こんにちは、ウチダです。
今日は数学Bのベクトルで習う
「位置ベクトル」
について、まず位置ベクトルとは何なのか、次に位置ベクトルとベクトルの違い、そしていろんな位置ベクトルの求め方とその応用について解説していきます。
また後半では、位置ベクトルと微分を利用した速度ベクトルや加速度ベクトルについての解説も簡単ではありますが行いますので、ぜひ最後までご覧ください♪
位置ベクトルとは
まずは「位置ベクトル」の定義から入りましょう。
図をご覧ください。
まず、この図のように、何もない空中や平面に点がある状況を考えます。
この点の位置というのは、このままだと中々示しづらいものですね。
よって、ここで仮に「座標平面」を導入してみるとどうなるでしょうか。
次の図をご覧ください。
いかがでしょう。
さっきの図より、点Pの位置が大分わかりやすくなりましたよね!
ここで導入した座標平面ですが、別にこれは座標空間でも同じことです。
ようは、「何か目印になる基準が欲しい ⇒ 数学では”座標”が一番わかりやすい」
このような発想で成り立っているだけです。
さて、今導入した座標平面で、点Pの位置を示しやすくなりました。
今までであれば、点Pの位置を文字通り“座標”で定義していましたが、ここでは“ベクトル”で定義していきます。
どういうことなのか、次の図をご覧ください。
もうお分かりですね。
そう、原点Oを始点としたベクトルを一つ決めれば、終点の座標は一つに定まります。
これを利用して、点Pの位置を $P(\vec{p})$ と表示できるので、このベクトル $\vec{p}$ を、点Oに関する点Pの位置ベクトルと呼ぶことにします。
これで位置ベクトルの定義については終わりになりますが、ここで浮かんでくるであろう疑問 $2$ つに答えておきたいと思います。
Q1.位置ベクトルと座標の違いとは?
今、「座標ではなくベクトルで定義したもの」が位置ベクトルである、という説明をしました。
ですが、そもそも座標平面を使っている時点で、これは座標の定義と何ら変わりないのでは?と思ってしまいます。
たしかに、ベクトルは矢印表示と成分表示という $2$ つの顔を持っています。
また、ベクトルを成分表示すれば、それは座標を用いることになりますので、結局は座標が重要になってくるんですよね。
しかし、言葉の意味をよく考えてみて下さい。
“座標”というのは、点の位置を示しているのに過ぎませんが、“ベクトル”は大きさと向きを持つ量です。
そういう意味では、この $2$ つは全く異なります。
こういう抽象的な話って理解しづらいですし、「結局何のためにこの知識って使えるの…?」となりがちです。
しかし、抽象的なことを理解しておくというのは、特に大学以降の数学において非常に武器になります。
大学以降の数学では、まず抽象論から入ることが多いですからね~…。
そうでなくても、物事を抽象的に考えることって意外と重要で、私は特に「論理構造の枠組みを決める」のに役立つと感じています。
たとえば、あるコンビニで「トイレが汚いことにどう対処していくか」となった際、具体的に考えると、トイレを掃除することや掃除のアルバイトを雇うことぐらいしか思いつきませんよね。
ここで、この問題の抽象度をぐっと上げることで、「そもそもなぜトイレが汚いか」という発想が生まれてきます。
すると、日頃の使い方だっだり、お客様への呼びかけが足りなかったり、そういうことに気づけます。
少し話がそれましたが、「座標とベクトルではそもそも表している量が違う」ことは押さえておきましょう。
Q2.位置ベクトルとベクトルの違いとは?
ではもう一つ。「位置ベクトルとベクトルの違い」についてです。
これは、集合論的に言えば「位置ベクトルの集合はベクトルの集合の部分集合である」と言えます。
ようは、「位置ベクトルとはベクトルの一種だ」ということですね。
だって、定義を思い出してみて下さい。
位置ベクトルとは、簡潔に言えば「原点Oを基準としたベクトル」のことでしたよね。
ここで”ベクトル”という言葉が出てきた通り、特殊なベクトルであると認識できます。
ベクトルと単に言えば、大きさと向きを持つ量なので、そこに”位置を表す”という概念は存在しません。
そのベクトルの始点を原点とすることではじめて、終点の位置が一つに定まります。
つまり、位置ベクトルとは「始点が原点Oのベクトル」、ベクトルとは「始点がどこでもいいからとりあえずベクトル」だと覚えておきましょう。
※ただ、この先の問題で「別に始点を原点としなくても解ける問題」というのも出てきます。位置ベクトルを用いると、座標平面上で考えることができるので、ようは座標で成り立つ知識が使えるわけです。位置ベクトルを使うか、ベクトルを使うかは問題によって適宜判断していきましょう。
いろんな位置ベクトルの求め方
ここまでは、位置ベクトルの定義を詳しく見てきました。
この章では、「代表的な位置ベクトル」を求めていきましょう!
どれも重要ですので、ぜひ覚えてもらいたいと思います。
内分点・外分点・中点の位置ベクトル
まずは「内分点・外分点の位置ベクトル」です。
さっそく図をご覧ください。
↓↓↓
このように、点が位置ベクトルで表されているときに、ABを $m:n$ に内分する点Pの位置ベクトルを求めてみましょう。
まず、位置ベクトルで表されているということは、どこかに原点Oがあるはずですが、それが表示されていません。
なので、自分で勝手に決めてしまいましょう。
※ $m:n$ というのは比であるため、実際の長さではないことを強調して〇で囲っています。
ここで「基準を勝手に決めていいの…?」と感じる方もいるかもしれませんが、それは大丈夫です。
だって、基準に条件があったら、それこそ位置ベクトルの意味をなさないですもんね。
こうして、原点Oを表示するだけで、図形的にわかりやすくなりました。
ここからは普通の“ベクトルの合成”です。
【解答】
図より、$$\vec{OP}=\vec{OA}+\vec{AP}$$
また、$$\vec{OP}=\vec{p},\vec{OA}=\vec{a}$$$$\vec{AP}=\frac{m}{m+n}\vec{AB}=\frac{m}{m+n}(\vec{b}-\vec{a})$$
なので、これを代入して、
(解答終了)
この内分点の位置ベクトルが求められれば、外分点の位置ベクトルもほぼ同様に求めることができます。ぜひ一回は証明にチャレンジしてみて下さい!^^
では公式をまとめます。
内分点の位置ベクトルは$$\frac{n\vec{a}+m\vec{b}}{m+n}$$
外分点の位置ベクトルは$$\frac{-n\vec{a}+m\vec{b}}{m-n}$$
特に、中点の位置ベクトルは $1:1$ に内分する点の位置ベクトルなので、$$\frac{1×\vec{a}+1×\vec{b}}{1+1}=\frac{\vec{a}+\vec{b}}{2}$$
内分点の位置ベクトルの公式の覚え方として有名なのが、$m$ と $n$ がクロスしていることを利用する方法です。
内分点の位置ベクトルさえ覚えていれば、外分点の位置ベクトルは $n$ を $-n$ に置き換えてあげるだけなので、大丈夫です♪
中点の位置ベクトルは、特別な場合としてぜひ押さえておきましょう。
三角形の重心の位置ベクトル
さて、「三角形の重心の位置ベクトル」も非常に重要です。
これを理解するためには、
- 三角形の重心は $3$ つの何という線の交点であるか
- 三角形の重心の大切な性質
この $2$ つについて知っておく必要があります。
よって、三角形の重心の解説は別個記事にいたしますので、気になる方はそちらをぜひご参照ください。
一応簡単に説明しておくと、三角形の重心の位置ベクトルは「頂点の位置ベクトルの(相加)平均」になります。
「三角形の重心」についての詳しい解説はこちらから!!
⇒⇒⇒重心とは?三角形の重心の座標・位置ベクトルの求め方や公式の証明・面積比の問題を解説!【数学】【オイラー線】
位置ベクトル(ベクトル)を図形に応用しよう!
ここからは、位置ベクトルや単なるベクトルを、平面図形や空間図形に応用するとどうなるのか詳しく見ていきます。
一直線上にある点の証明(平面および空間)
まずは「一直線上にある点」の性質について考えていきましょう。
「同一直線上にある」ということは、大きさは違えど向きは同じということですから、一つのベクトルで表すことができます。
“ベクトルの平行”と同じような感じです。
この性質はもちろん空間においても成り立つので、平面・空間にかかわらず出題されます。
色んなケースがありますが、とにかく「同一直線上にあることを示せ」と言われたら、上の式のような実数 $k$ を見つければいいんだ、という認識さえ持っておけばOKです!
2直線の交点
次に「2直線の交点」までのベクトルの求め方を考えていきます。
よく図のようなケースの問題があります。
「赤のベクトルを求めよ」という問いなのですが、ここで困ってしまう方が多いです。
こういう時は、内分点の位置ベクトルを2回使いましょう!
つまり、片方を $s:1-s$ とおき、もう片方を $t:1-t$ とおけば $2$ つの式ができ上がります。
そうしてできた $2$ つのベクトルは同じはずなので、連立方程式が立てられ、$s,t$ が求まる、という流れです。
このように、辺の全体の長さを $1$ とすることで、$s:1-s$ のようにある実数 $s$ を用いて内分を表すことができます。
※別に、辺の全体の長さを $2$ とかにして、$s:2-s$ としても求めることはできますが、計算が大変になるだけなので、やる意味は薄いでしょう。
【重要】同じ平面上にある点【空間】
さて、この章は重要だと位置づけさせていただきました。
理由は後述するとして、さっそく「同じ平面上にある点」の性質について考えていきましょう。
図のように、あるベクトル $\vec{CP}$ というのは、$2$ つの平行ではないベクトル $\vec{CA}$、$\vec{CB}$ を用いて表すことができます。
つまり、平行でない $2$ 本のベクトルを選べば、その $2$ つのベクトルからなる平面上のすべてのベクトルを表現できる、ということになるわけです。
一度まとめます。
点Pが平面ABC上にある ⇔ $\vec{CP}=s\vec{CA}+t\vec{CB}$ となる実数 $s,t$ が存在する
さて、ここで平面OABではなく平面ABCにした理由を明らかにしましょう。
それは「この性質を位置ベクトルで考えるとどうなるか」議論したかったからです。
では、$A(\vec{a})$、$B(\vec{b})$、$C(\vec{c})$、$P(\vec{p})$ として式を変形するとどうなるか、見ていきましょう。
【式変形】
今$$\vec{CP}=s\vec{CA}+t\vec{CB}$$について考えています。
まず、この式のベクトルを以下のように分解してみましょう。
すると、$$\vec{OP}-\vec{OC}=s(\vec{OA}-\vec{OC})+t(\vec{OB}-\vec{OC})$$
ここで、位置ベクトルを代入すると、$$\vec{p}-\vec{c}=s(\vec{a}-\vec{c})+t(\vec{b}-\vec{c})$$
これを整理すると、$$\vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b}+(1-s-t)\vec{c}$$
ここで、$1-s-t=u$ とおくと、$$\vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b}+u\vec{c}$$
(式変形終了)
以上の式変形の結果を踏まえて、まとめます。
点Pが平面ABC上にある ⇔ $\vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b}+u\vec{c}$ かつ $s+t+u=1$ となる実数 $s,t,u$ が存在する
ここで、黄色のアンダーラインに着目してください。
これって、係数を足したら $1$ ってことですよね。
なんかどっかで見たことありませんか…?
そうなんです!実は「異なる $2$ 点A,Bを通る直線のベクトル方程式」で同じような結果が得られているんです!
⇒参考.「ベクトル方程式とは?円や存在範囲の問題の解き方などを超わかりやすく解説!」
どういうことか、以下の図をご覧ください。
↓↓↓
つまり、係数を足して $1$ であれば、ABからなる直線もしくはABCからなる平面を表し、これは次元が $1$ つ下がっていると捉えることができるわけです。
このように、次元をリンクさせて考えることで、たとえば $4$ 次元や $5$ 次元になったとしても同じふうに考えることができます。
実際、$4$ 以上の次元は図で表すには困難ですが、理論的には同じことが成り立つのだろうと理解することがとても重要です。
内積を利用した垂直の証明【垂心】【外心】
最後に、「内積を利用した垂直の証明」について見てみましょう。
⇒参考.「内積とは?ベクトルの内積の意味・公式・求め方などをスッキリ解説!」
その中でも代表的なものとして、
- 垂心が存在することの証明
- 正四面体の辺がそれぞれ垂直であることの証明
などがあります。
【垂心が存在することの証明】
$OH⊥AB$ を示すには、$$\vec{h}・(\vec{b}-\vec{a})=0 ……(※)$$を示せばよい。
$OA⊥BH$ より、$$(\vec{h}-\vec{b})・\vec{a}=0$$
よって、$$\vec{h}・\vec{a}=\vec{b}・\vec{a} ……①$$
また、$OB⊥AH$ より、$$(\vec{h}-\vec{a})・\vec{b}=0$$
よって、$$\vec{h}・\vec{b}=\vec{a}・\vec{b} ……②$$
(※)の左辺に①、②を代入すれば、
(証明終了)
このようにベクトルの内積を用いることで、垂直である証明はかなり簡単になります。
また、外心の定義が「 $3$ つの垂直二等分線の交点」だったことを思い出すと、同じように証明できそうですね^^
⇒参考.「外心とは?三角形の外心の座標・位置ベクトルの求め方や性質の証明をわかりやすく解説!【垂心】」
正四面体の辺がそれぞれ垂直であることも、内積 $=0$ を利用すれば証明できるので、ぜひチャレンジしてみて下さい♪
【物理】位置ベクトル・速度ベクトル・加速度ベクトル
この章では、物理学における位置ベクトルの応用について、簡単に解説したいと思います。
物理学の大きな分野の一つとして“力学”があり、力学では主に“物体の運動”について考えます。
そこで、時間 $t$ から $Δt$ だけ経過したときの物体の位置を、位置ベクトルを用いて表してみましょう。
↓↓↓
たとえばこの図のような場合、物体が時間 $Δt$ の間に動いた距離は「赤のベクトル」分、つまり$$\vec{b}-\vec{a}$$になります。
ここで、この平均の速度を求めてみると、$$\frac{\vec{b}-\vec{a}}{(t+Δt)-t}=\frac{\vec{b}-\vec{a}}{Δt}$$
となります。
…あれ?こんな形の式、どっかで見たことありませんか…?
そう、実は数学Ⅱで習う“微分法”でもこのような式が登場しています!!
⇒参考.「微分とは何か?定義とやり方と公式をわかりやすく解説!」
この $Δt$ を限りなく $0$ に近づけた場合、物体が位置ベクトル $\vec{a}$ の地点にいる瞬間の速度を表すことになります。
つまり、$$\lim_{Δt \to 0}\frac{\vec{b}-\vec{a}}{Δt}=\frac{d\vec{a}}{dt}=v(\vec{a})$$
となります。( $v(\vec{a})$ は位置ベクトル $\vec{a}$ での速度を表すものとする。)
これを言葉で表現すると、位置ベクトルを時間で微分したものが速度ベクトルになる、と言えます。
また同様に、速度ベクトルを時間で微分したものは加速度ベクトルになります。
このように、ベクトルと微分積分学は物理学によく応用されます。
物理学に応用できるということは、他の学問にも応用できる可能性が多分にありますので、この $2$ つは極めて重要です。
あとの詳しい話は大学で!!
位置ベクトルに関するまとめ
今日はまず、「位置ベクトルとは何?」から入り、いろんな位置ベクトルを求め、図形に応用してみました。
位置ベクトルに関する理解は深まりましたか?
この記事では、主に理論を説明し問題はほぼ解説していません。
なぜかというと、特にベクトルの分野においては、理論さえしっかり押さえておけば粗方の問題は解けるようになるからです。
より具体的に話すと、位置ベクトルと内積を上手く扱えるようになれば、基本問題は粗方解けるようになりますし、応用問題も時間をかければ解けるかと思います。
ぜひ暗記ではなく体系的な勉強を進めていってくださいね♪
また、様々な図形を位置ベクトルを用いた方程式で表すこともできます。
次に読んでほしい「ベクトル方程式」に関する記事はこちらから!!
↓↓↓
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ベクトル方程式とは?円や存在範囲の問題の解き方などを超わかりやすく解説!
以上、ウチダでした。
それでは皆さん、よい数学Lifeを!!
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