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ピタゴラス数が一発でわかる公式【証明もあわせて解説】

こんにちは、ウチダです。

いつもお読みいただきましてありがとうございます。

さて、皆さんは $(3,4,5)$ とか $(5,12,13)$ とかの数字の組み合わせを見て、興奮しますか?

僕は興奮します。

なぜなら、$$3^2+4^2=5^2$$$$5^2+12^2=13^2$$が成り立つ、つまりピタゴラスの定理を満たす自然数の組み合わせだからです。

また、このような $3$ つ組の自然数のことを「ピタゴラス数」と呼びます。

ピタゴラスの定理(別名三平方の定理)がよくわからない…」という方は、先にこちらの記事をお読みください。

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本記事では、ピタゴラス数を一発ですべて求めることができる、超絶便利な公式を

  • 東北大学理学部数学科卒業
  • 教員採用試験1発合格 → 高校教諭経験アリ

の僕がわかりやすく解説します。

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目次

ピタゴラス数が一発でわかる公式【これで「すべて」求まります】

いきなりですが、本記事のメインテーマである超便利な公式の紹介です。

【ピタゴラス数をすべて求めることができる公式】
$m$、$n$ を自然数とする。
このとき、$$a=m^2-n^2 , b=2mn , c=m^2+n^2$$とすると、$(a,b,c)$ はピタゴラス数になる。

これメチャクチャすごいです。

たとえば、$m=2$、$n=1$ を代入してみると、

\begin{align}(a,b,c)&=(2^2-1^2,2・2・1,2^2+1^2)\\&=(3,4,5)\end{align}

となり、冒頭に紹介したピタゴラス数が導き出せました。

他にも、$m=3$、$n=2$ を代入してみましょう。

\begin{align}(a,b,c)&=(3^2-2^2,2・3・2,3^2+2^2)\\&=(5,12,13)\end{align}

これも冒頭に紹介した、有名なピタゴラス数の一つです。

このように、$m$ と $n$ に様々な値を代入するだけで、無限にピタゴラス数を作り出せてしまうのです。

ただ、たとえば $m=4$、$n=2$ のように、

\begin{align}(a,b,c)&=(4^2-2^2,2・4・2,4^2+2^2)\\&=(12,16,20)\end{align}

もピタゴラス数ですが、すべての数を $4$ で割ると $(3,4,5)$ となります。

よって、

  • $(3,4,5)$ のように、互いに素な $3$ つ組…原始ピタゴラス数
  • $(12,16,20)$ のように、互いに素でない $3$ つ組…ピタゴラス数

と区別することが普通です。

また、先ほど紹介した超便利な公式で

  • $m$ と $n$ が互いに素 ……①
  • $m>n$ ……②
  • $m-n$ が奇数 ……③

以上 $3$ つの条件を守ると、原始ピタゴラス数が作り出せます。

この公式の面白いところは、「原始ピタゴラス数が無限に作り出せる」というところにありますよね。

よって、ここからは「必要性」と「十分性」の $2$ つに分けて、この公式を証明していきたいと思います。

ウチダ
「互いに素がよくわからない…」という方は、先に「互いに素な自然数とは?【応用例7選もわかりやすく解説します】」の記事から読み進めることをオススメします。

ピタゴラス数の公式の証明

ピタゴラス数自体は、原始ピタゴラス数を $1$ つでも見つけてしまえば無限に作り出せてしまいます。

ピタゴラス数が無限個存在することの説明

よって、原始ピタゴラス数にしか興味がわかないので、①~③は前提条件であるとします。

ここで、必要性と十分性、つまり

  • 必要性…原始ピタゴラス数 $(a,b,c)$ は、$$a=m^2-n^2 , b=2mn , c=m^2+n^2$$ と表すことができる。
  • 十分性…$$a=m^2-n^2 , b=2mn , c=m^2+n^2$$ とすると、$(a,b,c)$ は原始ピタゴラス数になる。

この $2$ つを示していきます。

十分性の方が大分簡単なので、そちらから順に解説していきます。

十分性の証明

十分性の証明は至ってシンプル。

だって、$a=m^2-n^2 , b=2mn , c=m^2+n^2$ と置いたとき、$$a^2+b^2=c^2$$を確認すればOKですもんね。

実際に計算してみると、

\begin{align}a^2+b^2&=(m^2-n^2)^2+(2mn)^2\\&=m^4-2m^2n^2+n^4+4m^2n^2\\&=m^4+2m^2n^2+n^4\\&=(m^2+n^2)^2\\&=c^2\end{align}

となり、たしかにピタゴラス数となりました。

面倒くさいのが、“原始”ピタゴラス数となることの証明。

つまり、「 $a$、$b$、$c$ が互いに素である」ことの証明ですね。

これは、$a$ と $b$ と $c$ の最大公約数を $d$ とおいたとき、$d=1$ を示せればOKです。

【互いに素であることの証明】

$a$、$b$、$c$ の最大公約数を $d$ とおくと、互いに素な自然数 $A$、$B$、$C$ が存在し、$$m^2-n^2=dA , 2mn=dB , m^2+n^2=dC$$と表すことができる。

ここで、$m-n$ が奇数であることから、

$$m+n=(m-n)+2n より奇数$$

$$m^2-n^2=(m-n)(m+n) より奇数$$

$$m^2+n^2=(m-n)(m+n)+2n^2 より奇数$$

以上 $3$ つの事実がわかる。

よって、$m^2-n^2=dA …①$ より、$d$ および $A$ が奇数であり、

$m^2+n^2=dC …②$ より、$d$ および $C$ が奇数であることがわかる。

ここで、$(①+②)÷2$ を計算すると、$$m^2=d\frac{A+C}{2} …③$$

$(①-②)÷2$ を計算すると、$$n^2=d\frac{A-C}{2} ……④$$

$A$ および $C$ が奇数であることから、$\displaystyle \frac{A±C}{2}$ は整数となる。

また、$m$ と $n$ が互いに素であることから、$m^2$ と $n^2$ も互いに素である。

したがって、$$d=1$$

(証明終了)

ウチダ
最後の部分の補足をします。$\displaystyle \frac{A±C}{2}$ が整数であることがわからないと、$d$ が公約数であることが示せません。たとえば、$\displaystyle \frac{A+C}{2}=\frac{9}{2} \ , \ \frac{A-C}{2}=3$ だとして、$d=2$ とかにしてみると、$m^2=9 , n^2=6$ になって、最大公約数は $3$ です。この $3$ はどこからともなく出てきた数なので、扱いづらいですね。

必要性の証明

今度は $(a,b,c)$ が原始ピタゴラス数であることを利用し、$$a=m^2-n^2 , b=2mn , c=m^2+n^2$$と表せることを示していきましょう。

まず仮定より、$$a^2+b^2=c^2$$です。

この式を移項して因数分解すると、

\begin{align}b^2&=c^2-a^2\\&=(c+a)(c-a)\\&=4\frac{c+a}{2}\frac{c-a}{2}\end{align}

となります。

さて、準備が整いました。

最終的なゴールを先にお伝えしておきます。

最後、意味深な式変形を行いましたが、実は…

$\displaystyle \frac{c+a}{2}$ と $\displaystyle \frac{c-a}{2}$ は平方数である

これが示せます。

よって、$\displaystyle \frac{c+a}{2}=m^2 \ , \ \frac{c-a}{2}=n^2$ を解くと、$$a=m^2-n^2 , c=m^2+n^2$$となり、また $b^2=4m^2n^2$ となることから、$$b=2mn$$

よって、示したい公式を導くことができます。

そこまでの証明を、

  1. $(a,b,c)$ が $(奇、偶、奇)$ としかなり得ない
  2. $a$ と $c$ が互いに素
  3. $\displaystyle \frac{c±a}{2}$ が平方数

以上の $3$ ステップに分けて解説していきます。

【Step1】 $(a,b,c)$ が $(奇数、偶数、奇数)$ の組み合わせになることの証明

これは、それ以外の場合で矛盾が起きることを示せばOKです。

【証明】

ⅰ) $a$、$b$ ともに奇数のとき

\begin{align}a^2+b^2&=(2k+1)^2+(2l+1)^2\\&=4k^2+4k+1+4l^2+4l+1\\&=4(k^2+k+l^2+l)+2\\&=c^2\end{align}

よって、$c^2$ は $4$ で割ったときの余りが $2$ となる。

しかし、平方数は $4$ で割ると余りが $0$ か $1$ の場合しかない。

これは矛盾。

ⅱ) $a$、$b$ ともに偶数のとき

\begin{align}a^2+b^2&=(2k)^2+(2l)^2\\&=4k^2+4l^2\\&=4(k^2+l^2)\\&=c^2\end{align}

よって、$c$ も偶数となるが、これは $(a,b,c)$ が原始ピタゴラス数である仮定に矛盾。

以上より、「 $a$、$b$ のどちらかが奇数でどちらかが偶数」となることがわかった。

$a$ と $b$ は対称なので、$a$ を奇数、$b$ を偶数としても、一般性は失わない。

(証明終了)

また、$a^2+b^2$ が奇数となることから、$c$ は奇数であることが自動的にわかりましたね。

ウチダ
「平方数を $4$ で割ったときの余りが $0$ または $1$ である」これは、$4$ で割った余りで場合分けすれば証明できます。つまり、$c=4h$、$c=4h+1$、$c=4h+2$、$c=4h+3$ の $4$ パターンですね。

【Step2】$a$ と $c$ が互いに素であることの証明

$a$、$b$、$c$ が互いに素であるからと言って、$a$ と $c$ が互いに素であるとは限りません。

反例としては$$a=6 , b=10 , c=15$$などがありますね。

本証明のやり方では、この事実はどうしても必要となってくるので、ここで証明しておきます。

【証明】

$a$ と $c$ の最大公約数を $d$ とすると、互いに素な自然数 $A$、$C$ を用いて、$$a=dA , c=dC$$と表せる。

ここで、$$(dA)^2+b^2=(dC)^2$$より、$$b^2=d^2C^2-d^2A^2=d^2(C^2-A^2)$$となる。

よって、$b^2$ は $d^2$ を約数に持つので、$b$ は $d$ を約数に持つ。

したがって、$d$ は $a$、$b$、$c$ の最大公約数となることがわかり、$(a,b,c)$ が原始ピタゴラス数である仮定から、$$d=1$$

(証明終了)

ウチダ
$b$ は偶数になることがわかっているので、$\sqrt{C^2-A^2}$ は必ず整数になります。この発想自体が、Step$3$ に多く通じてきます。

【Step3】$\displaystyle \frac{c±a}{2}$ が平方数であることの証明

さて、いよいよゴールです。

一番わかりやすいのは、$\displaystyle \frac{c±a}{2}$ が互いに素であることを導く方法でしょうか。

【証明】

Step$1$ において $b$ が偶数であることがわかったので、$b=2B$ と改めておくと、$$4B^2=4\frac{c+a}{2}・\frac{c-a}{2}$$

よって、両辺を $4$ で割ると、$$B^2=\frac{c+a}{2}・\frac{c-a}{2} ……①$$

ここで、$\displaystyle \frac{c+a}{2}$ と $\displaystyle \frac{c-a}{2}$ の最大公約数を $d$ とおくと、互いに素な自然数 $h$、$k$ を用いて、$$\left\{\begin{array}{ll}\displaystyle \frac{c+a}{2}=dh\\\displaystyle \frac{c-a}{2}=dk\end{array}\right.$$

この連立方程式を解くと、$$a=d(h-k) , c=d(h+k)$$

ここで、Step$2$ より、$a$ と $c$ は互いに素であるので、$$d=1$$

よって、$\displaystyle \frac{c±a}{2}$ は互いに素である。

したがって、互いに素な $2$ つの積が $B^2$、つまり平方数であることから、それぞれが平方数であることがわかる。

(証明終了)

以上、長くはなりましたがこれにて証明完了です。

また、前提条件①~③を満たす $(m,n)$ の組は無数に存在するので、原始ピタゴラス数が無数に存在することも自動的にわかりました。

ウチダ
互いに素をもっとフランクに言い換えると、「素因数で被るものがある」とも言えます。たとえば $6$ と $24$ をかけると平方数 $144=12^2$ となりますが、$6=2×3$、$24=2^3×3$ なので互いに素ではありません。これが $16×9=144$ であれば、$16=2^4$、$9=3^2$ で素因数の被りがないため、$16$ と $9$ は互いに素であり、かつそれぞれが平方数ですね。
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ピタゴラス数の一覧【覚えた方がいいもの】

ピタゴラス数は無限個存在するので、完ぺきな一覧を作ることは不可能です。

ただ、$1$ 万以下のピタゴラス数をすべて一覧でまとめているとんでもないサイトがありますので、それは一見の価値ありです。

≫参考文献:ピタゴラス数一覧表

ここに掲載されている中で、僕が覚えておいた方が良いと感じるピタゴラス数を紹介すると…

  • $(3,4,5)$ … $m=2$、$n=1$ を代入。
  • $(5,12,13)$ … $m=3$、$n=2$ を代入。
  • $(15,8,17)$ … $m=4$、$n=1$ を代入。
  • $(7,24,25)$ … $m=4$、$n=3$ を代入。

以上 $4$ つだけですかね。

まあもうちょっとだけ $m$、$n$ の値を増やしてみて、たとえば

$m=5$、$n=2$ → $(21,20,29)$

あたりまでは覚えていても損はないかと。

どちらにせよ、ピタゴラス数の公式さえ覚えていれば、いつでもどこでも簡単に作り出すことができますね^^

ピタゴラス数に関するまとめ

本記事のまとめをします。

  • 原始ピタゴラス数の公式$$a=m^2-n^2 , b=2mn , c=m^2+n^2$$これは絶対に覚える!
  • 前提条件で重要なのは、「 $m-n$ が奇数であること」「 $m$ と $n$ が互いに素な自然数であること」の $2$ つ。
  • $m=4$ ぐらいまでのピタゴラス数は問題にされやすいから覚えておくと吉。大吉かも。

ちなみに、ピタゴラス数の公式は「フェルマーの最終定理( $n=4$ の場合)」の証明で応用されます。

ウチダ
こんなに証明に時間がかかったのに、予備知識として威力を発揮するのは $n=4$ の場合の証明のみです。さすがフェルマーの最終定理ですね。詳しくは「フェルマーの最終定理~(準備中)」の記事をご覧ください。

「整数の性質」全 25 記事をまとめました。こちらから次の記事をCHECK!!

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以上、ウチダでした。

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コメント一覧 (4件)

  • 揚げ足を取るようでごめんなさい。

    最初の公式、条件に
    「m≠n」は、必要ないですか。
    自然数という条件だと、
    m=n=1で、
    (a,b,c)=(0,2,2)のように、a=0になります。
    自明ですが…。

    • なるほど!たしかにそうですね!
      まあしかし、a=0であっても問題はないというか、たしかに(0,2,2)がピタゴラス数か?と言われるとそれはクエスチョンですけども、まあ1辺の長さが0の三角形と捉えればそう考えられなくもないというか…(笑)

      特段m≠nを付け加える必要性はないかな…と思ったので、そのままにしておきます!
      ただ、貴重なご指摘、誠にありがとうございます!!

  • 大変、克明で正確な解説で感動しました。今、私は、ピタゴラス三角を作図で作る(描く)方法を考えていて、ほぼ出来てますが、「それで、全て」が言えてなく考えあぐねています。このあたりのこと、パズルにしてみたいと思って工面しています。拙ブログ「gontanoe」の本年の秋頃の号に取り上げる予定です。出来ましたら一瞥してください。2020年3月21日記
    では

    • コメントありがとうございます!お褒めいただき光栄です。
      ピタゴラス数を作図で作る?なかなか興味深い研究ですね!
      gontanoe見ました!数学のみならず算数パズルのような問題をたくさん扱っていて、面白かったです。
      秋頃更新なさること、楽しみにしております。

      これからも「遊ぶ数学」を何卒よろしくお願いいたします。

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