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因数定理を用いた因数分解のコツとは?因数の見つけ方(候補)も証明!【練習問題アリ】

こんにちは、ウチダです。

今日は、数学Ⅱで習う

「因数定理」

を用いた高次方程式の因数分解を解説し、また因数の見つけ方のコツも解説及び証明していきます!

練習問題もたくさん用意していますので、ぜひ解きながらご覧ください♪

因数定理とは

まずは定理の紹介です。

(因数定理)
整式 $P(x)$ が $x-α$ を因数にもつ ⇔ $P(α)=0$
整式 $P(x)$ が $ax+b$ を因数にもつ ⇔ $P(-\frac{b}{a})=0$

「因数に持つ」ということは、つまり「割り切れる」ことであり、すなわち$$余り=0$$が成り立つので、剰余の定理から簡単に導くことができます。

関連記事
剰余の定理をわかりやすく証明!【二乗で割った余りを求める応用問題アリ】

さて、この因数定理ですが、剰余の定理とは応用の仕方が少し異なります。

剰余の定理は単純に余りを素早く求めるために使いましたが、因数定理は「因数に持つ」、つまり「因数分解する」ために用いることができます!

これが剰余の定理の特殊なバージョンとして習う大きな理由ですね。

では早速ですが、どういう因数分解に用いることができるのか、詳しく見ていきましょう♪

高次方程式を因数定理で解く

例. $x^3-3x^2-x+3=0$ を解け。

まず、3次以上の方程式のことを「高次方程式」と呼びます。

今まで扱ってきた主な方程式は「2次方程式」で、これには大変便利な「解の公式」が存在しましたね。

⇒⇒⇒「解の公式の導出をわかりやすく証明!【bが偶数の場合や覚え方も問題を通して解説】

しかし、3次方程式ともなってくると、解の公式はあるにはありますが、長すぎて覚えられません。

※一応3次方程式の解の公式(別名カルダノの公式)はこちらのリンクからご覧いただけるので、興味のある方はぜひ調べてみて下さい。

そこで、因数分解する技術が必要になってくるのです!

では早速因数定理を用いて因数分解をすることで、この例題を解いていきましょう♪

↓↓↓

【解答】

$P(x)=x^3-3x^2-x+3$ とおくと、

\begin{align}P(1)&=1^3-3×1^2-1+3\\&=1-3-1+3\\&=0\end{align}
であるから、$P(x)$ は $x-1$ を因数に持つ。

よって、$x-1$ で割り切れて、$$P(x)=(x-1)(x^2-2x-3)$$となる。

また、$$x^2-2x-3=(x-3)(x+1)$$であるから、$$P(x)=(x-1)(x-3)(x+1)$$となる。

よって、$P(x)=0$ の解は、$$x=-1,1,3$$

(終了)

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いかがでしょうか。

因数定理を1回でも用いることで、$$1次式×2次式$$の形に持っていくことができるので、あとは普通に因数分解したり解の公式を用いたりすれば解くことができますね!

ちなみに、途中の割り算は組立除法を用いると楽です。

⇒⇒⇒「組立除法のやり方を解説!【なぜ成り立つ?原理も証明!】

それでは、もう少し難しい例を見てみましょう。

因数の見つけ方(候補をしぼる)

問題. $2x^3-3x^2+6x+4=0$ を解け。

これも3次方程式なので、まず一度は因数定理を使わないと解くのは厳しいですね。

まあ、でも、さっきと同じように色々代入していけば、いずれは因数分解できるでしょう!

ということで、やっていきましょうか!

【実験】

A君は思い切って実験してみました。

↓↓↓

$P(x)=2x^3-3x^2+6x+4$ とおき、いろいろ実験してみよう。

$$P(1)=2-3+6+4=9≠0$$$$P(2)=16-12+12+4=20≠0$$$$P(3)=54-27+18+4=49≠0$$

…どんどん $0$ から離れているな…

次はマイナスを代入してみるか。

$$P(-1)=-2-3-6+4=-7≠0$$$$P(-2)=-16-12-12+4=-36≠0$$$$P(-3)=-54-27-18+4=-95≠0$$

…こっちもどんどん $0$ から離れているぞ…

(心の声)
どうしたらいいんだー!!
ちくしょう!!もうこうなったらやけくそだー!!
$x=-\frac{1}{2}$ なんて数を代入してみてやる!!

\begin{align}P(-\frac{1}{2})&=2×(-\frac{1}{2})^3-3×(-\frac{1}{2})^2+6×(-\frac{1}{2})+4\\&=-\frac{1}{4}-\frac{3}{4}-3+4\\&=0\end{align}

※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

…あれ!?なんか適当にやってみたら、 $0$ になった!

やったー!!(こんなもん誰が分かるかー!!(笑))

(実験終了)

…いかがでしょう。

実験していたA君の気持ち、なんとなくわかりますよね。

この3次式は、$P(-\frac{1}{2})=0$ となるので、$$2x+1$$を因数に持ちます。

よって、$2x+1$ で割り算をすることによって、$$P(x)=(2x+1)(x^2-2x+4)$$となり、解の公式を用いて、$$x^2-2x+4=0 ⇔ x=1±\sqrt{3}i$$なので、解は$$x=-\frac{1}{2},1±\sqrt{3}i$$

となります。

2つは虚数解ですし、もう1つの解は実数解ですけど分数ですし、見つけづらいですよね…

※ちなみに、3次関数の形を考えれば、3次方程式が実数解を少なくとも一つ持つことは証明できます。
⇒参考.「極値を持つ(持たない)条件の判別式を用いた求め方とは?【他の応用問題アリ】

実は、こういう難しい高次方程式の解き方には、とあるコツがあります。

そして、A君はさっきの実験において、「やらなくていい計算をやっていた」のです。

ではそのコツとはいったいなんでしょうか。

図をご覧ください。

↓↓↓

まずは「 $d$ の約数」を代入してみるので、$$x=±1,±2,±4$$が候補ですね。

それでもダメな時は、「 $d$ の約数 ÷ $a$ の約数」を代入してみて、$$x=±\frac{1}{2}$$が候補です。

よって、候補は計8つになりました!

つまり、先ほどの実験においていらなかった計算というのは、$P(3)$ や $P(-3)$ ということになります。

(補足)
まあ、それと感覚的に、$x=±4$ も、$0$ から大きく離れそう…ということが、この問題では感じ取れるので、実質候補は6つになりますかね。
ここら辺は問題によって柔軟に対応してください。

では、なぜ候補をここまで絞ることができるのでしょうか。

この事実を証明していきましょう♪

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方程式の有理数解についての証明

今まで見てきた通り、因数定理を用いるときは、有理数の解を見つけることがカギとなります。

よって、ある方程式が有理数解を持つと仮定するとどうなるのか、見ていきましょう。

↓↓↓

【証明】

整数係数多項式$$a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_1x+a_0$$について考える。( $a_0,a_1,…,a_n$ は整数)

ここで、方程式

\begin{align}a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_1x+a_0=0 ……①\end{align}

※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

が有理数解を持つと仮定すると、その解は $\frac{q}{p}$ と置くことが出来る。( $p$ と $q$ は互いに素)

よって、①に $x=\frac{q}{p}$ を代入すると、

\begin{align}a_n(\frac{q}{p})^n+a_{n-1}(\frac{q}{p})^{n-1}+…+a_1×(\frac{q}{p})+a_0=0\end{align}

※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

この式の両辺に $p^n$ をかけると、

\begin{align}a_nq^n+a_{n-1}pq^{n-1}+…+a_1p^{n-1}q+a_0p^n=0 ……(★)\end{align}

※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

(一旦終了)

ここまでで一回止めます。

さて、今行った操作について解説しますと、まず有理数解を$$x=\frac{q}{p}$$という形で置きました。

有理数というのは、「既約分数で表すことのできる数」でした。既約分数というのは、「分子と分母が互いに素な分数」のことです。

逆に「分数の形で表すことのできない数」を無理数と呼びますよね。

あとは、$x=\frac{q}{p}$ を代入し、両辺に $p^n$ をかけて分母を払うことで方程式をきれいな形に持っていきました。

ここで、「出来上がった式(★)をどう活用するか」について考えていきましょう。

ヒントは、「この式(★)には $2$ 通りの使い方がある!」です。

では、証明を再開していきます。

↓↓↓

【証明の続き】

(★)の式について、$a_nq^n$ 以外の項をすべて右辺に移項すると、

\begin{align}a_nq^n=-a_{n-1}pq^{n-1}-…-a_1p^{n-1}q-a_0p^n\end{align}

※この数式は横に少しだけスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

右辺はすべて $p$ を因数に持つので、

\begin{align}a_nq^n=-p(a_{n-1}q^{n-1}+…+a_1p^{n-2}q+a_0p^{n-1}) ……②\end{align}

※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

②の式について考えると、右辺は $p$ の倍数であり$p$ と $q$ は互いに素であるため、$a_n$ が $p$ の倍数であることが分かる。

つまり、$p$ は $a_n$ の約数である。

同様に、(★)の式について、$a_0p^n$ 以外の項をすべて右辺に移項すると、

\begin{align}a_0p^n=-a_nq^n-a_{n-1}pq^{n-1}-…-a_1p^{n-1}q\end{align}

※この数式は横に少しだけスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

右辺はすべて $q$ を因数に持つので、

\begin{align}a_0p^n=-q(a_nq^{n-1}+a_{n-1}pq^{n-2}+…+a_1p^{n-1}) ……③\end{align}

※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

③の式について考えると、右辺は $q$ の倍数であり$p$ と $q$ は互いに素であるため、$a_0$ が $q$ の倍数であることが分かる。

つまり、$q$ は $a_0$ の約数である。

(証明終了)

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いかがでしょうか。

赤字で示しましたが、$p$ と $q$ は互いに素であることを使わないと証明できないため、単に分数で表すのではなく、より強い条件である「既約分数」を用いて表したんですね!

よって、今証明したことを $3$ 次方程式$$ax^3+bx^2+cx+d=0$$に当てはめてみると、有理数解 $x=\frac{q}{p}$ について、「 $p$ は $a$ の約数であり、$q$ は $d$ の約数である」ことがわかりました。

【練習問題】いろいろな高次方程式

さて、「因数定理の基本的な使い方」と「難しい因数の見つけ方」この $2$ つについて見てきました。

では、今までの知識をフル活用して、いろんな練習問題を解いてみましょう!

練習問題. 次の方程式を解け。
(1) $3x^3+x^2+x-2=0$
(2) $(x-1)(x+1)(x+2)=2×4×5$
(3) $x^4+x^2+1=0$

ヒントとしては、(1)は今まで見てきた「因数の見つけ方のコツ」を使ってください。

(2)は、左辺と右辺の形に注目です!

(3)については、知らないとちょっと解けないかと思います。

では解答です!

↓↓↓

【解答】

(1) 有理数解の候補は$$x=±1,±2,±\frac{1}{3}±\frac{2}{3}$$の8つである。

根気強く代入して計算していくと、$x=\frac{2}{3}$ のとき、

\begin{align}(左辺)&=3×(\frac{2}{3})^3+(\frac{2}{3})^2+\frac{2}{3}-2\\&=\frac{8}{9}+\frac{4}{9}+\frac{2}{3}-2\\&=\frac{4}{3}+\frac{2}{3}-2\\&=0\end{align}

よって、左辺は $(3x-2)$ を因数に持つので、割り算すると、$$(左辺)=(3x-2)(x^2+x+1)$$と因数分解できる。

よって解は、$$3x-2=0 または x^2+x+1=0$$

したがって、$$x=\frac{2}{3},\frac{-1±\sqrt{3}i}{2}$$

※ $i$ は虚数単位

(2) $x=3$ を代入すると、

\begin{align}(左辺)&=(3-1)(3+1)(3+2)\\&=2×4×5\\&=(右辺)\end{align}
となる。

よって、展開して整理した式$$x^3+2x^2-x-42=0$$の左辺は $(x-3)$ を因数に持つ。

割り算すると、$$(x-3)(x^2+5x+14)=0$$となる。

よって解は、$$x-3=0 または x^2+5x+14=0$$

したがって、$$x=3,\frac{-5±\sqrt{31}i}{2}$$

(3) 

\begin{align}(左辺)&=x^4+x^2+1\\&=x^4+2x^2+1-x^2\\&=(x^2+1)^2-x^2\\&=\{(x^2+1)+x\}\{(x^2+1)-x\}\\&=(x^2+x+1)(x^2-x+1)\end{align}

よって解は、$$x^2+x+1=0 または x^2-x+1=0$$

したがって、$$x=\frac{-1±\sqrt{3}i}{2},\frac{1±\sqrt{3}i}{2}$$

(解答終了)

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いかがでしたか。

(1)の所見としては、「なんとなく整数解ではなさそう」という感覚を持っていただきたいですね。

まあそこまで大変な計算ではないので、ある程度は暗算で確認してほしいと思います。

(2)は、式の形が意味深長ですので、展開する前に $x=3$ を見つけておきたいところです。

(3)は、複 $2$ 次式と言いまして、これは知ってないと中々解けないと思います。

また、$4$ 次関数の形を考えてもらえば、$4$ 次方程式は実数解を持つとは限らないことが分かるかと思います。

(3)の解き方については、こちらの記事の後半で詳しく解説しております!

⇒⇒⇒「因数分解のやり方(高校で習う公式)をスッキリ解説!【たすき掛けを簡単に解く方法】

いろいろな高次方程式を解けるようになると幅がグッと広がりますね!

【発展】微分法と因数定理

最後に、少し発展的な内容をご紹介して終わりにしたいと思います。

因数定理では、割る式は $x$ の $1$ 次式でした。

ですので、この章では「整式 $P(x)$ が $(x-a)^2$ を因数にもつ」のはどんな時か、少し考えてみましょうか。

割る数が $2$ 次式だとしても、ようは$$P(x)=(x-a)^2Q(x)+R(x)$$と表した際に、$R(x)=0$ となればOKですよね。

また、$x=a$ を代入すれば、$P(a)=R(a)$ となりますから、$$P(a)=0$$の条件は成り立ちそうです。

ではここで、$P(x)$ を微分してみましょう。

すると、合成関数の微分より、

\begin{align}P'(x)=2(x-a)Q(x)+(x-a)^2Q(x)+R'(x)\end{align}

※この数式は横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)

となります。

この式においても、$x=a$ を代入すれば、$P'(a)=R'(a)$ となることから、$P'(a)=0$ も成り立ちそうではないですか…?

以上の予想をまとめるとこうです!

↓↓↓

(微分法と因数定理)
整式 $P(x)$ が $(x-a)^2$ を因数にもつ ⇔ $P(α)=0$ かつ $P'(a)=0$
整式 $P(x)$ が $(x-a)^n$ を因数にもつ ⇔  $P(a)=P'(a)=…=P^{(n-1)}(a)=0$

実はこの予想は成り立ちます!

厳密に示すには、これは必要十分条件の証明なので、「必要性」と「十分性」に分けて考えなければいけません。

$n$ 次式についての予想の証明は難しいですが、$2$ 次式についての予想は、剰余の定理の扱いに慣れていれば証明できるかと思いますので、ぜひチャレンジしてみて下さい♪

また、微分法と因数定理の関係はこれだけではなく、これまで解いてきた高次方程式について$$y=(左辺)$$とおけば、それは $n$ 次関数となります。

関数であれば、微分法がかなり活躍しますので、ぜひこの際に”微分法”の理解を深めることも合わせてオススメいたします!

⇒⇒⇒「微分・積分の考え」一覧

因数定理に関するまとめ

いかがだったでしょうか。

因数定理をマスターすれば、これまで解けなかった方程式もかなり解けるようになります!

そしてなんと、実用数学技能検定 $1$ 級の問題で因数定理を用いるものもあります!

ぜひたくさん練習して、因数定理マスターになってください^^

因数分解に関して分かりやすくまとめた記事はこちら!!

↓↓↓

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以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!

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