こんにちは、遊ぶ数学のウチダです。
対数方程式や対数不等式の問題を解いていると、よく真数条件という言葉が登場します。
例題.対数不等式 $\log_2{x}≦3$ を解け。
【解答】
$3=\log_2{2^3}=\log_2{8}$ より、$\log_2{x}≦\log_2{8}$
底 $2>1$ より、$x≦8$
ここで真数条件 $x>0$ より、解は $0<x≦8$
(解答終了)
真数条件を考えず、単に $x≦8$ としてしまっては不正解になってしまいます。
この真数条件ってホントよく出てきますけど、正直全然ピンときてないんですよね…。
真数条件を使うときをもっと知りたいです。
ということで本記事では、
- 真数条件とは何か
- なぜ真数条件は必要なのか
- 真数条件を使うときはどんなときか
以上について、元高校数学教員がわかりやすく解説していきます。
真数条件と底の条件って何?
「真数条件」という言葉だけがひとり歩きしていますが、実はもう一つ重要な「底の条件」というものがあります。
まずはこの真数条件と底の条件について、まとめておきましょう。
対数関数 $y=\log_a{x}$ において、
- 底の条件:$a>0$ かつ $a \neq 1$
- 真数条件:$x>0$
真数条件を理解するには、まず底の条件を深く理解する必要があります。
ここから一旦は底の条件の解説に入りますが、最終的に「なぜ真数条件が $x>0$ となるのか」がわかるようになっていますので、ご安心ください。
底aが負でない理由:実関数として考えられなくなる
まずは底 $a<0$ ではダメな理由を考えていきます。
具体的に考えるとわかりやすいので、ためしに $a=-2$ とします。
対数関数 $y=\log_{-2}{x}$ を指数関数で表すと、$(-2)^y=x$ となりますね。
ここでためしに $\displaystyle y=\frac{1}{2}$ を入れてみましょう。
すると、ルートの中にマイナスが出てきてしまうので、これは実数ではなくなってしまいます。
虚数を学習すると $\sqrt{-1}=i$ でしたから、$x=-2i$ と一応は表記できます。しかし座標平面上に $\displaystyle (-2i , \frac{1}{2})$ なんていう点は存在するでしょうか?
$x$ 軸、$y$ 軸ともに実数の世界で座標平面を考えているため、$x$ が虚数、$y$ が実数となってしまう関数のグラフを書くことはできません。
よって高校範囲では、対数関数 $y=\log_a{x}$ は $a<0$ で考えることはできないのです。
ちなみに同様の理由で、指数関数においても $a<0$ は考えません。
底aが0,1でない理由:関数でなくなる
底 $a$ が $0$ , $1$ だと、$y=\log_a{x}$ は関数じゃなくなってしまいます。
これを順に解説していきますね。
底a=0の場合
まず $a=0$ とすると、$y=\log_0{x}$ となり、これは「 $0$ を $y$ 乗したら $x$ になる」という意味でしたね。
ただし $0$ を何乗しても $0$ なので、$x=0$ と固定されてしまいます。
また、$y=-1$ とすると、$\displaystyle 0^y=0^{-1}=\frac{1}{0}$ となり、$0$ で割ってはいけないルールに反するため、$y>0$ です。
よって $y=\log_0{x}$ のグラフは以下のようになります。
$x$ の値を一つ定めたとき、$y$ の値がただ一つに定まる式を、$x$ の”関数”と呼んでいたので、これは関数とは言えませんね。
ちなみに補足すると、$0^0$( 0の0乗)は $0$ と考えることも $1$ と考えることもできます。
0の0乗について解説すると本題からそれてしまうため、気になる方は以下の記事をご覧ください。
0の0乗とは~(準備中)
底a=1の場合
$a=1$ とすると、$y=\log_1{x}$ となり、これは「 $1$ を $y$ 乗したら $x$ になる」という意味でした。
ただし $1$ を何乗しても $1$ なので、$x=1$ と固定されてしまいます。
今回は $a=0$ のときのように「 $y$ がマイナスになると $0$ で割るルールに反する」みたいなことがないため、$y$ は実数全体を取ります。
よって $y=\log_1{x}$ のグラフは以下のようになります。
これも $x$ の関数とは言えないですね…。だから底は $1$ じゃダメなんですね。
よく理解してきたね^^以上が底の条件の説明だよ。でもここまで理解できれば、真数条件もわかったも同然なんだ。
真数が0より大きい理由:グラフを書けば明らか
以上を踏まえ、対数関数 $y=\log_a{x}$ の底 $a$ が
- $0<a<1$
- $1<a$
以上 $2$ パターンに分けて、グラフを書いてみます。
どうでしょう。真数条件 $x>0$ は理解できましたか?
…あ!2つのパターンどちらとも、$x≦0$ にグラフは存在していないです。
そう。グラフを見たら、$a$ が何であっても $x>0$ であることがすぐにわかるよね。これが真数条件の正体なんだ。
つまり、今までの話をまとめると…
この手順で真数条件 $x>0$ が理解できるのです。
対数関数のグラフの書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。
真数条件・底の条件を使うときとは?応用問題6選で知識を定着
真数条件と底の条件について理解を深めたところで、今度は実際に使ってみましょう。
真数条件・底の条件を使うときを一言でまとめると、「真数(底)に変数が登場したとき」です。
真数条件も底の条件も使うときは一緒なんですね。じゃあ、なんで真数条件ばっかり出てくるのでしょうか?
それは真数に変数が含まれることが圧倒的に多いからだよ。たとえば $\log_x{2}$ と $\log_2{x}$、どっちをよく見る?
問題としてよく見るのは、圧倒的に後者の $\log_2{x}$ ですよね。
真数条件の方が見る機会が多いのは事実ですが、どちらとも使う場面は同じなので、この $2$ つは常にセットで覚えておくようにしましょう。
それでは真数条件・底の条件の応用問題を、計6問解いていきます。
対数方程式3問
問題1.次の対数方程式を解け。
(1) $\log_x{4}=-2$
(2) $\log_2{(x+2)}+\log_2{(x-1)}=2$
(3) $\log_3{x}-3\log_x{3}=2$
まずは対数を式に含む方程式、つまり対数方程式の問題です。
真数条件と底の条件を先に考えた上で、方程式を解くようにしましょう。
(1)や(2)では、真数条件や底の条件を使うことで、正しい解に絞ることができましたね。
一方で(3)では、真数条件や底の条件を使っても、解はそのまま変わりませんでした。
ですが(3)のような場合であっても、「出てきた解が本当に条件を満たすか判断する」ために真数条件・底の条件を使うのは必須です。
特に記述の問題で真数条件・底の条件を書き忘れると、「あ、この子は条件を満たすことを確認していないな」と認識され減点されてしまいますので、必ず確認するようにしましょう。
解答中に出てきた「対数の公式」と「底の変換公式」に関する詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
研究:(2)について深く考えてみよう。
問題1(2)`.対数方程式 $\log_2{(x+2)(x-1)}=2$ を解くとどうなるか、考えてみよう。
(2)の解答二行目において、
※スマホの方は数式を横にスクロールできます。
という式変形を用いました。
では、もし最初からこの式変形がされていたら、解はどうなるでしょうか。
最初に式変形されていようが、後から式変形しようが、解は変わらなくないですか?
それは解いてからのお楽しみ。皆さんもぜひチャレンジしてみてください。
そっか!真数条件が変わるから、求める解も変わるんですね!
よく気づきましたね^^式変形する過程は同じなのに、真数条件が違うことで求める解が変わるなんて、数学は奥深いですね!
「二次不等式の解き方がわからなかった」という方は、ぜひ以下の記事をあわせてご覧ください。
対数不等式2問
問題2.次の対数不等式を解け。
(1) $\log_{\frac{1}{3}}{x}>4$
(2) $\log_2{(7x-x^2)}<\log_2{(x^2-4)}$
次は対数を含む不等式、つまり対数不等式を解く問題です。
冒頭で解いた $\log_2{x}≦3$ と同様に、真数条件や底の条件だけでなく、底が $1$ より大きいか小さいかにも注意して解いていきましょう。
指数不等式と同様に、底が $1$ より大きいか小さいかで対数と真数の大小関係は異なります。
底が $1$ より大きい:真数の大小関係と対数の大小関係は一致する
底が $1$ より小さい:真数の大小関係と対数の大小関係は逆になる
指数不等式も気になる方は、以下の記事をあわせてご覧ください。
対数関数の最大最小1問
問題3.対数関数 $y=\log_2{(x+2)}+\log_2{(3-x)}$ の最大値を求めよ。
最後は、対数関数の最大最小の応用問題です。
この問題も今までと同じように、真数条件を忘れずに使って解いていきましょう。
以上のように、対数関数の最大最小を求めるために、平方完成を行うことがあります。
平方完成は必ずできるように、計算練習をたくさん積んでおきましょう。
まとめ:真数条件・底の条件を忘れずに使い、応用問題をマスターしよう
真数条件と底の条件はマスターできましたか?
以上、本記事のポイントをまとめます。
- $y=\log_a{x}$ には、$a>0$ , $a \neq 1$ , $x>0$ という条件が付いている。これらをそれぞれ真数条件、底の条件と言う。
- 底 $a$ についての条件を考え、$0<a<1$ , $1<a$ でグラフを書いてみると、自ずと真数条件がわかる。
- 対数方程式、対数不等式、対数関数の最大最小を解けるようになろう。
真数条件・底の条件をマスターしたら、いよいよ対数の最後の関門である「常用対数」について学びましょう。
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