやすく丁寧に解説します。 「平方完成のやり方がよく理解できていない…」と感じている方は必見です。
平行移動の公式の解説その2【一般的に証明する】
さて、解説その1では感覚的に理解することを目的としていました。
解説その2では、しっかりと一般的に証明していきたいと思います。
上記のように、まずは前提条件をハッキリしておきましょう。
今回で言えば、
- 平行移動する前の点の座標 … $( \ x \ , \ y \ )$
- 平行移動した後の点の座標 … $( \ X \ , \ Y \ )$
- 使える条件式 … $y=f(x)$
以上 $3$ つが前提であり、ここから $X$,$Y$ についての関係式を作っていきます。
ではいよいよ、平行移動の公式の証明です。
なるほど。使える条件が少ないから、必然的に証明もシンプルになるね。でも、大文字の $X$ や $Y$ が何となくひっかかるなぁ。
[/ふきだし]大文字の $X$,$Y$ で考えたのは、小文字の $x$,$y$ と区別するためです。そもそも、「 $x$ 軸・$y$ 軸」というのも一種の決まり事なので、たとえば「 $a$ 軸・$b$ 軸」とかでも問題はないわけです。
[/ふきだし]証明は意外とシンプルなのですが、慣れていないと「ん?」と思うようなロジックなんですね。
ここの論理については、数学Ⅱ「軌跡」の単元で詳しく学習しますので、よくわからない方は「とりあえず証明はこんな感じなんだな~」という雰囲気だけでも押さえておきましょう。
軌跡とは~(準備中)
【補足】グラフの対称移動とは?
関数 $y=f(x)$ に対して、
① $x$ 軸に関して対称なグラフ:$-y=f(x)$ すなわち $y=-f(x)$
② $y$ 軸に関して対称なグラフ:$y=f(-x)$
③ 原点に関して対称なグラフ:$-y=f(-x)$ すなわち $y=-f(-x)$
さて、グラフの平行移動の他にもう一つ「グラフの対称移動」というものがありますが、平行移動の公式が理解できれば、こちらは自然と理解できるかと思います。
ちょっと図で確認してみましょうか。
$x$ 軸に関して対称移動したグラフ同士の図を見ればわかる通り、$y$ → $-y$ と変えればOKですよね。
他の場合は省略しますが、対称移動の場合は「 $-$ を付けるか否か」だけなので、単純に考えてしまいましょう。
ただし「 $x$ 軸に関して対称だから $x$ を $-x$ に変えればいい!」みたいな発想はNGです。しっかりと図を書くことで、$x$ 座標は変化しないことが見てわかりますよね。
[/ふきだし]「どっちにマイナスを付けるか」という風に混乱した場合でも、図を書いてみれば一目瞭然です。
一刻も早く、暗記学習から抜け出しましょう。
二次関数のグラフの平行移動・対称移動に関する応用問題3選
基本はこれでマスターできましたので、ここからは復習もかねて、応用問題を $3$ 問解いていきます。
問1.基本問題を2通りの方法で
問題1.放物線 $y=-x^2+2x-3 …①$ を、$x$ 軸方向に $-2$,$y$ 軸方向に $+3$ だけ平行移動した放物線の方程式を求めなさい。
一番オーソドックスな問題ですが、公式の解説でも考えたように、「頂点の移動」に着目しても解けます。
最初ということで、一応 $2$ 通りの方法で解説していきます。
「頂点の移動で考える方法」「平行移動の公式を使う方法」どちらにも良さがあるため、一概に「こっちの方がオススメ!」とは言えません。
なので、ぜひ自分に合った解法を選ぶようにしてみてください。
問2.逆の平行移動
問題2.ある放物線 $A$ を、$x$ 軸方向に $-1$,$y$ 軸方向に $+2$ だけ平行移動したら、放物線 $y=2x^2+3x-4$ になった。放物線 $A$ の方程式を求めなさい。
次は、今までとは逆の考え方が必要な問題です。
ただ、この問題もある事実に気づいてしまえば、あとは平行移動の公式を使ってラクに解くことができます。
ぜひ、考えてみてから解答をご覧ください。
ちなみに、問題2も頂点の移動で解くことも可能ですが、今回頂点の座標に分数が出てきてしまうため、計算が大変です。
こういった問題にも対応できるようになりたい方は、平行移動の公式を使える方が良いですね!
問3.平行移動・対称移動の混ざった問題
問題3.ある放物線 $B$ を、$x$ 軸方向に $+2$,$y$ 軸方向に $-3$ だけ平行移動した後、原点に関して対称移動したら、放物線 $y=2x^2-6x+7$ になった。放物線 $B$ の方程式を求めなさい。
さて最後は、問題2に対称移動が混ざったバージョンです。
この問題も逆の移動を考える必要があります。
では解いていきましょう。
これは公式を使わないと厳しそうですね!ところで、もし移動の順番を逆にしてしまうとどうなるんですか?
[/ふきだし]それはもちろん、全く別の放物線になります。図で確認しておきましょうか!
[/ふきだし]対称移動は平行移動と違って、「いつも一定の変化をする移動ではない」ため、このようなことが起きてしまうのですね。
仮に平行移動→平行移動の問題であれば、順番が逆になっても問題はありません。これは自分で問題を作ってみて、図を書いて確認してみてください。
[/ふきだし]二次関数のグラフの平行移動に関するまとめ
それでは最後に、本記事のポイントをまとめます。
- $x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動するには、$x$ → $x-p$,$y$ → $y-q$ に置き換えればOK!
- 平行移動の公式の証明は以下の2通り。
- 「二次関数のグラフ」の頂点の移動に着目しても説明できる
- 一般的に証明するには、数学Ⅱ「軌跡」の知識があった方が良いです。
- 平行移動・対称移動が混ざった問題は、移動の順番がごっちゃにならないように注意しよう!
平行移動・対称移動の知識は、どんな関数のグラフであっても使えるので、ぜひこの機会に押さえておきましょう。
数学Ⅰ「二次関数」の全 $12$ 記事をまとめた記事を作りました。よろしければこちらからどうぞ。
おわりです。
コメントを残す
コメント一覧 (2件)
二次関数のグラフの平行移動とは?【公式や応用問題3選をわかりやすく解説】
平行移動の公式の証明で
X=x+p、Y=y+q
となり、これらの式を移項して・・・
x=X-p‥‥①とありますが、
これは移動後の点Xから移動前の点xを見たのでーpになると考えて良いでしょうか?
はい!その理解で正しいと思います☆