こんにちは、ウチダです。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
さて、皆さんは整数を見た瞬間に「あっこれは $3$ の倍数だ」とか「あっこれは $4$ の倍数だ」とか判断できますか?
例題. 次の数が $3$ の倍数であるか、$4$ の倍数であるか瞬時に判断せよ。
(1) $123456789$
(2) $950000000000$
(1)が $3$ の倍数で、(2)が $4$ の倍数です。
このように、倍数を素早く判定する方法のことを「倍数判定法」と呼び、数学において非常に役に立ちます。
一瞬で判断できればどんなに便利なことか…。倍数判定法を早くマスターしたいなぁ。
$7$ の倍数判定法や $11$ の倍数判定法など、面白い倍数判定法も知りたいです!
よって本記事では、$2$ ~ $13$ までの倍数判定法をグループごとにまとめた上で、それらの証明や覚え方について
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
目次
倍数判定法の一覧とその証明とは【わかりやすくまとめました】
さて、早速ですが表にしてまとめましたのでご覧ください。
~の倍数 | 見分け方 (判定法) | 情報の価値 (★ $1$ ~★ $5$ で ランク付け) |
---|
$2$ の倍数 | 一の位が偶数 | ★ $1$ |
$3$ の倍数 | 各桁の和が $3$ の倍数 | ★ $5$ |
$4$ の倍数 | 下 $2$ 桁が $4$ の倍数 |
★ $4$
|
$5$ の倍数 | 一の位が $0$ または $5$ |
★ $1$
|
$6$ の倍数 | $2$ の倍数かつ $3$ の倍数 |
★ $2$
|
$7$ の倍数 | 詳しくは後述 | / |
$8$ の倍数 | 下 $3$ 桁が $8$ の倍数 | ★ $3$ |
$9$ の倍数 | 各桁の和が $9$ の倍数 |
★ $4$
|
$10$ の倍数 | 一の位が $0$ | ★ $1$ |
$11$ の倍数 | 各桁を交互に足し引き した値が $11$ の倍数 |
★ $3$
|
$12$ の倍数 | $3$ の倍数かつ $4$ の倍数 | ★ $2$ |
$13$ の倍数 | 詳しくは後述 | / |
※情報の価値は、「重要度・難易度・使う頻度」など様々な要素を考慮した上でランク付けをしました。
いかがでしょう。
黄色でマーカーを付けた部分が、皆さんの知りたい情報ではないでしょうか。
さて、ここからは
- 第1章 … $2$ の倍数,$5$ の倍数,$10$ の倍数
- 第2章 … $4$ の倍数,$8$ の倍数
- 第3章 … $3$ の倍数,$9$ の倍数【最重要】
- 第4章 … $6$ の倍数,$12$ の倍数
- 第5章 … $11$ の倍数【便利】
- 第6章 … $7$ の倍数,$13$ の倍数
の計 $6$ グループに分けて、順に解説していきたいと思います。
※「第 $〇$ 章」の部分がリンクになっており、クリックするとその詳しい解説へジャンプします。
2の倍数・5の倍数・10の倍数の見分け方
$2$ の倍数(つまり偶数)を小さい順に並べてみると…
$$2 \ , \ 4 \ , \ 6 \ , \ 8 \ , \ 10 \ , \ 12 \ , \ 14 \ , \ 16 \ , \ …$$
と一の位が永遠とループしていくのがわかるかと思います。
$5$ の倍数についても同様に考えると…
$$5 \ , \ 10 \ , \ 15 \ , \ 20 \ , \ 25 \ , …$$
$10$ の倍数についても同様に考えると…
$$10 \ , \ 20 \ , \ 30 \ , \ 40 \ , \ 50 \ , …$$
つまり、これらの倍数に対しては「一の位だけ見ればOK」ということになりますね!
4の倍数・8の倍数の見分け方
いきなりですが式を $2$ つご覧ください。
$$100=4×25$$
$$1000=8×125$$
この $2$ つの式からわかることはいったいなんでしょうか。
少し考えてみてから続きをどうぞ。
↓↓↓(正解発表)
- $100$ の倍数であれば $4$ の倍数でもある
- $1000$ の倍数であれば $8$ の倍数でもある
つまり、「$4$ の倍数であれば十の位まで見ればよくて、$8$ の倍数であれば百の位まで見ればOK」だということになります。
ちょっと練習してみましょう。
問題1. 次の問いに答えなさい。
(1) $5712947548$ は $4$ の倍数?
(2) $4593095256$ は $8$ の倍数?
問題1の解答例
(1)
\begin{align}5712947548&=5712947500+48\\&=57129475×100+48\end{align}
であるから、$48$ だけに注目すればよい。
よって $48=4×12$ より、$5712947548$ は $4$ の倍数である。
(2)
\begin{align}4593095256&=4593095000+256\\&=4593095×1000+256\end{align}
であるから、$256$ だけに注目すればよい。
よって $256=8×32$ より、$4593095256$ は $8$ の倍数である。
(解答終了)
そろそろ倍数判定法の本質が見えてきたのではないでしょうか?
倍数判定法のポイントを一言で表すならば…
考えなくていいことを、考えない。
これに尽きると思います。
$4$ の倍数判定法はこれで理解できたよ!次は $3$ の倍数判定法かな?
いよいよ来ましたね。$3$ の倍数判定法の証明までマスターできるかどうかで数学力そのものが変わってきます。次は要チェックですよ!
3の倍数・9の倍数の見分け方【最重要】
めっちゃくちゃ重要な $3$ の倍数及び $9$ の倍数の判定法。
ここでは $4$ 桁の自然数 $N$ を例にとって証明していきます。
3の倍数判定法の証明
$4$ 桁の自然数 $N$ は、$0≦a \ , \ b \ , \ c \ , \ d \ ≦9$ を満たす自然数 $a$,$b$,$c$,$d$ を用いて、$$N=1000a+100b+10c+d …①$$
と表すことができる。
ここで、
\begin{align}1000=3×333+1 \ , \ 100=3×33+1 \ , \ 10=3×3+1\end{align}
※以降途切れている数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
とできることを利用すると、①の式を
\begin{align}N&=1000a+100b+10c+d\\&=3×(333a+33b+3c)+(a+b+c+d)\end{align}
と式変形することができる。
$333a+33b+3c$ は自然数より、$3×(333a+33b+3c)$ は $3$ の倍数となるから、残りの $a+b+c+d$ がどういう値をとるかで決まる。
したがって、$a+b+c+d$、つまり各桁の和が $3$ の倍数であるとき、$N$ も $3$ の倍数となる。
(証明終了)
いかがでしょう。
この証明のポイントは
- 自然数 $N$ を $N=1000a+100b+10c+d$ と数式の形で表す。
- $3$ でくくれる部分は $3$ の倍数となるので、抜き出して考える。
ですね!
$3$ の倍数判定法は覚えていたけど、なぜそうなるかまではしっかり理解していなかったわ!じゃあ $9$ の倍数判定法は…同じ風にして導くことができそうね!
その通り!$9$ の倍数判定法も $3$ の倍数判定法とほぼ同じやり方で証明することができますよ~。
↓↓↓(正解発表)
$9$ の倍数判定法の証明であれば、
\begin{align}1000=9×111+1 \ , \ 100=9×11+1 \ , \ 10=9×1+1\end{align}
とできることを利用し、
\begin{align}N&=1000a+100b+10c+d\\&=9×(111a+11b+c)+(a+b+c+d)\end{align}
と式変形すればOKですね^^
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6の倍数・12の倍数の見分け方
$6$ の倍数や $12$ の倍数は
- $6$ の倍数 → $2$ の倍数かつ $3$ の倍数
- $12$ の倍数 → $3$ の倍数かつ $4$ の倍数
とも言い換えられるので、今までの知識の複合で解けます。
この図は「ベン図」と言い、複数の集合の関係を図で表したものです。詳しくは「ベン図・共通部分とは~(準備中)」の記事で解説してますので、ここではあまり深く考えなくてもOKです。
それでは、またまた練習してみましょう。
問題2. 次の問いに答えなさい。
(1) $582$ は $6$ の倍数?
(2) $6390$ は $12$ の倍数?
問題2の解答例
(1) $582$ は一の位が偶数なので $2$ の倍数である。
また、各桁の和 $5+8+2=15$ は $3$ の倍数となるので、$582$ も $3$ の倍数である。
したがって、$582$ は $6$ の倍数である。
(2) 各桁の和 $6+3+9+0=18$ は $3$ の倍数となるので、$6390$ も $3$ の倍数である。
しかし、$90=4×22+2$ より、$6390$ は $4$ の倍数ではない。
したがって、$6390$ は $12$ の倍数ではない。
(解答終了)
この考え方を応用すれば、$15$ の倍数とか $18$ の倍数とかも
- $15$ の倍数 → $3$ の倍数かつ $5$ の倍数
- $18$ の倍数 → $2$ の倍数かつ $9$ の倍数
と書き換えて考えることができますね。
11の倍数の見分け方【便利】
$11$ の倍数判定法の発想は、$3$ の倍数・$9$ の倍数判定法とよく似ています。
というのも、
\begin{align}9999=11×909 \ , \ 1001=11×91 \ , \ 99=11×9 …②\end{align}
が成り立つことを利用するからです。
11の倍数判定法の証明
今回は、$5$ 桁の自然数 $N$ で考える。
このとき、$0≦a \ , \ b \ , \ c \ , \ d \ , \ e \ ≦9$ を満たす自然数 $a$,$b$,$c$,$d$,$e$ を用いて、$$N=10000a+1000b+100c+10d+e…③$$
と表すことができる。
ためしに、
\begin{align}N&=10000a+1000b+100c+10d+e\\&=(9999a+a)+(1001b-b)+(99c+c)+(11d-d)+e\\&=(9999a+1001b+99c+11d)+(a-b+c-d+e)\end{align}
と、③を式変形する。
ここで②の式より、
\begin{align}& \quad (9999a+1001b+99c+11d)+(a+b+c+d+e)\\&=11(909a+91b+9c+d)+(a-b+c-d+e)\end{align}
したがって、$11(909a+91b+9c+d)$ は $11$ の倍数となるから、各桁を交互に足し引きした値 $(a-b+c-d+e)$ によってすべてが決まる。
(証明終了)
$11$ の倍数の性質として面白いのが
$10^n±1$ で交互に登場する
ココですね。
これは知らないと中々気づけませんよね。学校ではここまでしっかりと教わることは難しいので、ぜひ僕のサイト等で知識を蓄えていただきたいと思います^^
では、例題をいくつか解いてみましょう。
問題3. 次の数が $11$ の倍数であるか判定しなさい。
(1) $407$
(2) $1729$
(3) $2838$
(4) $1001100110011001$
問題3の解答例
(1) $4-0+7=11$ なので、$407$ は $11$ の倍数である。
(2) $1-7+2-9=-13$ なので、$1729$ は $11$ の倍数ではない。
(3) $2-8+3-8=-11$ なので、$2838$ は $11$ の倍数である。
(4) $1-0+0-1+…=0$( $4$ 回繰り返し)なので、これは $11$ の倍数である。
(解答終了)
補足として、答えが $0$ もしくは $-11$,$-22$ などの数になっても、これらは
\begin{align}0=11×0 \ , \ -11=11×(-1) \ , \ -22=11×(-2)\end{align}
というふうに、「 $11 × \ 整数$ 」の形で表すことができるため、問題なく倍数判定法が使えます。
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7の倍数・13の倍数の見分け方(おまけ)
$7$ の倍数判定法と $13$ の倍数判定法は、作るのが結構めんどくさいです。
- 桁が大きい場合 … 以下の二つの式
\begin{align}1001=7×11×13 \ , \ 999999=3^3×7×11×13×37 …④\end{align}
を利用して、$3$ 桁ずつに区切って考える。 - 桁が小さい場合 … 「一の位とそれ以外」に分けて考える。
押さえておきたい方針は以上 $2$ つです。
順に解説します。
桁が大きい場合
たとえば $N$ が $9$ 桁の自然数だとする。
このとき、$3$ 桁の自然数 $A$,$B$,$C$ を用いて、$$N=1000000A+1000B+C$$というふうに、$3$ 桁ずつに区切って表すことができる。
よって④の式を利用して式変形すると、
\begin{align}N&=1000000A+1000B+C\\&=(999999A+A)+(1001B-B)+C\\&=(999999A+1001B)+(A-B+C)\\&=7×13×(10989A+11B)+(A-B+C)\end{align}
となり、前半部分は $7$ の倍数かつ $13$ の倍数なので、結局 $A-B+C$ がどうかですべてが決まることがわかる。
(導出終了)
つまり、$3$ 桁ずつに区切った上で、$11$ の倍数判定法と同じように交互に足し引きしたもので判断すればOKということになります。
桁が小さい場合
たとえば $N=1000a+100b+10c+d$ (つまり $4$ 桁の自然数)であるとする。
このとき、一の位を除いた数にというのは、$100a+10b+c$ で表される。
ここで、
\begin{align}N&=1000a+100b+10c+d\\&=10×(100a+10b+c-2d)+21d\end{align}
と式変形すると、$21d$ は $7$ の倍数であり、$7$ と $10$ は互いに素であるため、
$$100a+10b+c-2d$$
つまり、(一の位を除いた数)$-$(一の位を $2$ 倍した数)が $7$ の倍数かどうかで決まる。
このように考えれば、
\begin{align}N&=1000a+100b+10c+d\\&=10×(100a+10b+c+5d)-49d\end{align}
として、(一の位を除いた数)$+$(一の位を $5$ 倍した数)が $7$ の倍数かどうかで判断してもいいし、$13$ の倍数の判定は
\begin{align}N&=1000a+100b+10c+d\\&=10×(100a+10b+c+4d)-39d\end{align}
として、(一の位を除いた数)$+$(一の位を $4$ 倍した数)がどうかで判断してもいい。
(導出終了)
ここからわかることは、倍数判定法は自分でいくらでも作り出すことができる、ということです。
また練習してみましょう。
問題4. 次の問いに答えなさい。
(1) $174499941$ は $7$ の倍数?
(2) $833$ は $7$ の倍数?
(3) $9685$ は $13$ の倍数?
問題4の解答例
(1) $3$ 桁ずつに区切って交互に足すと、$174-499+941=616=7×88$ なので、これは $7$ の倍数である。
(2) 一の位を除いた数から一の位の $2$ 倍を引くと、$83-3×2=77=7×11$ なので、これは $7$ の倍数である。
(3) 一の位を除いた数に一の位の $4$ 倍を足すと、$968+5×4=988=13×76$ なので、これは $13$ の倍数である。
(解答終了)
う~ん。理屈はわかったけど、それでもめんどくさいことに変わりはないね。
そうなんです。$7$ の倍数と $13$ の倍数は判定法を作っても、計算がすごく楽になるわけではないです。よって、あくまで雑学として押さえる程度に留めておいてくださいね^^
倍数判定法に関するまとめ
本記事のポイントを改めてまとめます。
- 考えなくていいことを、考えない(整数問題の基本です)。
- $3$ の倍数,$4$ の倍数の判定法は必ず押さえる!
- これらを理解できれば、$6$ の倍数,$8$ の倍数,$9$ の倍数の判定法は自ずとわかる。
- $11$ の倍数判定法は便利。$7$ と $13$ の倍数判定法は覚えなくてよし!(素直に割った方が速いですね。)
倍数判定法は作れる!
ぜひこの言葉をキャッチフレーズとして覚えてほしいと思います。
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以上で終わりです。
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