こんにちは、遊ぶ数学のウチダです。
たとえば、$2^3$ という数の「$3$」の箇所に来る数のことを「指数(しすう)」と呼び、これまで学習してきました。
数Ⅱになると、指数に $x$ が来る関数、つまり「指数関数」を学習することになります。
そこで重要となるのが、今回学習する「指数の拡張」です。
$x$ は色んな値を取るため、今までの指数に対する理解だけだと指数関数を考えることが出来ません。
また指数の拡張を行うにあたり、「累乗根(るいじょうこん)」という新しい数も登場します。
指数の拡張や累乗根について、あまり理解できていません…。
わかりやすく解説してほしいです!
承知しました。指数の拡張と累乗根について、どこよりもわかりやすく解説していきたいと思います!
整数の指数について学習しよう【指数の拡張STEP1】
まず $1$ とか $2$ とか $3$ とか、つまり正の整数(自然数)の指数については、皆さんは学習済みです。
$x^2$ とか、これまでもたくさん出てきましたよね。
自然数の指数はわかるけど、じゃあマイナスの数の指数とかはどうなるんだろう?
こういう発想が持ててくると、数学の理解が早まります。今回学ぶ指数の拡張は、まさしくこの疑問から始まります。
実は皆さん、拡張については「三角比」を習うときにすでに触れています!あのときの感覚と一緒です。
三角比のときは、$0°$ ~ $90°$ までだと鈍角三角形のときに困っちゃうから、$180°$ まで拡張したんですよね。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
今回は指数”関数”を考えたいので、負の数や有理数、無理数にまで広げていきたいです。
自然数については定義できているので、一番簡単そうな「負の整数」や $0$ について、まずは考えてみましょう。
考え方:法則性を見出す
拡張するときに重要なのは「今までの法則に当てはまるように、無理なく自然に行う」ことです。
全く別のものが定義されたら、それは拡張ではないわけです。
でも、法則性なんてどうやって見つければいいんでしょうか…。
法則性を見つけるために、画像を用意しました!よく見てみてください^^
意味ありげに、$2^4$、$2^3$、…と並べてみました。
ここからわかる法則とは、一体何でしょうか?
…あ!指数が $1$ つ下がる度に、$2$ で割っているんだ!
こうして法則を考えてみると、$0$ 乗が $1$ になることも、マイナス乗が分数になることも、納得いきません?
拡張というのは、ある意味「今まである法則を崩さないようにつじつまを合わせる」と言い換えることもできます。
ちなみに、法則を崩さないように定義したので、当然指数法則もすべて満たしております。
(というより、指数法則が成り立たないと、拡張失敗です。)
【指数法則( $m$,$n$ が整数)】
① $a^m×a^n=a^{m+n}$
①` $\displaystyle \frac{a^m}{a^n}=a^{m-n}$
② $(a^m)^n=a^{m×n}$
③ $(ab)^n=a^n×b^n$
「指数法則がなぜ成り立つのか」などの詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
有理数の指数について学習しよう【指数の拡張STEP2】
整数の指数についてはバッチリだよ!さあ、早速指数関数を勉強しようかな…。
STOP!!まだ早いです。少なくとも「有理数の指数」については、考えておかないといけません。
ということでお次は”有理数(整数/整数で表せる数)”について、考えていきましょう。
累乗根の定義
いきなりですが、「累乗根(るいじょうこん)」という数を定義します。
$n$ : 正の整数とする。このとき、$n$ 乗すると $a$ になる数を、$a$ の $n$ 乗根といい、$\sqrt[ n ]{ a }$ で表す。
また、$a$ の $2$ 乗根、$3$ 乗根、$4$ 乗根、…をまとめて $a$ の累乗根という。
$\sqrt{a}$ は平方根ですよね。$2$ 乗したら $a$ になるやつ。
そうです。つまり平方根= $2$ 乗根だということですね。これからは、$2$ 乗だけじゃなくて $3$ 乗、$4$ 乗、…も考えるよっていうことです。
たとえば $\sqrt{16}=4$ とか書いてきましたが、本来は $\sqrt[2]{16}=4$ なんですけど、$2$ 乗根は使う頻度が多いので、特別に $2$ を省略してもOK、と定められています。
また、$\sqrt{2}$ であれば「ルート2」と呼んでましたが、$\sqrt[3]{2}$ だと「3ルート2」とは呼べません。$3\sqrt{2}$ に間違われてしまうからです。
なので少々めんどくさいですが、口頭で伝える時は「 $2$ の $3$ 乗根」とか「 $3$ 乗根 $2$ 」とか、○乗根を使うようにしましょう。
有理数の指数が累乗根を使って表せる
さあ話を戻します。
拡張の基本は、 「今までの法則に当てはまるように、無理なく自然に行う」 でしたので、指数法則が成り立つと仮定して考えてみましょう。
例1. $\displaystyle a^{\frac{1}{3}}$ の場合
指数法則より、$\displaystyle (a^{\frac{1}{3}})^3=a^{\frac{1}{3}×3}=a$
$3$ 乗したら $a$ になったので、つまり $\displaystyle a^{\frac{1}{3}}=\sqrt[3]{a}$ と同じ。
※指数法則の一つである $(a^m)^n=a^mn$ を使った。
例2. $\displaystyle a^{\frac{2}{3}}$ の場合
指数法則より、$\displaystyle (a^{\frac{2}{3}})^3=a^{\frac{2}{3}×3}=a^2$
$3$ 乗したら $a^2$ になったので、つまり $\displaystyle a^{\frac{2}{3}}=\sqrt[3]{a^2}$ と同じ。
※指数法則の一つである $(a^m)^n=a^mn$ を使った。
以上のことからわかるように、有理数の指数は累乗根を用いて表すことができるのです。
$a>0$ で、$m$,$n$ は自然数とする。このとき、
$\displaystyle a^{\frac{m}{n}}=\sqrt[n]{a^m}$
唐突に累乗根が定義されてびっくりしましたけど、有理数の指数が累乗根になることを言いたかったのですね。
その通りです。数学では何かを説明するために、他の数を定義することがよくありますので、覚えておきましょう。
累乗根の性質と有理数の指数法則【証明】
有理数の指数が累乗根を用いて表すことが出来たので、これで拡張完了…と言いたいところですが、まだ早いです。
くどいようですが、拡張の基本は「今までの法則に当てはまるように、無理なく自然に行う」 です。
そして指数法則は、一つだけではありません。他の指数法則も成り立つか、一応確認しなくてはいけません。
【指数法則( $r$,$s$ が有理数)】
① $a^r×a^s=a^{r+s}$
①` $\displaystyle \frac{a^r}{a^s}=a^{r-s}$
② $(a^r)^s=a^{r×s}$
③ $(ab)^r=a^r×b^r$
これらを証明するには、累乗根の定義より導き出すことができる「累乗根の性質」を使うのが一番わかりやすいです。
【累乗根の性質( $m$,$n$,$p$ は自然数)】
① $\sqrt[n]{a}\sqrt[n]{b}=\sqrt[n]{ab}$
② $\displaystyle \frac{\sqrt[n]{a}}{\sqrt[n]{b}}=\sqrt[n]{\frac{a}{b}}$
③ $(\sqrt[n]{a})^m=\sqrt[n]{a^m}$
④ $\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}}=\sqrt[mn]{a}$
⑤ $\sqrt[n]{a^m}=\sqrt[np]{a^mp}$
本記事の要点からは外れるので、それぞれ①だけ証明(説明)したいと思います。
…げ。難しすぎるよ…。
定義から性質を導いて、今までに示してきた性質をフルに使って法則を証明して…という作業は難しいんです(泣)
この証明ができるかどうかは、あまり役には立たないので、スキップしても大丈夫です。
ただし、拡張をする目的や手順・注意しなければいけない点については、ぜひ押さえておきましょう。
累乗根・指数法則の計算問題5選
それでは、累乗根や指数法則について理解を深めるために、計算問題を何問か解いてみましょう。
問題1.次の計算をしなさい。
(1) $\sqrt{\sqrt[3]{64}}$
(2) $\sqrt[5]{\sqrt[2]{1024}}$
(3) $\displaystyle \{(\frac{32}{81})^{\frac{2}{3}})\}^{-\frac{3}{4}}$
もう一つ、こんな応用問題にもチャレンジしてみましょう。
問題2.$a>0$ とする。次の式を $a^p$ の形で表しなさい。
(1) $\sqrt{a\sqrt[6]{a\sqrt[5]{a}}}$
(2) $(a^{\frac{3}{4}})^{-\frac{4}{5}}×\sqrt{a}÷a^{-\frac{3}{5}}$
いかがでしたか?ごちゃごちゃしてて結構難しかったと思いますが、基礎力を養うにはまずは計算力からです。
ぜひ全問正解目指して頑張ってください^^
【コラム1】負の数の累乗根ってどうなるの?
最後に少しコラム的な話を。
$2$ 乗根の中身の数は必ずプラスでしたが、$n$ 乗根だとそうはいきません。では、$n$ がどんな数だと中身がマイナスの可能性があるでしょうか?
答えは、$n$ が奇数のときです。
これは、グラフを使うとわかりやすいです。
逆に $n$ が偶数のときは、負の数に対する $n$ 乗根はありませんが、正の数に対する $n$ 乗根は $2$ つ存在します。
( $n$ が偶数の場合は、今まで習ってきたルート、つまり平方根と同じですね)
【コラム2】無理数の指数はどうなるの?
指数法則の拡張は、自然数だけじゃ関数として定義できないから、実数まで広げたい。そういう発想で行ってきました。
今は有理数の指数までは拡張できました。では無理数の指数は、一体どうなるのでしょうか?
厳密に言えば、無理数の指数まで拡張できてはじめて、次の指数関数の話に進めます。
無理数の指数の話は、はっきり言って大学レベルなので、かいつまんで解説します。
たとえば $2^{\sqrt{2}}$ という数について考えてみます。
$\sqrt{2}=1.41421356…$ であり、無限に続いてしまうと厄介なので、近い値(つまり近似値)で考えます。
一つずつ小数点を進めて、電卓を叩いてみます。
$r$ | $2^r$ |
---|---|
$1$ | $2$ |
$1.4$ | $2.63901582155$ |
$1.41$ | $2.65737162819$ |
$1.414$ | $2.66474965018$ |
$1.4142$ | $2.66511908853$ |
$1.4143$(比較のため) | $2.66530382691$ |
するとどうやら、$2.6651$ ~ $2.6653$ ぐらいに落ち着きそうだな、と予想ができます。
つまるところ、結論としてはこうなります。
$2^{\sqrt{2}}$ は、$2.6651$ ~ $2.6653$ の中の、ある有理数に限りなく近づく。
「限りなく近づく」というのは、数Ⅲの”極限”を考える必要がありますし、極限について厳密に学ぶのは大学になってからですので、今は
無理数乗でも、なんらかの有理数同士に挟まれているはずだから、指数法則は成り立つでいいのかな~
こんな感じの理解でOKです。
「あれ?実数まで拡張しなきゃいけないはずなのに、無理数の指数は考えないの?」という、勘の鋭い読者の方のために、一応解説しておきました。
以上で、指数の拡張は完了です。
指数関数のグラフに進んでいきましょう!
まとめ:拡張のストーリーを正しく理解し、累乗根を自由に扱えるようになろう
いかがでしたか?本記事の要点をもう一度まとめておきましょう。
拡張するときは、「自然数までうまくいったから次は負の数。次は有理数。」のように、必ずストーリーがあります。
そのストーリーを的確に掴むことで、「今何をしているのか」「なぜ今これをやっているのか」がわかり、理解が早くなります。
基本だからこそ侮るべからず。ぜひしっかりとマスターしてくださいね^^
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