こんにちは、ウチダです。
今日は数学Ⅰ「図形と計量」で習う、非常に重要な公式
「余弦定理」
について、まずは公式の覚え方から入り、次に余弦定理の基本的な使い方 $2$ つや三角形の面積の計算などの応用例を、わかりやすく解説していきたいと思います。
また、余弦(cos)定理と双対をなす定理として”正弦(sin)定理”があります。
正弦定理の記事では、正弦定理と余弦定理の使い分けについての面白い解説を載せています。
まだ読んでない方はこちらからどうぞ!!
⇒⇒⇒正弦定理の公式の覚え方とは?問題の解き方や余弦定理との使い分けもわかりやすく解説!
余弦定理とは
まずは定理の紹介です。
△ABC に対して、
$$a^2=b^2+c^2-2bc\cos A$$$$b^2=c^2+a^2-2ca\cos B$$$$c^2=a^2+b^2-2ab\cos C$$
が成り立つ。
「式が $3$ つあってややこしい…」と感じられるかもしれません。
しかし、正弦定理のときと同じく、この式は実質 $1$ つです。
以下の図をご覧ください。
↓↓↓
ある角度 $θ$ に対して、「 $(向かい側の辺)^2=~$ 」というふうに覚えましょう。
さて、この余弦定理ですが、シンプルに右辺が覚えづらいですよね。
一部どうしても力ずくで覚えてもらう箇所もあるのですが、この余弦定理、実は皆さんが知っている、“ある有名な定理”と非常に形が似ているのです!
その定理と関連付けることで、間違いなく覚えやすくもなりますし、理解も深まるという、正しく一石二鳥的な内容となっております。
では、その定理とは何なのか。早速見ていきましょう。
余弦定理の公式の覚え方【重要】
正弦定理の記事と同じような話をします。
新しい公式を学ぶときは、“特殊なケース”を考えると良いです。
そしてそれは、正弦定理のときと同じく「直角三角形」になります。
↓↓↓
どんな直角三角形においても成り立つ、ある有名な定理。
そう、それは“三平方の定理(ピタゴラスの定理)”ですね!
≫参考記事:三平方の定理とは?【応用問題パターンまとめ10選】
つまり、$θ=90°$ のとき「余弦定理 = 三平方の定理」が成り立たなければなりません。
それでは、本当に成り立っているのでしょうか。確認してみましょう。
↓↓↓
$\cos 90°=0$ でしたから、上の図で青字で示した”調整項”の部分は、そっくりそのまま消えますね!
こうして見ると、「余弦定理とは三平方の定理を一般角に拡張した定理である」と考えることができます。
その役割を担っているのが”調整項”の部分です。
この”調整項”の部分がなければ、三平方の定理なので $θ=90°$ のときしか成り立ちません。
そこに”調整項”を加えることで、どんな角度 $θ$ でも成り立つような定理が作れた、ということです!
※”調整項”という言葉は、今僕が勝手に付けました。そのままの意味で「調整している項」と捉えていただきたいです^^
また、序盤に話した”一部どうしても力ずくで覚えてもらう箇所”というのが、正しくこの”調整項”になります。
以上の話をまとめます。
↓↓↓
余弦定理=三平方の定理+調整項
※調整項とは$$-2(θを挟む辺①)(θを挟む辺②)\cos θ$$
このように、「余弦定理とは三平方の定理に色付けを施したもの」と捉えると、定理がより一層輝きますね。
また、この見方は本質を突いています。
この記事の後半で詳しく見ていきますが、余弦定理の証明に使う道具が、なんと“三平方の定理のみ”なんですね^^
ですから、
- 三平方の定理とは余弦定理の特殊なケース
- 余弦定理とは三平方の定理を拡張した定理
言ってることは全く同じですが、意味合いが微妙に異なると思います。
僕はこの $2$ つであれば、後者の理解をオススメします。
<補足>前者は「余弦定理があるから三平方の定理が成り立つ」という誤解を招きやすいと思います。僕も高校生の時、前者のように考えていたのですが、よくよく考えれば「三平方の定理が”先に”成り立つ」のです。
余弦定理の基本問題2つ
余弦定理の概要を掴めたところで、余弦定理の基本的な使い方について学びましょう。
余弦定理の基本的な使い方は大きく分けて $2$ つあります。
順に問題を通して、考えていきましょう♪
辺の長さを求める問題
(1) $b=3$、$c=2\sqrt{2}$、$A=45°$
(2) $b=2$、$c=5$、$A=120°$
それではノーヒントで解答に移ります。
【解答】
(1) まずは図を書く。
△ABC に余弦定理を用いると、
$a>0$ より、したがって$$a=\sqrt{5}$$
(2) まずは図を書く。
△ABC に余弦定理を用いると、
$a>0$ より、したがって$$a=\sqrt{39}$$
(解答終了)
以上のように、「 $2$ 辺とその間の角」が与えられた場合、もう一つの辺の長さを求めることができます。
また、(2)のように、鈍角のコサインは負の数になるので計算ミスをしないように注意してください。
角度を求める問題
角度を求める問題の前に、余弦定理の公式を式変形しておきます。
$$a^2=b^2+c^2-2bc\cos A$$
移項して、$$2bc\cos A=b^2+c^2-a^2$$
両辺を $2bc(≠0)$ で割ると、$$\cos A=\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc} ……①$$
今、余弦定理の公式を方程式と見て式変形しただけなので、こうして作った①の式も余弦定理と呼びます。
この①の式は、「 $3$ 辺」が与えられた場合、一つの角度を求める際に使います。
(1) $a=\sqrt{7}$、$b=3$、$c=2$
(2) $a=5$、$b=3\sqrt{2}$、$c=1$
こういう問題の場合、左辺が $\cos A$ のみである①の式を使いましょう。
【解答】
(1) まずは図を書く。
△ABC に余弦定理を用いると、
$0°<A<180°$ より、したがって、$$A=60°$$
(2) まずは図を書く。
△ABC に余弦定理を用いると、
$0°<A<180°$ より、したがって、$$A=135°$$
(解答終了)
ポイントを挙げるとすれば、(1)(2)ともに分母の掛け算は計算しておりません。
これは分数の計算が絡むすべての問題に共通することですが、最終的に約分できる可能性があるため、途中で分母を計算するのは時間の無駄になります。
「こういう細かいところで工夫できるか否か」が、受験で大きく差を付けますよ^^
また、$0°$ ~ $180°$ の範囲で考えた時、
- コサインが正の数 ⇔ 鋭角
- コサインが負の数 ⇔ 鈍角
- (コサインが $0$ ⇔ 直角)
であることも押さえておきましょう。
余弦定理と正弦定理の応用
さて、余弦定理の基本的な使い方は大丈夫ですね!
この章では、余弦定理のさらなる応用例について考えていきます。
具体的には
- 正弦定理と余弦定理の融合問題 $1$ 問
- 三角形の面積の問題 $1$ 問
この $2$ 問を順に解いていきましょう♪
特に $2$ つ目の応用例は非常に重要です!
辺の比から角度を求める
正弦定理と余弦定理の融合問題としてよく出てくるのが、辺の比から角度を求める問題です。
実はこの条件式、正弦定理より辺の比であることがわかります。
どういうことか、解説します。
正弦定理とは$$\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=\frac{c}{\sin C}=2R$$の式が常に成り立つ、という定理でした。
この式にはもう一つの見方があり、それが“分数を比とする見方”です。
⇒参考.「分数の足し算引き算掛け算割り算のやり方まとめ!ポイントは比の考え方とうまく結びつけること!」
つまり、$$\sin A : \sin B : \sin C = a : b : c$$が成り立つということになります。
もっと厳密に解説すると、正弦定理より$$\sin A=\frac{a}{2R} , \sin B=\frac{b}{2R} , \sin C=\frac{c}{2R}$$
と表すことができるので、よって
では、この知識を踏まえ、問題を解いていきましょう。
【解答】
正弦定理より、$$\sin A : \sin B : \sin C = a : b : c$$
であるので、$$a : b : c = 19 : 16 : 5$$が成り立つ。
よって、ある正の実数 $k>0$ を用いて、$$a=19k , b=16k , c=5k$$と表すことができる。
ここで、最大の辺に向かい合う角が最大の角であるので、角 $A$ を求めていく。(※1)
△ABC に余弦定理を用いると、
したがって、最大の角 $A$ は$$A=120°$$
(解答終了)
三角形の相似条件からもわかると思いますが、$3$ つの辺の比が与えられれば、角度は一つに決まりますね^^
⇒参考.「相似条件とは?三角形の相似条件はなぜ3つなの?【証明問題アリ】」
※1についての解説は、「三角形の成立条件」などを解説しているこちらの記事で扱っております。
≫参考記事:三角形の成立条件を理解するたった1つのポイント【わかりやすく解説】
色々ポイントが盛りだくさんで難しいですね(^_^;)
幅広い知識が必要な問題ですので、ぜひ基本に立ち返って、理解していただきたく思います。
三角形の面積の計算【超重要】
この問題はめちゃくちゃ重要です!
三角比を習う理由の一つとして、「三角比が測量技術の発展に大きく貢献した」という歴史的背景があります。
つまり、三角比を扱って長さや面積を測ることは、技術の進歩に必要不可欠なのです!
ここでは、$3$ 辺が与えられた場合について考えます。
でも…勘の鋭い方であれば、今までの内容からピンとくるのではないでしょうか?
そうです。余弦定理を使えば、角度を一つ求めることができましたね!
あとは、他の必要な知識を用いて、問題を解いていきましょう。
【解答】
一番求めやすそうな $\cos A$ を求める。
∵ $a$ が分母に来るとやっかいだから。
余弦定理より、
ここで、三角比の相互関係式 $\sin^2 A+\cos^2 A=1$(※2) より、
$0°<A<180°$ より、$\sin A>0$ なので、$$\sin A=\frac{2\sqrt{2}}{3}$$
したがって、三角形の面積の公式 $S=\frac{1}{2}bc\sin A$(※3) より、
(解答終了)
※2、※3の詳しい解説はそれぞれのリンクからお願いします。
⇒(※2).「三角比の相互関係の公式4つって?【証明・覚え方・応用問題6選を解説】」
⇒(※3).「三角形の面積の求め方とは?sinやベクトルを用いる公式も解説!【小学生から高校生まで】」
余弦定理の基本的な使い方で学んだ知識を活かすことができましたね☆
ここで、$$\cos A=-\frac{1}{3}$$を満たす $A$ を具体的に求めるのは困難ですが、角度とコサインの値は $1:1$ に対応しているので、これで角度は求められていることになります。
まとめると、$3$ 辺が与えられた三角形の面積は
- 余弦定理で一番求めやすい角度のコサインを求める。
- 三角比の相互関係式でサインを求める。
- 面積の公式を使う。
ぜひこの流れに沿って解くようにしましょう。
余弦定理の公式の証明
それでは最後に、余弦定理の公式を証明していきましょう。
正弦定理のときと同様に、角 A に対してのみ示します。
また余弦定理とは、目次1.1「余弦定理の公式の覚え方」でも説明した通り、三平方の定理を一般角に拡張したものです。
よって、角 A が直角である場合の証明は、三平方の定理そのものなので済んでいるとします。
したがって、
- 角 A が鋭角であるとき
- 角 A が鈍角であるとき
この $2$ つに場合分けして示しましょう!
角Aが鋭角の場合
【角 A が鋭角の場合の証明1】
頂点 C から辺 AB に向かって垂線を引き、その足を D とする。
△ACD は直角三角形なので、三角比の定義より、$$CD=b\sin A , AD=b\cos A$$
また、$AB=c$ とすると、$$BD=c-b\cos A$$
△BCD は直角三角形なので、三平方の定理より、
※この数式は少しだけ横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(証明1終了)
使っている知識は「三平方の定理」「三角比の定義」と、三角比の相互関係式↓↓↓
$$\sin^2 A+\cos^2 A=1$$の $3$ つですね!
また、一つ注意点があって、角 A が鋭角の場合の証明はこれで終わりではありません。
なぜなら、角 B が鈍角となるような三角形を考えると、辺の長さが異なる部分があるからです。
※角 C は鈍角であっても、この証明は成り立ちます。
【角 A が鋭角の場合の証明2】
頂点 C から半直線 AB に向かって垂線を引き、その足を D とする。
△ACD は直角三角形なので、三角比の定義より、$$CD=b\sin A , AD=b\cos A$$
また、$AB=c$ とすると、$$BD=b\cos A-c$$
△BCD は直角三角形なので、三平方の定理より、
※この数式は少しだけ横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(証明2終了)
変わったのは$$BD=b\cos A-c$$の部分だけですね!
証明1のときと符号が逆になってますが、結局 $2$ 乗するので、結果は一緒になります。
これで証明が完了です♪
角Aが鈍角の場合
鋭角の場合の証明ができれば、ほぼ同じように鈍角の場合も証明できます。
【角 A が鋭角の場合の証明】
頂点 C から半直線 AB に向かって垂線を引き、その足を D とする。
△ACD は直角三角形なので、三角比の定義より、$$CD=b\sin (180°-A)$$$$AD=b\cos (180°-A)$$
ここで、$$\sin (180°-θ)=\sin θ$$$$\cos (180°-θ)=-\cos θ$$を用いて、$$CD=b\sin A$$$$AD=-b\cos A$$
また、$AB=c$ とすると、$$BD=c+(-b\cos A)=c-b\cos A$$
△BCD は直角三角形なので、三平方の定理より、
※この数式は少しだけ横にスクロールできます。(スマホでご覧の方対象。)
(証明終了)
鈍角の場合の証明では$$\sin (180°-θ)=\sin θ$$$$\cos (180°-θ)=-\cos θ$$この知識が必要ですね。
それ以外の部分はほぼ同様です。
ベクトル(内積)への応用【数学B】
数学Bで「ベクトル」という概念について学びます。
そこで”内積”という演算を定義するのですが、その公式の導出に余弦定理を使います!
⇒参考.「内積とは?ベクトルの内積の意味・公式・求め方などをスッキリ解説!」
また、逆にベクトルの内積から余弦定理を証明することもできます。
ただし、ここで一つ注意点があります。
それは「循環論法にならないように気をつける」ことです。
まず証明の概略を説明します。
↓↓↓
この式変形により証明は完了しているのですが…
式変形に用いている知識として
- 内積の定義 $\vec{a}・\vec{a}=|\vec{a}|^2$
- 内積の分配法則
この $2$ つが挙げられます。
ここで、内積の分配法則を証明するのに、ふつうは余弦定理を用いた内積の成分表示の公式$$\vec{a}・\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2$$を用います。
…おわかりいただけましたか?
つまり、「余弦定理を証明するために、余弦定理を用いて証明した内積の分配法則を使うのはおかしい」ということになります。
では、循環論法にならないようにするためにはどうすればよいか。
それは、「内積の分配法則を成分表示を使わずに証明すること」これしかありません。
この記事では省略しますが、数学Bを履修済みで興味のある方はぜひチャレンジしてみて下さい^^
また、この証明が載っているサイトを発見いたしましたので、参考文献として記しておきます。
三角形の面積に関する記事はこちらから!!
余弦定理に関する知識は深まりましたか?
余弦定理について学んだら、次は「三角形の面積」について学習していただきたいです。
この記事の途中でも解説しましたね。
三角形の面積の計算は、測量の視点から見ても非常に重要な問題ですし、余弦定理が応用されている最も有名な代表例の一つでもあります。
ぜひ三角形の面積の”いろんな求め方”を楽しく学んでいただきたいと思います♪
三角形の面積に関する記事はこちらから!!
↓↓↓
関連記事
三角形の面積の求め方とは?sinやベクトルを用いる公式も解説!【小学生から高校生まで】
以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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