こんにちは、ウチダです。
今日は、中学3年生で習う
「三角形の相似条件」
について、まずは図形の相似を解説し、次に三角形の相似条件が $3$ つである理由を明らかにしていきます。
また記事の後半では、狙われやすい証明問題をいくつか用意しましたので、ぜひチャレンジしてみて下さい。
図形の相似って?
まずそもそも「相似(そうじ)とは何か」について理解しておく必要がありますので、そこから解説していきます。
今、この三角形を拡大してみました。
このようにしてできる図形同士のことを「相似である」と表現します。
拡大が相似であるならば、もちろんその逆も考えなければなりません。
今度は、四角形を縮小させてみました。
$A$ を拡大して $B$ になるのであれば、その逆もまたしかり、$B$ を縮小させて $A$ になるということですね。
つまり、図形の相似を一言で表すとすれば…
“拡大・縮小すれば全く同じ図形同士になる関係“
となります。
では、相似の定義がわかったところで、いよいよ核心に迫っていきたいと思います。
相似と合同の違い
相似…すべての角・辺の比が等しい(形が同じ)
合同…すべての角・辺が等しい(形大きさともに同じ)
納得いただけましたか。
「二つの図形が相似であるとき、一方を拡大・縮小すればピッタリ一致する」ということは、すべての角は等しくなければなりません。
また「拡大・縮小」とは、角度はそのままで各辺を等倍していくことですので、辺の比も等しくなります。
※「∽」で”二つの図形が相似である”ことを表します。この記号は、相似の英語「 Similarity 」の頭文字を反転させています。「∞(無限大)」ではないので注意。
さて、図に書き込んだように、$△ABC$ の各辺を $2$ 倍すると $△DEF$ となることから、「相似比は $1:2$ である」と表すことができます。
一応、対応する辺の比が等しいことを確認しておくと…
$$AB:DE=2:4=1:2$$
$$BC:EF=\sqrt{6}:2\sqrt{6}=1:2$$
$$CA:FD=3:6=1:2$$
となり、すべて相似比 $1:2$ と等しくなりました。
このように考えると、合同とは相似の特殊な場合であることがわかります。
つまり、「相似比が $1:1$ であるとき、特に合同である」と表現するわけです。
合同条件については、以下の記事で詳しく解説しております。
⇒⇒⇒三角形の合同条件はなぜ3つ?証明問題をわかりやすく解説!【相似条件との違い】
三角形の相似条件はなぜ3つ?
相似と合同の違いについて理解できたところで、いよいよ三角形の相似条件
- 2つの角がそれぞれ等しい【超重要】
- 3組の辺の比がそれぞれ等しい
- 2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しい
以上 $3$ つを、上から順にじっくりと考えていきましょう。
2つの角がそれぞれ等しい【超重要】
教科書などでは、この条件はふつう $3$ 番目に持ってこられるのですが、一番重要なので一番初めに解説します。
というのも、三角形の相似条件を用いる際、ほとんどがこの条件と言っても過言ではありません。
三角形の内角の和は $180°$ ですから、$3$ つ目の内角は$$∠BAC=180°-(●+■)=∠EDF$$
と、●と■を用いて自動的に求まります。
つまり、$2$ つの内角が一致すれば、すべての内角が一致します。
さて、相似を示すには、角だけでなく辺の比が等しいことを言わなくてはなりません。
それを示すには、高校1年生で習う「正弦定理・余弦定理」の知識が必要になってきます。
軽く説明すると、正弦定理より、$$\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}$$
$$\frac{d}{\sin D}=\frac{e}{\sin E}$$
が成り立ちます。
ここで、それぞれの角は等しいため、$$\frac{a}{b}=\frac{d}{e}$$
と式変形ができます。
この式は$$a:b=d:e$$そのものを表しています。
この操作を、$b:c$ や $c:a$ に対しても行えば、証明完了です。
⇒⇒⇒参考.「正弦定理の公式の覚え方とは?問題の解き方や余弦定理との使い分けもわかりやすく解説!」
合同条件の記事でもお話した通り、原理を深く知るにはある程度予備知識が必要になってきます。
今の段階で理解することより、「高校1年生になったら理解してやるんだ…!」という姿勢で勉強に臨むことの方が大切です♪
<補足>
「すべての角が等しければ相似になる」
「すべての辺の比が等しければ相似になる」
三角形の場合であれば、これらは正しいです。
しかし、四角形以上の場合ですと、これらは必ずしも正しくありません。
正方形と長方形であれば、内角はすべて $90°$ で等しいですが、辺の比は明らかに等しくないですね。
また、正方形とひし形であれば、辺の比はすべて等しいですが、角の大きさは明らかに等しくありません。
このように、「三角形では成り立つが多角形では成り立たない」事実というのはよくあります。
また、多角形は複数の三角形から形成されています。
よって、多角形について考える際は、まずいくつかの三角形に分割してから考えるようにしましょう。
3組の辺の比がそれぞれ等しい
この相似条件については、余弦定理を用いることで説明できます。
まず、辺の比が等しいということは、ある実数 $k$ を用いて$$a’=ka , b’=kb , c’=kc$$
と表すことができます。
ここで、余弦定理を用いると、
長い式変形でしたが、$$\cos D=\cos A$$が言えました。
よって、$$∠A=∠D$$
となります。
$∠E$、$∠F$ についても同様に操作を行えば、証明完了です。
⇒⇒⇒参考.「余弦定理の証明とは?角度・面積を求める計算問題や公式の覚え方をわかりやすく解説!」
何度も言いますが、中学生のうちから理解する必要はありません。
ただ、高校で余弦定理を学んだときに、今までの知識に結びつける作業は必ずしてほしいと思います。
2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しい
この相似条件も、余弦定理を用いて示します。
先ほどとほぼ同様の考え方なので、説明は省きます。
↓↓↓
よって、$$c’=kc$$となるので、3組の辺の比がそれぞれ等しくなります。
「なぜ間の角でなければならないか」については合同条件の記事で考察しています。
⇒⇒⇒三角形の合同条件はなぜ3つ?証明問題をわかりやすく解説!【相似条件との違い】
三角形の相似条件を用いた証明問題4選
相似条件について深く考えてみると、意外と難しいことがわかったかと思います。
ここからは、よくある相似の形
- 砂時計型
- ピラミッド型その1
- ピラミッド型その2
- 円周上の砂時計型
以上 $4$ つの問題について、上から順に解説していきます。
砂時計型
(1) $△AOB ∽ △DOC$ を示せ。
(2) $DO$ の長さを求めよ。
「上の辺と下の辺が平行な砂時計型」の問題は頻出です!
ノーヒントで解答に移ります。
【解答】
(1) $△AOB$ と $△DOC$ において、
対頂角は等しいので、$$∠AOB=∠DOC ……①$$
平行線における錯角は等しいので、$$∠ABO=∠DCO ……②$$
⇒参考.「錯角・同位角・対頂角の意味とは?平行線と角の性質をわかりやすく証明!【応用問題アリ】【中2数学】」
①、②より、2つの角がそれぞれ等しいので、$$△AOB∽△DOC$$
(2) $$AB:DC=6:9=2:3$$より、相似比は $2:3$ となる。
よって、$DO=x$ とおくと、$AO:DO=2:3$ より、$$4:x=2:3$$
この比例式を解いて、$$x=6$$
したがって、$$DO=6$$
(解答終了)
実は $BO=5$ の条件は使いません!ダミーです。
なぜこの条件を問題文に入れたかというと、対応する辺を間違えないでほしいからです。
数学の問題は、必要な条件しか提示されていない場合がほとんどですが、理解度をチェックするために不必要な条件が混ざっているものもありますので、注意してください。
ピラミッド型その1
(1) $△ABC ∽ △ADE$ を示せ。
(2) $AC$ の長さを求めよ。
まず一つ目は「それぞれの底辺が平行なピラミッド型」の問題です。
これも超超頻出です。
砂時計型と比べたら、相似であることが一目瞭然ですよね~。
しっかりと証明していきましょう。
【解答】
(1) $△ABC$ と $△ADE$ において、
$∠A$ は共通より、$$∠BAC=∠DAE ……①$$
平行線における同位角は等しいので、$$∠ABC=∠ADE ……②$$
①、②より、2つの角がそれぞれ等しいので、$$△ABC ∽ △ADE$$
(2) $$AB:AD=(5+2):5=7:5$$より、相似比は $7:5$ となる。
よって、$AC=x$ とおくと、$AC:AE=7:5$ より、$$x:4=7:5$$
比例式は「内項の積=外項の積」となるので、$$5x=28$$
⇒参考.「比例式の解き方とは?分数を用いた計算・かっこを含む文章問題をわかりやすく解説!」
これを解いて、$$x=\frac{28}{5}
したがって、$$AC=\frac{28}{5}(=5.6でも可)$$
(解答終了)
平行線を見たら、どこかに相似な図形がないか探すクセを付けておくと良いかもしれませんね^^
ピラミッド型その2
(1) $△ABC ∽ △AED$ を示せ。
(2) $AD$ の長さを求めよ。
二つ目のピラミッド(?)は「底辺が平行ではない場合」です。
平行線と角の性質を用いない相似の代表例です。
証明は与えられている条件を使えばよいので簡単ですが、気を付けていただきたいのが(2)です。
【解答】
(1) $△ABC$ と $△AED$ において、
$∠A$ は共通より、$$∠BAC=∠EAD ……①$$
仮定より、$$∠ACB=∠ADE ……②$$
①、②より、2つの角がそれぞれ等しいので、$$△ABC ∽ △AED$$
(2) 相似な図形の辺の比はすべて等しいので、$$AB:AE=AC:AD$$
よって、$AD=x$ とおくと、$$(x+5):4=(4+2):x$$
比例式は「外項の積=内項の積」となるので、$$x(x+5)=24$$
整理すると、$$x^2+5x-24=0$$
因数分解すると、$$(x+8)(x-3)=0$$
ここで、$x>0$ より、$$x=3$$
したがって、$$AD=3$$
(解答終了)
対応している辺および角を間違えないようにしましょう!
また、(2)では $x$ に関する二次方程式が出てきます。
因数分解できるときはそれで解き、できないときは解の公式を用いて解きましょうね♪
※辺の長さなので $x>0$ の条件も忘れずに!!
円周上の砂時計型
同じ円周上にあるだけで相似な図形ができるのは、ある有用な定理のおかげです。
それは、中3で習う最も重要な定理の一つと言ってもよいでしょう。
【証明】
$△APB$ と $△CPD$ において、
対頂角は等しいので、$$∠APB=∠CPD ……①$$
また、円周角の定理より、$$∠ABP=∠CDP ……②$$
①、②より、2つの角がそれぞれ等しいので、$$△APB ∽ △CPD$$
(証明終了)
そうです。
円周角の定理を用いることで、いとも簡単に証明できることができます。
≫参考記事:円周角の定理とは?【必ず押さえたい7つのポイント】
また、目次3-1「砂時計型」の問題と見比べると、対応する頂点の位置関係が異なっていますよね!
そこにも気が付けると、解き間違いが少なくなるかと思います♪
三角形の相似条件の応用3選
ここまで見ていただいた通り、相似は合同より範囲が広いため、応用範囲も非常に広いです。
よって、最後に「三角形の相似条件がどのように応用されているか」代表的なものをご紹介して終わりにします。
具体的には
- 平行線と線分の比の定理
- 中点連結定理
- 相似比と面積比(体積比)
以上 $3$ つを、上から順にご紹介します。
平行線と線分の比の定理
相似を習ってすぐに学ぶ、非常に大切な定理です。
さて、①および②がなぜ成り立つのか。
答えは「今まで解いてきた問題の中」にあります!
少し考えてみてから、以下の図をご覧ください。
↓↓↓
線分 $DF$ を点 $E$ が点 $B$ にちょうど重なるように平行移動します。
すると、$$△D’BA ∽ △F’BC$$が言えますよね!
なぜなら、「上の辺と下の辺が平行な砂時計型」になるからです。
同じようにして②の比例式も証明できます。
↓↓↓
今度は点 $D$ が点 $A$ にちょうど重なるように平行移動します。
すると、$$△ABE’ ∽ △ACF’$$が言えます。
これは「それぞれの底辺が平行なピラミッド型」の問題でやりましたね。
よって、これからは平行線を見ただけで、三角形の相似を証明せずとも辺の比が等しいことを使えるわけです。
これは便利ですね!!
ちなみに、平行線と線分の比の定理については「平行線と線分の比の問題・3通りの証明・定理の逆の証明を解説!」の記事で詳しく解説しております。
中点連結定理
中点連結定理も、非常に重要な定理です。
相似から証明するものはどれも重要なので、順位付けに困ります。(笑)
中点1と中点2を”連結”したので「中点連結定理」です。
非常にわかりやすいですね^^
さて、この定理の証明で相似条件「2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しい」を初めて使います。
【証明】
中点連結定理を示すには$$△ABC ∽ △AMN$$を示せば十分である。(ゴールの明確化)
よって、$△ABC$ と $△AMN$ において、
$∠A$ は共通より、$$∠BAC=∠MAN ……①$$
点 $M$ は辺 $AB$ の中点より、$$AB:AM=2:1 ……②$$
点 $N$ は辺 $AC$ の中点より、$$AC:AN=2:1 ……③$$
①~③より、2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいので、$$△ABC ∽ △AMN$$
よって、相似比は $2:1$ なので、$$BC:MN=2:1$$
つまり、$$MN=\frac{1}{2}BC$$
また、対応する角が等しいから$$∠ABC=∠AMN$$であり、同位角が等しいので$$MN // BC$$
(証明終了)
相似を示すことで、
- すべての辺の比が等しくなること
- 対応する角が等しくなること
がわかるので、副次的に得られる結果は非常に多いです。
中点連結定理については「中点連結定理とは?逆の証明や平行四辺形の問題もわかりやすく解説!」の記事で詳しく解説しております。
相似比から面積比・体積比
最後は「相似条件の応用」というより「相似比の応用」です。
相似比が $m:n$ ならば、面積比は $m^2:n^2$
また、それが立体であれば、体積比は $m^3:n^3$
これもものすごく便利です!
この事実を用いると、例えば以下のような問題でも楽々解くことができます。
【解答】
相似比が $2:3$ であることから、$$△ABC:△DEF=2^2:3^2$$
よって、$$16:S=4:9$$
これを解くと、$$S=36 (cm^2)$$
(解答終了)
三角形の相似条件に関するまとめ
今日はまず「相似とは何か」から始まり、次に「三角形の相似条件 $3$ つ」について詳しく学び、最後に様々な応用例を見てきました。
すごい盛りだくさんの内容だったかと思います。
図形の相似は、これから当たり前のように出てきます。
ここで基本を固めておけば、後々楽ができますので、ぜひマスターしておきましょう!!
以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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