こんにちは、ウチダです。
小学校で習う「速さ(はやさ)」という考え方について、しっかり理解している大人は意外と少ないものです。
この記事を読んでくださっているアナタはどうですか…?
たしかに「速さって何?」って聞かれると、説明にちょっと困っちゃうかも…。
速さの単位換算の問題や、少しひねられた応用問題になると全然わかんなくなっちゃうのよね。
速さは重要な考え方で、特に理系に進む方は高校・大学でめーちゃくちゃよく出てきます!
ということで本記事では、速さに対する深い理解から応用問題3選まで
- 東北大学理学部数学科卒業
- 実用数学技能検定1級保持
- 高校教員→塾の教室長の経験あり
の僕がわかりやすく解説します。
まず「速さ」とは何かを正しく深く理解しよう!
色々とツッコみたいことがありますが…とりあえずまずはこの言葉の定義を押さえておきましょう!
ここで、日常生活で使われる「速い」には
- 計算が速い … 単位時間あたりにできる計算の量が多い
- 食べるのが速い … 単位時間あたりに食べる量が多い
- 仕事が速い … 単位時間あたりにできる仕事量が多い
のように、数学や物理で使われる「速さ」とは少し異なるものもあります。
ただ総じて言えるのは、「単位時間あたりの動作の度合い」を表す言葉だということですね。
よく「速い」と「早い」でごっちゃになってたよ!動作に対して”速い”を使えばいいんだね!
その通りです!もう一つの”早い”は、「朝起きるのが早い」というふうに、基準の時間より前であるということを表すとき、などで使います。
では、速さと早さについての全体像を掴んだ上で、数学で使われる「速さとは一体何なのか」について詳しく見ていきましょう!
速さの単位とは?
冒頭で定義を示したとおり、速さとは「単位時間あたりに物体が移動する距離」のことです。
つまり、
- 時間
- 距離
という、$2$ つの単位が組み合わさってできている $1$ つの単位である、といえます!
これが、「速さってややこしい…」と感じる大きな原因の一つですね。
ちょっと具体例を示しておくと、
- 僕、計算問題を $300$ 個解いたよ! → 「おお、スゴイね!」
- しかも $10$ 分で解いたよ! → 「え、速いね!」
というふうに、日常生活でも速さを語る上では、必ず $2$ つの単位が必要になります。
このように、いくつかの単位を組み合わせてできる新たな単位のことを、専門用語で「組立単位(くみたてたんい)」と呼びます。
ここまでの内容を知っておくだけで、これから解説していく「速さの公式」「速さの単位換算」が理解しやすくなります♪
速さを求める公式「みはじ」「きはじ」とは?
有名な公式として、「みはじ」または「きはじ」というものがありますが、これは
- み(き) … 道のり(距離)
- は … 速さ
- じ … 時間
のことであり、この $3$ つの関係を図で表したものになります。
この「みはじ(きはじ)」が意味することは、
- 道のり=速さ×時間 …①
- 速さ=道のり÷時間 …②
- 時間=道のり÷速さ …③
この $3$ つの数式が成り立つよーということなのですが…ここで質問です!!
クイズ.①~③の数式で、一番本質的で重要なものはどれでしょう?
答えを言ってしまうと、正解は②です。
なぜなら、②こそ速さの定義そのものであり、②から①・③の数式は作り出せてしまうからです。
【公式の作り方】
②の両辺に「時間」を掛け算すると、
速さ×時間=道のり
となり、これは①の公式である。
また、こうして作った①の公式に「速さ」を割り算すると、
時間=道のり÷速さ
となり、これは③の公式である。
(作成終了)
みはじって、てっきり $3$ つの公式だと思ってたんだけど、実は $1$ つの公式だったんですね!
そうです!みはじを機械的に覚えている人は、この考え方ができていません。速さの定義をよ~く思い返して、みはじの本質を明らかにすることが大切です!
《コラム》高校の物理では速さの単位をどう表す?
たとえば、単位時間を「秒」、距離を「メートル」とすると、それぞれ英語で書いたときの頭文字を取って
- 秒(second) → s
- メートル(metre) → m
と表します。
よって、速さとは「単位時間あたりの移動距離」なので、
と、分数の形で表すことが出来ます!
誇張抜きで、高校の物理はマジで単位がめっちゃ重要なので、これを理解できておくと理系に進んでも安心です☆
「なんで分数であらわせるのかわからない!」という方は、分数と比の概念が結びついていないことが多いので、こちらの記事も読んでいただきたく思います。
速さの応用問題3選を解こう!
さあ、お待ちかね速さの応用問題3選を実際に解いていきましょう!
速さを求める計算問題
問題1.A 子さんは $300$ m の道のりを $5$ 分 $30$ 秒で歩きました。一方 B 子さんは $400$ m の道のりを $7$ 分で歩きました。$2$ 人とも同じ速さで歩いたとすると、歩く速さが速いのはどちらでしょうか。
さて、$1$ 問目は速さを比べる文章題です!
速さの求め方を理解していれば、この問題は解けるはず!
ちょっと計算をややこしくしたので、ミスがないか確認してみてください^^
小数の計算をしたくないという方は、分数の大小比較の考え方を使っても解けます!
つまり、$\displaystyle \frac{600}{11}$ と $\displaystyle \frac{400}{7}$ を通分して、分子の大きさを比べればよいということですね。
【問題1の別解】
分母を $77$ に揃えると、
$\displaystyle \frac{600}{11}=\frac{4200}{77}$
$\displaystyle \frac{400}{7}=\frac{4400}{77}$
より、$4200<4400$ なので、B 子さんの方が歩くのが速い。
(解答終了)
分数の大小比較については、詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
約分・通分のコツは”素因数分解”にあり?
分数の大小比較の問題が解けるようになろう。
これらについて、わかりやすく丁寧に解説します。
「約分・通分のミスが多くて困っている…」と感じている方は必見です。
速さの単位換算の問題
問題2.次の問いに答えなさい。
(1) 分速 $60$ m は、秒速何 m ですか。
(2) 時速 $30$ km は、分速何 m ですか。
(3) 秒速 $5$ cmは、時速何 km ですか。
さて、お次は
- 時速⇄分速⇄秒速
- km⇄m⇄cm
などなど、ただ速さを求めるだけでなく単位をしっかり変換しなければならない問題を解いていきましょう。
単位換算の問題は多くの方が苦手とする分野です。それゆえに重要度も高いので、ポイントを押さえて確実にマスターしていきましょう!
それでは解答です!
そっか!速さは $\displaystyle \frac{道のり}{時間}$ だから、分母と分子に同じ数を掛けたり割ったりして、単位を合わせればいいんだね!
その通り!この原則さえ押さえていれば、あとは計算ミスに気をつけるだけで、単位の換算の問題は確実に解けます!
単位の換算については、もう少し詳しい解説を別記事にまとめましたので、よろしければこちらもぜひご覧ください。
ミリ・センチ・キロの関係
面積・体積の単位変換問題の解き方
これらについて、わかりやすく丁寧に解説します。
「単位の変換問題で、どうしてもミスをしてしまう…」と感じている方は必見です。
秒速5センチメートルは桜の花の落ちるスピード!
(3)は、2007年に新海誠監督が発表した作品「秒速5センチメートル」のタイトルからヒントを得て、問題を制作しました!
秒速で言われてもピンときませんが、時速に直したところ $0.18$ km だったので、これはめちゃくちゃ遅いですよね!
※人間の歩く速さが、だいたい時速 $4$ ~ $6$ km です。
また、この秒速5センチメートル(時速 $0.18$ キロメートル)という速さは、桜の花が落ちる速さだとか!
感覚的に納得ですね^^
「秒速5センチメートルが見たい!」という方はこちらのリンクからどうぞ。
このように、日常のものを数学的に捉えていくのも、雑学が増えるので面白いですよ。
速度算(旅人算)【中学受験】
問題3.太郎くんは公園Aから学校に分速 $80$ m の速さで、花子さんは学校から公園Aに分速 $60$ m の速さで同時にあるき出した。$2$ 人は同じ道を通るものとし、公園Aと学校までの道のりは $700$ m とする。このとき、太郎くんと花子さんがすれ違うのは、$2$ 人が歩きだしてから何分後か。
ラストの問題は、「速度算(そくどざん)」と呼ばれる速さを用いた応用問題です!
ぜひ $3$ 分ほど考えていただいてから解答を見ていただきたいと思います!
この問題のポイントは、$2$ 人の歩く速さを合計したものを使うことですね!
まさしくその通りです!ちなみにこの問題は「旅人算(たびびとざん)」と呼ばれ、他にも様々な応用問題があります。
旅人算は、中学受験でも頻出の代表的な問題です。
ぜひこの機会に合わせて押さえておきましょう!
《コラム》速さと速度の違いって何?
基本問題はこれで一応網羅しましたので、最後に少しおまけの話を。
皆さん、たとえば
- 歩く速さ
- 平均速度
みたいな感じで、”速さ”と”速度”を何気なく使い分けているかと思います。
しかし…数学的には速さと速度は異なるものです。
…向き?なんのこっちゃ…泣
たとえば「北に時速 $6$ km で歩く」のと「南に時速 $4$ kmで歩く」のだと、進む方向が違うから $1$ 時間後にいる位置は全然違うよね。こんな感じで、実は大きさだけでなく向きも重要なんだ。
これは、高校の $2$ 年生で習う「ベクトル」という考え方そのものです。
ベクトルは数学でももちろん重要ですが、特に物理において非常に重要な意味を持ちます。
「世の中の運動の仕組みを知りたい…!」などなど、物理好きは下の記事からベクトルについてもぜひ勉強してみてください♪
速さに関するまとめ
それでは最後に、本記事のポイントを振り返っておきましょう。
- 速さとは、「単位時間あたりに進む距離」のことであり、みはじの公式で機械的に覚えておくだけでは不十分!
- 「分数とはなにか」をしっかり理解しておくことで、はじめて速さがよく理解できます。
- 「速さの大小比較の問題」や「速さの単位換算の問題」は非常に狙われやすいので、ぜひ押さえておこう!
- 余裕がある方は、「旅人算」や「ベクトル」について勉強すると、より数学が楽しくなるかと思います^^
速さとはなにか、自分よりも数学が苦手な人に対しても、わかりやすく正しく説明できるようになっておきましょう!
おわりです。
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