こんにちは、ウチダです。
今日は、中学3年生で習う
「平行線と線分の比の定理」
を用いる問題や、その $3$ 通りの証明、また定理の逆の証明について、わかりやすく解説していきます。
平行線と線分の比の定理とは【台形】
まずは定理のご紹介です。
※ $ℓ // n$ は前提以前の大前提条件です。つまり、仮定しているのは「 $m // n$ 」だけだと理解してください。
「平行ならば線分の比がわかる」という、非常にシンプルな定理です。
また①と②については、②→①の順で書かれている教科書もありますが、どちらとも重要なのであまり関係はありません。
さて、この図を見ていると、複数の台形が浮かび上がってきますね。
具体的には…
- 台形 $ABED$
- 台形 $BCFE$
- 台形 $ACFD$
この $3$ つです。
ここで、台形が出てこないもう一つの「平行線と線分の比の定理」について見ていきましょう。
三角形と比の定理
「平行線と線分の比」と表現した場合、この定理を含むこともありますが、一応別のものとして紹介しておきます。
②の式が一つ増えましたね。
成り立つ仕組みも基本的にほぼ同じであるため、この「三角形と比の定理」も「平行線と線分の比の定理」と表すことが多いです。
つまり、区別する必要はないということですね。
これらの定理を証明する前に、「これらがいかに有用であるか」感じていただきたいので、まずは問題を解いてみましょう♪
※定理の証明は目次3「平行線と線分の比の定理の証明3選」から始まります。
平行線と線分の比の性質を用いる問題
$x$ は「平行線と線分の比の定理(台形)」、$y$ は「三角形と比の定理」で求めることができます。
【解答】
下の図で、色を付けた部分について考える。
緑に対して「平行線と線分の比の定理①」を用いると、$$6:x=8:12 ……①$$
オレンジに対して「三角形と比の定理②」を用いると、$$8:(8+12)=4:y ……②$$
①を整理すると、$$6:x=2:3$$
比例式は「内積の項 = 外積の項」が成り立つので、$$2x=18$$
よって、$$x=9$$
②を整理すると、$$2:5=4:y$$
同様に、$$2y=20$$
よって、$$y=10$$
(解答終了)
定理を用いることで、簡単に求まりますね!
この基本の解き方を押さえたうえで、いろいろな応用問題にチャレンジすると力が付くかと思います。
平行線と線分の比の定理の証明3選
それでは、応用方法がわかったところで、定理の証明に移りたいと思います。
先にお伝えしておくと、この定理は「三角形の相似」から導くことができます。
その相似な図形の作り方が主に $2$ つありますので、そちらから見ていきましょう。
具体的には
- 砂時計型とピラミッド型を作る
- 平行四辺形を作る
- 式変形から導く
以上 $3$ 通りの方法です。
砂時計型とピラミッド型を作る
【証明】
線分 $DF$ を以下のように平行移動すると、砂時計型の図形ができる。
よって、$△D’BA ∽ △F’BC$ となるため、$$BA:BC=D’B:F’B$$
ここで、$D’B=DE , F’B=EF$ であるため、$$AB:BC=DE:EF$$
今度は線分 $DF$ を以下のように平行移動すると、ピラミッド型の図形ができる。
よって、$△ABE’ ∽ △ACF’$ となるため、$$AB:AC=AE’:AF’$$
ここで、$AE’=DE , AF’=DF$ であるため、$$AB:BC=DE:DF$$
(証明終了)
もちろん、線分 $DF$ を横に平行移動しただけでは、辺の長さは変わりません。
そうして代表的な $2$ つの相似
- 砂時計型
- ピラミッド型
を作ってしまえば、三角形の相似を用いることができます。
この証明は「相似条件とは?三角形の相似条件はなぜ3つなの?【証明問題アリ】」の記事でも詳しく解説しております。
平行四辺形を作る
言い忘れてましたが、三角形と比の定理も全く同じ方法で証明ができます。
これが、冒頭で「この $2$ つの定理を区別する必要はない」とお伝えした一番の理由です。
また、さっきの章で「線分 $DF$ を平行移動したらピラミッド型ができた」ことから、三角形と比の定理を証明することでもOKです。
ですから、この章と次の章では「三角形と比の定理①」を証明していきます。
【証明】
三角形と比の定理②は、ピラミッド型の相似そのものである。
よってここからは、三角形と比の定理①について考察していく。
以下の図のように、四角形 $DFCE$ が平行四辺形になるように、辺 $BC$ 上に点 $F$ をとる。
この図で、まず $△ADE$ と $△DBF$ が相似であることを示す。
(証明中断)
さて、とりあえず補助線を引くところまで進みました。
ここで、$$△ADE ∽ △DBF$$さえ示すことができれば、あとは上手くいきそうです。
どう示すか少し考えてみましょう。
ポイントは「平行線と角の性質」です。
【証明再開】
平行線が $2$ 組あるので、それぞれの同位角について考える。
$DE // BC$ より、$$∠ADE=∠DBF ……①$$
$DF // AC$ より、$$∠DAE=∠BDF ……②$$
①、②より、2つの角がそれぞれ等しいので、$$△ADE ∽ △DBF$$
相似な図形の辺の比はすべて等しいから、$$AD:DB=AE:DF$$
ここで、平行四辺形の対辺は等しいから、$$DF=EC$$
よって、$$AD:DB=AE:EC$$
(証明終了)
平行線における同位角が等しいことを $2$ 回用いて相似を示し、最後に「平行四辺形の性質」を用いて証明完了です。
それぞれの詳しい解説は、
にてご確認ください。
式変形から導く
最後は、三角形と比の定理②から式変形を行い、「三角形と比の定理①」を示す方法です。
【証明】
三角形と比の定理②より、$$AD:AB=AE:AC$$
が成り立つ。
ここで、図より明らかに、$$AD:(AD+DB)=AE:(AE+EC)$$
と変形できる。
また、比例式の意味から、$$\frac{AD+DB}{AD}=\frac{AE+EC}{AE}$$
とできる。
この式を整理すると、$$1+\frac{DB}{AD}=1+\frac{EC}{AE}$$
両辺から $1$ を引くと、$$\frac{DB}{AD}=\frac{EC}{AE}$$
この式は、比例式$$AD:DB=AE:EC$$が成り立つことを意味する。
(証明終了)
比例式の意味をしっかり理解していれば、分数を用いて方程式を作ることができます。
比例式については「比例式の解き方とは?分数を用いた計算・かっこを含む文章問題をわかりやすく解説!」の記事で詳しく解説しております。
平行線と線分の比の定理の逆の証明と問題
実は「平行線と線分の比の定理」は、その逆も成り立ちます。
どういうことかというと…
つまり、「①と②の線分の比を満たしていれば、直線は平行になる」ということです。
さて、①と②は、どちらか一方でも満たせば両方とも満たすことは、今までの解説からわかるかと思います。
よって、ここでは②の条件から、$$DE // BC$$を導いてみましょう。
【逆の証明】
$△ADE$ と $△ABC$ において、
$∠A$ は共通より、$$∠DAE=∠BAC ……①$$
また、仮定より、$$AD:AB=AE:AC ……②$$
①、②より、2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいから、$$△ADE ∽ △ABC$$
相似な図形の対応する角は等しいから、$$∠ADE=∠ABC$$
よって、同位角が等しいから、$$DE // BC$$
(証明終了)
また、定理の逆を用いることで、平行な直線を見つける問題も解くことができます。
書き込んでしまいましたが、見るからに$$AB // FE$$しかなさそうですよね。
逆に言うと、この問題は $BC ∦ DF$ や $AC ∦ DE$ を示すことも求められています。
※「 $∦$ 」で「平行ではない」という意味を表します。「 ≠ 」で「等しくない」と似てますね。
【解答】
まずは比を整数値にして出しておこう。
$$AD:DB=2.5:3.5=5:7 ……①$$
$$BE:EC=3.6:1.8=2:1 ……②$$
$$CF:FA=1.6:3.2=1:2 ……③$$
②、③より、$$CE:EB=CF:FA=1:2$$が成り立つので、$$AB // FE$$が示せた。
また、①、③より、$$AD:DB≠AF:FC$$なので $BC ∦ DF$ であり、①、②より、$$BD:DA≠BE:EC$$なので $AC ∦ DE$ である。
(解答終了)
「辺の比が等しくなければ平行ではない」も押さえておくといいですね^^
平行線と線分の比に関するまとめ
平行線と線分の比の定理は、ほぼほぼ三角形の相似と変わりありません。
ただ、一々証明していては手間ですし、下の図で
$$AB:BD=AE:EC$$
が使えるのが嬉しいところです。
ちなみに、この定理よりもっと特殊な場合についての定理があります。
それが「中点連結定理」と呼ばれるものです。
この定理も非常に重要なので、ぜひ押さえていただきたく思います。
次に読んでほしい「中点連結定理」に関する記事はこちらから
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以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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