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重心とは?三角形の重心の座標・位置ベクトルの求め方や公式の証明・面積比の問題を解説!【数学】【オイラー線】

こんにちは、ウチダです。

今日は数学A「図形の性質」で習う

「三角形の重心」

の座標・位置ベクトルの求め方や、その公式の証明、また重心の重要な性質を利用した面積比を求める問題などをわかりやすく解説していきます。

また、記事の後半では、三角形の五心に関する面白い話題 $2$ 選

  • オイラー線
  • 正三角形の四心が一致すること

についても考察していくので、ぜひお楽しみください♪

外心や内心についての記事からご覧いただけると、よりスムーズに理解できるかと思います。

↓↓↓

参考1.「外心とは?三角形の外心の座標・位置ベクトルの求め方や性質の証明をわかりやすく解説!【垂心】

参考2.「内心とは?三角形の内心の求め方や比の使い方・性質の証明・位置ベクトルをわかりやすく解説!

重心とは【意味や定義】

まずは外心や内心のときと同様、以下の事実について考えていきます。

↓↓↓

【衝撃の事実】
$3$ つの中線は $1$ 点で交わる!!

ここで、三角形の中線とは「三角形の頂点とそれに向かい合う辺(対辺)の中点を結ぶ線分」のことを指します。

この事実を図で表すとこうなります。

↓↓↓

また、重心を英語で「Center of Gravity」と言うので、その頭文字を取って点 G と表すことが一般的です。

さて、三角形の五心の中で一番聞きなじみのある言葉がこの“重心”だと思います。

その理由として主に

  • 重心にはある重要な性質が成り立つこと
  • 物理学にもしばしば登場すること

この $2$ つが挙げられるでしょう。

この記事では、まず上記の内容について順に見ていき、その上で先ほど紹介した”衝撃の事実”を証明していきます。

重心の超重要な性質

まずは重心に成り立つ重要な性質の紹介です。

↓↓↓

この図で、$$AG:GD=BG:GE=CG:GF=2:1$$が成り立ちます。

つまり、「重心は各中線を $2:1$ に内分する」ということです。

この性質がめちゃくちゃ重要です!

後述しますが、たとえば面積比を求める問題や重心の座標・位置ベクトルを求める問題などでこの性質を利用します。

というより、重心の応用問題のほとんどはこの性質を使います。

この性質も目次2「重心の存在性の証明3つ」でしっかり証明しますので、ここでは一旦飛ばして次の話題に移ります。

<コラム>おでこを押されると人は立てない!?<物理>

私が重心についての授業をする際、必ずしていた面白話です。

男子なら経験のある方が多いと思いますが、休み時間にふざけて椅子に座っている友達のおでこを押さえたことはありませんか?(笑)

また、そのときお友達はすんなりと立つことができましたか?

おそらく、誰一人として立つことができなかったと思います。

実はこれにはちゃんとした理由があります。

というのも、人は重心を移動させることで立ち上がり動作を行うことができます。

人が立ち上がるメカニズムを簡単に説明すると…

  1. 前かがみになり、重心を前の方に移動させる。
  2. 重心に対し垂直な力を加える(膝を伸ばして床を蹴る)。
  3. 姿勢をもとに戻し、バランスを取る(立つ)。

この $3$ つに分解できますね。

つまり、おでこを押さえられると一番目の動作である「前かがみ」ができないため、重心を移動させることができず、結果立つことができない、というわけです。

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このように、重心は私たちの生活と密接に関連しているため、一番重要度の高い心だと言えるでしょう。

また、運動部に所属している方であれば、一度は「重心をもっとこう下げて、~。」というようなアドバイスをもらったことがあるかと思います^^

重心の存在性の証明3つ

重心がいかに重要であるかは、これでお分かりいただけたかと思います。

ここからは、先ほど紹介した衝撃の事実「 $3$ つの中線が $1$ 点で交わる」ことと「重心は各中線を $2:1$ に内分する」ことを証明していきます。

重心の存在性の証明ももちろん複数個あります。

その中でも「わかりやすい」そして「数学的に重要性の高い」証明を $3$ つ見ていきます。

外心や内心と同様の証明

一つ目の証明では、外心や内心のときと同様に、「 $2$ つの中線の交点を $3$ 本目も通る」ことを示していきます。

【証明】

辺 BC、CA の中点をそれぞれ L、M とし、半直線 CG と辺 AB の交点を N としたとき、$$AN:NB=1:1$$つまり、点 N が辺 AB の中点であることを示す。

ここで、図のように補助線を書いて考える。

↓↓↓

今、GL を延長し、$GL=OL$ となるように点 O を取った。

すると、四角形 OBGC は対角線がそれぞれの中点で交わるため、平行四辺形となる。

⇒参考.「平行四辺形の定義から性質と条件をわかりやすく証明!特に対角線の性質を抑えよう

平行線の関係が二つできたので、それぞれについて考察していく。

↓↓↓

まず左側、つまり $NG // BO$ より、平行線と線分の比の関係から、$$AN:NB=AG:GO ……①$$

次に右側、つまり $GM // OC$ より、平行線と線分の比の関係から、$$AG:GO=AM:MC=1:1 ……②$$

①、②より、$$AN:NB=1:1$$

よって、点 N は辺 AB の中点である。

⇒参考.「平行線と線分の比の問題・3通りの証明・定理の逆の証明を解説!

また、$AG:GO=1:1$ と $GL:LO=1:1$ より、

\begin{align}AG:GL&=AG:\frac{1}{2}GO\\&=1:\frac{1}{2}\\&=2:1\end{align}

他の $2$ つの中線に対しても同様なことが言えるので、したがって重心は各中線を $2:1$ に内分する。

(証明終了)

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外心や内心のときのように簡潔にはいきませんね(^_^;)

この証明のポイントは、平行四辺形ができるように補助線を引くところです。

その補助線さえ引けてしまえば簡単なんですが…中々の発想力が問われる証明でした。

ということで、補助線を引かない証明についても考えていきましょう♪

【オススメ】2点G,G’が一致することの証明

次に行う証明方法が一番オーソドックスなものであり、一番オススメです。

考え方としては、$2$ つの中線の交点をそれぞれ G、G’ とおき、それらが一致することを示します。

【証明】

まずは中線 BM、CN の交点を G とし、$BG:GM=2:1$ を示す。

ここで、中点連結定理より、$$NM // BC ……①$$$$NM=\frac{1}{2}BC ……②$$

①より△BCG ∽ △MNG となり、②より相似比は $2:1$ であることがわかる。

よって、$$BG:GM=2:1$$

次は中線 AL、BM の交点を G’ とし、$BG’:G’M=2:1$ を示す。

ここで、中点連結定理より、$$ML // AB ……①’$$$$ML=\frac{1}{2}AB ……②’$$

①’より△ABG’ ∽ △LMG’ となり、②’より相似比は $2:1$ であることがわかる。

よって、$$BG’:G’M=2:1$$

以上より、点 G、G’ はともに辺 BM を $2:1$ に内分する点であることがわかった。

$2:1$ に内分する点は一つしか存在しないため、よって $2$ 点 G、G’ は一致する。

したがって、$3$ つの中線は $1$ 点で交わり、その交点 G は各中線を $2:1$ に内分する。

(証明終了)

私がなぜこの証明をオススメするのか、それは

  • 重心が各中線を $2:1$ に内分することがよくわかるから
  • 予備知識が「中点連結定理」のみでよいから
  • 図が簡潔で発想力(補助線)をあまり必要としないから

以上 $3$ つが主な理由です。

「中点連結定理」に関する詳しい解説はこちらから!!

⇒⇒⇒「中点連結定理とは?逆の証明や平行四辺形の問題もわかりやすく解説!

また、「 $1$ 点で交わること」と「 $2$ 点が一致すること」の必要十分性を用いた証明は、大学数学でよく利用します。

高校数学では、この発想はあまり見かけませんが、今のうちに様々な考え方に触れておくことは重要であると私は思います♪

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チェバの定理の逆を用いる証明

最後はおなじみ「チェバの定理の逆」を用いる証明です。

誇張なしに一瞬で終わりますよ!

【証明】

辺 AB、BC、AC の中点をそれぞれ P、Q、R とすると、
$$AR:RB=1:1$$$$BP:PC=1:1$$$$CQ:QA=1:1$$

よって、

\begin{align}\frac{AR}{RB}・\frac{BP}{PC}・\frac{CQ}{QA}&=\frac{1}{1}・\frac{1}{1}・\frac{1}{1}\\&=1\end{align}

したがって、チェバの定理の逆より、図のように $1$ 点で交わる。

(証明終了)

やり方は外心の存在性の証明と全く同じですね!

しかし、この証明にはある問題点があります。

それは「重心が各中線を $2:1$ に内分することを示せていない」ということです。

ここで、チェバの定理と双対をなすある定理を使ってみましょう^^

ここでメネラウスの定理を用いると…?

「チェバ・メネラウスの定理」とよくひとまとめにされるぐらい、この $2$ つの定理は似通っています。

というのも、この $2$ つの定理に出てくる式の形が全く同じなんですよね!!

メネラウスの定理を簡単にまとめましょう。

↓↓↓

チェバの定理と同様、「上から下…メネラウスの定理」「下から上…メネラウスの定理の逆」

と呼ぶことが一般的です。

また、チェバの定理では「 $3$ 本の直線が $1$ 点で交わる」という状況に対し、メネラウスの定理では「 $3$ 点が $1$ 直線上にある」という状況ですね^^

さて、このメネラウスの定理を用いると、なんと重心が各中線を $2:1$ に内分することをあっさり示すことができます。

【証明】

チェバの定理の逆より、$3$ つの中線が $1$ 点で交わることは示せた。

あとは各中線を $2:1$ に内分することを示す。

辺 BC、AB の中点をそれぞれ L、N とすると、$2$ 直線 AL、CN の交点 G は重心である。

ここで、△ABC に対しメネラウスの定理を用いると、$$\frac{AN}{NB}・\frac{BC}{CL}・\frac{LG}{GA}=1$$

点 L、N は中点なので、$$AN:NB=1:1$$

\begin{align}BC:CL&=(BL+CL):CL\\&=(1+1):1\\&=2:1\end{align}

これらを代入すると、$$\frac{1}{1}・\frac{2}{1}・\frac{LG}{GA}=1$$

整理すると、$$\frac{LG}{GA}=\frac{1}{2}$$

よって、$$AG:GL=2:1$$

したがって、重心は中線 AL を $2:1$ に内分する。

(証明終了)

今、中線 AL についてのみ証明しました。

中線 BM、CN についても同様に示すことができるので省略します。

「チェバの定理の逆」と「メネラウスの定理」を用いた証明も、簡潔で面白いですね^^

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重心の性質を用いた応用問題4選

さて、いよいよ重心の応用問題を解いていきます。

ここまでの証明でも見たように、重心の代表的な性質は$$AG:GL=BG:GM=CG:GN=2:1$$

です。

これだけは何としても覚えなければなりません。

この性質を用いて

  • 面積比を求める問題
  • 辺の長さを求める問題
  • 座標を求める問題
  • 位置ベクトルを求める問題(数学B)

以上 $4$ つを順に解いていきましょう!

面積比を求める問題

重心の問題で一番よく問われるのが「面積比を求める問題」だと思われます。

問題. 点 $G$ は $△ABC$ の重心である。
このとき、$$△ABC:△ACD:△GBD$$を求めよ。

$3$ つ以上の図形の面積比について考えるときは、一番小さい図形の面積を $1$ とするのがいいでしょう。

つまり今回の場合、$$△GBD=1$$として話を進めます。

【解答】

点 G が △ABC の重心であることを利用し、わかっている比を図に書いてみる。

↓↓↓

ここで、△GBD と △ABD について考える。

それぞれの底辺を GD、AD と見た場合、高さは共通している。

つまり、「面積比=底辺の長さの比」の式が成り立つ。

よって、$$△GBD:△ABD=1:(1+2)=1:3$$

次に、△ABD と △ACD について考える。

それぞれの底辺を BD、CD と見た場合、高さは共通している。

よって、先ほどと同様に、$$△ABD:△ACD=1:1$$

これはつまり$$△ABD=△ACD$$を意味する。

最後に、△ACD と △ABC について考える。

それぞれの底辺を CD、BC と見た場合、高さは共通している。

よって、先ほどと同様に、$$△ACD:△ABC=1:(1+1)=1:2$$

したがって、以上の結果をまとめると、

\begin{align}△GBD:△ACD:△ABC&=1:(3×△GBD):(2×△ACD)\\&=1:3:(2×3)\\&=1:3:6\end{align}

※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

(解答終了)

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面積比についての問題は主に

  • 高さが等しい(等高な)場合
  • 底辺が等しい(等底な)場合
  • 角が等しい(等角な)場合
  • 相似な場合

この $4$ パターンがあります。

今回の問題は、高さが共通していたため、「面積比=底辺の長さの比」と考えることができましたね^^

辺の長さを求める問題【中線定理】

次は数学Ⅰ「図形と計量」と非常に関連性のある問題です。

問題. 点 G は △ABC の重心である。
$AB=6$、$BC=5$、$AC=4$ であるとき、辺 AG の長さを求めよ。

今回も図で示した通り、直線 AG と辺 BC の交点を D とします。

ここで、$$AG:GD=2:1$$より、$$AG=\frac{2}{3}AD$$なので、辺 AD の長さを求めればよい、という発想になります。

【解答】

中線定理(別名パップスの定理)より、$$AB^2+AC^2=2(AD^2+BD^2)$$

点 D は辺 BC の中点なので、$BD=\frac{5}{2}$

わかっている値を代入して、$$6^2+4^2=2\{AD^2+(\frac{5}{2})^2\}$$

計算して整理すると、$$AD^2=\frac{104-25}{4}=\frac{79}{4}$$

$AD>0$ より、$$AD=\frac{\sqrt{79}}{2}$$

したがって、$$AG=\frac{2}{3}AD=\frac{\sqrt{79}}{3}$$

(解答終了)

解答の中に出てきた「中線定理(別名パップスの定理)」を知っているかがポイントです!

$3$ 辺の長さが与えられているので、余弦定理などを用いて様々な辺の長さや角度を求めることができます。

そして、この中線定理も余弦定理を用いて証明することができます!!

この公式をいちいち証明するのは大変です。

しかし、「証明は一度自分の手で行う」というのが私のモットーであり、数学が得意な人の共通点でもあります。

ぜひ一度は証明を行っておきましょう。

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重心の座標を求める問題(公式)

問題の前に、重心の座標を求める公式は確実に覚えておくことをオススメします。

【重心の座標の公式】
$3$ 点$$A(x_1,y_1),B(x_2,y_2),C(x_3,y_3)$$
からなる △ABC の重心 G の座標は$$(\frac{x_1+x_2+x_3}{3},\frac{y_1+y_2+y_3}{3})$$
で求めることができる。

つまり、「$x$ 座標・$y$ 座標それぞれの相加平均が重心の座標になる」ということですね。

まずは、一度この公式を証明しておきます。

【証明】

下の図で、赤⇒青の順に求める。

↓↓↓

点 D は辺 BC の中点なので、$$D(\frac{x_2+x_3}{2},\frac{y_2+y_3}{2})$$

点 G は辺 AD を $2:1$ に内分する点なので、$$G(\frac{1×x_1+2×\frac{x_2+x_3}{2}}{2+1},\frac{1×y_1+2×\frac{y_2+y_3}{2}}{2+1})$$

計算すると、$$G(\frac{x_1+x_2+x_3}{3},\frac{y_1+y_2+y_3}{3})$$

(証明終了)

この証明でも、

  • 重心が中線上の点であること(定義)
  • 中線を $2:1$ に内分すること(性質)

以上 $2$ つの事実を利用しています。

ここまで一生懸命読んで下さった方なら、重心の扱い方も大体マスターしてきた頃だと存じます!

さて、この公式を使えば、重心の座標はあっという間に求まります。

問題. $$A(4,2),B(1,5),C(7,11)$$の $3$ 点からなる △ABC の重心 G の座標を求めよ。

【解答】

重心の座標の公式より、$$G(\frac{4+1+7}{3},\frac{2+5+11}{3})$$

したがって、$$G(4,6)$$

(解答終了)

今までの話では、座標が与えられていなかったので、作図によって重心の位置を求めるしかありませんでした。

しかし座標平面(座標空間でもOK)であれば、作図をせずに一瞬で求めることができるのですね~。

こういうことから、座標平面や座標空間の有用性を感じ取っていただければと思います^^

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重心の位置ベクトルを求める問題【数学B】

実は重心の位置ベクトルも、座標の考え方と同様に求めることができます。

【重心の位置ベクトルの公式1】
$$A(\vec{a}),B(\vec{b}),C(\vec{c})$$からなる △ABC の重心 G の位置ベクトル $\vec{g}$ は$$\vec{g}=\frac{\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}}{3}$$

「位置ベクトル」に関する詳しい解説はこちらから!!

⇒⇒⇒位置ベクトルとは?内分点・外分点・三角形の重心の求め方を解説!【応用問題の解き方】

しかし、この位置ベクトル表示に、果たしてどれだけの価値があるでしょうか。

というのも、$2$ つの一次独立なベクトルを用いれば、その平面上における任意のベクトルを表すことができる」という重要な性質があります。

つまり、重心の位置ベクトルを求める際に $3$ 点の位置ベクトルが与えられている場合はあまりない、ということです。

これをより実践的に改良したものが以下の公式になります。

↓↓↓

【重心の位置ベクトルの公式2】
△ABC の重心 G について、$$\vec{AG}=\frac{\vec{AB}+\vec{AC}}{3}$$

この公式2は、公式1を少しいじくれば簡単に証明できます。

【証明1】

例えば$$\vec{AG}=\vec{OG}-\vec{OA}$$

なので、この式を整理すれば$$\vec{g}=\vec{AG}+\vec{a}$$

が導けますね。

他も同様に、$$\vec{b}=\vec{a}+\vec{AB}$$$$\vec{c}=\vec{a}+\vec{AC}$$

と求めることができます。

これらの式を公式1に代入すれば、$$\vec{AG}+\vec{a}=\frac{\vec{a}+(\vec{a}+\vec{AB})+(\vec{a}+\vec{AC})}{3}$$

この式を整理すると、$$\vec{AG}=\frac{\vec{AB}+\vec{AC}}{3}$$

となり、公式2が導けました。

【証明2】

また、公式1では始点 O の位置ベクトルについて考えていました。

その発想を用いれば、公式2では始点 A の位置ベクトルを考えていることになります。

つまり、$$\vec{a}=\vec{AA}=\vec{0}$$となるわけです!

よって、公式1で O=A とすれば、$$\vec{AG}=\frac{\vec{AB}+\vec{AC}}{3}$$

と公式2が導けるわけです。

【証明3】

もちろん図を書いて調べることもできます。

↓↓↓

今回なんとなく鈍角三角形を使ってみますが、もちろんどんな三角形でも同じように証明できます。

まず、点 D は辺 BC の中点であることから、$$\vec{AD}=\frac{\vec{AB}+\vec{AC}}{2}$$

と表すことができます。

次に、点 G は辺 AD を $2:1$ に内分するため、$$\vec{G}=\frac{2}{3}\vec{AD}=\frac{\vec{AB}+\vec{AC}}{3}$$

となり、公式2が導けました。

以上いろいろな証明方法を見てきました。

ここで代表的な応用問題を解いてみましょう。

問題. $$AB=2、AC=3、∠BAC=60°$$を満たす △ABC の重心を G とする。
このとき、辺 AG の長さを求めよ。

この問題をベクトルを使わずに解こうとすると、

  • まず辺 AC の長さを余弦定理で出して…
  • 次に中線定理で中線の長さを出して…
  • 最後に $2:1$ で AG を出して…

と、まあ面倒くさいです。

しかし、ベクトルを用いることで鮮やかに解くことができます♪

【解答】

公式2より、$$\vec{AG}=\frac{\vec{AB}+\vec{AC}}{3}$$

ここで、

\begin{align}|\vec{AG}|^2&=|\frac{\vec{AB}+\vec{AC}}{3}|^2\\&=\frac{|\vec{AB}|^2+2\vec{AB}・\vec{AC}+|\vec{AC}|^2}{9}\\&=\frac{4+2・2・3・\frac{1}{2}+9}{9}\\&=\frac{19}{9}\end{align}

$|\vec{AG}|>0$ より、したがって$$AG=\frac{\sqrt{19}}{3}$$

(解答終了)

スッキリとした、非常にいい解答です^^

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このようにベクトルで学ぶ知識というのは、新たな概念であるが故に受け入れがたいものに見えますが、実際使う知識は今までの積み重ねである場合がほとんどです。

ベクトルは良い理論武装の機会なので、「勉強してみようかな…」と少しでも感じた方はこれを機に学んでいただけると幸いです^^

ベクトルについても「どこよりもわかりやすく」「濃密に」まとめてあります!!

⇒⇒⇒「ベクトル」一覧

三角形の五心に関する面白い話題2選

それでは最後に、三角形の五心好き(?)なら知っておきたい

  • オイラー線
  • 正三角形の四心

以上 $2$ つの話題について取り上げたいと思います。

オイラー線(外心・重心・垂心を通る直線)

三角形の五心のうち、内心と傍心を除いた $3$ つ、すなわち

「外心 O 」「重心 G 」「垂心 H 」

これらは一直線上にあるという事実が常に成り立ちます。

そしてその直線のことを“オイラー線”と呼びます。

名称はもちろん発見者である「レオンハルト・オイラー」の名から取っています。

ガウスと並び数学界の二大巨匠の一人なので、誰もが一度は聞いたことがありますよね。

さて、このオイラー線には$$OG:GH=1:2$$という美しい性質があります。

これらの事実は図で見た方がわかりやすいでしょう。

↓↓↓

青枠で示した通り、これらの事実を一気に証明するにはベクトルを用いて$$\vec{OH}=3\vec{OG}$$を示せばOKです。

ベクトルを用いない初等幾何による証明方法もありますが、図が少し複雑になってしまうためこの記事では扱いません。

さて、目次3-4「重心の位置ベクトルを求める問題」で見たように、

\begin{align}3\vec{OG}&=3×\frac{\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}}{3}\\&=\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}\end{align}
であることがわかっています。

つまり、$$\vec{OH}=\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}$$であることを示せば証明完了です。

これを示すには、$$\vec{OH’}=\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}$$と定義し、点 H’ が垂心 H と一致することを導くのが一番簡潔でしょう。

【証明】

点 H’ が垂心 H と一致することを示す。

ここで、垂心とは $3$ つの垂線の交点である。

つまり、$$AH’⊥BC ……①$$$$BH’⊥AC ……②$$この $2$ つの事実を示せば、点 H’ が垂心であることがわかる。

まず、

\begin{align}\vec{AH’}・\vec{BC}&=(\vec{OH’}-\vec{OA})・(\vec{OC}-\vec{OB})\\&=(\vec{b}+\vec{c})・(\vec{c}-\vec{b})\\&=|\vec{c}|^2-|\vec{b}|^2\end{align}

ここで、点 O は △ABC の外心であるため、$$|\vec{a}|=|\vec{b}|=|\vec{c}|$$

よって、$$\vec{AH’}・\vec{BC}=|\vec{c}|^2-|\vec{b}|^2=0$$

より、①が示せた。

同様に、

\begin{align}\vec{BH’}・\vec{AC}&=(\vec{OH’}-\vec{OB})・(\vec{OC}-\vec{OA})\\&=(\vec{a}+\vec{c})・(\vec{c}-\vec{a})\\&=|\vec{c}|^2-|\vec{a}|^2\\&=0\end{align}

より、②が示せた。

したがって、①と②より、H’=H であることがわかった。

(証明終了)

ゴールをベクトルによって適切に設定し、それに向かうように議論を進めていけば、結構簡単に示せるのですね~。

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正三角形の四心について

さて、今どんな三角形にもオイラー線が存在することを示しました。

しかし、これには少し語弊があります。

それは…「傍心以外の四心が一致する唯一の例が存在する」からです。

皆さん、何かお分かりですか?

そう、それが「正三角形」なのです!

正三角形の四心についての美しい性質をまとめます。

↓↓↓

【正三角形の四心】
・△ABC が正三角形である ⇒ 傍心以外の四心が一致する。
・傍心以外の四心のうち、二つが一致する ⇒ △ABC が正三角形である。

上の命題は、作図をすることでも簡単に確認することができます。

また、証明も$$重心⇒内心⇒垂心⇒外心⇒重心$$

のように、“ならば”を一直線につないですべての”ならばを示せば完了です。

興味のある方はぜひやってみて下さい。

問題は下の命題ですね。

一応

\begin{align}△ABC が正三角形である ⇔ 傍心以外の四心が一致する。\end{align}

※この同値関係は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

という必要十分条件も作れるのですが、それよりも強いこと言ってますよね。

だって、「二つさえ一致してしまえば、自動的に四つ一致するよ」ということですもんね!

さて、この証明はちょっと面倒くさいです。

$4$ つのものから $2$ つ選ぶ場合の数は$${}_4{C}_{2}=\frac{4・3}{2・1}=6 (通り)$$なので、$6$ パターンすべて確認する必要があります。

ただ、面倒くさいだけで、ゴールは明確に$$AB=BC=CA$$または$$∠ABC=∠BCA=∠CAB=60°$$と見えていますよね。

一つ一つのパターンの証明自体は、初等的なものばかりです。

一つだけ例を見てみましょう。

【重心と内心が一致するとき】

点 P は重心であり内心でもある。

ここで、角の二等分線と比の定理より、$$AB:AC=BL:LC$$

また、点 L、M、N は各辺の中点より、$$BL=LC$$

よって、$$AB=AC$$

同様に、$$BC:BA=CM:MA=1:1$$

よって、$$AB=BC$$

したがって、$$AB=BC=CA$$より、△ ABC は正三角形である。

つまり、他の二心も一致する。

(証明終了)

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こんな感じで、一つ一つの証明は使える条件が多いため簡単です。

また、オイラー線で見たように、$$OG:GH=1:2$$であるので、実はここから

\begin{align}外心・重心・垂心のうち 2 つが一致する ⇒ 3 つすべて一致する\end{align}

※この十分条件は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

こともわかっています。

よって、$6$ パターンと話しましたが、より簡潔には

  • 重心と内心が一致
  • 垂心と内心が一致
  • 外心と内心が一致
  • 外心と重心と垂心が一致

計 $4$ パターンで証明は完了します。

おもしろいですね^^

<提案>
目次4-1「オイラー線(外心・重心・垂心を通る直線)」の図で、外心・垂心・重心の位置が割と近いですよね。
これは、図で用いた三角形の形が正三角形に似ているからです。
正三角形に近づけば近づくほど、四心は一致していくのです。

もしこの記事をご覧の方が小中学生であれば、このような題材を夏休みの自由研究にするのをオススメします。

三角形の五心に関するまとめ

三角形の五心、すなわち

  • 外心(がいしん)
  • 内心(ないしん)
  • 重心(じゅうしん)
  • 垂心(すいしん)
  • 傍心(ぼうしん)

この $5$ つのうち、この記事では $1$ つと応用的な知識について解説しました。

三角形の五心についての記事を書くにあたり、なるべく“統合的な理解”ができるように記事を作成しました。

「重心を学ぼう」と思って重心だけしか学ばないのは非常にもったいないので、もし興味がわいた方は以下のリンクから他の記事も読んでみて下さいね♪

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以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!

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